【一言】不可思議なモノ言いで進められるBSE(牛海綿状脳症)政策
国家の屋台骨を成すものに、財政(所管は財務省)、外交(同外務省)、治安・警察機能(同法務省・検察・警察)、国防(同防衛省)などがあります。そして、国民の生活や安全を守る上で重要な機能を果たしています。
加えて、国民の生命や健康に不可欠なものが、“食”に関するものです。 最近の農水省と公取またはその関係研究会による、BSE(牛海綿状脳症)を巡る妙な議論がまかり通りそうなところに、この国の不思議さをつい感じてしまうのは、私だけでしょうか。^^;
(太字下線は、私が付しました。写真は、2004年9月「BSE対策の徹底を求める要請」を行う衆議院議員会館での集会時のものです。左の絵はオマケであり、記事とは関係ありません。)
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■<BSE>「検査済み安全」PR表示ダメ 牛肉で公取委判断
(2008年7月19日、毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080719-00000051-mai-bus_all
生後20カ月以下の牛に対するBSE(牛海綿状脳症)検査に関し、食肉業者などが「検査済みで安全」とPRした場合、公正取引委員会が景品表示法違反(優良誤認)に当たると判断することが分かった。現在、20カ月以下の牛は全自治体が検査しているが、今月末で国の補助が打ち切られる。さらに自主検査を続けるか対応が分かれる可能性がある中、検査の有無で安全性の差別化を図ることにクギを刺した形だ。
BSE検査は、2001年9月に国内初の感染牛が見つかって以降、処理されるすべての牛に義務付けられたが、2005年8月からは対象牛が生後21カ月以上に緩和された。しかし、自主的な全頭検査の継続を表明する自治体が相次いだため、厚生労働省は今年7月までの3年間限定で、20カ月以下の牛の検査にも補助金を出していた。
屠畜場(とちくじょう)を持つ76都道府県・市は、今年度は自主検査を続ける構えだが、来年度以降は未定の自治体が多い。一部が打ち切った場合、検査済みと未検査の牛肉の両方が流通する。このため厚労省は、表示の可否を公取委に照会。「検査済み牛肉の方が安全だと思わせる表示は、商品が実際よりも優れていると不当に誘導する『優良誤認』に当たり違法」との回答を得た。「検査済み」のみの表示は「消費者の受け取り方次第なので即断できない」(公取委消費者取引課)という。
厚労省食品安全部は「20カ月以下の検査が不必要なことは、3年前に国の食品安全委員会で出た結論。横並びを意識して検査を続ける自治体もあるだろうが、差別化を図る表示はできないので、打ち切っても信用や評価が落ちる心配はない」と話す。
一方、市民団体「食の安全・監視市民委員会」代表の神山美智子弁護士は「消費者が知りたい情報は出すべきだ。国は遺伝子組み換え食品に関しては、リスクに差がないとしながら『組み換えでない』との表示を一部認めており、均衡を失するのではないか」と疑問を投げ掛ける。【清水健二】
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■私の見方:
(ビジネスパーソンも知っておきたいマクロ経済学的な視点)
BSEの問題は、次の点で決して解決済みではありません。まず日本人の多くが、まず知らないことを簡単に示しておきましょう。
①輸出国での検査の結果、月齢30ヶ月未満の牛にBSE感染がなかったことを証明する個体数の検査を同国は殆どしていない模様。
2004年9月の内閣府「安全食品委員会」の報告書では、同国の検査率は1%未満で対象はわずか2万頭、日本では350万頭。にもかかわらず、前者が“科学的”ということになっているらしい。
②月齢24ヶ月まで基準を厳しくしたとしても、輸出国ではその基準確定はできないそうです。
輸出国が主張するような、「永久歯」や「肉の色と質」では見分けることは無理があります。
③輸出国の検査では、同国大手食肉業者(≠第三者機関)に任されており、客観性に極めて乏しい模様。
これら大手業者と吉野家ディー・アンド・フーズ社らが取引している。
④異常プリオンが蓄積する、牛の臓器や脊髄・脊柱などの「特定危険部位」を除去しておけばよいと言われるが、その検査も疑わしいことに加え、技術上・実際上の限界があるそうだ。
事実、炎症のある特定危険部位以外の臓器に異常ブリオン蛋白質の蓄積も発見されている模様。
⑤「BSEは、好きな草を食べることも許されず、くる日もくる日も穀物と成長促進用抗生剤を添加された配合飼料ばかりを強制的に食べさせられる牛たちの反乱であろう。」
上記の出所は、本山美彦氏(京大名誉教授、元日本学術会議会員、経済学博士)の著書『「帝国」と破綻国家』(2005年8月)からの抜粋によるものです。鋭い指摘が同著には随所にあります。多くの日本人が耳を傾けるべき素晴らしい本です。
加えて、BSEは10年間ほどの潜伏期間がありますので、感染しても暫くは分かりません。発症するまでの潜伏期間は、平均5年で、ほとんどの場合が4~6年と推測〔2004年8月、食品安全委員会プリオン専門調査会〕。長いもので25年以上とも言われる(50年超とも)。つまり、「現行犯逮捕」が事実上できません。仮に10年ほども先のこと(結果)となれば、BSEの疑いのある牛肉を食べたこと(原因)の関係を証明することは、手続き上かなり煩雑・困難なものとなりましょう。10年も前の関係者は、その時もう生きていないかも知れません。
このように仮想敵国以上にある意味、身近な危険度の高い代物がBSEにつながる牛肉問題なのです。この牛肉に関する表示を巡る報道が上述の記事(関係者のロジック)なのです。 その“ロジック”を簡潔に下に示しましょう:
(A)「食肉業者などが「検査済みで安全」とPRした場合、公正取引委員会が景品表示法違反(優良誤認)に当たる」。または「検査済み牛肉の方が安全だと思わせる表示は、商品が実際よりも優れていると不当に誘導する『優良誤認』に当たり違法」。
⇒ “安全”表示が“優良”誤認に当たる、と。14歳の少女を死に至らしめてしまうほどの“安全”と、業者商品の競争公正上の“優良”が同列で比較されているのです。
と言うよりも比較の結果、後者つまり業者間の競争の方が、前者の消費者・国民の生死よりも重要だと言っているのです。
(B)「差別化を図る表示はできないので、打ち切っても信用や評価が落ちる心配はない」と。
⇒ 自治体がこれまで続けてきた自主検査への補助金を打ち切る模様です。そして、自主検査を行わない牛肉が市場に出回っても、その牛肉商品の信用や評価は落ちやしないと主張しています。
輸出国からの検査に疑いがもたれているのですから(上述の①~④)、自治体の中には自主的な検査を通じ、少しでも安全性を確保しようとする動きがあるのは当然。それを牽制しようとする意図はどこにあるのでしょうか。
今や日本でも“神”となった“規制緩和”に帰依せよ、ということなのでしょうか。「補助金」が常に悪いなどと考えることは幻想に過ぎません。市場原理では解決できなことの方が、この世の中には満ちているのですから。
以上、小学生か中学生でも分かるような、ロジックもないような論理・内容の流れが、国の関係者から説明され、それに何の疑念も示さず大新聞が報道しています。
同記事の最後に、市民団体からの意見が付けたしのようにあります。「遺伝子組み換え食品」に関する表示との比較を出すまでも本来ないことです。上記(A)や(B)のことだけでも、BSE「検査済み安全」PR表示をダメとすることの説明が説明にもなっていないことがお分かりかと思います。
これ以上は止めて置きますが、このBSE問題の背景を知ることが重要でしょう。ごく基礎的なデータや情報を目の前に並べて、少しでもじっと眺めれば、同問題を巡る関係者、つまり輸出国側の政府や大手業者、輸入国側の政治家・関係府省の官僚と御用学者やマスコミらとの間に、明瞭な利害関係が透けて見えることでしょう。ここには消費者・国民などはまったく不在であることも・・・
食や安全に関することにまで、市場競争や大幅な規制緩和を持ち込むことになれば、危険に晒されるのは消費者・国民側です。少なくとも日本側の関係者も、まったく同じ状況にあるはずです。消費者も牛肉の安さばかりに目を奪われていると、後で親も子供も大変な目に遭うことになりかねません。
“規制”という企業の行き過ぎた横暴を御する権限をもつ政府が、新自由主義的な発想(≒宗教・ドグマ)にただ翻弄され、あるいは企業向けの経営コンサルティングをするコンサルタントが、利益の最大化のみを支援するようなことに留まるのであれば、この国は今よりもずっと居心地が悪くなります。何れも、物事を局所的な視点と同時に包括的な視点をもたない限り〔米国の科学哲学者Thomas Samuel Kuhn〕、社会全体の方向を決める舵取りにおいて重大なミスを犯すことになりかねません。
しかし既に、コンソメスープなど含めあらゆる食材に疑わしい牛肉が混在していることでしょう。従って、余程抜本的な手を政府が打たない限り、普段気をつけているつもりの私もその影響下から逃れることは、事実上極めて困難な状況にあります。悲しいかな、この豊かで安全であった日本を離れ、南の無人島にでも移住して、まだ汚染されていない海や川からの魚でも釣り上げ、また地元で野菜でも育て(せいぜい、自然に育つ豚でも飼って)、暮らすしか選択肢がなくなりつつあります。^^;
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