カテゴリー「4.企業経営(戦略、マネジメント手法など)」の投稿

2010年8月27日 (金)

【Round Table】北欧専門家とのサービスイノベーションの意見交換

 2010年8月27日(金)に「##### Round Table」なる、北欧のある国と日本側との、「サービス・イノベーション」に関する催しものがあり、そこに私も参加しました。

 同国のMrs.TTが、訪問団のリーダーでした。

 私からは、主に次のことを質問またはコメントしました。

◆日本の「サービス業」の労働生産性(=付加価値額÷労働投入量)が低いのは、その定義である分子(≒営業利益+人件費+減価償却費)が、デフレ下で伸び悩んでいる点にあること。
================================
 労働生産性   米国    日本 

* 製造業    :  3.3%    4.1%
                    ∨
* サービス業 :  2.2% > 0.8%
================================
◆また、流通や小売あるいは農業などの内需型の市場分野において、規制緩和の号令のもと欧米からの企業参入が活発化し競争が激化したこと、あるいは中国からの低価格の農産物が流入してきたことが、サービス業に関する労働生産性が低いことの原因。
◆他方、日本のサービス業は、石川県の加賀屋旅館のサービスに見られるように、世界で類をみないほどの高度なものであること。
 単に財務的な価値のみでは、測れないこと。決して、過度なサービスなどと形容されるものではないこと。
◆主に以上のマクロ経済的視点や非財務的な価値(尺度)まで視野に入れないと、北欧の専門家をミスリードしてしまうのではないか、ということ。

■招待状(日本語)の抜粋:
=====≪quote≫
 この度、#####の政府・大学・企業の各方面からサービス・イノベーション関連の関係者9名 (#####プログラムの幹部)が訪日し、サービスイノベーションの関連機関・企業を訪問する予定です。

 この視察の一環として、8月27日午後14時より帝国ホテルにて、「日本と#####のサービスイノベーションへの取組み」というテーマでラウンドテーブルを開催し、意見交換・議論を通して両国の交流を深めたく存じます。
 ラウンドテーブルの後には、両国の関係を一層深めていただくために軽いレセプションも準備いたしておりますので、皆様には是非ご参加いただきたく宜しくお願い致します。

 尚、当日のプログラムは、別紙の英文招待状に添付してあります。

(略)

 今回のラウンドテーブルの開催に関しまして、東京工業大学#####教授(大学院社会理工学研究科・サービスイノベーション特別教育研究コースディレクター)の多大な協力により実現の運びとなりました。ここに、#####教授に心から感謝すると共に、ご参加される皆様にご報告いたします。
=====≪unquote≫

■#####側の参加者: 男性4名+女性4名の計8名
* Mrs.TT, Director, Service Innovation, ##### Funding Agency for Technology and Innovation, the main architect of ##### strategies in service business and service innovation.
* Mr.LM, D.Sc. (Econ. & Bus.Adm.), professor at University of #####.
and managing director and consultant
* Mrs.SA, B.Sc., Economics and M.Sc., Forestry, Forest Products Marketing.
* Mr.KH, Ph.D. in Finance and a M.Sc.(Eng.) in Civil Engineering, Director, Business Development, Senate Properties 
* Mr.AR, M.Sc.(Econ.) and eMBA, CEO, ##### Oy, a Member of the Board of a major malt, enzyme and incredient producer.
* Mr.JV, Master of Education and leadership, founder and CEO in ##### Ltd.
* Mrs.JA, a research director and senior researcher at ##### University, Senior Technology Adviser, ##### Funding Agency for Technology and Innovation.
* Mrs.HP, D.Sc. (Econ.), Coordinator of ##### – Pioneers of Service Business programme in #####, Senior Consultant at ##### Ltd

■日本側の参加者
* 東京工業大学 教授
* 東京工業大学 教授
* 北陸先端科学技術大学院大学 教授
* 株式会社NTTデータ パブリック&フィナンシャル事業推進部 グローバル推進部 グローバル推進担当部長
* 科学技術振興機構 研究員
* 日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所 サービス・リサーチ担当部長
* 株式会社ぐるなび 執行役員/経営企画室長
* 株式会社日本総合研究所 総合研究部門 理事
* 株式会社野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 上席コンサルタント
* 株式会社コーエーテクモネット 代表取締役社長
* 藤沢市、市長室産業戦略担当部長
≪傍聴≫
* 東京工業大学ソリューション研究機構 特任教授(元日本総合研究所)
* 東京工業大学ソリューション研究機構 特任講師
* 東京工業大学 博士課程在籍
* 東京工業大学 博士課程在籍
* 東京工業大学 特任助教
* UPM-Kymmene Japan 社 社長
* #####庁、#####大使館科学技術参事官
* #####大使館商務部
* #####大使館商務部
* #####大使館商務部
* #####技術庁

(注)ちなみに、東京工業大学ソリューション研究機構 特任教授氏は、私の元同僚(日本総合研究所時代)でした。久しぶりの対面となりました。(^-^)

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2010年4月19日 (月)

【講演】「2010年 情報通信産業の潮流と展望 浮揚のための次の一手」の補足

 先週(2010年4月10日)行った、ある講演に関するレジュメ(項目のみ)を貼っておきます。
 当日は、通信会社、総合電機、総合商社、広告代理店、政府系投資銀行、外国政府(北欧)などから経営幹部(代表取締役社長、事業本部長、部長ら)の皆さんがお集まりになりました。
 計200分(Q&A含む)の長丁場でしたが、壇上から拝見するに、皆さんのとてもご熱心な様子が伝わって来ました。

【主なQ&A】

≪Q1≫原口総務大臣らによる、将来(2015年?)の名目GDPの150兆円アップ見通し(現約500兆円から650兆円)、うちICT産業が70兆円とする見方について、どのようにお考えか?

⇒ 自民党政権時に加え、現民主党政権においても、決定的に欠如しているものがあります。それは、マクロ経済の基礎的な視点
 ICT産業がいくら頑張っても、経済成長が大きく増大する訳ではありません。現在は、民間企業にとって、国内に有望な投資案件を見出せない(つまり、一定のリターンが得られない)ため、民間投資が不十分となり、所得も増えず消費にもつながりません。

 デフレ不況下にあっては、総需要<総供給の状態ですので、ある意味当然なのです。不足しているのは総需要の方です。従って、例えば、ICT産業インフラをいくら拡充してもそれは供給過多の状況をさらに高めるだけです。
 では供給過多と言って、これまでの折角の有効な設備資本や人材・人員を削減してしまうことはご法度です。このような考え方をするエコノミストや経済学者が多いのは、困ったことです。世界の非常識です。投資したインフラた設備などを活かすことが重要。有効設備資本と有効な人材要素は、経済復権の原資です。そのためには、総需要を喚起すること。

 方法は、民間が投資しにくいデフレ不況下では、政府が有効な投資をすることがポイントです。戦略産業や戦略分野に政府が投資(社会資本形成)することで、つまり、そこにお金が流れることで、需要が増大します。どこが有効な分野であるかは、お話しした通り(下述の項目)です。
 そうなって初めて、ICT産業の市場規模の拡大も見込めるのです。



=====≪quote≫
■2010年情報通信産業の潮流と展望浮揚のための次の一手
(新保豊、2010年4月10日)

はじめに
 本講演では、最近のトピック(国の政策動向、国内外の情報通信産業の市場動向、通信・放送の融合や新たなメディアの動向)を例に挙げながら、なぜ日本企業が競争力を落としているのか、今後の打ち手はどうあるべきかなどを、マクロ経済やグローバル金融などの視点と結びつけた分析・綜合化を行いつつ、情報通信産業の浮揚のための打ち手を展望。

 日頃の経営コンサルティング現場や政策提言(競争政策やマクロ経済など)の視点から、問題の核心と今後の見通しなどについて解説を試みます。


講演内容の構成

【1】国の政策動向

■動き出した新政権のICT関連の政策
▼総務省の政策を決定する"チーム原口"の構成
▼過去の審議会、研究会と一線を画するICTタスクフォースの運営体制
▼日本と欧米各国の通信・放送行政の比較
▼「地球温暖化問題に関する閣僚委員会タスクフォース会合」(2009年10月)
■郵政の次はNTT:再統合へネジ巻く政官業の腹づもり
■「原口ビジョン」(2009年12月22日発表)の概要
■原口総務相“光の道”構想(2010年3月発表)
▼総務省:携帯電話のSIMのあり方に関する公開ヒアリング(2010年4月2日)
■菅財務相:積極財政を数年継続=財政再建は「その後」に
■危うい鳩山政権「5原則」
≪参考≫憲法改正試案の中間報告
■「国際協調及び平和主義」「安全保障」の条項について

【2】国内外の情報通信産業の市場動向

■グローバル化を通じた“勝ち組・負け組”も金融危機後は総崩れ
▼金融危機後の主要電機各社リストラ計画により日本経済のデフレギャップがさらに増大
■ウィルコム再生支援に関する基本合意内容
■「クラウド」:通信キャリアが提供することの見方
▼「クラウド」:海外事業者と比べて考えられる問題
▼「クラウド」:端末とネットワークの役割分担はうまく図れているか
▼「クラウド」:取り組む方向性についての評価
≪参考≫「クラウド」:利用企業が注意すべきポイント
≪参考≫「クラウド」:国内データセンターの国際競争力に関する状況
■中国:インターネット関連サービスのユーザー数推移は急増
▼中国:インターネット関連やオンライン広告は急増
▼中国:地方の消費者購買力も7,000ドル(per capita GDP)近くまで高まる
▼中国:“中流”コア購買層は6億人を超える(リッチ層も5,500万人)
■侮れぬ中国「OPhone」の深謀

【3】通信・放送の融合や新たなメディアの動向

■広告費に見るインターネットとマスメディアの明暗
≪参考≫新聞の発行部数の推移
▼米国と日本における新聞発行部数の比較・ランキング
≪参考≫米国The Huffington Post(創業4年のオンライン新聞)の躍進
≪参考≫News Corporationグループに見るグローバル市場での独占・寡占化
■電子書籍「Kindle」と「iPad」に関する最近の動き
▼各社の電子書籍端末比較
▼「電子書籍」に関する最近の議論
■「ホワイトスペース」:放送電波のすき間に眠る「埋蔵金」
■「マスメディア集中排除原則」の緩和(集中化)へ
■米YouTube社およびHulu社のコスト構造分析
■メディア2.0市場の位置づけ
≪参考≫メディア内の主体構造の変化
■オルタナティブメディアへの変遷
▼シナリオ別のマスメディアのゆくえ
■P2P技術の本質に横たわる著作権問題
▼「P2P型インターネットテレビ」がもたらす社会・経済的なインパクト
≪参考≫「キーホールTV」サービスのイメージ
■「地デジ」化の思惑と「P2P型インターネットテレビ」の可能性
≪参考≫ネット上の“パノプティコン”が生権力(バイオパワー)支配
■「中国 vs Google」の戦いから見えるものとは?

【4】グローバリズムの本質とマクロ経済・金融問題

■「年次改革要望書」とは何か?
≪参考≫「CHANGE」?されたオバマ政権の主要閣僚・顧問らの顔ぶれ
■内外主要ファンドの一覧
▼「ファンドの貪欲」
■金融ビッグバンによる資金流出(日本経済に使われなかったマネー)
▼信用創造量と名目GDP伸び率の関係
▼日米の金融政策比較
▼クレジットデリバティブのメカニズムと証券レバレッジによる新型の信用創造
≪参考≫世界の流動性
■巨大複合金融機関LCFIとのその役割とスキーム(Ponzi scheme)
▼世界の銀行の総資産の大きさに見る世界覇権(金融経済)の動き
≪参考≫世界の巨大銀行(25行)の2009年の総資産
▼米GDPに占めるFRB総資産の急増ぶりに見る国家破綻への兆し
≪参考≫米国の債務残高:99兆ドル(債務比率700%)を超えている!?
≪参考≫国家破産の方法(John Maynard Keynes)
■“政治覇権国・金融帝国”化とグローバル構造下における投資と消費のメカニズム
▼中国の輸出競争力の背景には「人民元安」があったが早晩切り上がる
≪参考≫為替レートのあるべき調整と現状
■主要国GDP比較に見る日本の経済成長の低迷さは異様
≪参考≫債務残高の対GDP比による国際比較の誤解
≪参考≫日本の新規財源債発行額(年間)とその残高および長期金利の推移
■部門別の資金過不足推移と日本経済の低迷と水準維持のメカニズム

【第1の方法:国債発行】世界のGDPに占める日本の存在感と財政出動
▼日本経済に「デフレギャップ」は殆ど存在しない!?
≪参考≫GNPギャップ(デフレギャップ)の定義
≪参考≫日経新聞における潜在成長率の定義
≪参考≫内閣府モデルによるデフレーター予測値と実際値との乖離
≪参考≫ケインズの乗数効果を考える
▼真のデフレギャップの規模
▼GDP=「乗数効果」×「有効需要支出」ゆえデフレ下では「社会インフラ投資」が有効
≪参考≫「日経NEEDS」モデルによる大規模な財政拡大シミュレーション
≪参考≫主要国の国税収入全体に占める消費税の割合
≪参考≫「税収の対GDP弾性値」は大きいため借金返済ペースの方が速い

【第2の方法:日銀の国債直接引受】日銀からの国庫納付金を通じた実質的な無利子国債発行による財源調達
▼危機下で学ぶべき高橋是清の教訓:財政危機の「出口」戦略描け

【第3の方法:政府紙幣発行】即効性のある景気対策と年率10%の経済成長
▼スティグリッツによる「政府紙幣」発行の提案
≪参考≫中国の地方政府で相次ぐ「消費券」の発行

【5】情報通信産業の浮揚のための打ち手

■「グローバル・トップワン」が本当に必要か?
■総務省「デジタル日本創生プロジェクト(ICT鳩山プラン)」骨子
▼デフレギャップ(真の財源)利用した経済対策と劇的な効果
▼ ICT産業が採るべき未来の発展パターンと「飛躍の10年」
▼「ミクロ」に固執し「マクロ」の視点を欠いた日本の不思議
≪参考≫大深度地下利用による「社会インフラ資本」形成(生産力を生まない投資)
■社会インフラ整備を通じた関連サービスが今後のフロンティア
▼今後の需要喚起が期待されるのは「社会ニーズ」を満たす分野

=====≪unquote≫

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2010年3月31日 (水)

【日本原価計算研究学会】マクロ経済やグローバリズムから見たサービスや管理会計の意味

 先日(2010年3月11日)、京大のS教授(経済学)が弊社東京本社(千代田区一番町)をお訪ねになり、日本原価計算研究学会主催の「2009年度産学連携コストフォーラム」(2010年4月10日土曜開催予定)に関して、簡単な打合せを持ちました。

 たまたま私が、京大の「サービス・イノベーション人材育成推進プログラム」アドバイザリーボード委員を務めていたことがご縁で、同フォーラムに参加することに相成りました。

 同フォーラムの集客の多少の足しにと思い、次のような案内文をここに貼っておきます。
 後日このフォーラムに関するコメントを記すことになるかも知れません。

=====≪quote≫
■2009年度産学連携コストフォーラムのご案内 (2010年3月29日改訂)
http://www.jcaa-net.org/forum2009.html

 日本原価計算研究学会は,1999年3月より毎年,学会の活性化と会員の拡大を目的として「産学連携コストフォーラム」を開催いたしております。今年は,メルコ学術振興財団との共催を得て下記の要領で開催いたします。原価計算・管理会計に関心をお持ちの方のご参加をお待ちしております。参加は無料(定員100名,先着順)となっております。ご参加のご連絡の際には,「お名前,ご所属,ご連絡先」をお書き添えのうえ「産学連携コストフォーラム参加申し込み」と明記して,下記連絡先まで電子メールかファックスにてお申し込みください。締め切りは3月末日とさせていただきますが,先着順ですので,なるべくお早めの申し込みをお願いします。

申込先 2010年産学連携コストフォーラム事務局 担当:本村
Email: motomura@gsm.kyoto-u.ac.jp
FAX : 075-753-3492

●日 時  :2010年4月10日(土曜)13時30分~17時30分
●場 所  :学術総合センター 

 東京メトロ半蔵門線/都営地下鉄三田線・新宿線「神保町」A8出口東京メトロ東西線「竹橋」1b出口 徒歩3~5分 JR中央線市ヶ谷下車,徒歩7分 詳しい場所はhttp://www.nii.ac.jp/access/をご覧ください。

●テーマ  :サービス・マネジメントと管理会計

●テーマの趣旨
 産学連携コストフォーラムでは,毎年,企業経営および管理会計実践の中で今日起こっているさまざまな変革に注目してテーマを設定しています。今回のテーマは「サービス・マネジメントと管理会計」にしました。経済のサービス化が進み,サービスセクターの重要性が高まるとともに,経済活動をサービスの観点から捉え高度化を図っていこうというサービス・サイエンスやサービス・イノベーションの研究も進みつつあります。このようなサービス化の進展に,管理会計がどのように関わってきたのか,管理会計の貢献と課題について検討する場として,メルコ学術振興財団との共催で今回の日本原価計算研究学会産学連携フォーラムを開催します。当日は,「サービス・マネジメントと管理会計」というテーマについて実務界と学界のそれぞれを代表する論者の方に持論を展開していただいたうえで,パネルディスカッションを行う予定です。昨年9月にAccounting, Organizations and Society誌の編集長に就任したクリス・チャップマン教授による特別講演も予定されておりますので,是非ご参加ください。

●プログラム

13時30分 学会長挨拶(一橋大学大学院教授 廣本敏郎氏)
13時35分 メルコ学術振興財団理事長挨拶(福井県立大学教授 上總康行氏)
13時40分 フォーラム実行委員長挨拶(京都大学教授 澤邉紀生氏)

13時45分~14時45分 特別講演
 ◆Christopher S. Chapman 氏,Professor, Imperial College, London, UK
    "Service Management and Management Control for Services"

14時45分~15時 休憩

15時~16時30分 講演
 ◆日本総合研究所理事 新保豊 氏 
  『マクロ経済やグローバリズムから見たサービスや管理会計の意味』
 ◆フューチャーアーキテクト(株)シニアフェロー 碓井誠氏 
  『サービス・イノベーションと新IT経営』
 ◆慶應義塾大学教授 園田智昭 氏  
  『サービスレベル・アグリーメントの利用とその拡張』
16時30分~16時45分 休憩

16時45分~17時45分 パネルディスカッション
(パネリスト)
 ◆フューチャーアーキテクト(株)シニアフェロー 碓井誠氏 
 ◆日本総合研究所理事 新保豊氏 
 ◆慶應義塾大学教授 園田智昭氏
(コーディネーター)
 ◆京都大学教授 澤邉紀生氏

●講演者・コーディネーターのご紹介

◆Christopher S. Chapman氏
 ロンドン大学インペリアル・カレッジ教授。レストラン・チェーンや医療などのサービス業における管理会計の研究を精力的に行なうとともに,Accounting, Organizations and Society誌編集長として欧米における管理会計研究の指導的役割を担っている。著作に,Controlling Strategy, Oxford University Press, 2007 (『戦略をコントロールする』中央経済社,2008年), Accounting, Organizations, and Institutions, Oxford University Press, 2009他多数。

◆新保豊 氏
 大学院修了(物理学)後,総合電機メーカーを経て,1991年に(株)日本総合研究所へ転進。主に経営戦略(グローバル経営,M&Aなど)に関するコンサルティング・実施支援,競争戦略立案など多くのプロジェクト統括を経て現在(理事・主席研究員)に至る。論文・著書に「ICT鳩山プラン_ICT産業と適切なマクロ政策で日本経済は発展できる」(エコノミスト誌),『“日本発”MBA戦略&マネジメント』(中央経済社)など。内閣官房内閣情報調査室や経団連など多くの講演を行うととともに,総務省情報通信審議会専門委員,ICT国際競争力会議構成員,複数の大学院MBAコース非常勤講師(グローバル経営とマクロ経済・金融問題)を務める。

◆碓井誠 氏
 1978年10月セブン・イレブン・ジャパン入社,以来25年間,業務改革,システム革新の両面よりのサービス・イノベーションに従事。同時に,米国セブン・イレブンの再建やATM事業,eコマース事業などの立上・推進を行った。2000年,常務取締役システム本部長に就任。その後,2004年にフューチャーシステムコンサルティング(現フューチャーアーキテクト)取締役副社長、2010年3月よりシニアフェローに就任。2009年芝浦工業大学大学院(MOT)教授,2010年京都大学経営管理大学院特別教授兼務。政府や業界団体の委員会でサービス・イノベーション活動を推進している。著書に『セブン・イレブン流-サービス・イノベーションの条件』他多数。

◆園田智昭 氏
 慶應義塾大学商学部教授,博士(商学),公認会計士。日本におけるシェアードサービスの先駆的研究を行ってきている。『シェアードサービスの管理会計』中央経済社,2006年,『イノベーションと事業再構築』慶應義塾大学出版会,2006年(共著),『原価・管理会計入門』中央経済社,2010年(共著)他多数。

◆澤邉紀生 氏
 京都大学経営管理大学院・大学院経済学研究科教授,博士(経済学)。『メルコ管理会計研究』編集長。『リスク社会と会計改革』岩波書店,2005年,『次世代管理会計の構想』中央経済社,2006年(共編著)他多数。

■ 主催 日本原価計算研究学会

■ 共催 メルコ学術振興財団
=====≪unquote≫

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2010年3月 9日 (火)

【新聞コメント】「クラウドが拓く、日の丸ITの岐路」の視点に欠けるもの

 少し前(2010年1月29日)、日経新聞社の○○記者(『日経産業新聞』担当)が、私のところを訪ね、主にクラウド・コンピューティングに関する取材に応じました。
 その内容が昨日(2010年3月8日)記事になっていました。

 それに伴う弊社広報部担当者へのeメール内容と、その記事についての補足を簡単に下に行っておきます。

=====≪quote≫
広報部 ○○さん
新保です。

 ご丁寧にご連絡有り難うございます。
 当件、随分と経過していましたので、もう忘れていました・・・。
 それに日経○○記者は、民主党で通信政策に詳しい人をどなたか私に紹介してくれませんか、と言うこと(のみ?)に随分とご関心を持っていたようでしたので。
(記事を今朝手にしてみると、結局、原口総務相の元に行かれたようですね。)

 そういえば、昨日、当社代表電話に山形県のある方(この日経産業の記事をご覧になった60歳代の男性)から、電話でのご質問・感想などの件で、私とやり取りがありました。
 クラウド・コンピューティングの今後について、ご興味を持っているようでした。今度当社まで、地産の枝豆を持ってお礼のご挨拶に来たいとおっしゃっていました。(^-^)

PS:
 クラウド・コンピューティングの本質とは、【A】IT革命を通じた時空間の開放により、世界最高の技術・生産力(欧米)と世界最低賃金(BRICsなど)とが結びついたことで実現した、また同時に進んだ金融革命とが後押しする(前者国が後者国へファイナンスする)ことで実現した、新たな世界パラダイム(世界帝国化の流れ)を支える一要素であろうかと思います。A国(警察庁の隠語)の明確な戦略をここに垣間見ることができます。

 その意味では、この流れを是認する際に、わが国は出遅れた感がありますが、必ずしも是認してよいことばかりではないと考えています。

 他方先般、【B】菅大臣が打ち出した継続的かつ積極的な財政出動により実現可能な、新たな“内需型社会資本大国”に向け、より具体的には地方をも元気にするために、様々な国内資源(人、地場企業、地場環境など)とクラウド・コンピューティング資源とを有機的に結びついた際、別の意義が見出せるコンセプトでもあろうかと思います。

 (略)後半の解釈については、恐らく日経○○記者の理解を超えているものかと思います。。。
=====≪unquote≫


 その記事について、主な内容を抜粋します。

=====≪quote≫
■クラウドが拓く、日の丸ITの岐路、霞が関システム統合迷走
(『日経産業新聞』、2010年3月8日)

≪抜粋≫

* クラウドは情報システムの統合とグローバル化を加速させ、既存のシステムを陳腐化させる力を秘めている。

* 国や自治体、情報関連産業はクラウドの大波に乗れるか

* 霞が関クラウドが最初に発表されたのは昨年(2009年)3月、当時の麻生政権が打ち上げた。構想には世界最高水準の電力利用効率を持つ次世代データセンタ-(DC)の構築などが含まれ、日本のIT競争力を高めるのが狙いだ

* そもそも“霞が関クラウド”は自民党時代に姿も形もなかった。構想も我々がゼロから作っているのが実情だ。不正利用の防止や国民のプライバシーなどに配慮しつつ、早急に構築する〔原口総務相〕

* 日本はグーグルなどの米国勢に先行されたが、政府の支援があれば追いつく可能性がある〔情報経済学が専門の須藤修東大教授〕

* だが構想は迷走。当初1,000億~2,000億円の国費を投じ、全国に次世代DC網を拘置する案もあったが、景気後退の影響で前政権が2009年度に盛り込んだのは、“電子政府クラウドの推進”など207億円だけ。民主党政権下では事業仕分けなどでさらに削られ、52億円まで圧縮

* 北海道(候補地:岩見沢市)で雪や地下水を使ってサーバーを冷却する最新型DCの実験の予算も消えた。他方、IIJ社(鈴木幸一社長)は、2010年2月上旬、静岡県のある工業団地で次世代DCの実証実験を開始。

* 米国や中国などは官民一体でITを向上させており、日本が取り残されている。例えば、米IBMは昨年(2009年)、米空軍向けのクラウド基盤に着手。グーグルも年内に、米政府にクラウド方式で表計算送付となどの提供を始める。今年はグーグルやアマゾン・ドットコムが、DC建設などで相次ぎ日本に進出してくるとみられている〔情報通信分野の経営戦略に詳しい日本総合研究所の新保豊主席研究員〕

* 自民党政権時代とは違う霞が関クラウド構想が登場し、日本のIT競争力を引き上げる起爆剤となるのか。海外の国や企業は待ってくれない
=====≪unquote≫
 

■補足

◆≪グローバル化を加速させ、既存のシステムを陳腐化させる力

 情報通信産業を含む実体経済(貿易財)の「グローバル化」を考慮する際、それが特に「金融グローバル化」と不可分一体で動いている様に注視する必要があります。

 「金融グローバル化」とは、水野和夫氏(三菱UFJ証券のチーフエコノミスト)の言葉を借りれば、ITで市場を一体化させ、実物経済を一体化させながら、金融の自由化と新自由主義の強いドル政策でマネーは全て米国に集める、すなわち「全てのお金はウォール街に通ずる」なるパラダイムを構築するための「米国金融帝国」もしくは「米国投資銀行株式会社」の明瞭な意図・戦略のことです。

 ちなみに、水野和夫氏の代表作である『100年デフレ』(2003年2月)、『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(2007年7月)、『金融大崩壊』(2008年12月)、その他論文などはおよそ読破しています。特に最初の著書は大作・力作だと感心しています。経済学の知識に加え、その他世界の財閥史・金融史や社会学などの基礎知識などが不十分な場合、この著書の大半の読者は、恐らく水野ワールドに引き込まれたままで帰って来れなくなることでしょう。(^-^)
 数百年の世界経済史の中で、現代の世界的なデフレ経済を分析した力量には目を見張るものがあり、大変勉強になります。

 ただ、経済を動かす人間(特に資本家)そのものやその行為(その心理面、思惑、さらには脳機能学からの側面)についての考察には、最近ようやく気付いてきたようですが、少なからず甘さがあるのではないかと感じます。同氏(および三菱UFJ証券)の豊富なデータを駆使した経済分析は日本ではトップクラスにあることに間違いありませんが、分析をする際の前提(あるいはその結果に対する解釈)には、私との価値観の違いもあるのでしょうが、明らかに誤っていると思える個所が幾つか(そう多くありませんが)散見されると思います。何れ近く、このブログでも触れてみたいと思います。

 加えて、マクロ経済学を正しく理解していれば、何も数百年前からのデフレから論じなくとも、現下のデフレ経済をきちんと分析できますし、そこから脱却するための抜本的な解決策もあります。さらにグローバルな、言い換えますと、一物一価の経済が支配する単一経済(単一通貨)を標榜する世界的な、経済パラダイムの是非を論じることができます。水野ワールド(水野氏流の考え方・アプローチ)などを持ち出す必要はありません。私には、同氏においても多分に恣意的かつ演繹的な方法論を感じてしまうのです。

 話を戻します。「クラウド・コンピューティング化」とは、IT革命の一部であり、「金融グローバル革命」と連動して動いている「世界帝国パラダイム」の完成のための1つの現象だということです。

 「既存のシステムを陳腐化」させる原動力の源泉は、前述の通り、世界界最高の技術・生産力(欧米)と世界最低賃金(BRICsなど)とが結びついたことで実現した、新たな世界パラダイム(世界帝国化の流れ)に沿ったものだからです。

◆≪国や自治体、情報関連産業はクラウドの大波に乗れるか

 わが国の行政府(中央+地方)や情報関連産業界は、「クラウドの大波」の本当の意味・背景が分かっているのか、やや不安になります。
 単なるICT上のことではないのです。

 このままのトレンドで物事が進展していくと(任せてしまうと)、「世界帝国パラダイム」に呑まれること必至でしょう。その尖兵が、GoogleやAmazon.comやsalesforce.comらなのです。

◆≪不正利用の防止や国民のプライバシーなどに配慮しつつ

 もし国が主導でデータセンタ-を構築しようとする場合、もしくは国家データセンタ-などを作るとなった場合の、「影」の部分のみ補足しておきます。

 ジョージ・オーウェル(George Orwell)の小説『1984年』の世界のことです。
 古今東西、政府というビッグブラザー(オセアニア国の指導者のことを指しますが、度重なる歴史改竄のため、来歴どころか本当に実在するのかさえ不明な、ある種の独裁権力)を、国は常に潜在的に宿していると考えた方がよいでしょう。

 従って、国民データを全て、そのビッグブラザーには渡してはならいのです。黒髭でもたくわえた温厚そうな人物として描かれているビッグブラザーのことを、もちろん原口大臣と言っているのでは毛頭ありません。権力の象徴を指し示しているだけです。

 杞憂と思われるかも知れませんが、わが国の国家基幹システム市場において、1996年~2001年にわが国で実施された“金融ビッグバン”以降、徐々に外資系IT事業者(もしくはIT系コンサルティング会社)により、そのシェアを奪われているのも実態のはずです。

 水野和夫氏が強調する「1995年」の直後、つまり米国のルービン財務長官の採った「強いドル政策」を通じた「米国金融帝国化」または「米国投資銀行株式会社化」という世界戦略なる分水嶺が形成される直後のことです。
 彼の国のビッグブラザーの力を背にしているとすれば、警戒せねばなりません。

 また、須藤氏(東大教授)が言う、「米国勢に先行されたが、政府の支援があれば追いつく可能性がある」というのは正しいと思います。しかしながら、事態を正確に把握すれば、政府支援の範囲は、クラウドやICTに限らないことなのです。グローバリズムを牽制しつつ(特に国際資本の完全自由化の見直しなど)、国内にあっては財政政策(や金融政策)という経済対策と連動することが不可欠なのです。

◆≪景気後退の影響で、(略)事業仕分けなどでさらに削られ、52億円まで圧縮≫、≪雪や地下水を使ってサーバーを冷却する最新型DCの実験

 匠の国の人々(日本人、中でもメーカーやIT事業者)は、とかく技術に走りがちだと思います。地場資源を活用して冷却する方式は、寒冷地のノルウェイなどでも話題となっており、グローバル・データセンタ-の誘致合戦が、様々な国々で行われつつあります。

 日産自動車の電気自動車(EV)事業と連動した戦略的な「グローバル・データセンタ-」のことが、極秘事項ゆえにほんの部分的な情報として新聞紙上に先日報じられました。先週、私も顧問を務める産官学のある勉強会で、日産自動車の主管の方(電気自動車担当)を講師にお呼びし、その件について少々詳し目のお話しを聞くことができました。

 当日はEVに関することがテーマだったのですが、私から2点コメントしました。
 ①現在大騒動となっている、トヨタ自動車の米国での急発進事故問題をどう読むか。米国でも違法なはずの“トラック野郎”の強力なCB(Citizen Band:市民バンド)無線による、トヨタ車とのすれ違いにより生ずる可能性のあるエンジン電子制御機能へのノイズの影響について。
 ②米国南部の広大な帯水層地域に進出し工場を建造・生産していることで、既に地下水が枯渇しつつある“ヴァーチャル・ウォーター”問題について。ライフサイクルで見た場合、自動車1台の生産に水が378トンも使用されるそうです〔出所:「グローバル・イノベーション・アウトルック・レポート2009」〕。
 ここではこの2つについての詳細は記しません。

 DCがどれほどの冷却水(地下水)を必要としているかのデータがありませんが、その使用量が膨大な場合には、内燃機関型自動車産業と同様に、潜在的なリスクがあるかも知れません。他産業で現実に起こっている、このヴァーチャル・ウォーター問題は、人為的なCO2排出問題の比にはならないほど、私たち人類の生活圏への影響の点で深刻なのです。

 さて、その勉強会でも抜け落ちていると思われる(あるいはもっと政府に働きかけて強調すべき)点こそが、この「景気後退の影響」、すなわち「景気回復の手立て」に関することだと思います。

 デフレ不況、つまり「総需要<総供給」の状態にあるのですから、まず政府が投資を行い、民間企業の投資需要を生みだすこと、ひいては消費者の所得・購買力を向上させることが不可欠です。

 日本の主要エコノミスト(主に新古典派、新自由主義者、あるいはグローバリスト)が何と言おうと、それ(ケインズ的な政策≒財政出動)が、デフレ不況下にある日本経済には必要なのです。言い換えれば、グローバルな舞台での資本家への利潤分配率(株式配当など)を引き上げることを目的としたグローバリズムに対して、周辺国における国民への利潤分配率(≒雇用者所得への配分率)を引き上げることの方策が、いま切実に求められているのです。私はもちろん社会主義者ではありません。そうしなければ国民(≒消費者)の購買力が増大しません。増大しなければ、企業の利潤も高まらないのですから。

 幸い先日(2010年3月4日)、菅直人財務相が「積極財政を数年継続=財政再建は“その後”に」と、そのケインズ的な政策実行の意思表明をしました。その財政出動の規模によっては、景気回復の契機になることでしょう。IMFや内閣府らが算出するGDPギャップ(需給ギャップ、今はデフレギャップのこと)の規模に相当する、年間最低30兆~40兆円が必要でしょう。本当はそれ以上必要なのですが・・・。私の試算では、デフレギャップはもっと遥かに大きいからです。

◆≪自民党政権時代とは違う霞が関クラウド構想が登場し、日本のIT競争力を引き上げる起爆剤となるのか。海外の国や企業は待ってくれない

 「霞が関クラウド」とは、上述の通り、単なる供給能力を増大させる(ICT基盤を整備する)だけのものでは効果がありません。
 総需要を刺激することが不可欠です。その順番として、まずは「新たな生産力を生まない投資」(=政府による社会資本整備のための投資)が必須。それには、継続的かつ大規模な財政出動を通じた、新たな「内需型社会資本大国」を目指した“国のかたち”を描くことが求められます。

 「クラウド」1つとってみても、総務省のみならず財務省やその他関係省庁(国交省、環境省、経産省、文科省・・・)らの横断的な取り組みが求められます。
 そのための抜本的なアクションには、公務員制度改革や道州制の導入が前提となることでしょう。話題が広がり過ぎますので、この件はまた別途としましょう。

 マスコミの論調で気に食わない点の1つは、例えば、「海外の国や企業は待ってくれない」といった件(くだり)です。
 これは、冒頭の「【A】IT革命を通じた時空間の開放により・・・」に関することを是認する言い方だからです。
 これを是認することの大きな流れは、もはや無視できないことを私も認めますが、他方「【B】菅大臣が打ち出した継続的かつ積極的な財政出動により実現可能な、新たな“内需型社会資本大国”に向け・・・」なる視点も(こそ)、今の日本経済には重要だということを強調しておきたいと思います。

 急がば回れで、【A】グローバリズムに合わせることの前に(あるいはそれと並行して)、【B】内需型社会資本大国を目指した新たな国づくり、別の表現としては、もはや満ち足りている“消費欲求”ではなく、“社会欲求”にこたえ、国民の生活の質(QoL)向上につながるようなサービスを開発(その需要を喚起)し、そのための情報通信基盤(通信ネットワークやデータセンタ-設備、そしてそこに備わるクラウド機能)の整備を官民挙げて進めることが大切だと思います。そして、それがひいては「日本のIT競争力を引き上げる起爆剤」になるものと考えます。


 以上、補足・追記していますが、日経の○○記者には、ざっとこのようなことの骨子をお話ししました。新聞記事になったりテレビで報道されたりするのは、コラムの紙面やテレビ画面・放映時間の制約(もしくは取材者の感度・好みなど)により、そのごく一部が切り取られて読者・視聴者にコンテンツが届けられる、と言うことです。(^-^)
 

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2010年1月15日 (金)

【テレビ録画】デフレ不況下における販売奨励金の見通し

 本日は2010年2月9日(火)です。
 昨年(2009年)末から、若干慌しいことが続き、今年(2010年)初めての書き込みとなりました。
 ますは、手帳を見ながら記憶を辿っていきます。

 この間、マスコミ取材もいくつか受けました。例えば、NHK(沖縄IT特区関連で録画放映)、日本経済新聞社(インタビュー対応)、日経BP社の『日経ビジネス』誌(マクロ経済・金融問題の資料提供)、『ネットマネー』誌(図表などデータ提供)、テレビ東京(今回の録画放映)など。

 いつものようにバックデートで記しておきます。

 テレビ東京からは、1/15(金)に「販売奨励金」に対する取材を受けました。NIKKEI NETの第17回「デフレ下の販売奨励金廃止で携帯メーカーは敵対的買収の餌食になる」(2007/10/16)を、テレビ東京のキャスターAさんがご覧になって、当日はKディレクターがカメラや音声さんと来社されました。

 ただ取材の意図として、最近何かと話題になっているJAL社などの航空会社や、ビール類の課税出荷シェアで9年ぶりにトップシェアを奪還したキリンビール社などの企業における「販売奨励金」の実態とデフレ不況下での今後のことを報じたいようでした。

 携帯端末や携帯サービスなどの初期費用を大幅に下げても契約できれば、契約期間中の通信サービス費用をある種原資として、その値下げ分を回収してしまうという、端末とサービスの一体化ビジネスモデルを堅持できている、世界では依然少数派である、わが国のテレコム分野の関係者が使う「販売奨励金」と一般業界のそれとは、幾分状況が異なります。

 ちなみに、「販売奨励金」とは、以前は(もしくはより直接的な表現としては)、一般的な呼び方として、“販売協力金”または“販売協賛金”あるいは“リベート”と呼ばれるものです。

 「メーカー→卸→小売→消費者」という流通過程のなか、各経済主体間でやり取りする価格には、それぞれ次のような価格が形成されています。
 「メーカー→卸」間で“生産価格”、「卸→小売」間で“希望卸売価格”、「小売→消費者」間で“希望小売価格”などといった具合です。

 そして、「メーカー→卸」間もしくは「メーカー→小売」間では、リベート(販売奨励金)が介在します。また、最終段階の“希望小売価格”は、必ずしもメーカーの希望額とはならず(建値制とはならず)、実際には“実勢価格”を形成しています。

 その理由としては、次のようなことが考えられます。

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〔1〕バーゲニングパワーが変わったこと。
 米国トイザラス社の日本市場参入に伴い、外国政府からの圧力もあって、1999年の「大店立地法」が成立。結果、店舗面積等の量的調整を行わない(行えない)こととなりました。従いまして、大型店舗による規模の経済性を追求したビジネスモデルが普及しました。『年次改革要望書』などで謳われている“規制緩和”の一貫です。
 このためパパママ・ストアなどの小規模店舗の経営難が生じただけではなく、メーカーと小売との力関係(交渉力=バーゲニングパワー)も変化しました。メーカー(ナショナル・ブランド)よりも大規模小売店(大型店舗などのプライベート・ブランド)の力が強くなったのです。

〔2〕オープン価格制の導入がなされたこと。
 いわゆる「大規模小売業告示」(2005年11月~)です。大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法(独禁法第2条9項)に関することで、不当な値引き、返品、買い叩き、従業員の不当使用、その他経済上の利益などのことが厳しくなりました。

〔3〕デフレ不況下にあって消費者の価格に対する眼が厳しくなったこと。
 従業員賃金が1998年頃からほぼ毎年下がり続けていますので(10年以上)、家計を支える主婦の目も当然厳しくなるというものです。
 このような状況下、上記流通過程において余計とも思えるようなマージンを捻出する余力は企業に、もはや無くなって来ているのが実態でしょう。
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 さて、〔2〕について、販売奨励金との関係で少し補足しておきましょう。
 
 販売奨励金の対売上高比率をみると、例えば、消費財のライオン社では、1995年には同比率4.3%ほどだったものが、2000年にオープン価格制を導入した前後で同比率4.5%程度まで上昇。以降2005年頃には同4.0%ほどに低下しています。

 また、量販のコジマ社では、1995年頃で同1%程度だったものが、その後徐々に増加し、最近では同2%近くになっているはずです。他方、ヤマダ社では同期間で、0.1%から0.2%ほどの微増に留まっています。

 当日の取材の夜半に放映されたキリンビール社では、同期間で、6%から徐々に増加し7%近くになった2005年頃(オープン価格制導入時期)をピークに、以降5%程度に下げています。競合のアサヒビール社では、同期間で当初6%ほどだったものが、その後ずっと上昇を続け8%近くにまで及んでいます。
 ただそれでも、同社はビール類の課税出荷シェアで9年ぶりにトップシェアを奪還されてしまったのですから、販売奨励金政策が必ずしも競争優位を築いているわけではないと思われます。

 次にデフレ不況下での、今後の販売奨励金についての見通しについて。
 1999年~2007年のデータを、まずはチェックしましょう。

 わが国の小売市場は、この間、144兆円から135兆円に縮小しています。この間のCAGR(年平均成長率)は▲0.8%です。

 ちなみに、GDPに占める消費部門は、2007年で290兆円(GDP対比58%)。従いまして、小売市場は消費部門の27%を占める大きな領域です。

 この小売市場の主な内訳として、“勝ち組”は、同期間のCAGRで9.2%の「ドラッグストア」、同6.9%の「通販」、そして同1.7%の「コンビニ」となります。
 他方、“負け組”は、同▲3.1%の「衣料」、同▲2.8%の「食料品」、そして同▲0.8%の「スーパー」となります。

(出所)GDP:内閣府「平成19年度国民経済計算」、小売市場:経済産業省「商業統計」、通販市場:日本通信販売協会(2009年8月)

 デフレとは、IMFや日銀または内閣府などが採っているような、2年間連続で消費者物価が低下し続ける現象ではありません。この現象はあくまで表層的なものであり、原因の結果に過ぎません。

 原因は、総需要が総供給に対して不足している状態にあることです。
 この意味においてデフレ不況下では、消費者の購買力が落ちていますので、よい商品やサービスが市場に出ても売れません。消費者の懐具合(所得状況)に因る、あるラインを価格が割って初めて、モノが売れるようになります。

 そのせいで、企業は売上高が減少します。しかし、何とか益だしのために、様々なコスト削減をすることになります。結果例えば、販売奨励金(リベート)の原資も細って行きます。従って、デフレ不況下では、総じて(マクロ経済面では)、販売奨励金の総額は減っているものと推察されます。

 ただデフレ不況下では、当該市場(産業)では効率化を軸とした再編が促され、勝ち組や負け組の格差が発生します。勝ち組はさらに寡占化・独占化を進めることになります。何となれば、企業の経営戦略の要諦は、自らの周りに独占状態を創ることだからです。

 業界シェアでトップ級の一握りの企業は、以前販売奨励金政策をもうまく活用することで、この寡占化・独占化を進めることも目論んでいることでしょう。従って、一部業界の一部の企業においては、販売奨励金を増額しているところもあるかも知れませんね。

 当日のKディレクターには、およそ以上のことを語りました。もちろん、その夜の番組で放送されたものは、せいぜい数分間に過ぎず、その一部が紹介されただけですが・・・・。

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2009年11月 5日 (木)

【講演】より進化するオンラインビジネスにおける企業戦略

 少し前に講演の依頼がありまして、明日金曜(2009年11月5日)、椿山荘まで行ってきます。主催者によりますと、2週間ほど前(10月16日時点)で300人を超えそうだ、と言うことで、主催者さんには何よりですね。(^-^)

=====≪quote≫
http://www.softbanktech.jp/seminar/sbtforum2009.html

開催概要
イベント    :SoftBank Technology Forum 2009
会期      :2009年11月6日(金) 受付開始12時45分
セミナーの部 :13時15分~17時15分
懇親会     :17時30分~19時30分
会場      :椿山荘 
定員      :基調講演  150名
         :各セッション 70名
         :懇親会    150名
主催      :ソフトバンク・テクノロジー株式会社

社長挨拶
及び
基調講演    :(株)日本総合研究所 理事 新保 豊氏

「より進化するオンラインビジネスにおける企業戦略」
~グローバルかつマクロ経済環境を踏まえたデフレ不況脱却後の将来への備え~


(申込定員を超えました。多数のお申込ありがとうございました。)

 デフレ不況下にあっても拡大し続けるオンラインビジネスは、従来の小売を置き換え、通販の流れを加速しています。その一方で、消費者の所得(市場購買力)が低下するという岐路に直面しているのも事実です。
 金融危機後の2番底も予想されるなか、購買力旺盛な中国市場の攻略はいかなるものか。また従来の消費ニーズ(買物、娯楽など)に加え、社会ニーズ(健康・農・医療、教育、住宅・環境など)に訴求するフロンティア領域とはどのようなものか・・・。

 講師に日本総合研究所理事 新保 豊氏を迎え、現在そして将来的に、企業のオンラインビジネスを活性化させるヒントを一緒に模索・説明していただきます。是非、ご聴講ください。
=====≪unquote≫

 ここに、当日の概要(説明内容の見出しのみ)を、次の通り、記しておきます。

≪説明内容の構成≫

【1】中国オンライン市場の攻略アプローチ

■これまでの“政治覇権国・金融帝国”化とグローバル構造下における投資と消費のメカニズム
■今後はなぜ、やはり「中国」なのか?
■中国:インターネット関連サービスのユーザー数推移は急増
■中国:インターネット関連やオンライン広告は急増
≪参考≫中国:「オンラインゲーム産業」が急成長
■日中貿易額は毎年増大傾向にあり米国よりも存在感大
▼中国の輸出競争力の背景には「人民元安」があったが早晩切り上がる
■【ユニクロ】中国での快調な現ビジネスの攻略に「通販」も
≪参考≫【セシール】「ネット通販」を中国全土に拡大
■中国:地方の消費者購買力も7,000ドル(per capita GDP)近くまで高まる
▼「化粧品」「衣服類」などの日本商品の競争力は依然高い
▼中国:“中流”コア購買層は6億人を超える(リッチ層も5,500万人)
▼中国:「富裕層」が持つ“7つの消費傾向”と“欲求分布”の研究を
▼中国:商品によっては「高所得者層」相手でも日本企業も勝てる
■日本に居ながらにして「海外ネット通販」顧客を獲得する方法
≪参考≫【WebArk社(日)】中国の富裕層向けECモール「JPTao.com」

【2】“ミクロはマクロに抗し難い”(正しいマクロ経済の理解から見えてくるもの)

■主要国GDP比較に見る日本の経済成長の低迷さは異様(15年続くデフレ不況の出口が見えない)
■通信サービスの契約者数推移も飽和感が出てきた
■最終消費支出額や小売市場および広告市場は頭打ちから減少へ
≪参考≫「インターネット」広告費のみが増加
▼「通販」など一部の市場を除き「小売全般」で減少が続く
■なぜ日本経済は低迷し続けているのか?⇒資金の量と流れが問題
▼世界経済における「二番底」の予兆
■「真のデフレギャップ」の規模が分かれば“打ち手”も分かる
▼GDP=「乗数効果」×「有効需要支出」ゆえデフレ下では「社会インフラ投資」が有効
≪参考≫過小評価の内閣府モデルであっても「公共投資」でGDPを押し上げ
▼では、「社会インフラ投資」の財源は? ⇒なぜかこの方法を無視する!
≪参考≫債務残高の対GDP比による国際比較の誤解
≪参考≫「税収の対GDP弾性値」は大きいため借金返済ペースの方が速い
▼デフレギャップ(真の財源)利用した経済対策と劇的な効果

【3】残されたフロンティアの探索とその攻略法

■デフレ不況を脱しても、欲しいモノはみな揃っている
■今後の需要喚起が期待されるのは「社会ニーズ」を満たす分野
≪参考≫大深度地下利用による「社会インフラ資本」形成(生産力を生まない投資)
≪参考≫社会インフラ整備を通じた関連サービスが今後のフロンティア
■購買力増大シナリオのもと社会ニーズ訴求でさらに伸びる「オンラインビジネス」
▼ユーザー行動プロセスとMedia 2.0上のコンテンツ/サービス
≪参考≫ユビキタス的通信環境下の利用シーン例⇒AIPESの「E」と「S」
■オンラインビジネスに向けた企業戦略(マクロ潮流の理解+新たなフロンティアの探索)
=====≪unquote≫


 たまに、この種のセミナーやシンポジウムなどもお引受しています。
 明日の結果で、何かこれはと感じるようなことがありましたら、別途備忘録を兼ね記しておきたいと思います。

 今月下旬(2009年11月25日水曜)には、弊社JRIの広報部・ブランド広報室が主催するマスコミ記者勉強会に、調査部長と私とで、簡単なレクチャーを行うことになっています。
 私への要望は、「政権交代および世界の覇権シフトとともに変容していく今後のマスメディア」と言ったテーマです。
 そう言うことですので、例えば、景気浮揚策(ムダ排除、埋蔵金などからの財源捻出・・・)、財政問題(日本は財政危機にある・・・)、環境・エネルギー問題(CO2削減問題、電気自動車・・・)、グローバル環境下における米ドル・米債券・株価などの今後の見通しなど、に関する誤った報道の仕方・見方について取り上げたいと考えています。

 また、来月前半(2009年12月10日金曜)には、日経BP社さん主催の「NTTクラウドの実像と題して、早稲田大学のある先生(客員教授)と、パネル形式での対談をやることになっています。

 来年1月中旬過ぎ(2010年1月18日月曜)には、JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)さん主催による勉強会で、レクチャーを差し上げることになっています。「日本のエレクトロニクス産業の今後の展望(グローバリズムとマクロ経済・金融環境を俯瞰した上で採るべき打ち手)」と言ったものになるでしょう。

 これらも追って、備忘録しておきたいと思います。

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2009年1月29日 (木)

【テレビ出演】商品開発サイクルの短命化をどのように見るべきか

20090226wbsict  テレビ東京『WBS』の取材が女性のディレクターから、本日(2009年1月29日)ありました。テーマは「商品開発サイクルの短命化」に関するものでした。

 このテーマであれば、多くの業界アナリストがこたえられるはずです。
 ただ、そのディレクターいわく「家電のことをお話し頂けるアナリストは結構いるのですが、同時に携帯電話のことも話せる人がいないのです。またその逆も同様なのです」と・・・

 私は情報通信産業をかなり広く見ていますので、両方 (家電+携帯電話)とも、それなりにですが、おこたえはできます。その他関係業界として、半導体、電子部品、造船を含む重電・化学系設備、機械、化学プラント、コンピューター、ソフトウェアなども・・・

 どれもこれら分野で、主に日本を代表するような大企業のクライアント向けに、経営コンサルティングを行ってきたものです。

 1つのプロジェクトだけでも、たいがい3~4ヶ月ほど(長いもので半年ほど)はかけますので、当該業界のことはそれなりに詳しくなります。
 それを毎年のように実施し、もう1991年秋~今年2009年度までで、もう18年半ほど企業マネジメントのコンサルティングに携わって来ています。
 上記のとおり、複数以上の業界に横串を入れて、眺めることができるのも、ただただ一重に「年の功」というものでしょう。


 その際に説明用に提供した資料を添付しておきます。クリックすると拡大されるはずです。

≪参考≫【図表】 商品開発サイクルの短命化
200901291_4









≪参考≫【図表】 商品開発サイクルの短命化(まとめ)
200901292_3

 私にとっては珍しく、収録映像が4~5回も同一番組中に放映されていました。(^-^)
 ただ、私が強調したかった、次の点は放映されませんでした。^^;

●「改革・進歩を通じた恩恵」 < 「まだ使える旧モデルが廃棄される損害」
 ⇒ 方向違いの経済論、ビジネスモデルではないか?

●“持続的な社会・経済”には、生活者(≠消費者)のための「生活経済」が重要
 ⇒ モノを大切にする生活文化、修理の文化(英ロールスロイス社のエピソード)
 (産業界・メーカーからの不要な高機能過分な利便性の押し付け
 (利益至上主義の大株主や負債返済を求める金融機関からの圧力

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2008年9月29日 (月)

【取材対応】日本の総合商社の現状と今後

20080929 9月29日月曜夕刻に、産経新聞大阪本社のK経済部編集委員から、電話取材がありました。

 事前に質問を受けていましたので、次のようなメモを記し、当日取材におこたえしました。

 その記事が掲載されるのかどうか分かりませんが、今般のサブプライムローン問題などにもかかわることですので、全文をここに残しておきたいと思います。

(画像は、www.neo-navi.com/2010/indus/trading.htmlから転載しました。)

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【Q1】総合商社の昨年度の決算をご覧になって、商社の収益源はどのような事業が中心になっている、とお考えですか。また、そうした収益構造は従来の姿とはどのように変化していますか。
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 金融分野での投機対象ともなった「資源・エネルギー」。
 大手6社の中で、住商を除き、純利益ベースで4割弱~5割半ばを占めており、ポートフォリオ上で突出・いびつ売上高ベースでは三菱商事と三井物産は3割超にも及んでいる。
 「資源・エネルギー」は、石油メジャーやOPECとの駆け引きや、原発ビジネスの上流を押さえるウラン資源国際カルテル企業らのパワーポリティクスの影響を大きく受ける分野。商社の決算は最近の価格高騰(需要増大)の恩恵を受けたものだ。

 なおこの背景には、特に、IAEAやノーベル財団(ゴア元大統領の平和賞授与元)、国際金融投機家らによる、“地球温暖化”防止のために不可欠であるとされる人為的なCO2排出削減には、“クリーンで低コスト”の原発推進が効果的である、また同時に排出権取引の証券化などが有効であるとの大々的な喧伝活動がある。人類は原発廃棄物を依然十分に管理できないにもかかわらず、こうした動きが息を吹き返した。

 また、世銀やIMFなどの融資を通じ、資源産出国の経済成長を“約束”した上で、結果的に負債漬けにし、返済不能な負債のかたとして産出国の資源を収奪するという、これまで何度も繰り返してきたメカニズムを前提としたビジネスであった。
 しかし早晩、このまやかしは崩れる可能性あり。商社が直接かかわってきた訳ではないが、グローバル市場での現行の仕組みに安易に乗って来たとすれば大いに問題だ。

 従って、昨年度のいびつな収益構造は、実態経済の発展に資するものに早晩改められるべきだろう。CSR(企業の社会的責任)の観点からも問題が多い。
 例えば、燃料電池(分散型発電機)やマイクロ・ガスタービン、PV(太陽光発電)などを利用したビジネスに転換することが求められる。
 また、危機的な日本の食料自給率(37%ではなく、石油等の輸入ストップ下では実質は1%ほど)の抜本的な改善のためにも、スイスのように、国内で生産できる食糧については、他国から輸入すことを放棄すべきだ。

(スイスでは、外国からの農薬も混入した農産物に比べ、自国内生産の農作物価格の方が多少高くても、有機農法などで育てられた国内農産物を購入することをよしとして、1996年の国民投票により国内農産物の育成を重視することを国民が選択。そして、経営が厳しい農家には、有機農法の程度や土地の傾斜具合などの細かな条件のもと、政府補助金をつけても保護している。スイスは金融や防衛面だけでなく、生活の基本である農業についても、極めてしたたかな国なのである。)

 石油等資源の代替として、わが国に対して、そして世界に対しても貢献できる、新「資源(メタンハイドレートなど)・エネルギー(分散型)」分野や医療・介護分野へと、重点分野としてシフトしていくべきであろう。
 

=======================================================
【Q2】商社の収益は、このところ順調に推移しているようですが、こうした好調は今後とも中長期に維持できるのでしょうか。とくに資源事業の今後の推移は。手数料収入から、投資活動への配当収益などへ変化するのでしょうか。
=======================================================

 最近の好調見通しは、中長期には続かないだろう。金融投機ビジネスと結びついた、特に一部の独占トラスト企業が仕切る石油・ウラン系エネルギー産業(資源エネルギーメジャーら)は、地球環境の持続的発展の観点から、あるいは様々な代替手段の浸透も進み、先細りの可能性あり(また、そうすべきとの反グローバリズムの潮流も強まるだろう)。 
 従って、現行の潮流に乗ったままであると、商社は今後の選択を大きく誤ることになる。

 リスクテイクの気概に欠ける、わが国メガバンク投資部門のていたらく状況が、本来必要とされる実体経済を支える産業(燃料電池を含む新「資源・エネルギー」分野、農林水産業、リサイクルビジネス)へのファイナンス(融資)を滞らせてきた。
 また、アングロサクソン系のハゲタカ投機ファンドにより、世界の資源ビジネスは、需要側に多大な浪費(高値調達や実質的な環境負荷の負担)を強いられてきた。ここに商社の投資ビジネスの役割と意義がある。従来の口銭「仲介」ビジネスからの事業「投資」ファイナンスへのシフトだ。

 適度なリスクテイクと適切なリスク管理(資金調達コストとリターンとの最適化)能力を磨くことで、商社の海外投資あって、持分法適用範囲での投資活動からの配当収益ねらいは基本。その上で、商社の当該プロジェクト評価能力と金融機関(または商社自ら)の適切な格付け審査能力を一定レベルに高めることで、プロジェクト債権の発行などを通じた、社会・経済的に実のある新ビジネスへの足がかりも得られよう。

=======================================================
【Q3】商社の役割は、経済環境とともに変化しているとおもわれますが、今後とも日本経済にとって必要な企業として発展すると考えられますか。あるいは日本企業全体の国際化のなか、商社の役割は小さくなるのでしょうか。
=======================================================

 必要かつ極めて重要。

 第1に、金融庁の規制が強過ぎるゆえに自由度を奪われた(その結果、リスクテイクをとりにくい)日本の金融機関(投資部門)の立場を、さらに代替できる意欲と能力を持てる可能性があるため。
 ただし、日本の金融機関が“協調連携”をとらされている国際金融資本のグローバル経済の支配ネットワークに与することになれば、この重要な役割は果たせない。

 第2に、日本のものづくり能力と環境エネルギー技術が世界最高水準にあることを利用した、世界の社会・経済への発展に貢献できる、最も近い位置もしくは不可欠な位置に商社があるため。
 例えば、日本メーカーの省エネ設備機器を販売する際の、中東や東南アジア等での同メーカーと現地ディストリビューターとの仲介機能などの商社の役割は依然需要がある。特に機器売りのみならず海外ソリューションズ事業を手がける大中小規模の日本企業にとって、商社が持つ情報アンテナ機能や迅速な行動力は不可欠。

 GE社、ABB社、シーメンス社など欧米グローバル企業は、アジア市場においても50~100年の歴史をもつ(中国では鄧小平の解放経済による本格的進出は1990年代から)。
 また外国語によるコミュニケーション能力と、敗戦国(アジア近隣諸国への戦争加害国)としての経験などの点ゆえに、日本メーカーにとっては困難であった、海外現地事情を踏まえたシステムビジネスやソリューションビジネスで本格的な展開をするには、当面現実的には商社の力が求められるはず。一部のメーカーを除き、残念ながら日本のメーカーにはこの能力・センスと経験はない。

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【Q4】商社の今後の生き残りの道は。どのような分野で、どのような事業が伸びていくのでしょうか。また、それぞれの商社の所属する企業グループにおける位置づけは変わっていくのでしょうか。
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 生き残るには、 (a)世界のビジネスの本質とメカニズム(マネーがすべてを動かす源泉であること、国際金融資本ないし国際金融マフィアのビヘイビアとその歴史を知るなど)を熟知していること(b)その上で、日本の国益(特に国民生活者の利益)に敵う社会・経済的な青写真を明瞭に保持できるか、だ。

 同(a)が殆どできていないため(一部の商社マンや旧東銀などは知っているが)、海外ビジネスで日本企業はほぼ常に蚊帳の外に置かれてきた。また、すべての活動の意味は進もうとするその方向性で価値が決まるにも関わらず、同(b)のマインドに偏っている(株主資本至上主義下の“もの言う株主”への配当過多など)か貧弱である(公益に資する志がない)ため、東南アジア・中東をはじめとする近隣諸国からの真の信頼が得られない〔現地企業談〕。

 具体的な生き残りの道とは、過分な金融経済を実体経済に取り戻す方向性を見極めた上での、持続的な実体経済の発展に資する投資活動と様々な異種事業者をつなぐ仲介ビジネスだ。
 地域社会に真に役立つ投資に加え、この仲介機能は依然価値がある
 英国を発祥とするかつてのマーチャントバンク(短期的利益志向が強すぎる、現代の投資銀行やプライベートファンドなど)をお手本としているようでは駄目
 木は実を見て知るべしである。サブプライムローン問題に起因する、最近の老舗企業の倒産・破綻・被吸収の動きを見るがよい。従来のビジネスモデルの根本的な欠陥が氷山の一角として露呈した。

 具体的な分野とは、
〔あ〕新「資源・エネルギー」(メタンハイドレート、水資源、燃料電池という超小型発電機やマイクロ・ガスタービン、PVなど)、
い〕世界に冠たる国民皆保険制度の維持を前提とする医療・介護分野
〔う〕石油輸入停止の場合の実質1%程度に過ぎない深刻な食糧自給率を上げるための農林水産分野(石油に頼らない新エネルギー自給体制の構築、同エネルギーを使った農林水産業の再構築、ゼネンコン・流通等分野からの過多人材の投入調整支援)、
〔え〕投機要素を排除したファイナンス(メガバンクが融資できないような案件)など。

 そのためには、政府やNGO・NPOやシンクタンク(主要シンクタンクの大連携が重要)などの後押しが不可欠。

 両替商(金融)、繊維、電力、鉄鋼、自動車、半導体・エレクトロニクス、情報などの、日本国の基幹産業史の変遷に合わせて、商社ビジネスも隆盛・浮沈があり商社の再編があった。

 この間の経済情勢や当該産業の独占性などからの影響を、財閥などの所属企業グループは受けてきた。商社の総合力を活かした競争優位獲得の観点からは、グループ企業との連携が望ましい。
 しかし、世界市場で果たすべき新たな真の役割を考えると、対グループ企業とのこれまでの帰属関係が裏目に出たり、思い切った新たな分野の開拓の自由度が狭まったりする可能性もある。

 短期的には前者との関係が重要だろうが、中長期的には後者の選択肢をとることの準備に本格的に着手しておくことが戦略的と言えるのではないか。
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2008年9月11日 (木)

【掲載】ワイヤレスブロードバンドの国際競争力強化(CIAJ月刊誌)

20080911ciaj 今年(2008年)の6月に情報通信ネットワーク産業協会からのご依頼により、次の「えくすぱーと・のれっじ・セミナー」の講師を引き受けました。

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「えくすぱーと・のれっじ・セミナー」
http://www.ciaj.or.jp/content/seminer/pdf/080610.pdf

 会員限定セミナーのお知らせ

「ワイヤレスブロードバンドの国際競争力強化に向けて」
 講師:新保 豊 氏
 (日本総合研究所 理事・主席研究員)

日 時 :2008年6月10日(火)10:00-12:00
場 所 :情報通信ネットワーク産業協会 B~E会議室
    (秀和第一浜松町ビル3 階)
    港区浜松町 2-2-12 TEL 03-5403-9358
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 その時のことは、このBlogの【講演】CIAJ主催の「ワイヤレスブロードバンドの国際競争力強化に向けて」でも概要を示しています。当日の講演資料は、CIAJの会員ページから得られるようです。

 その後、当日の講演内容を基に、『CIAJ JOURNAL』2008年9月号向けに原稿依頼がありました。
 もう随分と時期も経っていることですし、その原稿をここにも掲載しておきたいと思います。

=====≪quote≫
■「ワイヤレスブロードバンドの国際競争力強化に向けて」
(~グローバリズムに乗るのか超えるのか~)
(情報通信ネットワーク産業協会『CIAJ JOURNAL』2008年9月号)
http://www.ciaj.or.jp/content/info/journal/backnum/0809.html

日本総合研究所 理事・主席研究員 新保豊
 (2008年8月11日記)

 情報通信産業の牽引役としてワイヤレスブロードバンドの今後の趨勢に大きな関心が持たれている。それを例に国際競争力強化についての基礎的な考え方を示すにあたり、特にマクロ経済的な視点を持つことの重要さを強調しておこう。

■グローバリズムの潮流を知る

 読者の多くは、企業経営(マネジメント)や情報通信産業の行方に関心があるはずだ。CIAJのスタッフや幹部あるいは規制・政策当局の一部幹部ともなれば別だろうが、大概の日本人は産業レベルましてやマクロ経済(やパワーポリティクス)の視点で物事を捉える訓練を受けていない。従って、「経営(学)」は、「マクロ経済(学)」に規定されていることがよく分からない。前者は船、後者は大海の潮流。大海の潮流を知らずして、船の適切な舵取りは不可能なのだ。そして、船の集合体である産業の競争力の強化など所詮できない。ここが、そもそも国際競争を考える際のポイントとなる。

 世界の潮流となった“グローバリズム”の定義を確認しておこう。すなわち「古典派・新古典派経済学を基礎とし、民営化・自由化競争・規制緩和などを標榜する、ワシントン・コンセンサスに基づく国際機関(世銀、IMF、WTO)との連携を前提とする企業・銀行・政府という連合体(コーポレートクラシー)による道徳性をもたない神学」(カナダ・ブリティシュ・コロンビア大学ジョエル・ベイカン教授に加筆)と言ったところだろう。

 つまり、グローバリズムとは世界市場における覇権国(通貨基軸国)の国家戦略ないし演繹的な世界観なのだ。繰り返しながら、本気で国際競争力を強化するためには、この国家戦略の正確な理解なしには無理だ。わが国の産業界では一部の例外を除き、大企業の経営幹部であっても殆ど把握できていない。私が接する経営コンサルティングの現場からほぼ断言できよう。ただわが国の一部政治家と高級官僚はこのことをよく知っている。分かっていながらグローバリズムの潮流に押し切られている(または迎合している)のが現実と言えよう。

 MBA(経営管理修士号)を持っている読者も少なからずいるだろうが、その大半は“世界ルール”を学ぶのが精一杯の状態にあるはずだ。世界(日本を除くG6+ロシア・中国など)の常識であっても、日本の非常識ということは意外に多い。

 例えば、時価会計主義だ。〔1〕総合エネルギー取引とITビジネスを手がけた米エンロンで1990年代のうちに大々的に採用(“創造的会計(creative accounting)”を発明)され、〔2〕日本にも導入されたことで潰れなくて済んだ銀行が消えた(2001年の「竹中ショック」)。この時、独仏など欧州では2005年まで簿価主義を堅持していた。そして、〔3〕最近G7では放棄の構え(簿価会計回帰)が表明されている〔2008年4月の米FRBバーナンキ議長談〕。

 このように“世界ルール”とは都合よく変更されるものであり、それは世界の国家戦略であるがゆえ、その時々の世界の趨勢(通貨の相対的な価値など)により、覇権国にとって最も競争優位を実現できそうな(もしくは不利を被らないような)代物にとって替わられる。その意味を知らない日本企業は、悲しいかな、もう15年間以上も同ルール・戦略に翻弄され続けている。

 このような潮流にあって、ワイヤレスブロードバンドの国際競争力をいかに捉えるべきだろうか。

■モバイルWiMAX方式採用の意義

 目下、世界の「ワイヤレスブロードバンド」市場の趨勢は「LTE」(携帯電話の高速データ通信仕様の一種)が支配的だ。米国ではAT&T、べライゾンが、また欧州勢では英ボーダフォン、仏フランステレコム/オレンジ、独T-モバイル、伊テレコムイタリアがそう表明している。ただし、LTE向け電波の帯域確保の点などもあり先行きは必ずしも透明ではない。

 米スプリント・ネクステルはモバイルWiMAXを担いでいる。携帯電話市場25億加入(2006年末)に対し、2011年頃の将来見通しとしてWiMAX加入はその1.1%程度。また金額ベースでは、携帯電話端末市場11.5兆円(2005年)に対し、同WiMAX機器市場はその3.4%程度との予測(米調査会社)がなされているが、何れにしろ本丸の携帯電話と比べ、需要規模としては補完的な存在に過ぎない。

 ただ、特定エリアでのワイヤレスブロードバンド需要の喚起を通じた、“新データ通信”によるARPUへの寄与分も期待でき、通信キャリアにとって新たな次世代サービス需要の牽引役として大きな存在感はある。また、地域WiMAXを利用すれば、既存サービス(CATVなど)とのバンドリングサービスも可能となり、競争上の有力な武器になろう。

 WiMAX方式を巡って、日本の多くの通信機器・端末メーカーらが今後、グローバル市場で弾みをつけるに当たり大きな期待がもたれた。にもかかわらず、日本国内のモバイルWiMAX方式採用の仕方は、“国益”追求の視点に乏しい結果になってしまった。結局、電波の割当て対象(全国バンド)の半分(30MHz幅)を確保するに留まった。地域バンドとの干渉対策などを考慮すれば、潜在的な生産規模の2分の1未満となる。これでは国際競争の観点で、コスト競争優位を保持できるかどうかなど不安材料が残された。

 今般のモバイルWiMAX方式は実質米Intel主導下にある。今後も同様だろう。本来であれば、かつてのTRONチップ、あるいは最近のRFIDを巡る国産技術の育成と世界市場での浸透を目指すことが、ピユアな“国益”追求には最も望ましい。

 しかしながら、生産財メーカー(電子部品など)を除き、過去15年ほどの日本企業の国際事業展開は見るべきものがなかった。1986年の「前川レポート」発表以降、過度な貿易黒字減らしの中で、不適正・不自然だった金融政策(特にマネーサプライ)のもと1990年の土地・株式投機が煽られバブルは破裂。その後、金融機関は不良債権の処理などに手間取り、また情報通信系企業の多くで収益の大幅減少に悩む中、内需・内向き志向の傾向が過分に強まった。海外展開どころではなかった。

 その前に、既に日本市場に参入を果たしている海外メーカーの攻勢を通じた市場シェア低下(収益力の減退)を引き起こす可能性や、無闇な国内メーカー同士の市場再編で、外資ファンドらによる草刈り場になる可能性は小さくない。

 たとえWiMAXなる通信方式を採用するにしても、例えば、同通信方式を利用した、原丈人氏(DEFTA会長)の言う“パーペイシブ”な端末の造り(小型低消費電力で使っていることを感じさせない)が期待される。そうした独自性さえ堅持していれば、何でも日本発でなくともよい。ただその際、グローバルビジネスの基本は、OS(基本ソフト)であれ端末であれ、コスト競争力が競争力全体を左右することは肝に銘じなくてはならない。

 言い換えると、“規模の経済性”(量産効果)が十分発揮できることが基本だ。この点、日本の生産財メーカーは得意(中間需要を予測した上での効率的な体制を確立済み)なのだが、最終需要財メーカーではこの点が難しい。最終需要が中間需要に比し読みにくいからである。従って、今後は需要を“読む”よりも、需要を“創造していく”(仕掛けていく)ことが求められる。

■グローバル市場に向けた国内産業育成

 ところで、日本の情報通信(ICT)産業の国際競争力は本当に低いのだろうか。「わが国の携帯電話端末メーカーの国際競争力は低く、それは“ガラパゴス列島”での内向き市場でメーカーがあくせくしているからだ」などの声がよく聞かれる。半分当たっているがもう半分は外れている。私は総務省の「ICT国際競争力」関連の研究会などにも関わっており、日頃からそう感じている。

 明確に言えることは、「国際競争力生産財と最終需要財とでは国際競争力は異なる」ということだ。携帯電話1台あたりに搭載される電子部品数は500~700個もあり、日本メーカーはそのおよそ6割も世界に供給しているのだ。

 実際、電子情報技術産業協会の資料「電子情報産業の世界生産動向調査」(2007年3月)を見ると、わが国の生産財の国際競争力は極めて高い。電子部品(生産財)では依然世界の49%にも及ぶ。ここで日本のGDP約5兆ドルが世界のGDP合計47兆ドルに占める割合は9.3%であるため、この5倍超の存在感があり、国際競争力は絶大だ。ただし過去と比べ“低下”傾向にあるのは事実だろう。


【図表】 世界および日本における電子情報産業における生産額内訳(2005年)
(クリックすると拡大します)
20080911caij
(注)
☆「有線通信機器」:電話、FAX、交換機、ルータ、ハブなど。
☆「電子応用装置」:X線装置、超音波応用装置、産業用テレビジョン装置など。
☆「事務機」:「主に複写機」で、デジタル複合機等のプリンタ機能を持つ製品は、情報端末の「プリンタ側」に含まれている。
☆「内訳と合計値」:四捨五入の関係で合わない場合がある。
(出所)電子情報技術産業協会(JEITA)「電子情報産業の世界生産動向調査(第1回)」(2007年3月)を基に日本総合研究所作成

 一方、電子情報産業において日本がこの比率を下回っているのは、ソフトウェアとパソコンの2分野のみであり、弱いとされる「携帯電話」(最終需要財)でさえ同17%はある。前述のガラパゴス現象を象徴する「携帯電話のシェア4.7%」(=5,230万台÷11億2,550万台)というのは、出荷台数のことだ。端末価格は世界平均の2.7倍(=40,426円÷14,935円)で購入されており(それだけ価値があるとみなされ)、金額ベースではそこそこの存在感はある。

 以上、総じてICT分野で「国際競争力が低い」とするのは見当違いであり、意図的な喧伝・情報操作さえ想起させる。この動きの背景にある本質を見誤ることにもなりかねない。法人税率を下げ、その分を消費税値上げで代替する動きにつながるとすれば用心が必要である。

■国際競争力の強化

 それでも当面、企業の成長や国富増大の観点からはグローバル展開が不可避だ。安倍政権以降、特に強調されている「経済成長」とは、突き詰めれば金融機関への「負債の返済」だからだ。日銀を起点とし市中銀行が創った通貨総額(マネーサプライ)に対する、金利支払い分だけのGDP成長が必要とされる金融メカニズムが、現下の経済社会システムに組み込まれている以上、金利よりも高めの(例えば年率で3%前後の)「持続的な成長」が今後も求められることとなる。つまり、企業も家計(消費者)も、借り入れ返済のために成長し働いているのが正しい理解なのだが、世相の慌しさの中にあって通常このことを意識する人々はまずいない。当然、政府もマスコミもこのようなことには触れない。

 輸出志向の企業などへ有利になるよう実効法人税率を下げようと努力している政府は、このメカニズムに奉仕する立場となる。従って、「コーポレートクラシー」にあっては、この世で一番パワーがあるのは①(国際)金融機関であり、次に②多国籍企業、そして③政府の順となる。この日本の“非常識”(序列・傾向)はアングロサクソン諸国では際立っている。グローバリズムを目指すということは、この並び順に経済社会を「構造改革」することに他ならない。このことにわが国の政策・規制当局も日夜邁進している。

 また成長の源泉とは、適度なマネー流通のもとの、実物経済取引での購買力の増加にある。今や「実体経済」(2004年の世界の全貿易取引額9.3兆ドル)は、その83倍にも及ぶ「金融経済」(同年の外為・店頭デリバティブ取引額775兆ドル)に振り回されている。世界のGDP(47兆ドル)との比でも16倍余にもなる。デリバティブ(=投機)マネーが、サブプライムローン問題で株式への投資リターンの最近の悪化を嫌い、その行き場として穀物や石油の高騰をもたらしている。グローバル市場の健全な発展のためには、この影響を減じていくことが不可欠だ。この前提なしに国際競争力を問うたとしても、その影響の甚大さに重要なポイントが隠れてしまう。

 国際競争力の強化とは、グローバル市場構造でのよきポジションの確保に他ならない。グローバル市場とは、世界が供給側と需要側の2者のみであるかのような単一市場につくり変えられたものである。そこではマクロ経済では無視しえない、余計な商取引上の障壁は存在してはならない。商取引や会計上のルール(株主価値=企業価値といった見方など)も“世界標準”なのだ。MBA流の経営を世界中で学んでいるのも、当人は気付かなくとも、実はこのルールやその共通言語を習得するためにある。

 言い換えると、中国やインドなどBRICsでの低労賃による世界の工場機能を担う供給者と、企画・設計などの主機能を担い消費が中心の需要者(G7など)との間で、商取引が効率的に進むよう、つまり規模や範囲の経済性が最大限効いてくるような仕組みに、日本企業がいかに順応できるかにかかっている。前述の古典派・新古典派経済学が唯一対象にしてきた、「需給は常に均衡している」とする“ミクロ経済”の世界で話は閉じてしまう。

 従って、この世界では最も効率的な企業または国のみが勝者となりえる。勝ち組と負け組がはっきり分かれる冷徹な仕組み・構造となっている。グローバリズムに“乗る”とは、この容赦ない世界に日本企業が本格的に足を踏み入れることに他ならない。ここへ軸足をたとへシフトしていくにしても、競争相手のルール(手の平)に乗っている以上は、どうしても有利な戦いはできない。

 グローバリズムとは切り離して考えることはできない、最近流行りの「オープンイノベーション戦略」然りだ。例えば、a)Intel、b)Microsoft、c)Qualcom、d)Walmartなど勝ち組企業による、相手国政府へのロビイング・設計・流通・マーケティング・販売・オペレーションなどでのイノベーションの仕方がその典型だ。
 
 同戦略の本質は、a)CPU、b)ソフトウェア、c)無線、d)RFID(ICタグ)などの自前コア技術の確立であり、製造や販売網では、グローバルな資源(ヒト・モノ・スキル)を“有効活用”することが基本となる。そしてこの資源は、政治・軍事力を背景にした、供給側の国々からの安価で適度にスキルフルな労働力の獲得、立地条件の確保に加え、国際金融機関との連携などを通じて得られるものである。かつてのコロニアリズムの延長にあるビジネスモデルなのだ。このことが日本企業にできるだろうか。

 たとえ模倣するにしても、そのノウハウやパワーの獲得は一朝一夕では困難だ。ならば別の手立てを思慮すべきだ。第1段階として、生産財ビジネスモデルで規模の経済性を追求しつつ、成長市場や互角の勝負が可能な市場で、既に勝ち組である日本の海外生産財メーカーへの生産委託などを視野に入れることも手だろう。また第2段階では、将来需要の先取り、ないし需要創造を行う。例えば、前述のパーペイシブな端末とサービスとの連動により、模倣困難要素を自社のビジネスモデルに組み込む。紙面の都合で詳述できないが、この需要創造の段階では“多産多死”的なトライ&エラーを、国内外の関係者を加え、いかに加速的に行える仕組みを構築できるかがポイントだ。

 そのためにも、近隣国(韓・中・露)と東南アジアに加え、インドや中東・トルコまで含めた新アジア・ユーラシア圏構想まで含めた、今の“世界ルール”とは一線を画したグランドデザインの構築が不可欠だろう。当面はアングロサクソン型グローバリズムへの発展的牽制・超克こそが、真の国際競争力強化につながるに違いない。

=====≪unquote≫

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2008年2月25日 (月)

【一言】米ヤフー買収を巡る株主の正体

20080225 米国ではYahoo! とMicrosoftの攻防を巡る、様々なステイクホルダー(株主、経営陣、従業員、地域住民、規制当局ら)の思惑が交錯しているようです。

 このBlogでは、この問題(ケース)において、他の記事では殆ど触れられていない視点を、簡単に示したいと思います。

 少し?この問題の本題からは、脱線します。あくまでこのケースを例に挙げているだけですので。

(青の太字下線は、私が付しました。画像は次から転載しました。)http://file.activityofgaia.blog.shinobi.jp/258d17e2.jpg

=====≪quote≫
米ヤフー、マイクロソフトの買収提案めぐり株主から提訴される
文:Ina Fried(CNET News.com)
翻訳校正:編集部  2008/02/25 11:14

http://japan.zdnet.com/news/ir/story/0,2000056187,20368044,00.htm?ref=rss

 米国時間2月22日付けの報道によると、デトロイトにある2つの年金基金が、デラウェア衡平法裁判所で米Yahooに対する株主代表訴訟を起こしたという。

 今回の訴えは、デトロイトの公務員向け年金基金と同じくデトロイトの消防士および警察官を対象とする年金基金によって起こされた。両基金は、Microsoftが当初2月1日に発表した446億ドルでの買収提案をYahooが拒否したとして、同社を非難している。

 MarketWatchによると、今回の裁判で原告らは「非敵対的で、財政面においても利益をもたらし、交渉を通じて条件が上積みされる可能性のある提案がなされている中、Yahooの取締役会は、その決定が株主の選択肢を奪うことになる場合、合法的な買収提案に対していつまでも『ノー』と言い続けることはできない」と述べている。

 2月に入り、Wayne County Employees Retirement Systemがミシガン州の裁判所でYahooに対する訴訟を起こしている。

 これとは別に、Microsoftは22日、「Windows」と「Windows Live」の両部門を統括するKevin Johnson氏が従業員宛てに送った電子メールのコピーを公開した。

 Johnson氏はその電子メールの中で、今回の提案を「最大限かつ公平」なものであるとするMicrosoftの主張を繰り返し述べている。

 Johnson氏は、「Yahooは当社の提案を拒否する内容の声明を発表したが、最大限かつ公平な提案を行ったというわれわれの信念は今後も変わらない」と述べている。「両社の統合がもたらす価値、戦略および財政的な利点について、Yahooの取締役会、経営陣、株主、従業員たちと建設的な話し合いができることを期待している」(Johnson氏)

 同氏はさらに、両社の合併をめぐり浮かび上がっている主要な疑問点の多くについても、一般事項だけではあるが回答している。仮に買収が完了した場合、MicrosoftとYahooのどの製品が維持されるのかという質問については回答を避けた。

 「MicrosoftとYahooのいずれも優れたブランド力と技術を有する。Yahooは強力な消費者製品を擁する。われわれは消費者に対しYahooブランドを中心に据えた統合製品および統合サービスを提供していくことに力を注ぐ」(Johnson氏)

 一方でJohnson氏は、「われわれが統合製品で、ブランドと技術のどの特性を使用するかを言うのは時期尚早である」とするMicrosoftの主張を繰り返した。同氏は、そうした決定は両社の首脳陣により構成される統合チームによって下されることになるだろう、と述べている。
=====≪unquote≫

■私の見方:
(ビジネスパーソンも知っておきたいマクロ経済学的な視点)

◆「2つの年金基金が米Yahooに株主代表訴訟を起こした」:

 この「年金基金」とは、米Yahoo! の大株主のようです。その大株主が「株主代表訴訟」を起こしました。
 米国流の“株主資本主義”に慣れていない読者におかれては、ちょいと奇異に感じられたかも知れません。そう感じる方は、本来常識的でまともな考え方だと私も思うのですけれど。。。
 つまり、「今般の買収ケースは、Yahoo! とMicrosoftとの経営陣だけの問題なのではないのですか」と。

 “株主資本主義”の世界で、一番偉いのは「株主」様なのです。たとえ、両社の経営のこと、事業のこと、あるいは統合製品やサービスのことなど、まったく知らなくても構いません。

 「えぇ!」と思われるかも知れませんね。ステイクホルダー(利害関係者)には、上述の通り、株主、経営陣、従業員、地域住民、規制当局らがいます。

 両社ともベンチャー企業で、特に株式公開前の未上場だった頃、実質的なステイクホルダーは、経営陣(経営トップのジェリー・ヤン氏やビル・ゲイツ氏、彼らの創業メンバー)であり、従業員であったはずです。地域に根ざした企業であれば、地域住民もそうです。住民にも利害が及び、その企業の行動は雇用を生み出す点で住民から期待されるか、環境問題を誘発するような行動には監視下にも置かれることでしょうから。

成長のため負債をもつことで企業理念は変容する

 しかし、成長資金が不可欠になり、株式公開をしたとたんに、様子は一変するのです。企業はその時点で、大株主からの意向を第一に考えねばなりません。ましてや、いま両社は押しも押されぬ大企業です。

 その意向とは、一切の無駄なく(たとえCSR=企業の社会的責任を強調するにしても、少なくとも中長期的には)、結果として株主利益を上げることです。この行動こそが、ミルトン・フリードマン(新自由主義経済学派=シカゴ学派の重鎮)も言う“道徳的な義務”なのです。「株主のために、できるだけ多額の金を儲けること」が、企業の義務なのです。

 この当たりのことは、ジョエル・ベイカン(カナダのブリティッシュ・コロンビア大学法学部教授・弁護士)の『ザ・コーポレーション』(2004年11月)や関連サイトやマイケル・ムーア映画監督の関連映像に描かれています。

 ちなみに、このような利益第一主義の考え方に反対であった(違和感を覚えていた)、ヘンリー・フォード(T型システムで成功したフォード自動車の創業者)の時代の、1916年の判決における「企業の最高利害関係者」原則では、フォード氏のやり方(従業員に相場よりもずっと高い給料を支払い、顧客には毎年T型フォードを値下げして提供)は、市場からは(裁判所からも)受入れられず、言語道断だったのです。

(ちなみに、ヘンリー・フォード氏は、株式市場の本質、そして、その市場の背後で、自身の利益につながるパラダイムづくりに奔走していた、当時の金融資本家や政府指導者らの野心をよく見抜いていた人物だったようです。)

◆「財政面においても利益をもたらす」、「合法的な買収提案」:

  そうです。「財政面においても利益をもたらし」さえすればよいのです。そうであれば、1916年以降、「合法的な買収提案」となるのです。これが、今も当時も変わらない“株主資本主義”の本質と、その下に置かれた企業(The corporation)のDNAなのです。

 フォード氏のやり方のほうが常識的で良心的だと思われるのですが、このような温情主義・良識は、“株主資本主義”の中では非常識・非道徳になるのです。(しかし、どうみても、どこかがおかしい、と思われませんか?)

 このようなビジネスの土壌を考えれば、「年金基金」なる大株主が自分たちの利益のために、新たな組織体(例えば、Yahoo! がMicrosoftに買収され組み入れられること)となり、より利益を稼ぐよう運営されることは“正しい”のです。

独占、雇用、外部性の問題

 しかし、ここには幾つかの盲点があります。例えば、①独占の問題②雇用の問題③外部性の問題などが生じる可能性があります(または高いです)。


 これら問題について、簡単に示しましょう。
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①独占の問題:
 
ただでさえMicrosoftの事業は独占性がありますので、Yahoo! の経営資源(ブランド、コンテンツ、顧客)を統合することで、その比が高まることは一目瞭然ではないでしょうか。
 独占問題が反トラスト法上、仮に回避されたとしても、業界再編の引き金を引くことになるでしょう。

②雇用の問題:
 Yahoo! はおろか、Microsoftの従業員においても、やがてリストラ(従業員の人員削減)の嵐が吹き荒れる可能性があります。あくまで可能性ですが。。。
 顧客が失われることによる、マクロ経済(景気)への影響も軽微ではないでしょう。

③外部性の問題:
 「外部性」とは、統合によって、他人や社会に及ぼされるコスト・ツケが発生しても、より株主に利益をもたらされるようになれば、それがすべてに優先されることです。古典派・新古典派経済学者が発明した冷徹な概念と言えましょう。
 さらに「有限責任制」という、株主になっても限られた損失(最大で投資額相当)を覚悟しさえすれば、利益が無限に享受できる制度(1851年の英国で報告)のもと、外部性という自身の都合により、コスト負担を外部に転じることで、一層の利益追求ができるようになりました。
=============

 この③の問題は、上記①の独占が志向されることで、消費者への価格上昇(転嫁)が生じても、あるいは②の雇用喪失が地元の従業員に及んでも、企業(≒株主)はまったく意に介さない、ということにもつながります。

 通常は、その企業が地球環境を汚染したり、スポーツシューズやシャツの生産コストを極限まで下げるため、開発途上国の国民にそのコスト負担を強いたりで発生する場合が多いものです。幸い、Yahoo! とMicrosoftにおいては、このようなローテクに見られる業種での、外部性問題はなさそうに見えますが。。。

 以上、Yahoo! とMicrosoftの買収合戦を通じ、“株主資本主義”の本質と、その下に置かれた企業の行動について考えてみました。

 上記①~③の問題よりも、「株主」の利益を最優先してとらえるパラダイムそのものにこそ、本当の問題が横たわっていると言えましょう。そろそろ、“株主資本主義”の意味を再考すべき時が来ているのではないかと思われます。
 

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