カテゴリー「4.企業経営(戦略、マネジメント手法など)」の投稿

2009年11月 5日 (木)

【講演】より進化するオンラインビジネスにおける企業戦略

 少し前に講演の依頼がありまして、明日金曜(2009年11月5日)、椿山荘まで行ってきます。主催者によりますと、2週間ほど前(10月16日時点)で300人を超えそうだ、と言うことで、主催者さんには何よりですね。(^-^)

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http://www.softbanktech.jp/seminar/sbtforum2009.html

開催概要
イベント    :SoftBank Technology Forum 2009
会期      :2009年11月6日(金) 受付開始12時45分
セミナーの部 :13時15分~17時15分
懇親会     :17時30分~19時30分
会場      :椿山荘 
定員      :基調講演  150名
         :各セッション 70名
         :懇親会    150名
主催      :ソフトバンク・テクノロジー株式会社

社長挨拶
及び
基調講演    :(株)日本総合研究所 理事 新保 豊氏

「より進化するオンラインビジネスにおける企業戦略」
~グローバルかつマクロ経済環境を踏まえたデフレ不況脱却後の将来への備え~


(申込定員を超えました。多数のお申込ありがとうございました。)

 デフレ不況下にあっても拡大し続けるオンラインビジネスは、従来の小売を置き換え、通販の流れを加速しています。その一方で、消費者の所得(市場購買力)が低下するという岐路に直面しているのも事実です。
 金融危機後の2番底も予想されるなか、購買力旺盛な中国市場の攻略はいかなるものか。また従来の消費ニーズ(買物、娯楽など)に加え、社会ニーズ(健康・農・医療、教育、住宅・環境など)に訴求するフロンティア領域とはどのようなものか・・・。

 講師に日本総合研究所理事 新保 豊氏を迎え、現在そして将来的に、企業のオンラインビジネスを活性化させるヒントを一緒に模索・説明していただきます。是非、ご聴講ください。
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 ここに、当日の概要(説明内容の見出しのみ)を、次の通り、記しておきます。

≪説明内容の構成≫

【1】中国オンライン市場の攻略アプローチ

■これまでの“政治覇権国・金融帝国”化とグローバル構造下における投資と消費のメカニズム
■今後はなぜ、やはり「中国」なのか?
■中国:インターネット関連サービスのユーザー数推移は急増
■中国:インターネット関連やオンライン広告は急増
≪参考≫中国:「オンラインゲーム産業」が急成長
■日中貿易額は毎年増大傾向にあり米国よりも存在感大
▼中国の輸出競争力の背景には「人民元安」があったが早晩切り上がる
■【ユニクロ】中国での快調な現ビジネスの攻略に「通販」も
≪参考≫【セシール】「ネット通販」を中国全土に拡大
■中国:地方の消費者購買力も7,000ドル(per capita GDP)近くまで高まる
▼「化粧品」「衣服類」などの日本商品の競争力は依然高い
▼中国:“中流”コア購買層は6億人を超える(リッチ層も5,500万人)
▼中国:「富裕層」が持つ“7つの消費傾向”と“欲求分布”の研究を
▼中国:商品によっては「高所得者層」相手でも日本企業も勝てる
■日本に居ながらにして「海外ネット通販」顧客を獲得する方法
≪参考≫【WebArk社(日)】中国の富裕層向けECモール「JPTao.com」

【2】“ミクロはマクロに抗し難い”(正しいマクロ経済の理解から見えてくるもの)

■主要国GDP比較に見る日本の経済成長の低迷さは異様(15年続くデフレ不況の出口が見えない)
■通信サービスの契約者数推移も飽和感が出てきた
■最終消費支出額や小売市場および広告市場は頭打ちから減少へ
≪参考≫「インターネット」広告費のみが増加
▼「通販」など一部の市場を除き「小売全般」で減少が続く
■なぜ日本経済は低迷し続けているのか?⇒資金の量と流れが問題
▼世界経済における「二番底」の予兆
■「真のデフレギャップ」の規模が分かれば“打ち手”も分かる
▼GDP=「乗数効果」×「有効需要支出」ゆえデフレ下では「社会インフラ投資」が有効
≪参考≫過小評価の内閣府モデルであっても「公共投資」でGDPを押し上げ
▼では、「社会インフラ投資」の財源は? ⇒なぜかこの方法を無視する!
≪参考≫債務残高の対GDP比による国際比較の誤解
≪参考≫「税収の対GDP弾性値」は大きいため借金返済ペースの方が速い
▼デフレギャップ(真の財源)利用した経済対策と劇的な効果

【3】残されたフロンティアの探索とその攻略法

■デフレ不況を脱しても、欲しいモノはみな揃っている
■今後の需要喚起が期待されるのは「社会ニーズ」を満たす分野
≪参考≫大深度地下利用による「社会インフラ資本」形成(生産力を生まない投資)
≪参考≫社会インフラ整備を通じた関連サービスが今後のフロンティア
■購買力増大シナリオのもと社会ニーズ訴求でさらに伸びる「オンラインビジネス」
▼ユーザー行動プロセスとMedia 2.0上のコンテンツ/サービス
≪参考≫ユビキタス的通信環境下の利用シーン例⇒AIPESの「E」と「S」
■オンラインビジネスに向けた企業戦略(マクロ潮流の理解+新たなフロンティアの探索)
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 たまに、この種のセミナーやシンポジウムなどもお引受しています。
 明日の結果で、何かこれはと感じるようなことがありましたら、別途備忘録を兼ね記しておきたいと思います。

 今月下旬(2009年11月25日水曜)には、弊社JRIの広報部・ブランド広報室が主催するマスコミ記者勉強会に、調査部長と私とで、簡単なレクチャーを行うことになっています。
 私への要望は、「政権交代および世界の覇権シフトとともに変容していく今後のマスメディア」と言ったテーマです。
 そう言うことですので、例えば、景気浮揚策(ムダ排除、埋蔵金などからの財源捻出・・・)、財政問題(日本は財政危機にある・・・)、環境・エネルギー問題(CO2削減問題、電気自動車・・・)、グローバル環境下における米ドル・米債券・株価などの今後の見通しなど、に関する誤った報道の仕方・見方について取り上げたいと考えています。

 また、来月前半(2009年12月10日金曜)には、日経BP社さん主催の「NTTクラウドの実像と題して、早稲田大学のある先生(客員教授)と、パネル形式での対談をやることになっています。

 来年1月中旬過ぎ(2010年1月18日月曜)には、JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)さん主催による勉強会で、レクチャーを差し上げることになっています。「日本のエレクトロニクス産業の今後の展望(グローバリズムとマクロ経済・金融環境を俯瞰した上で採るべき打ち手)」と言ったものになるでしょう。

 これらも追って、備忘録しておきたいと思います。

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2009年1月29日 (木)

【テレビ出演】商品開発サイクルの短命化をどのように見るべきか

20090226wbsict  テレビ東京『WBS』の取材が女性のディレクターから、本日(2009年1月29日)ありました。テーマは「商品開発サイクルの短命化」に関するものでした。

 このテーマであれば、多くの業界アナリストがこたえられるはずです。
 ただ、そのディレクターいわく「家電のことをお話し頂けるアナリストは結構いるのですが、同時に携帯電話のことも話せる人がいないのです。またその逆も同様なのです」と・・・

 私は情報通信産業をかなり広く見ていますので、両方 (家電+携帯電話)とも、それなりにですが、おこたえはできます。その他関係業界として、半導体、電子部品、造船を含む重電・化学系設備、機械、化学プラント、コンピューター、ソフトウェアなども・・・

 どれもこれら分野で、主に日本を代表するような大企業のクライアント向けに、経営コンサルティングを行ってきたものです。

 1つのプロジェクトだけでも、たいがい3~4ヶ月ほど(長いもので半年ほど)はかけますので、当該業界のことはそれなりに詳しくなります。
 それを毎年のように実施し、もう1991年秋~今年2009年度までで、もう18年半ほど企業マネジメントのコンサルティングに携わって来ています。
 上記のとおり、複数以上の業界に横串を入れて、眺めることができるのも、ただただ一重に「年の功」というものでしょう。


 その際に説明用に提供した資料を添付しておきます。クリックすると拡大されるはずです。

≪参考≫【図表】 商品開発サイクルの短命化
200901291_4









≪参考≫【図表】 商品開発サイクルの短命化(まとめ)
200901292_3

 私にとっては珍しく、収録映像が4~5回も同一番組中に放映されていました。(^-^)
 ただ、私が強調したかった、次の点は放映されませんでした。^^;

●「改革・進歩を通じた恩恵」 < 「まだ使える旧モデルが廃棄される損害」
 ⇒ 方向違いの経済論、ビジネスモデルではないか?

●“持続的な社会・経済”には、生活者(≠消費者)のための「生活経済」が重要
 ⇒ モノを大切にする生活文化、修理の文化(英ロールスロイス社のエピソード)
 (産業界・メーカーからの不要な高機能過分な利便性の押し付け
 (利益至上主義の大株主や負債返済を求める金融機関からの圧力

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2008年9月29日 (月)

【取材対応】日本の総合商社の現状と今後

20080929 9月29日月曜夕刻に、産経新聞大阪本社のK経済部編集委員から、電話取材がありました。

 事前に質問を受けていましたので、次のようなメモを記し、当日取材におこたえしました。

 その記事が掲載されるのかどうか分かりませんが、今般のサブプライムローン問題などにもかかわることですので、全文をここに残しておきたいと思います。

(画像は、www.neo-navi.com/2010/indus/trading.htmlから転載しました。)

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【Q1】総合商社の昨年度の決算をご覧になって、商社の収益源はどのような事業が中心になっている、とお考えですか。また、そうした収益構造は従来の姿とはどのように変化していますか。
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 金融分野での投機対象ともなった「資源・エネルギー」。
 大手6社の中で、住商を除き、純利益ベースで4割弱~5割半ばを占めており、ポートフォリオ上で突出・いびつ売上高ベースでは三菱商事と三井物産は3割超にも及んでいる。
 「資源・エネルギー」は、石油メジャーやOPECとの駆け引きや、原発ビジネスの上流を押さえるウラン資源国際カルテル企業らのパワーポリティクスの影響を大きく受ける分野。商社の決算は最近の価格高騰(需要増大)の恩恵を受けたものだ。

 なおこの背景には、特に、IAEAやノーベル財団(ゴア元大統領の平和賞授与元)、国際金融投機家らによる、“地球温暖化”防止のために不可欠であるとされる人為的なCO2排出削減には、“クリーンで低コスト”の原発推進が効果的である、また同時に排出権取引の証券化などが有効であるとの大々的な喧伝活動がある。人類は原発廃棄物を依然十分に管理できないにもかかわらず、こうした動きが息を吹き返した。

 また、世銀やIMFなどの融資を通じ、資源産出国の経済成長を“約束”した上で、結果的に負債漬けにし、返済不能な負債のかたとして産出国の資源を収奪するという、これまで何度も繰り返してきたメカニズムを前提としたビジネスであった。
 しかし早晩、このまやかしは崩れる可能性あり。商社が直接かかわってきた訳ではないが、グローバル市場での現行の仕組みに安易に乗って来たとすれば大いに問題だ。

 従って、昨年度のいびつな収益構造は、実態経済の発展に資するものに早晩改められるべきだろう。CSR(企業の社会的責任)の観点からも問題が多い。
 例えば、燃料電池(分散型発電機)やマイクロ・ガスタービン、PV(太陽光発電)などを利用したビジネスに転換することが求められる。
 また、危機的な日本の食料自給率(37%ではなく、石油等の輸入ストップ下では実質は1%ほど)の抜本的な改善のためにも、スイスのように、国内で生産できる食糧については、他国から輸入すことを放棄すべきだ。

(スイスでは、外国からの農薬も混入した農産物に比べ、自国内生産の農作物価格の方が多少高くても、有機農法などで育てられた国内農産物を購入することをよしとして、1996年の国民投票により国内農産物の育成を重視することを国民が選択。そして、経営が厳しい農家には、有機農法の程度や土地の傾斜具合などの細かな条件のもと、政府補助金をつけても保護している。スイスは金融や防衛面だけでなく、生活の基本である農業についても、極めてしたたかな国なのである。)

 石油等資源の代替として、わが国に対して、そして世界に対しても貢献できる、新「資源(メタンハイドレートなど)・エネルギー(分散型)」分野や医療・介護分野へと、重点分野としてシフトしていくべきであろう。
 

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【Q2】商社の収益は、このところ順調に推移しているようですが、こうした好調は今後とも中長期に維持できるのでしょうか。とくに資源事業の今後の推移は。手数料収入から、投資活動への配当収益などへ変化するのでしょうか。
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 最近の好調見通しは、中長期には続かないだろう。金融投機ビジネスと結びついた、特に一部の独占トラスト企業が仕切る石油・ウラン系エネルギー産業(資源エネルギーメジャーら)は、地球環境の持続的発展の観点から、あるいは様々な代替手段の浸透も進み、先細りの可能性あり(また、そうすべきとの反グローバリズムの潮流も強まるだろう)。 
 従って、現行の潮流に乗ったままであると、商社は今後の選択を大きく誤ることになる。

 リスクテイクの気概に欠ける、わが国メガバンク投資部門のていたらく状況が、本来必要とされる実体経済を支える産業(燃料電池を含む新「資源・エネルギー」分野、農林水産業、リサイクルビジネス)へのファイナンス(融資)を滞らせてきた。
 また、アングロサクソン系のハゲタカ投機ファンドにより、世界の資源ビジネスは、需要側に多大な浪費(高値調達や実質的な環境負荷の負担)を強いられてきた。ここに商社の投資ビジネスの役割と意義がある。従来の口銭「仲介」ビジネスからの事業「投資」ファイナンスへのシフトだ。

 適度なリスクテイクと適切なリスク管理(資金調達コストとリターンとの最適化)能力を磨くことで、商社の海外投資あって、持分法適用範囲での投資活動からの配当収益ねらいは基本。その上で、商社の当該プロジェクト評価能力と金融機関(または商社自ら)の適切な格付け審査能力を一定レベルに高めることで、プロジェクト債権の発行などを通じた、社会・経済的に実のある新ビジネスへの足がかりも得られよう。

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【Q3】商社の役割は、経済環境とともに変化しているとおもわれますが、今後とも日本経済にとって必要な企業として発展すると考えられますか。あるいは日本企業全体の国際化のなか、商社の役割は小さくなるのでしょうか。
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 必要かつ極めて重要。

 第1に、金融庁の規制が強過ぎるゆえに自由度を奪われた(その結果、リスクテイクをとりにくい)日本の金融機関(投資部門)の立場を、さらに代替できる意欲と能力を持てる可能性があるため。
 ただし、日本の金融機関が“協調連携”をとらされている国際金融資本のグローバル経済の支配ネットワークに与することになれば、この重要な役割は果たせない。

 第2に、日本のものづくり能力と環境エネルギー技術が世界最高水準にあることを利用した、世界の社会・経済への発展に貢献できる、最も近い位置もしくは不可欠な位置に商社があるため。
 例えば、日本メーカーの省エネ設備機器を販売する際の、中東や東南アジア等での同メーカーと現地ディストリビューターとの仲介機能などの商社の役割は依然需要がある。特に機器売りのみならず海外ソリューションズ事業を手がける大中小規模の日本企業にとって、商社が持つ情報アンテナ機能や迅速な行動力は不可欠。

 GE社、ABB社、シーメンス社など欧米グローバル企業は、アジア市場においても50~100年の歴史をもつ(中国では鄧小平の解放経済による本格的進出は1990年代から)。
 また外国語によるコミュニケーション能力と、敗戦国(アジア近隣諸国への戦争加害国)としての経験などの点ゆえに、日本メーカーにとっては困難であった、海外現地事情を踏まえたシステムビジネスやソリューションビジネスで本格的な展開をするには、当面現実的には商社の力が求められるはず。一部のメーカーを除き、残念ながら日本のメーカーにはこの能力・センスと経験はない。

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【Q4】商社の今後の生き残りの道は。どのような分野で、どのような事業が伸びていくのでしょうか。また、それぞれの商社の所属する企業グループにおける位置づけは変わっていくのでしょうか。
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 生き残るには、 (a)世界のビジネスの本質とメカニズム(マネーがすべてを動かす源泉であること、国際金融資本ないし国際金融マフィアのビヘイビアとその歴史を知るなど)を熟知していること(b)その上で、日本の国益(特に国民生活者の利益)に敵う社会・経済的な青写真を明瞭に保持できるか、だ。

 同(a)が殆どできていないため(一部の商社マンや旧東銀などは知っているが)、海外ビジネスで日本企業はほぼ常に蚊帳の外に置かれてきた。また、すべての活動の意味は進もうとするその方向性で価値が決まるにも関わらず、同(b)のマインドに偏っている(株主資本至上主義下の“もの言う株主”への配当過多など)か貧弱である(公益に資する志がない)ため、東南アジア・中東をはじめとする近隣諸国からの真の信頼が得られない〔現地企業談〕。

 具体的な生き残りの道とは、過分な金融経済を実体経済に取り戻す方向性を見極めた上での、持続的な実体経済の発展に資する投資活動と様々な異種事業者をつなぐ仲介ビジネスだ。
 地域社会に真に役立つ投資に加え、この仲介機能は依然価値がある
 英国を発祥とするかつてのマーチャントバンク(短期的利益志向が強すぎる、現代の投資銀行やプライベートファンドなど)をお手本としているようでは駄目
 木は実を見て知るべしである。サブプライムローン問題に起因する、最近の老舗企業の倒産・破綻・被吸収の動きを見るがよい。従来のビジネスモデルの根本的な欠陥が氷山の一角として露呈した。

 具体的な分野とは、
〔あ〕新「資源・エネルギー」(メタンハイドレート、水資源、燃料電池という超小型発電機やマイクロ・ガスタービン、PVなど)、
い〕世界に冠たる国民皆保険制度の維持を前提とする医療・介護分野
〔う〕石油輸入停止の場合の実質1%程度に過ぎない深刻な食糧自給率を上げるための農林水産分野(石油に頼らない新エネルギー自給体制の構築、同エネルギーを使った農林水産業の再構築、ゼネンコン・流通等分野からの過多人材の投入調整支援)、
〔え〕投機要素を排除したファイナンス(メガバンクが融資できないような案件)など。

 そのためには、政府やNGO・NPOやシンクタンク(主要シンクタンクの大連携が重要)などの後押しが不可欠。

 両替商(金融)、繊維、電力、鉄鋼、自動車、半導体・エレクトロニクス、情報などの、日本国の基幹産業史の変遷に合わせて、商社ビジネスも隆盛・浮沈があり商社の再編があった。

 この間の経済情勢や当該産業の独占性などからの影響を、財閥などの所属企業グループは受けてきた。商社の総合力を活かした競争優位獲得の観点からは、グループ企業との連携が望ましい。
 しかし、世界市場で果たすべき新たな真の役割を考えると、対グループ企業とのこれまでの帰属関係が裏目に出たり、思い切った新たな分野の開拓の自由度が狭まったりする可能性もある。

 短期的には前者との関係が重要だろうが、中長期的には後者の選択肢をとることの準備に本格的に着手しておくことが戦略的と言えるのではないか。
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2008年9月11日 (木)

【掲載】ワイヤレスブロードバンドの国際競争力強化(CIAJ月刊誌)

20080911ciaj 今年(2008年)の6月に情報通信ネットワーク産業協会からのご依頼により、次の「えくすぱーと・のれっじ・セミナー」の講師を引き受けました。

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「えくすぱーと・のれっじ・セミナー」
http://www.ciaj.or.jp/content/seminer/pdf/080610.pdf

 会員限定セミナーのお知らせ

「ワイヤレスブロードバンドの国際競争力強化に向けて」
 講師:新保 豊 氏
 (日本総合研究所 理事・主席研究員)

日 時 :2008年6月10日(火)10:00-12:00
場 所 :情報通信ネットワーク産業協会 B~E会議室
    (秀和第一浜松町ビル3 階)
    港区浜松町 2-2-12 TEL 03-5403-9358
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 その時のことは、このBlogの【講演】CIAJ主催の「ワイヤレスブロードバンドの国際競争力強化に向けて」でも概要を示しています。当日の講演資料は、CIAJの会員ページから得られるようです。

 その後、当日の講演内容を基に、『CIAJ JOURNAL』2008年9月号向けに原稿依頼がありました。
 もう随分と時期も経っていることですし、その原稿をここにも掲載しておきたいと思います。

=====≪quote≫
■「ワイヤレスブロードバンドの国際競争力強化に向けて」
(~グローバリズムに乗るのか超えるのか~)
(情報通信ネットワーク産業協会『CIAJ JOURNAL』2008年9月号)
http://www.ciaj.or.jp/content/info/journal/backnum/0809.html

日本総合研究所 理事・主席研究員 新保豊
 (2008年8月11日記)

 情報通信産業の牽引役としてワイヤレスブロードバンドの今後の趨勢に大きな関心が持たれている。それを例に国際競争力強化についての基礎的な考え方を示すにあたり、特にマクロ経済的な視点を持つことの重要さを強調しておこう。

■グローバリズムの潮流を知る

 読者の多くは、企業経営(マネジメント)や情報通信産業の行方に関心があるはずだ。CIAJのスタッフや幹部あるいは規制・政策当局の一部幹部ともなれば別だろうが、大概の日本人は産業レベルましてやマクロ経済(やパワーポリティクス)の視点で物事を捉える訓練を受けていない。従って、「経営(学)」は、「マクロ経済(学)」に規定されていることがよく分からない。前者は船、後者は大海の潮流。大海の潮流を知らずして、船の適切な舵取りは不可能なのだ。そして、船の集合体である産業の競争力の強化など所詮できない。ここが、そもそも国際競争を考える際のポイントとなる。

 世界の潮流となった“グローバリズム”の定義を確認しておこう。すなわち「古典派・新古典派経済学を基礎とし、民営化・自由化競争・規制緩和などを標榜する、ワシントン・コンセンサスに基づく国際機関(世銀、IMF、WTO)との連携を前提とする企業・銀行・政府という連合体(コーポレートクラシー)による道徳性をもたない神学」(カナダ・ブリティシュ・コロンビア大学ジョエル・ベイカン教授に加筆)と言ったところだろう。

 つまり、グローバリズムとは世界市場における覇権国(通貨基軸国)の国家戦略ないし演繹的な世界観なのだ。繰り返しながら、本気で国際競争力を強化するためには、この国家戦略の正確な理解なしには無理だ。わが国の産業界では一部の例外を除き、大企業の経営幹部であっても殆ど把握できていない。私が接する経営コンサルティングの現場からほぼ断言できよう。ただわが国の一部政治家と高級官僚はこのことをよく知っている。分かっていながらグローバリズムの潮流に押し切られている(または迎合している)のが現実と言えよう。

 MBA(経営管理修士号)を持っている読者も少なからずいるだろうが、その大半は“世界ルール”を学ぶのが精一杯の状態にあるはずだ。世界(日本を除くG6+ロシア・中国など)の常識であっても、日本の非常識ということは意外に多い。

 例えば、時価会計主義だ。〔1〕総合エネルギー取引とITビジネスを手がけた米エンロンで1990年代のうちに大々的に採用(“創造的会計(creative accounting)”を発明)され、〔2〕日本にも導入されたことで潰れなくて済んだ銀行が消えた(2001年の「竹中ショック」)。この時、独仏など欧州では2005年まで簿価主義を堅持していた。そして、〔3〕最近G7では放棄の構え(簿価会計回帰)が表明されている〔2008年4月の米FRBバーナンキ議長談〕。

 このように“世界ルール”とは都合よく変更されるものであり、それは世界の国家戦略であるがゆえ、その時々の世界の趨勢(通貨の相対的な価値など)により、覇権国にとって最も競争優位を実現できそうな(もしくは不利を被らないような)代物にとって替わられる。その意味を知らない日本企業は、悲しいかな、もう15年間以上も同ルール・戦略に翻弄され続けている。

 このような潮流にあって、ワイヤレスブロードバンドの国際競争力をいかに捉えるべきだろうか。

■モバイルWiMAX方式採用の意義

 目下、世界の「ワイヤレスブロードバンド」市場の趨勢は「LTE」(携帯電話の高速データ通信仕様の一種)が支配的だ。米国ではAT&T、べライゾンが、また欧州勢では英ボーダフォン、仏フランステレコム/オレンジ、独T-モバイル、伊テレコムイタリアがそう表明している。ただし、LTE向け電波の帯域確保の点などもあり先行きは必ずしも透明ではない。

 米スプリント・ネクステルはモバイルWiMAXを担いでいる。携帯電話市場25億加入(2006年末)に対し、2011年頃の将来見通しとしてWiMAX加入はその1.1%程度。また金額ベースでは、携帯電話端末市場11.5兆円(2005年)に対し、同WiMAX機器市場はその3.4%程度との予測(米調査会社)がなされているが、何れにしろ本丸の携帯電話と比べ、需要規模としては補完的な存在に過ぎない。

 ただ、特定エリアでのワイヤレスブロードバンド需要の喚起を通じた、“新データ通信”によるARPUへの寄与分も期待でき、通信キャリアにとって新たな次世代サービス需要の牽引役として大きな存在感はある。また、地域WiMAXを利用すれば、既存サービス(CATVなど)とのバンドリングサービスも可能となり、競争上の有力な武器になろう。

 WiMAX方式を巡って、日本の多くの通信機器・端末メーカーらが今後、グローバル市場で弾みをつけるに当たり大きな期待がもたれた。にもかかわらず、日本国内のモバイルWiMAX方式採用の仕方は、“国益”追求の視点に乏しい結果になってしまった。結局、電波の割当て対象(全国バンド)の半分(30MHz幅)を確保するに留まった。地域バンドとの干渉対策などを考慮すれば、潜在的な生産規模の2分の1未満となる。これでは国際競争の観点で、コスト競争優位を保持できるかどうかなど不安材料が残された。

 今般のモバイルWiMAX方式は実質米Intel主導下にある。今後も同様だろう。本来であれば、かつてのTRONチップ、あるいは最近のRFIDを巡る国産技術の育成と世界市場での浸透を目指すことが、ピユアな“国益”追求には最も望ましい。

 しかしながら、生産財メーカー(電子部品など)を除き、過去15年ほどの日本企業の国際事業展開は見るべきものがなかった。1986年の「前川レポート」発表以降、過度な貿易黒字減らしの中で、不適正・不自然だった金融政策(特にマネーサプライ)のもと1990年の土地・株式投機が煽られバブルは破裂。その後、金融機関は不良債権の処理などに手間取り、また情報通信系企業の多くで収益の大幅減少に悩む中、内需・内向き志向の傾向が過分に強まった。海外展開どころではなかった。

 その前に、既に日本市場に参入を果たしている海外メーカーの攻勢を通じた市場シェア低下(収益力の減退)を引き起こす可能性や、無闇な国内メーカー同士の市場再編で、外資ファンドらによる草刈り場になる可能性は小さくない。

 たとえWiMAXなる通信方式を採用するにしても、例えば、同通信方式を利用した、原丈人氏(DEFTA会長)の言う“パーペイシブ”な端末の造り(小型低消費電力で使っていることを感じさせない)が期待される。そうした独自性さえ堅持していれば、何でも日本発でなくともよい。ただその際、グローバルビジネスの基本は、OS(基本ソフト)であれ端末であれ、コスト競争力が競争力全体を左右することは肝に銘じなくてはならない。

 言い換えると、“規模の経済性”(量産効果)が十分発揮できることが基本だ。この点、日本の生産財メーカーは得意(中間需要を予測した上での効率的な体制を確立済み)なのだが、最終需要財メーカーではこの点が難しい。最終需要が中間需要に比し読みにくいからである。従って、今後は需要を“読む”よりも、需要を“創造していく”(仕掛けていく)ことが求められる。

■グローバル市場に向けた国内産業育成

 ところで、日本の情報通信(ICT)産業の国際競争力は本当に低いのだろうか。「わが国の携帯電話端末メーカーの国際競争力は低く、それは“ガラパゴス列島”での内向き市場でメーカーがあくせくしているからだ」などの声がよく聞かれる。半分当たっているがもう半分は外れている。私は総務省の「ICT国際競争力」関連の研究会などにも関わっており、日頃からそう感じている。

 明確に言えることは、「国際競争力生産財と最終需要財とでは国際競争力は異なる」ということだ。携帯電話1台あたりに搭載される電子部品数は500~700個もあり、日本メーカーはそのおよそ6割も世界に供給しているのだ。

 実際、電子情報技術産業協会の資料「電子情報産業の世界生産動向調査」(2007年3月)を見ると、わが国の生産財の国際競争力は極めて高い。電子部品(生産財)では依然世界の49%にも及ぶ。ここで日本のGDP約5兆ドルが世界のGDP合計47兆ドルに占める割合は9.3%であるため、この5倍超の存在感があり、国際競争力は絶大だ。ただし過去と比べ“低下”傾向にあるのは事実だろう。


【図表】 世界および日本における電子情報産業における生産額内訳(2005年)
(クリックすると拡大します)
20080911caij
(注)
☆「有線通信機器」:電話、FAX、交換機、ルータ、ハブなど。
☆「電子応用装置」:X線装置、超音波応用装置、産業用テレビジョン装置など。
☆「事務機」:「主に複写機」で、デジタル複合機等のプリンタ機能を持つ製品は、情報端末の「プリンタ側」に含まれている。
☆「内訳と合計値」:四捨五入の関係で合わない場合がある。
(出所)電子情報技術産業協会(JEITA)「電子情報産業の世界生産動向調査(第1回)」(2007年3月)を基に日本総合研究所作成

 一方、電子情報産業において日本がこの比率を下回っているのは、ソフトウェアとパソコンの2分野のみであり、弱いとされる「携帯電話」(最終需要財)でさえ同17%はある。前述のガラパゴス現象を象徴する「携帯電話のシェア4.7%」(=5,230万台÷11億2,550万台)というのは、出荷台数のことだ。端末価格は世界平均の2.7倍(=40,426円÷14,935円)で購入されており(それだけ価値があるとみなされ)、金額ベースではそこそこの存在感はある。

 以上、総じてICT分野で「国際競争力が低い」とするのは見当違いであり、意図的な喧伝・情報操作さえ想起させる。この動きの背景にある本質を見誤ることにもなりかねない。法人税率を下げ、その分を消費税値上げで代替する動きにつながるとすれば用心が必要である。

■国際競争力の強化

 それでも当面、企業の成長や国富増大の観点からはグローバル展開が不可避だ。安倍政権以降、特に強調されている「経済成長」とは、突き詰めれば金融機関への「負債の返済」だからだ。日銀を起点とし市中銀行が創った通貨総額(マネーサプライ)に対する、金利支払い分だけのGDP成長が必要とされる金融メカニズムが、現下の経済社会システムに組み込まれている以上、金利よりも高めの(例えば年率で3%前後の)「持続的な成長」が今後も求められることとなる。つまり、企業も家計(消費者)も、借り入れ返済のために成長し働いているのが正しい理解なのだが、世相の慌しさの中にあって通常このことを意識する人々はまずいない。当然、政府もマスコミもこのようなことには触れない。

 輸出志向の企業などへ有利になるよう実効法人税率を下げようと努力している政府は、このメカニズムに奉仕する立場となる。従って、「コーポレートクラシー」にあっては、この世で一番パワーがあるのは①(国際)金融機関であり、次に②多国籍企業、そして③政府の順となる。この日本の“非常識”(序列・傾向)はアングロサクソン諸国では際立っている。グローバリズムを目指すということは、この並び順に経済社会を「構造改革」することに他ならない。このことにわが国の政策・規制当局も日夜邁進している。

 また成長の源泉とは、適度なマネー流通のもとの、実物経済取引での購買力の増加にある。今や「実体経済」(2004年の世界の全貿易取引額9.3兆ドル)は、その83倍にも及ぶ「金融経済」(同年の外為・店頭デリバティブ取引額775兆ドル)に振り回されている。世界のGDP(47兆ドル)との比でも16倍余にもなる。デリバティブ(=投機)マネーが、サブプライムローン問題で株式への投資リターンの最近の悪化を嫌い、その行き場として穀物や石油の高騰をもたらしている。グローバル市場の健全な発展のためには、この影響を減じていくことが不可欠だ。この前提なしに国際競争力を問うたとしても、その影響の甚大さに重要なポイントが隠れてしまう。

 国際競争力の強化とは、グローバル市場構造でのよきポジションの確保に他ならない。グローバル市場とは、世界が供給側と需要側の2者のみであるかのような単一市場につくり変えられたものである。そこではマクロ経済では無視しえない、余計な商取引上の障壁は存在してはならない。商取引や会計上のルール(株主価値=企業価値といった見方など)も“世界標準”なのだ。MBA流の経営を世界中で学んでいるのも、当人は気付かなくとも、実はこのルールやその共通言語を習得するためにある。

 言い換えると、中国やインドなどBRICsでの低労賃による世界の工場機能を担う供給者と、企画・設計などの主機能を担い消費が中心の需要者(G7など)との間で、商取引が効率的に進むよう、つまり規模や範囲の経済性が最大限効いてくるような仕組みに、日本企業がいかに順応できるかにかかっている。前述の古典派・新古典派経済学が唯一対象にしてきた、「需給は常に均衡している」とする“ミクロ経済”の世界で話は閉じてしまう。

 従って、この世界では最も効率的な企業または国のみが勝者となりえる。勝ち組と負け組がはっきり分かれる冷徹な仕組み・構造となっている。グローバリズムに“乗る”とは、この容赦ない世界に日本企業が本格的に足を踏み入れることに他ならない。ここへ軸足をたとへシフトしていくにしても、競争相手のルール(手の平)に乗っている以上は、どうしても有利な戦いはできない。

 グローバリズムとは切り離して考えることはできない、最近流行りの「オープンイノベーション戦略」然りだ。例えば、a)Intel、b)Microsoft、c)Qualcom、d)Walmartなど勝ち組企業による、相手国政府へのロビイング・設計・流通・マーケティング・販売・オペレーションなどでのイノベーションの仕方がその典型だ。
 
 同戦略の本質は、a)CPU、b)ソフトウェア、c)無線、d)RFID(ICタグ)などの自前コア技術の確立であり、製造や販売網では、グローバルな資源(ヒト・モノ・スキル)を“有効活用”することが基本となる。そしてこの資源は、政治・軍事力を背景にした、供給側の国々からの安価で適度にスキルフルな労働力の獲得、立地条件の確保に加え、国際金融機関との連携などを通じて得られるものである。かつてのコロニアリズムの延長にあるビジネスモデルなのだ。このことが日本企業にできるだろうか。

 たとえ模倣するにしても、そのノウハウやパワーの獲得は一朝一夕では困難だ。ならば別の手立てを思慮すべきだ。第1段階として、生産財ビジネスモデルで規模の経済性を追求しつつ、成長市場や互角の勝負が可能な市場で、既に勝ち組である日本の海外生産財メーカーへの生産委託などを視野に入れることも手だろう。また第2段階では、将来需要の先取り、ないし需要創造を行う。例えば、前述のパーペイシブな端末とサービスとの連動により、模倣困難要素を自社のビジネスモデルに組み込む。紙面の都合で詳述できないが、この需要創造の段階では“多産多死”的なトライ&エラーを、国内外の関係者を加え、いかに加速的に行える仕組みを構築できるかがポイントだ。

 そのためにも、近隣国(韓・中・露)と東南アジアに加え、インドや中東・トルコまで含めた新アジア・ユーラシア圏構想まで含めた、今の“世界ルール”とは一線を画したグランドデザインの構築が不可欠だろう。当面はアングロサクソン型グローバリズムへの発展的牽制・超克こそが、真の国際競争力強化につながるに違いない。

=====≪unquote≫

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2008年2月25日 (月)

【一言】米ヤフー買収を巡る株主の正体

20080225 米国ではYahoo! とMicrosoftの攻防を巡る、様々なステイクホルダー(株主、経営陣、従業員、地域住民、規制当局ら)の思惑が交錯しているようです。

 このBlogでは、この問題(ケース)において、他の記事では殆ど触れられていない視点を、簡単に示したいと思います。

 少し?この問題の本題からは、脱線します。あくまでこのケースを例に挙げているだけですので。

(青の太字下線は、私が付しました。画像は次から転載しました。)http://file.activityofgaia.blog.shinobi.jp/258d17e2.jpg

=====≪quote≫
米ヤフー、マイクロソフトの買収提案めぐり株主から提訴される
文:Ina Fried(CNET News.com)
翻訳校正:編集部  2008/02/25 11:14

http://japan.zdnet.com/news/ir/story/0,2000056187,20368044,00.htm?ref=rss

 米国時間2月22日付けの報道によると、デトロイトにある2つの年金基金が、デラウェア衡平法裁判所で米Yahooに対する株主代表訴訟を起こしたという。

 今回の訴えは、デトロイトの公務員向け年金基金と同じくデトロイトの消防士および警察官を対象とする年金基金によって起こされた。両基金は、Microsoftが当初2月1日に発表した446億ドルでの買収提案をYahooが拒否したとして、同社を非難している。

 MarketWatchによると、今回の裁判で原告らは「非敵対的で、財政面においても利益をもたらし、交渉を通じて条件が上積みされる可能性のある提案がなされている中、Yahooの取締役会は、その決定が株主の選択肢を奪うことになる場合、合法的な買収提案に対していつまでも『ノー』と言い続けることはできない」と述べている。

 2月に入り、Wayne County Employees Retirement Systemがミシガン州の裁判所でYahooに対する訴訟を起こしている。

 これとは別に、Microsoftは22日、「Windows」と「Windows Live」の両部門を統括するKevin Johnson氏が従業員宛てに送った電子メールのコピーを公開した。

 Johnson氏はその電子メールの中で、今回の提案を「最大限かつ公平」なものであるとするMicrosoftの主張を繰り返し述べている。

 Johnson氏は、「Yahooは当社の提案を拒否する内容の声明を発表したが、最大限かつ公平な提案を行ったというわれわれの信念は今後も変わらない」と述べている。「両社の統合がもたらす価値、戦略および財政的な利点について、Yahooの取締役会、経営陣、株主、従業員たちと建設的な話し合いができることを期待している」(Johnson氏)

 同氏はさらに、両社の合併をめぐり浮かび上がっている主要な疑問点の多くについても、一般事項だけではあるが回答している。仮に買収が完了した場合、MicrosoftとYahooのどの製品が維持されるのかという質問については回答を避けた。

 「MicrosoftとYahooのいずれも優れたブランド力と技術を有する。Yahooは強力な消費者製品を擁する。われわれは消費者に対しYahooブランドを中心に据えた統合製品および統合サービスを提供していくことに力を注ぐ」(Johnson氏)

 一方でJohnson氏は、「われわれが統合製品で、ブランドと技術のどの特性を使用するかを言うのは時期尚早である」とするMicrosoftの主張を繰り返した。同氏は、そうした決定は両社の首脳陣により構成される統合チームによって下されることになるだろう、と述べている。
=====≪unquote≫

■私の見方:
(ビジネスパーソンも知っておきたいマクロ経済学的な視点)

◆「2つの年金基金が米Yahooに株主代表訴訟を起こした」:

 この「年金基金」とは、米Yahoo! の大株主のようです。その大株主が「株主代表訴訟」を起こしました。
 米国流の“株主資本主義”に慣れていない読者におかれては、ちょいと奇異に感じられたかも知れません。そう感じる方は、本来常識的でまともな考え方だと私も思うのですけれど。。。
 つまり、「今般の買収ケースは、Yahoo! とMicrosoftとの経営陣だけの問題なのではないのですか」と。

 “株主資本主義”の世界で、一番偉いのは「株主」様なのです。たとえ、両社の経営のこと、事業のこと、あるいは統合製品やサービスのことなど、まったく知らなくても構いません。

 「えぇ!」と思われるかも知れませんね。ステイクホルダー(利害関係者)には、上述の通り、株主、経営陣、従業員、地域住民、規制当局らがいます。

 両社ともベンチャー企業で、特に株式公開前の未上場だった頃、実質的なステイクホルダーは、経営陣(経営トップのジェリー・ヤン氏やビル・ゲイツ氏、彼らの創業メンバー)であり、従業員であったはずです。地域に根ざした企業であれば、地域住民もそうです。住民にも利害が及び、その企業の行動は雇用を生み出す点で住民から期待されるか、環境問題を誘発するような行動には監視下にも置かれることでしょうから。

成長のため負債をもつことで企業理念は変容する

 しかし、成長資金が不可欠になり、株式公開をしたとたんに、様子は一変するのです。企業はその時点で、大株主からの意向を第一に考えねばなりません。ましてや、いま両社は押しも押されぬ大企業です。

 その意向とは、一切の無駄なく(たとえCSR=企業の社会的責任を強調するにしても、少なくとも中長期的には)、結果として株主利益を上げることです。この行動こそが、ミルトン・フリードマン(新自由主義経済学派=シカゴ学派の重鎮)も言う“道徳的な義務”なのです。「株主のために、できるだけ多額の金を儲けること」が、企業の義務なのです。

 この当たりのことは、ジョエル・ベイカン(カナダのブリティッシュ・コロンビア大学法学部教授・弁護士)の『ザ・コーポレーション』(2004年11月)や関連サイトやマイケル・ムーア映画監督の関連映像に描かれています。

 ちなみに、このような利益第一主義の考え方に反対であった(違和感を覚えていた)、ヘンリー・フォード(T型システムで成功したフォード自動車の創業者)の時代の、1916年の判決における「企業の最高利害関係者」原則では、フォード氏のやり方(従業員に相場よりもずっと高い給料を支払い、顧客には毎年T型フォードを値下げして提供)は、市場からは(裁判所からも)受入れられず、言語道断だったのです。

(ちなみに、ヘンリー・フォード氏は、株式市場の本質、そして、その市場の背後で、自身の利益につながるパラダイムづくりに奔走していた、当時の金融資本家や政府指導者らの野心をよく見抜いていた人物だったようです。)

◆「財政面においても利益をもたらす」、「合法的な買収提案」:

  そうです。「財政面においても利益をもたらし」さえすればよいのです。そうであれば、1916年以降、「合法的な買収提案」となるのです。これが、今も当時も変わらない“株主資本主義”の本質と、その下に置かれた企業(The corporation)のDNAなのです。

 フォード氏のやり方のほうが常識的で良心的だと思われるのですが、このような温情主義・良識は、“株主資本主義”の中では非常識・非道徳になるのです。(しかし、どうみても、どこかがおかしい、と思われませんか?)

 このようなビジネスの土壌を考えれば、「年金基金」なる大株主が自分たちの利益のために、新たな組織体(例えば、Yahoo! がMicrosoftに買収され組み入れられること)となり、より利益を稼ぐよう運営されることは“正しい”のです。

独占、雇用、外部性の問題

 しかし、ここには幾つかの盲点があります。例えば、①独占の問題②雇用の問題③外部性の問題などが生じる可能性があります(または高いです)。


 これら問題について、簡単に示しましょう。
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①独占の問題:
 
ただでさえMicrosoftの事業は独占性がありますので、Yahoo! の経営資源(ブランド、コンテンツ、顧客)を統合することで、その比が高まることは一目瞭然ではないでしょうか。
 独占問題が反トラスト法上、仮に回避されたとしても、業界再編の引き金を引くことになるでしょう。

②雇用の問題:
 Yahoo! はおろか、Microsoftの従業員においても、やがてリストラ(従業員の人員削減)の嵐が吹き荒れる可能性があります。あくまで可能性ですが。。。
 顧客が失われることによる、マクロ経済(景気)への影響も軽微ではないでしょう。

③外部性の問題:
 「外部性」とは、統合によって、他人や社会に及ぼされるコスト・ツケが発生しても、より株主に利益をもたらされるようになれば、それがすべてに優先されることです。古典派・新古典派経済学者が発明した冷徹な概念と言えましょう。
 さらに「有限責任制」という、株主になっても限られた損失(最大で投資額相当)を覚悟しさえすれば、利益が無限に享受できる制度(1851年の英国で報告)のもと、外部性という自身の都合により、コスト負担を外部に転じることで、一層の利益追求ができるようになりました。
=============

 この③の問題は、上記①の独占が志向されることで、消費者への価格上昇(転嫁)が生じても、あるいは②の雇用喪失が地元の従業員に及んでも、企業(≒株主)はまったく意に介さない、ということにもつながります。

 通常は、その企業が地球環境を汚染したり、スポーツシューズやシャツの生産コストを極限まで下げるため、開発途上国の国民にそのコスト負担を強いたりで発生する場合が多いものです。幸い、Yahoo! とMicrosoftにおいては、このようなローテクに見られる業種での、外部性問題はなさそうに見えますが。。。

 以上、Yahoo! とMicrosoftの買収合戦を通じ、“株主資本主義”の本質と、その下に置かれた企業の行動について考えてみました。

 上記①~③の問題よりも、「株主」の利益を最優先してとらえるパラダイムそのものにこそ、本当の問題が横たわっていると言えましょう。そろそろ、“株主資本主義”の意味を再考すべき時が来ているのではないかと思われます。
 

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2007年9月11日 (火)

“Buy Japan Out”が本格的に始動し出した?

 いよいよ“Buy Japan Out”が本格的に始まろうとしているようです。下の三洋電機とNECエレクトロニクスは、最初のターゲットということでしょうか。

 明後日(9/13木曜)に私が先頭バッターで講師を務める、日経マーケットアクセス主催の講演で、半導体・エレクトロニクス産業を例に、この“Buy Japan Out”に関する背景やその解説も試みたいと思います。もう1つの大きな主題は、ポスト北京五輪後の行方についてですが。。。

 経済学の産業組織論には、「SCP」パラダイムという考え方があります。
 すなわち最初のStructure(産業や市場の構造・制度など)が、ある特定者に規定・支配されてしまうと、次のConduct(企業の行動)は、いわばそのStructure(手の平)に乗ってしまいます。そうなれば、その企業の行動としての、それなりのPerformance(収益などの成果、または買収されてしまうという結果)がもたらされることになります。

 従って、企業の防衛には、このパラダイム(特にStructure)からメスを入れなくてはならないでしょう。しかし、殆どの経営者、そして産業アナリストらはそれに気付いていません。

 なぜなら、パラダイム(構造)の変更には、デフレ経済下の「円安・株安・三角合併」やその他実効税率・会計制度などを含む、マクロ経済問題(財政政策とセットにされた金融問題)が潜んでいるからです。この問題は一見少々分かりづらいのです。さらに、マクロ経済の背後には、世界のGDP総額(約47兆ドル)の10倍近く(400兆ドル程度)の投機的なマネーの存在があると言われます。この巨大な「カネ余り力学」が市場を襲うのです。

Photo三洋の半導体事業売却、アドバンテッジに交渉権(NIKKEI NET、2007/09/10)

 経営再建中の三洋電機は半導体事業の売却で、国内独立系投資ファンドのアドバンテッジパートナーズに優先交渉権を与える方針を固めた。8月末の入札で独立系投資ファンドのロングリーチグループが最高額の1,100億円を提示したが、アドバンテッジがそれを上回る1,200億~1,300億円の買収額を提示したもよう。三洋は月内にもアドバンテッジとの正式合意をめざす。

 三洋が売却するのは全額出資子会社の三洋半導体(群馬県大泉町)。8月31日に売却先を選定するための最終入札を実施、ロングリーチが1,100億円の最高額を提示した。その後、今月に入りアドバンテッジがロングリーチを上回る買収額を提示、三洋は同社に優先交渉権を与える方針を固めた。

Nec



米ファンド、NECエレ株5.03%取得(NIKKEI NET、2007/09/11)


 米ニューヨークに拠点を置く大手投資ファンドのペリー・キャピタルがNECエレクトロニクス株の5.03%を取得したことが、同ファンドが関東財務局に10日提出した大量保有報告書で明らかになった。7日までに総額222億円を投じ、計620万株を取得した。大株主としてNECとNECエレの「親子上場」の見直しを要求していくとみられる。

 ペリーは保有目的の説明の中で、企業価値の向上を目指して投資先企業の経営陣に助言を提供するほか、「状況に応じて重要提案行為を行う場合がある」としている。

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2007年5月31日 (木)

NIKKEI NET(BizPlus)「"国際競争力"って、そもそも何?」(2007/05/30)アップ

 NIKKEI NET(BizPlus)がアップされました。GW連休中の5/1(火)には脱稿していたものです。しかし、NIKKEI NETの編集ご担当者からの、「もっと分かりやすく、もっと」という強いご要望があり、いろいろやり取りしている間に昨日5/30(水)となってしまいました。お蔭様で、自分で読み返しても当初のものより、分かりやすくなったのではないかと思っています。普段は専門家向けに書くことが大半ですので、このコラム執筆ではいつも勉強になります。Photo

 今回は「"国際競争力"って、そもそも何?」についてです。昨日も、ある企業の方から、クルーグマンが「比較優位」を言い出す前に、その方がその趣旨の論文を書いていたというご連絡をeメールで頂きました。

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2006年11月11日 (土)

【論考】日経・経済教室の「企業価値を考える」を読んで(2006/11/11)

 日本経済新聞(経済教室)には、「企業価値を考える」をテーマにした4回シリーズ(2006年10月31日~同年11月3日)が掲載された。

◆どの経路でもロックインが効くわけではない 

 「長期的な企業業績の拡大」が企業価値を左右する。株主にとっても大いに関心のあるところだ。この企業業績とロックイン効果を結びつける学者もいる。柳川範之氏(東大助教授)は≪産業としての規模の経済性と企業レベルでの経済性を区別する必要がある。(略)また、シェアを拡大しても動学的規模の経済性、より具体的にはロックイン(囲い込み)効果がなければ、長期的な企業業績の拡大にはつながらない。≫と言う。ロックイン効果が企業業績に関連があることは正しい。しかし、逆は必ずしも真ではない。つまり、ロックイン効果が効く局面と効かない局面があるからだ。

 そこで、ロックイン効果がどの局面で働くか考えてみよう。クリステンセン(ハーバード大学教授)のイノベーション理論の言葉を借りることにしよう。

 企業の立ち位置として、顧客満足度が不足しており、まだ富者市場へ向かって持続的成長を続ける企業においては、ロックインは意味がある。その企業にとっては、統合的なマネジメントをするのが差別化(不均等の盾)につながり、競争優位を築けるからだ。しかし、満足度過剰にある市場では殆ど意味がない。

 ロックインをねらえる企業の規模だけでは、当該企業の企業業績は予想できない。さまざまな資源要素(人的資本、技術、顧客関係など)や業務プロセス(相互調整、意思決定のパターンなど)を統合している度合いと、後述の異なったイノベーションが進展していく市場の種別が問題になる。

◆「プロセス買収」の難しさと中長期予想の前提 

 同シリーズのなか、矢野佳彦氏(ゴールドマン・サックス証券マネージング・ディレクター)は、次のように指摘する≪株価を上回るプレミアムの支払いが正当化できるかどうかを多面的な分析によって判断することが議論の焦点であろう。(略)なぜ、当該企業の株価が正当に評価されていないのかを定量的に議論をすることが出発点。(略)要するに、株主価値の向上は企業の持続的成長に不可欠なのである。(略)M&Aの定量的・実証的分析は成長力ある社会構築に向けた第一歩である。≫

 このことも、矢野氏の主張する「買収には資本の論理尊重」という文脈のなかでは異論はない。同感である。若干異なる視点を示そう。

 過去3年間ほど、特に通信メディア産業におけるM&Aやそれに伴うファイナンスに関する仕事が続き、都度、事業計画などを評価する機会に私もあずかっている。株価のプレミアム性を定量的に評価することもする。決して簡単な仕事ではない。被買収企業の資源(設備や人材などの資産)やその資源を活用してキャッシュフローを生み出すためのプロセスを、買収企業側が取り込んだ際、自社のバリューチェーン上でそれらが十分機能することが明瞭である場合、買収合戦に伴うプレミアム性が高まる。

 しかし、「資源買収」は簡単でも、プロセスに別のもの(買収先のプロセス要素=仕事のやり方など)を組み込むことまでを期待した、「プロセス買収」はかなり難しい。したがって、買収後にこれまで以上の力強い成長につながるケースは必ずしも多くない。

 自社のプロセスに異質のものをうまく取り込めない限り、価値(収益やキャッシュフロー)には転換されないからだ。価値と希少性などなくしては、市場での競争優位は築けない。さらに、買収資源の配分プロセスにおいて、事業機会や競争優位につなけるための優先付け判断のために用いる規範(価値基準)まで考えると、大抵はプレミアムほどの価値創出には結びつかない。

 また矢野氏の文脈からすれば、確かに「株主価値の向上は企業の持続的成長に不可欠」であると言えよう。その一方むしろ通常では、「持続的成長の要素が株主価値を決定する」と言う。どちらにせよ、どの成長・イノベーション市場にある企業のことを指しているのか、ということだ。ここでの矢野氏の指摘も、ハイエンド市場に向かった持続的なものに乗った企業を指しているようだ。どの経路上にある企業かどうかという前提により、その株主価値を推定する範囲は大きく変わりうるということだ。

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【論考】M&Aとイノベーション経路(2006/11/11)

 M&Aは企業価値を高めるための有力な手段だ。そして、その企業価値を測る際、大抵持続的成長を前提にすることが多いのではないか。しかしポイントは、その企業の事業が今後どのようなイノベーションを辿るか、あるいはいかなる競争を仕掛けられるかによる。その知見をもつことで、企業価値はより正確に予想することができるようになる。

 ある企業に投資するとき、または買収時の買収側と被買収側の企業の置かれた状況を考えてみよう。その際、企業の置かれているポジションや状況に注意を向けることにする。例えば、どんな成長ないしイノベーションの過程にある企業なのか、あるいはその企業が置かれた競争状況はどのようにになっているのか、さらには株主が注目する企業の中長期的な見通しはどうか、といったことだ。

◆収益性を重視した投資先企業と成長余力の関係

 現安倍政権においては、前政権と比べ遥かに成長が重視され始めた。「構造改革なくして成長なし」と主張し続けてきた小泉政権とは、その主張に大きな違いが見られる。成長重視路線が再び重視されてきたことは歓迎すべきだ。企業は成長により収益性、ひいては企業価値を高める。

 では成長の中身と収益性について考えてみよう。企業価値を考える際、成長や収益性がどれほどあるかが重要なことだ。ある学者は、≪回復してきた経済状況をより力強い成長に結びつけていくためにも、安易な規模の拡大や多角化ではなく、収益性を重視した投資を行う企業が多く現れることを期待したい。≫と言う。

 ここで、株価を左右するものは、必ずしも成長の方向ではないことに注意しよう。株価に影響を与えるのは、収益やキャッシュフローの変化率における予想外の変化となる。将来の投資家にもたらされるリターンとは、将来の市場平均収益率と同じになることを考えると、投資先企業の成長や減退ぶりがどの期間まで、あるいはどの程度の正確さで反映されているかがポイントとなる。

 言い換えると、将来の成長率見通しが明瞭に株価に織り込まれている場合、経営者はその成長圧力に常にさらされることになる。そして、その圧力を跳ね返して期待収益率を維持することのできる企業は、内外の各種調査結果によると概ね10%程度とされる。とても厳しい世界である。つまり9割方の企業は、株主の期待に応えられず、数年程度の後には、企業価値を落とすことになる。

◆収益性を支配するイノベーションとそのジレンマ

 一方、株価に織り込まれている場合はどうか。既存競争者がその企業に対して攻撃する気がない行動をとらせるような心的状態(=「不均等の意欲」状態)にあり、将来の成長が十分織り込まれていないような場合、投資先の規模の企業価値は大いに高まる可能性がある。当該企業は、既存競争者が油断している間に、差異化できる武器(不均等の技量)の性能を高めることができ、その武器を用いて将来の市場において大いに頭角を現すことができるようになるからだ。

 なぜこのようなことが起こるのか。これは、「イノベーションのジレンマ」として、いまや私たちに知られることになった。投資先事業の成長の余地が限定的か、またはもはやほとんど存在しないことに、その企業も気づかず継続価値を維持するように自らを仕向けるゆえに、ジレンマが生じる。

 したがって、投資を行う企業の現在および将来のイノベーションの経路やその様子を知ることなしに、真の収益性を予想することはできない。「収益性を重視した投資を行う企業」のことを論じる前に、収益性そのものがどのようなメカニズムでもたらされるかを知らねばならない。

 投資先または買収先の企業や事業が、〔A〕満足度不足の顧客に対して生き残りのためのハイエンドに向かったイノベーション途上にあるのか、〔B〕満足度過剰にある顧客に対してローエンドの低価格でカスタマイズしやすいイノベーション途上にあるのか、さらには〔C〕これまで存在しなかった非消費の機会を突くイノベーション途上にあるのか、が十分区別されているか(そのような情報を得ているのか)。この区別の違いにより、企業価値を予想する際の振れ幅は大きくなる。この3つのイノベーションや成長の経路を十分明らかにした上で、投資先または買収先の企業や事業を改めて見ることが重要だ。

◆M&Aは成長力ある社会・経済を実現するための短期的な一手段

 M&Aに話を戻そう。あるアナリスト氏は、≪成長力ある社会・経済の実現には、M&Aの定量的・実証的分析があってしかるべき≫と指摘する。M&Aと成長力には関係がある。しかし、それは必ずしも因果関係ではない。つまり、M&Aが株価を決め成長力をもたらすのではない。持続的成長の要素が株主価値を決定する。また、M&Aはそうした社会・経済を実現するための短期的な一手段ではあるが、多くの場合、M&Aで市場の理解が得られ企業価値を高められるのは、上述のAタイプのイノベーションか、Bタイプのイノベーション(ローエンド型)の経路をとっている場合である。

 中長期で見た場合、かつてベンチャーに過ぎなかった日本企業(ソニー、ホンダ、松下、キャノンなど)が、粘り強く辿ったCタイプのイノベーション(非消費型の新たな市場創造)のほうが、M&Aよりもはるかに成長力のある社会・経済をもたらすことに寄与するはずだ。わが国には、こタイプのイノベーションを、再び生起させるメカニズムを働かせることが求められている。そして、これまでのような試行錯誤の域を脱し、実証的研究を基にした知見を総動員することが、私たちには突きつけられている。

◆中長期のキャッシュフローを予想する際の前提となるイノベーション経路

 前に取り上げた「企業価値を考える」際、専門家は概ね、持続的成長下にある市場や企業を対象としていることが多い。過去の企業価値の算定において、数週間から4半期程度の短期的なケースならともかく、半年~1年先を超えた中長期的なスコープでは、その算定値は大きくはずれるケースも少なくない。実際の時価総額(≒企業価値)は、当初予想のものと比べ、前述の通り大抵9割方は大きく乖離する。

 この乖離幅をもっと狭めることはできないものか。それには、次のようなことを考慮することが有効であることが、実証的に確かめられつつある。中長期の企業価値の予想には、当該企業がどの種別の成長・イノベーション経路に留まっているのか、そして、そこを今後も力強く突き進んでいくための変化のシグナルは何か、あるいは不均等(差異化)の盾(意欲)に隠れ人知れず矛(技量)を磨いているのか。こうしたダイナミックなメカニズムを想定することが求められる。

 特に中長期のキャッシュフローを予想する際には、その前提(経路性などの市場環境、顧客の製品・サービスの利用状況など)がきわめて重要となる。企業の行動とその結果をうまく予見しえる理論やアプローチに関する研究は、年々進展している。こうした知見を考慮したうえ、企業価値にまつわるより的確な情報提供が株主へなされるようになれば、資本市場での透明度はいまより一層高まることになるのではないだろうか。

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【一言】企業価値を考える(情報提供の質と経験の学校

 最近(2006年11月2日)、日立製作所の時価総額が三菱電機のそれを初めて下回った。こうしたニュースを耳にするにつれ、その企業には一体どれだけの魅力または価値があるのかに私たちの関心が向く。

◆企業価値と将来収益

 まず、企業価値について考えてみよう。「企業価値」は、一般的に企業が生み出す将来収益の現在価値として定義される。企業価値には通常、株主価値(公開企業であれば時価総額)と会社総価値(株主と債権者への帰属価値)といった概念が使われる。したがって、厳密には「企業価値=時価総額」ではないが、本稿では両者をほぼ同じ意味で用いて差し支えないだろう。

 この「将来収益」を予想するのは難しい。市場によっては大変不透明な代物だ。例えば、通信やメディアの世界では、数年先の短期的な将来でさえ、市場の変化を不確実である。米タイムワーナー・AOLの事例はそれを物語っている。

◆タイムワーナー・AOLの合併とその後の企業価値の喪失

 タイムワーナー・AOLの合併により生まれた大型メディア企業の収益が、その後大きく落ち込むことを当時どれだけの人(株主やアナリストら)が予測できたであろう。メディア業界とインターネット業界におけるそれぞれの雄同士の結婚は、大きな相乗効果を生み出すものと期待された。しかし、その結婚は間違いであることが後に判明した。米CNNの創業者でもあるテッド・ターナー氏は、次のように振返っている。

=====≪quote≫
 1996年のCNNの親会社とタイムワーナーの合併は、コンテンツと媒体の両方の力を相乗効果で高め、正しい戦略だった。その証拠に株価も3倍に上がった。だが、2001年のタイムワーナーとAOLの合併は、米合併市場最大の失敗だった。(略)結果的にタイムワーナーの大株主として私は何十億ドルもの財産を失った。

(2006年10月30日記事)

=====≪unquote≫

 テッド・ターナー氏ほか当時の経営陣ほどの、数々のビジネスを成功させてきた、百戦練磨の人物がどうしてこのような事態を予想できなかったのだろうか。

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