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2011年1月26日 (水)

【財政】増税と緊縮財政のキャンペーンがまた始った

 毎年今頃(1月)になると、緊縮財政のキャンペーンが始ります。どこかの府省の出世基準には、①増税、②プライマリー・バランス財政規律の実現というものがあるらしい。小耳に挟んだ程度のことですので、確証がある訳ではありません。
 しかし、「なるほど」と感じられないこともないかなと思います。

 この記事によれば、「税と社会保障の一体改革」や「改革を実現」とは、①増税のことを意味しているのでしょう。特に消費税増税。同時に法人税減税とのセットで。

 当blogでは以前にも書きましたが、国税(=所得税+法人税+消費税)に占める消費税の割合は、既に23%(2008年度)に達し、欧州先進国のそれ(英国27%台、スウェーデン29%)と遜色ありません。
 このことを国民の多くは知らないのでしょう。欧米では、非課税または軽減税率項目が多いためです。例えば、教育医療、住宅取得、食料品・医療品、新聞・書籍の一部など。国民にとっての生活必需項目は、消費税(欧米では付加価値税)が非課税や無税になっているのです。海外で生活したことのある人は分かっていることです。

 にもかかわらず、政府もマスコミもこのことは報道しません。最近、経済同友会が発表した、消費税率を17%などに上げれば、消費者の購買力はさらに失われ、経済失速・デフレ固定化は必至となりましょう。

 「社会保障」にあっても、日本の場合、年金給付(基礎年金含む現役時の収入の60%水準)のための「厚生年金」の積立金は、66か月(5.5年分)の190兆円超もあります。
 賦課方式か積立金方式かの制度上の違いがありますので、単純な比較はできませんが、敢えて比較すれば、同積立金は英国で1.2か月分、ドイツで1.0か月分です。いかにわが国の積立金が膨大であるかが分かるというものです。

 これだけの積立金があれば、これを原資にした国債(赤字国債)を発行することで、財源確保もでき、この新たな政府支出を通じた日本経済の建て直しも十分可能なはずです。年金官僚による無駄遣いがなされている実態があるのでしたら、このような「国民生活を重視」する真に有効かつ正しい政策を推進すべきでしょう。

 さらに、「国債発行に過度に依存した財政運営」とありますが、負債デフレ(バランスシート不況)にあっては、経済主体(政府、家計、一般企業、金融機関、NGOなど)のうち「政府」以外がお金を使うこと(投資)ができないのです。マクロで見ると、一般企業と金融機関が資金循環でプラス、海外分(経常収支)が黒字で、全体として貯蓄過多の状態です。これがデフレの真因です。

 2005年以降いまやキャッシュフローが潤沢でお金が余っていても一般企業が、国内に有望な投資案件を見出せないため投資をしません(できません)。ROIなどの指標に目を光らせているアナリストらや株主に説明ができないため、投資インセンティブがありません。

 従って、銀行(金融機関)は、家計から預かった膨大な預金が逆ザヤにならないよう企業に貸し出したくとも、お金を借りてくれません。
 家計は将来の生活が不安なため、貯蓄に励み、なかなか貯蓄を切り崩そうとはしません(消費しません)。

 他方、企業は外需を頼りに海外進出に積極的になり、その製品力(技術力)が依然強いため、海外収支としては貿易黒字を積み増し、結果「円高」となり、自身の首を締めることを繰り返しています。円高の根本要因は、経常収支の累積的な黒字です。これを解消するためには、内需中心の経済発展政策に切り替えることがポイントです。

 このような負のデフレ・スパイラル状況(資金循環がプラス、即ちお金が経済に回らず貯蓄過多になっている状況)にあって、唯一日本経済に資金を供給できるのは「政府」しかないのです。

 従って、このデフレ期の政府支出には多大な意味があります。
 「国債発行」を通じた財源確保のやり方であっても、問題はないでしょう。

 2001年導入の時価会計方式では、最長過去7年間の繰り延べが可能、即ち、赤字であった場合それを評価損として税制上のメリットを活かせること(≒税金を払わなくても済んだこと)により、企業にとっては本業では大きな利益が出ていても、国庫からすれば十分な(適切な)税収を確保できなかったという事情がありました。

 この税収上の問題が改善されている昨今にあっては、税収の対名目GDP弾性値は4~5近くもあります。この意味は、経済成長がなされれば、債務(借金)の増え方よりも、税収の伸びの方が高く、従って、純債務率(=純債務÷名目GDP)は減少させることができるということです。「国債発行に過度に依存した財政運営はもはや困難」とい主張には、このあたりのことが全く考慮されていないのではないかと想像されます。

 総需要(内需)喚起を促す正しい政策を行えば、経済成長も十分可能ですし、財政状態も、問題ありません。

 債務残高が1,000兆円もある、名目GDP比で200%近くあるということも、単なる参考値にしか過ぎません。

 政府債務(≠国民の借金)の1,000兆円の貸し手のうち多くを占めるのは、資産2,700兆円をもつ金融機関という貸し手であり、その貸し手にとっては目下大変優良な資産(事実上のノンリスク債権)なのです。
 だから、例えば、10年モノの国債利回りがせいぜい1.2%の低位水準で、長いこと推移しているわけです。利回りが低いということは、国債の買手(=相手負債の貸し手)が競って国債を購入している状態(=国債の価値が高いと判断している状況)ですので、利回りは下がったままなのです。“日本国債破綻”などと言い続けている人々は、“木を見て森を見ていない”のです。

 上述の通り、5つの経済主体が、日本経済の中でそれぞれ貸し手(資産保有)と借り手(負債保有)の関係になり、経済が回っていますし、国家の総資産(金融資産のみ)が約5,500兆円もあって、また総負債が約5,250兆円あって、従って、純資産(=対外資産)は約250兆円あってバランスしているのです。政府債務だけを針小棒大にマスコミも誇張する意味が分かりかねます。

 ちなみに、この純資産(=対外資産)は1991年から20年ほど連続で世界最大です。つまり、わが国は依然世界最大の債権国なのです。
 しかも通貨は高い(円高)わけですし、ネットでみて対外債権国ですので、デフォルトの定義である、対外債務の利払い不能な状態から世界で最も遠い国なのです。その国が、「財政運営はもはや困難な状況」と自ら言うのですから、本当に困ったものです。^^;

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■<通常国会>財政演説 国債依存、もはや困難に…野田財務相

毎日新聞 2011年124() 1456分配信

 野田佳彦財務相は24日、衆参両院本会議で財政演説を行い、「国債発行に過度に依存した財政運営はもはや困難な状況にある」と財政悪化への危機感を表明。税と社会保障の一体改革に向けた超党派協議への「積極的な参加」を改めて訴え、「国民的な合意を得た上で改革を実現する」と強い意欲を示す。

 11年度予算案は「財政規律を堅持するとともに成長と国民生活を重視した」と強調。

 日本経済に関しては「失業率が高水準など厳しい状況。デフレが続き、円高や世界経済の動向など景気の下押しリスクも注視する必要がある」との認識を示して、「予算を今年度内に成立させることが必要不可欠」と求める。【坂井隆之】

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