« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

2010年11月

2010年11月28日 (日)

【中国経済】スタグフレーション状態をうまく脱することができるか?

 日本企業を含め世界は、「これからは中国だ、乗り遅れるな」と、“BRICs”という言葉を編み出した、ロンドンに拠点をもつGSI社やマスコミに乗せられたかのように、いまだその市場進出熱は冷めやらぬ状況ではないかと感じます。
 しかしながら、当の中国市場には、当面の投資先としては、黄色から赤信号に変わりつつある幾つかの警戒すべき兆候が見えています。

 その辺りの、ある方(輸出が主力のある大企業に勤務)とのやり取りの一部を、ごく簡単に中国経済を考察した際の備忘録として記しておきたいと思います。
 個人が特定できないよう、ご質問の表現には、多少手を入れています。

=====≪quote≫
(略)

> 市場にお金が余っている状況のようです。中国政府も、消費者の所得向上といった
> 名目で市場にお金を流し いる模様です。海外投資家からのお金の流入も増える
> 一方です。資金流入は株向けに30%で、物品向けに70%だそうです。物品をストック
> して、ある程度の高価になってから市場に放出するため、物品の価格はどんどん上
> がってきます。

⇒ 中国経済は典型的な「資本と人」を呼び込むタイプの経済発展パターンでした。このことは、1970年代末当時の政治トップであった鄧小平氏と米国大統領(および大資本家)により、スタートしました。

 そして、サブプライムローン金融危機前には、デリバティブ商品を含め膨大なマネーが中国経済に流入したものと思われます。それらの多くは、不動産や株式市場に流れ、一般の人々(中間層が主)には行き渡っていません。
 実体経済へお金が回らず(従って、少し前には49%ほどあった、中国GDPに占める消費の割合=消費性向は最近では37%に過ぎず)、バブルを形成しています。90年の日本と似ていますが、そのバブル形成の速度は中国の方が断然速いです。

 中国政府も、少し前の経済がデフレ気味(過剰設備状況)であったこともあり、約500兆円のGDPを持つ中国経済へ、2年間で中央の約54兆円(4兆元)に地方分の投資額(18兆元)を加え、計234兆円に近い資金を投入することを目論んでいます。この財源確保の方法は公表されていません。私は恐らく授業で取りあげた第2の方法(中央銀行による直接引受け)によるものではないかと想像しています。

 名目で約500兆円余の日本経済において、そのデフレギャップは膨大なため(試算では350兆円ほど)、年間120兆円の資金を市場に投入してもインフレにはなりません。しかし、中国経済の場合はさほどのデフレギャップはない(恐らくせいぜい20兆~30兆円ほど?)と考えられますので、お書きの通り、年120兆円もマネーを注入し、しかもその大半が実体経済に向かわないとすれば、原理原則、今後インフレ傾向を強めていく可能性が高いと思います。

 他方、下述の通り、膨大な失業者を抱えていますので、この高いインフレ傾向が重なった、“スタグフレーション”状態にあると言ってよいのではないかと思います。中国政府の経済に対する舵取りは、相当難しいと思います。

> 結果として、海外メーカーからの最近の値上げは異様です。狂っています。
>   1回目の値上げ申請に対する承諾をま出していないにもかかわらず、
>   2回目の値上げを要求しているような実態があるようです。全くこれでは対応
>   しきれない状況です。

⇒ 中国の沿海州では人件費も高騰し、また人民元安(通貨安)の政策を政府は堅持していますので、原油、部材、組み立て加工装置などの資本財や食料など、輸入物資の価格が割高になります。
 従って、これまで人件費も材料費も安かったことで魅力を感じていた海外メーカーは、値上げなしにはとても乗り切ることのできない、コスト面で厳しい状況に直面しているのでしょう。

> どうして中国でこのような状況が起きっているでしょうか。いつまで続くで
> しょうか。方向性は全く見えなくなってしまいました。教えていただけます
> でしょうか。

⇒ 幾つかの問題が重なっていると思います。

 例えば、上述の通り、外国からの資本(設備・技術+マネー)を大量に導入し経済成長を急ぐ、典型的な“東アジア型の経済成長”〔ポール・クルーグマン〕のパターンだったということ、そして不動産・株式といった非実体経済(金融経済)での急成長が重なり、実体経済と金融経済の均衡ある経済発展に齟齬が生じてきていること、さらにはその中で貧富の差(所得格差)が拡大したことで健全な中間層の発達が損なわれ、消費が不十分であることなどです。

 “リーマン・ショック”前の中国GDP成長を支出面でみると、民間投資(外資が主)を呼び込み、純輸出を増やし、消費もそこそこ(消費性向でピーク時49%。先進国では60%近く)であった外需志向のパターンでした。

 そして“リーマン・ショック”後、外資などの民間投資が衰え始め、最大の輸出先である米国の大需要が急減しました。そこで政府は、大規模な政府投資(公共投資)を主とする内需志向の経済発展を目論んでいますが、それには健全で分厚い中間層の存在が不可欠になります。しかし、消費性向が僅か37%しかないように、経済的な存在感としては全くの力不足です。均衡ある経済発展はこのままでは難しいでしょう。

 輸出先を米国から、最近ではその次に大きな市場であるEU(欧州)に向け始めましたが、欧州の経済状態は米国の半年遅れで悪化しています。サブプライムローン問題では、米国よりも深刻であり、結果、アイスランド、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペインといったような国々の需要は急減しています。

 中国全体のGDPは、地方政府の“成果”としてかさ上げされています。従って、実際のGDPの額や成長率は、報道されているものよりも小さいでしょう。それは中国でのエネルギー消費量の伸びなどと比較すれば、一目瞭然です。

 別の大きな問題は、地方での暴動の規模と数(少し前に年間10万件と公表されていましたが、その後非公表となっています)、そして、沿海州などの都市部と地方・農村部での格差の問題でしょう。
 地方もあわせ、約2億人いるとされる失業者に対して、GDP成長率が8%を切るとそれ以上の失業が増え、国家が転覆しかねない深刻な状況となり得ますので、このことを政府は決して看過できないでしょう。失業がこれ以上になった場合、政権崩壊の憂き目になる公算が高いからです。このようなことが、中国のエコノミストらからも指摘されています。

 中国経済のバブルは崩壊しており(既に実態はそうなっているはず)、そのため当面、政治・軍事主導の強権的なスタイルにより、何とか国を治めているという一昔のスタイルが復活するかも知れません。

 しかしながら、中国経済の潜在性はやはり大きなものだと思います。その後、政治的な安定を取り戻せば、もう少し緩やかなペース(しかし、大きな失業を出さない程度のGDP成長率を維持しつつの速度の、ある面経済の舵取りにおいて決して易しくないペース)の状況が実現できるかも知れません。
 ただその際の、資源確保(食料や天然資源)と、地球環境負荷といった問題は、依然大きなグローバル規模の問題として懸念されるところだと思います。

 中国の場合も、一部の支配者勢力への富(資産や資源)の集中を和らげ、国内での均衡ある再分配がなされることが、持続的発展には必須と思われます。

 その意味で、お金(マネー)の持つ自己増殖的で、富の集中をそのメカニズムに内在させる性質に絡む抜本的な問題の解決なしには、世界の将来は決して明るくないかも知れません。

 人口面、政治・経済面、軍事面でも、中国の存在は今後まずます大きくなると思われますので、これまでのグローバリズム(アングロサクソン型の新自由主義的な現代のコロニアリズム)が必然的にもたらす破壊的で貧富の差を拡大する流れを、ロシア・インドそして日本らと組み、うまくその流れを牽制していければ、世界の将来をそう悲観視する必要はないかも知れませんね。

 今日はここまでにしておきます。
=====≪unquote≫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月19日 (金)

【講演】日本の国民農業とアグリビジネスに関する資料のポイント

 来週〔2010年11月25日(火) 〕の下述の講演の資料を昨晩、事務局に送付しました。
 そのポイントのみ、ここに備忘録としてしめしておきます。時間は45分ですので、かなり忙しいお話しになるのではないかと思います。(^-^)

【講演】アグリビジネスの構造イノベーションとIT活用の意義

=====≪quote≫
タイトル:
 「アグリビジネスの構造イノベーションとIT活用の意義~発展のための抜本的処方箋案」(不可欠な内需拡大とグローバル化への対応)

概要

農業問題やアグリビジネスの背景

■危機的な農業:日本における農家類型別の農家数等の推移

■グローバリズムと食(低下する日本の食料自給率)

≪参考≫世界的な食の危機
* 引き金(ドル崩壊、株式市場急落、地震、原発事故、騒乱・戦争など)
 ⇒通貨紙くず化(既に不換紙幣) ⇒エネルギーと食糧が不可欠!
 ⇒将来の通貨(バスケット:金・銀・銅・ニッケル+トウモロコシ・小麦・コーヒー・原油・天然ガス等)
≪参考≫農業の“工業化”と“ビジネス”
* 世界の主要穀物 ⇒95%の種子特許は支配下
* 北極種子金庫プロジェクト(Doomsday Arctic Seed Vault Designed to Withstand All Perils Project)

 ⇒ 核戦争や地球温暖化などで種子が絶滅しても再生できるように保存(目的)

■問題意識と基本スタンス

■目指すべき農業またはアグリビジネスのイメージ

■国民農業とアグリビジネスの抜本的浮揚のための基本アプローチ

■【1】農業を“SEM”する

* 農業を“SEM”する=Science, Engineering & Managementする
* 土壌・水田マップ ⇒【水中】栄養分(イトミミズ) 【空】衛星監視

* 現状分析と潜在力評価 ⇒第3者による生産物の出来具合の格付け(≠金融商品)
* 土壌分析・改質、育描法研究
* 化学肥料や農薬(除草剤、殺虫剤、殺菌剤)のDB化
* 経営(ROIなどの追求)
* 相互補完のエリア化やネットワーク化

≪IT化≫土壌情報閲覧システムと今後の期待(栄養分状態マップ)
≪IT化≫農業情報管理システム(効率化から本来農業支援へ)
≪IT化≫ITを活かした酪農用自動給餌システムの開発
≪IT化≫生産履歴管理によるトレーサビリティーの確立
≪IT化≫植物工場ビジネスに参入する企業
≪IT化≫植物工場の例

■【2】農業事業法人化
* 生産・経営主体としての中大規模農業事業法人の設立
 - 主業農家による生産と経営(ビジネス) ⇒省力化・低コスト化+安全・安心な商品
 - 「所有と経営の分離」(農業ビッグバン)は慎重に ←ヴェブレンやケインズやミンスキーも警告
 - ハゲタカ外資・金融・ファンドらによる乗っ取りの可能性大
 - かつての日本型経営や独ライン型経営(監査役会の強化、アングロサクソン型経営とは一線を画す)が有用
* アグリビジネス企業またはNPOら(専門家集団)による投資(資金、人材、設備)や経営参加
 - 非主業農家の意識改革(覚醒促進)
* 生産性が高く(低コストで収量大)、安全な技術の追求と普及・指導(除草剤・農薬フリー)
 - 政府によるノウハウのコモディティ化(種子などの独占的使用権を認めない)
 - 大学による技術ノウハウなどの情報供与
 - 投資家やファンド会社を通じたファイナンス
* 価値連鎖
* 土地(水田、畑)の維持管理
 - 水田を蘇らす
* 無農薬・無肥料栽培(米)
 - 不耕起移植栽培・冬期湛水

■【3】土地(水田)集約化+畑(野菜)+用水等(インフラ整備)

* 土地(水田、畑)の集約化
 - 非主業農家の土地の集約化(ゾーンニング)
 - 貸借or売却
* 用水等設置の原風景としての水田
 - 水質改善(緩速ろ過)機能をもつ新たな水源
 - 微生物によるメカニズム ⇔ 水道事業者による急速ろ過方式(カルキ臭、まずい水)
* 不耕起水田 ⇒浄水池機能
 - 10aの田んぼで水5,000トン浄化 > 米生産に水3,600トン消費

■【4】“商品”のマーケティング
* 生産物ではなく、“商品”に仕立てる
* 品質    ⇒栽培方法の統一
* プライシング
 - 当面    :既存流通網外での消費者直結的な価格設定
 - 将来    :より広範な規模で、市場メカニズムを機能させる
* 販路・販促
 - 新たな流通網の形成(既存網とのよき競争)   
 - 既存網: 農家 ⇒JA ⇒経済連 ⇒全農 ⇒米卸 ⇒小売
 - イノベータ-(経営のプロ)が農家を覚醒させる
 - 海外へも(販路拡大、新たな収入源)
* 国際競争力の強化
 - 但し、その前に国内での農業基盤の整備(ハード+ソフト)が最初(必要条件)
 - 減反制度の段階的緩和 ⇒潜在潜在力の開放 ⇒余剰生産物・商品は海外輸出(または食糧備蓄)

* プロモーション :売り方のイノベーション

≪IT化≫IT農業の実践とフードチェーンシステムの構築
* 農業生産法人(株)イソップアグリシステム
* インターネットによる農産物直販の事例(無農薬米専科の百姓アグリ)
* インターネットによる農産物直販の事例(ファーム葱坊主)

■【5】政府支援(インフラ整備、技術・資金支援)
* インフラ整備
 - 直接的    ⇒農村向けの用水路整備(水溜りづくり)、分散型電源、気象情報提供など
 - 間接的    ⇒周辺エリア向け住環境整備(学校、病院、観光施設、道路、大深度地下鉄道など)
* 農業事業法人の成果パフォーマンス・改善度に応じ助成

* 技術支援    :公共系研究機関・試験場などから
* 新たな財源確保
 ⇒農業インフラへの投資(個別所得補償より効果大)
 - 国債発行
 - 日銀直接引受など

≪IT化≫地下水位の制御システム

■【6】里地・里山型コミュニティの創生
* 生き物一杯の桃源郷を目指す
 - 都市住民による田畑のオーナー制度促進
 - 田んぼと一体の生活圏 ⇒子供たちの体験実習など
 - 都市住民参加による農村コミュニティ公園
 - 生産者と消費者との相互補完の現実的接点の場

 - グリーン・ツーリズム
 - 各種観光施設、温泉・保養施設の整備
 - ホスピタリティの工夫
 - 外国人向けの案内・表示

* 耕作放棄地の再利用
 - 里地・里山の復活
   美しい日本の原風景を再現
   水源の確保
 - 万一の場合の食料確保の避難地

   TTP(信頼のできる第三者機関)への管理委託
   農家を親族に持たない都市住民向け

≪参考≫日本における耕作放棄地の現状

■【7】国民皆農化(消費地と生産地の相互補完を通じた日本の元気発進)

=====≪unquote≫

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2010年11月 9日 (火)

【グローバル経済】TPP参画を急ぐ必要はない(「平成の開国?」とんでもない)

 「TPP」のことが最近話題になっています。日本の基本姿勢(スタンス)は、国益を見込めないならTPP参画を急ぐ必要はない、とすべきでしょう。

 まず警戒すべきは、「コメを含む原則100%の関税撤廃」です。由々しき問題でしょう。
 日本の農業問題については、「アグリビジネスが抱える構造問題の現状」として、当blogでも次の通り触れました。

ミクロ面 :経営の担い手・方法、投資リターン、上下流域価値連鎖、生産物・商品の価格・販売チャネル
セミマクロ面 :産業の収益性・競争力、農地の扱い、気象の影響度、業界組織改革
マクロ面 :政府投資先と財源、国際競争力

 農協組織問題、減反政策、ゾーニングの遅れ、主業農家の強化問題など、これまでの守りの農業政策を手放しで支持するものではありません。

 例えば、わが国の「コメ」の潜在的な生産力は大きいですし、その品質は世界に冠たるものです。それゆえ、中国人が東京・秋葉原の電気街に大挙してやって来て、一人で親戚分を含む幾つもの炊飯器を購入しているそうです。中国人の中でも豊な人々において、もはや中国内での米の多くは工業用水などで汚染されて、食べられるような状態ではないようですし、味も日本の米ほど美味しくないといったことを聞きます。

 日本の米は十分輸出力があります。中国などの海外市場においても需要があるのですから、その需要を取り込むこと、ひいては「国際競争力」をはかっていくことも、今後の重要な課題だと思います。

 但し、それには、段階があるはずです。日本での準備ができていない段階で、今般のTPPにより、“自由化・関税撤廃”を一気に行うとすれば、大問題でしょう。国益を損ないます。日本の農業は破壊的になり、生活者も消費者も不幸(より貧乏)になること必至でしょう。交易条件を整えることなしの「自由貿易」は、一方が他を利することになります。

 今般のTPP問題では、またもや「金融」が対象となっていることも気になります。

 そもそも日本経済や日本企業のパフォーマンスが悪化し出したのは、1996年の「前川リポート」が世に出た頃からだと感じています。参考に下に抜粋文を貼っておきます。

 当時の「市場原理を基調」、「グローバルな視点」、「中長期的な努力の継続」のことは、今でも行われています。日本人はそろそろ気付くべきでしょう。
 どの表現も、一見美しく、あたかも時代の最先端を行くような響きがある一方、国際人(グローバル人?)としての自覚に日本人も目覚め、それに向け努力していくべきだとの、ある種“反省・猛省”の雰囲気も漂っているような表現で埋め尽くされています。

 これは、欧米列強の高度なソフト・パワー戦略の、日本への適用の事実上の第一弾だったと考えるべきでしょう。 
 その後の、日本経済や日本企業のパフォーマンスの悪化に、IMFの常套用語である「構造調整」条項(conditionality)などで構成された、“構造改革”が作用してきたことは明らかでしょう。

 当TPPも、「構造調整などの政策協調」の延長上にあるとの認識に立ち、「前川リポート」以降のこれら「グローバル政策」を安易に受入れる、日本人のメンタリティ・姿勢を再点検することが求められているように感じます。

 貿易の自由化を否定するものではありませんが、「金融資本の自由化」については要注意です。
 ただ、日本の国際収支における、資本収支のうち「直接・証券投資」の赤字(=対外投資の活発化)が、経常収支の「所得収支」の黒字化を生み出していますので、日本の国益につながるようなものにできれば、全面否定するものではありません。
 しかしながら、「国際収支の発展段階説」において、よく言われるような、日本が第5段階の「成熟した金融債権国」を目指すことは、あまり望ましい姿ではないと思います。

(注)国際収支の発展段階説
* 第1段階「未成熟な債務国」 :経常収支は赤字(貿易・サービス収支も赤字)、資本収支は黒字。
* 第2段階「成熟した債務国」 :経常収支は赤字(貿易・サービス収支は黒字)、資本収支は黒字。
* 第3段階「債務返済国」 :経常収支のうち貿易・サービス収支が大幅黒字で資本収支が赤字。
* 第3.5段階「未成熟な債権国」 :造語。経常収支のうち貿易・サービス収支が大幅黒字で、資本収支も黒字、つまり外資の影響大のような韓国や中国
* 「第4段階:成熟的な債権国」 :オリジナルでは「未成熟な債権国」ですが、実態は違うでしょう。むしろ「成熟的な債権国」と言うべき。同段階は、経常収支のうち所得収支も黒字で、資本収支は赤字、つまり対外的な投資にも積極的な日本最も健全な状態だと思います。
* 第5段階「成熟した金融債権国」 :オリジナルでは「成熟した債権国」だが、“金融”を冠してもよいでしょう。経常収支のうち所得収支が大幅黒字で、資本収支は赤字、つまり対外的な投資にも積極的なスイス
* 第6段階「債権取り崩し国」 :経常収支のうち所得収支は黒字だが貿易・サービス収支は大幅赤字で、資本収支も大幅赤字、つまり外国からの証券投資など無ければキャッシュフローが尽きてしまうような米国。覇権国としての末期的局面を迎えるとすれば、次の段階は「第1段階」に戻ってしまいかねません。米国を中心とした世界経済のリセットの段階です。

 もしも「金融資本の自由化」により、日本が第5段階に進むような道を選択するとすれば、却っていびつな経済構造をますます強いられることになるでしょう。
 このことを欧米諸国が我を競って進めようとして、行き着いた先が、“リーマン・ショック”後の、アイスランドやギリシャが直面したような、世界の金融バブル経済とその崩壊事件だったのですから・・・。
 
=====≪quote≫
「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」
(2010/10/31、時事通信)
http://www.jiji.com/jc/zc_p?k=2010103100099&rel=y&g=tha

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP) アジア太平洋経済協力会議(APEC)21カ国・地域のうち米国やオーストラリアなど9カ国で交渉が進む経済の枠組み。コメを含む原則100%の関税撤廃をはじめ、投資、貿易円滑化、サービス、金融など幅広い分野で「障壁」を取り除く取り決めとなる見込み。
 オバマ米大統領は来年秋にハワイで開くAPEC首脳会議の場で交渉妥結を目指しているとされ、日本が加われば交渉に弾みが付く可能性が高い。(了)(2010/10/31-15:46)
=====≪unquote≫


=====≪quote≫
前川レポート(抜粋)
* 正式名称 :国際協調のための経済構造調整研究会報告書(経構研報告)
* 報告時期 :1986年4月7日
* 報告先   :内閣総理大臣 中曽根康弘殿
* 報告者   :国際協調のための経済構造調整研究会
 前川春雄大来佐武郎、田淵節也、赤沢璋一、大山昊人、長岡實、石原俊、加藤寛、細見卓、磯田一郎、香西泰、宮崎勇、宇佐美忠信、小山五郎、向坊隆、大河原良雄、澤邊守(17人)

* 堤言に当たっての基本的考え方
 提言に当たっては、自由貿易体制の維持・強化、世界経済の持続的かつ安定的成長を図るため、我が国経済の拡大均衡及びそれに伴う輸入の増大によることを基本とする。

(1)市場原理を基調とした施策
 「国際的に開かれた日本」に向けて「原則自由、例外制限」という視点に立ち、市場原理を基本とする施策を行う。そのため、市場アクセスの一層の改善と規制緩和の徹底的推進を図る。
(2)グローバルな視点に立った施策
 世界経済の持続的かつ安定的成長によってのみ、日本経済の発展が得られるとの考え方に立ち、我が国の経済構造の是正に自主的に取り組む必要がある。と同時に、世界経済の発展には、各国の努力と協力が不可欠であり、構造調整などの政策協調の実現が必要である。
(3)中長期的な努力の継続
 経済構造の是正並びに体質改善については、調整過程が中長期に及ぶため、息長く努力を継続していかなければならない。しかし、施策の着手については早急にこれを行う必要がある。
=====≪unquote≫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 7日 (日)

【米国経済】6,000億ドルの追加緩和でも直ちにインフレを招きはしないだろう

 前回の備忘録「【米国経済】中銀(FRBや日銀)の“直接引受”による財源確保は法律違反?」の通り、バーナンキの主張は、今の時点では正しいと言ってよいでしょう。

 私ごときがこう書くのも何ですが、彼は日本の1930年代の「高橋財政」(恐慌経済時の対策)の研究者でもあり、現下のデフレ経済の現状とその打開策を熟知していることでしょう。

 ただ繰り返しながら、日本経済のデフレギャップ(絶対額で250兆~300兆円、GDP比で30%台:33~38%)の大きさに比べ、米国のそれ(GDP比で恐らく20%弱程度)は半分ほどしかないでしょうが、絶対額では「6,000億ドル」(≒50兆円)よりも、かなり大きい(≒14兆ドル×20%=2.8兆ドル≒220兆円)ものとされます(出所:スティグリッツ)。従って、バーナンキが言う通り、直ちには「インフレは招かない」のです。

 ここまでは、デフレギャップの上限(潜在GDPの上限値)の推定による、投入マネーの量の目安に関する試算です。

 ただ、もし「6,000億ドル」を毎年、例えば、2~3年以上続ければ、米国経済にあっても一定の乗数効果により(スティグリッツの『フリーフォール』によれば確か2程度?後で要確認)、この投入額よりも大きな産出量(付加価値、所得)を生むこととなります。

(注)「乗数効果」:同効果がないと思っている専門家は、日本の主流派経済学(新古典派=ニュークラシカル派)の信奉者に少なくありません。しかし、それは現実を見ずに、理論や学説を半ば絶対視しているような人々の演繹的思考ゆえのことであり、実際、日本経済の場合、消費性向が約6割ありますので、乗数効果は2.4~2.5倍(≒1÷(1-0.6))近くあります。
 また、主流派経済学が支配すると思われる、今の内閣府でさえ(1970年代の経企庁とは異なる)、公共投資の乗数効果として、最初の年で1.1程度(2008年モデル)であると公表しています。
内閣府マクロモデルは、現実とは随分と乖離した、かなり過小評価されているとの指摘が宍戸俊太郎氏(元経企庁、元筑波大副学長・他)らからなされています。宍戸氏の想定乗数値は、もっと大きなものです。
 他のモデル(例:日経NEEDS、電力中研、東洋経済)では、毎年1のインプットにより、3年後には1.5~3にもなるとされています。つまり、「乗数効果がない」などというのは、一部のエコノミストらが主張する、おかしな話なのです。
 乗数効果があるからこそ、毎年約240兆円ほど(≒2008年度では民間投資約120兆円+政府支出約120兆円)の投資がなされた結果、その2.3倍ほどの実質GDP(産出額)の540兆円(付加価値)が生み出されるのです。投資の結果、所得が生まれ、そして、消費が約300兆円(GDPの約6割=消費性向の値)なされるのです。
 乗数効果がなければ、このことは説明できないはずです。最初のインプット(自生的有効需要約240兆円)だけで、
いかにして「2.3倍」ものアウトプット(実質GDP約540兆円)を産み出すことができるのでしょうか。これだけのことです。あまり難しく考えないことです。

 もちろんこのことは、投入資金が実体経済に向かった場合であり、これが株式市場や金融デリバティブ市場などの金融経済に向かう場合には、マネーの流通速度(=経済にお金が回る回転数)は落ち、新たな金融バブルを生むだけです。現在の懸念点は、ここです。“リーマン・ショック”前と同様、この金融緩和による資金が、また一部の金融関係者のみを潤す可能性は否定できません。

 経済に一定のお金が回った結果、一定の産出量(付加価値、所得)をもたらすだけでななく、同時に物価上昇(≒3~4%台のマイルドインフレ傾向)となります。さらに、今回の「6,000億ドル」を大きく超える追加マネーの投入がなされると、10%に近いインフレに向かうことになります。

 しかしこの程度であれば、そう驚くことはありません。金融緩和にしろ財政支出にしろ、悪性インフレになる前に、金利引き上げ、または財政支出量を減少させればよいのです。普通は前者(金利引き上げ)が、中銀の裁量の範囲で簡単に行える通例の方法です。
 このことは、経済運営のごく基本となります。

 やや疑問に思うことは、スティグリッツが言うような、デフレギャップがそれほどまで米国経済で拡がっているのか、とういことです。2年ほど前(“リーマン・ショック”前)までは、GDPギャップはさほど無かったでしょうから、急にデフレギャップが大きく広がっていることも考えにくいのです。ただ、残念ながら、この重要なデータが目下確認できません。

 実際はデフレギャップがもっと小さい場合、追加緩和策の量によっては、直ちにインフレ傾向が出てくることでしょう。そして、フィッシャー地区連銀総裁らが指摘する、隠れた膨大な政府債務など明るみに出て、米国債が市場に対する信用を失墜した場合、米国債が一気に売られ(最近のギリシャのように金利は急上昇し)、またインフレに伴う米ドルの価値減少(直ちに暴落まで行かずとも、かなりの急落。円に対しては急激な円高)になることは、遠くない将来(2~3年以内か?)に考えられることだと思います。それほど米国経済は不安定で脆弱な体質にあることは間違いないと思います。

=====≪quote≫
FRB議長「インフレ招かない」 追加緩和策で批判に反論
(2010/11/07、共同通信)
 http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010110701000156.html

【ワシントン共同】 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は6日、ジョージア州での討論会で「われわれはインフレ状態をつくる仕事をしているのではない」と述べ、FRBの追加緩和策が将来のインフレを招くとの批判に反論した。米メディアが伝えた。

 議長は「米国は金融危機が始まってからの物価上昇率は著しく低い」と指摘。「FRBはこのような(物価と雇用の)状況に満足できない」と言明し、来年6月末までに6千億ドル規模の米国債を追加購入して大量の資金を供給する量的緩和を拡充した理由を説明した。

 その上で議長は「FRBは物価安定という目標達成を約束している」とし「インフレ率を正常値を超える水準に引き上げる考えはない」と強調した。
=====≪unquote≫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 6日 (土)

【米国経済】中銀(FRBや日銀)の“直接引受”による財源確保は法律違反?

 いよいよ米連銀が、自ら(中央銀行)による”直接引受”(ひきうけ)をやることを表明しました。これは一体何を意味するのでしょうか?

◆米国もしくは世界経済への影響面:

 “リーマン・ショック”前までの米国経済は、“好調”(≒マイルドインフレ気味≒GDP成長率で4~5%程度)でした。言い換えると、GDPギャップ(この場合はインフレギャップ)の小さい状態、つまり、経済の需給バランスが比較的とれている状態でした。

 そこに“リーマン・ショック”を契機とする、金融バブルがはじけ、米国経済は現在デフレ気味の様相を呈してきています。即ち、デフレギャップが増大していると思われます。
 スティグリッツの近刊『フリーフォール』(2010年2月)には、正しい「GDPギャップ」の定義として、「潜在的生産力と実際の生産量の差が数兆ドル」とあります。「数兆ドル」を仮に3兆~4兆ドルとみなせば、対潜在GDP(=潜在的生産力)比率としてのデフレギャップは20%前後となるはずです。

 この推定が正しければ、今回の「6,000億ドル」(0.6兆ドル)程度のマネー注入がなされても、同ギャップの範囲内ですので、すぐにはインフレにはならないでしょう。
 ただ、同ギャップを超える量のマネー注入が今後大量になされる場合には、要注意です。

 何となれば、米国経済でのデフレ傾向は、供給力過多というよりも、需要不足によるものだと推測されるからです。つまり、“リーマン・ショック”前まで好調だった時期に比し、総供給力(設備資本など資本ストック量)は殆ど変わっておらず、大幅な消費の落ち込みによる総需要が不足している状態なのでしょう。この場合、今後のマネーの注入量によっては、一気にインフレに転じる可能性はある思われます。

 この点は、下述の日本経済とは決定的に異なるでしょう。現日本経済は、元々総供給が過多の状態が長らく続いており、同時に総需要不足の状態だと言えます。

 話を米国経済に戻します。この信用創造されたマネーが、米国の株式市場などの金融産業に向かうと、一時的な“経済回復”のような印象を一般人には与えることでしょう。また、香港や上海などの株式市場に向かい、株価を上昇させることも考えられます。

 注意すべきポイントは、それぞれの株式市場に上場する企業の実力(≒将来キャッシュフローを産み出すだけの相当の財務的なパフォーマンス)では、必ずしもないということです。単なるバブルに過ぎないでしょう。
 しかし、それはあくまで金融経済での局面であって、バーナンキも言うように、実体経済の改善は「失望するほど遅い」はずです。

◆日本経済への示唆:

 財政法第4条において、「日銀直接引受」は原則禁止されています。その法的根拠・背景として、1936年当時の二二六事件があるようです。高橋是清大蔵大臣は、随分と誤解されていると思いますが、一言で彼を評すとすれば、経済や財政の本質を理解していた、傑出した先人だったと思います。

 同法においても、その「但し書き」では、議会の承認が得られれば、今般の米国連銀と同じことができる余地は残されています

 デフレ不況下の日本経済への対策として、現下の米国が採っている以上に重要な方策のひとつだと思います。

 日本のデフレギャップは、内閣府が公表するような小さな数値ではないと思います。詳細ははここでは省きますが、私の試算では対GDP比で30%台以上(≒250兆円近く、もしくはそれ以上)には達していると思います。内閣府やシンクタンクのエコノミストが公表するようなデフレギャップ値は、かなり過小評価(GDP比で数%といった1桁台)されたものだと考えています。現実はそのような小さなものでは決してないはずです。シンクタンクなどでは、今は恐らく自身では計算していないと想像されます。また計算していたとしても、統計的な処理に問題(多重共線性の扱い)があると思われる、コブ・ダグラス型生産関数を用いているはずです。

 日本経済のデフレギャップは、バーナンキが今般判断したものよりも、GDP比で相当に大きいですので、新たな財源確保の点で、この方法(日銀の直接引受)は非常に意味があります。即ち、同方法で年数十兆~100兆円ほどの財源を難なく調達できるはずです。この場合、日銀の貸し方(負債)がこの分増えます。ただ、通貨発行特権を有している中銀のマネーの創造の本来的な意味からすれば、これは貸し方でも純資産(自己資本)に相当する部分だろうと思います。

 これについて、ハイパーインフレや日銀の資産価値の毀損などのことを心配する人々がいるのも知っていますが、それはお門違いでしょう。日本経済におけるデフレギャップの大きさは膨大だからです。それにインフレ傾向が出てくれば、むしろそれはデフレ脱却を意味する、願ってもないことなのです。そして、インフレは中銀の金利引き上げなどで、容易にコントロールすることが可能です。多くの国民が苦難を強いられるデフレ(不況)が20年近くも続く状況にあって、中銀の資産内容などよりも、日本経済を優先させることの方が大事なのは明らかなはずです。

 中央銀行の直接引受方式は、米連銀のみならずBOE(イングランド銀行=英国の中央銀行)も、特に“リーマン・ショック”後は採っているものです。米英両国よりも、遥かにデフレギャップが膨大な経済状況にある日本が、これを禁じ手としていることに、大きな疑問を抱きます。現実に合わない法律は改正すべきでしょう。

 また、日銀の独立性が1990年代後半から高まっていますが、抜本的に見直す時期に来ていると思います。現下の、曲がりなりにも民主的な政治体制下にあって、二二六事件当時の軍部暴走による、軍部からの圧力に屈せざるを得なかった当時の日銀の立場と、今の日銀の立場は全く違います。そうだとすれば、財政法第4条は、20年近く続くデフレ不況下の日本経済にあって、自ら首を締めるものとなっています。繰り返しながら、米英が先導するグローバリズムが大好きな日本で、未だ旧態依然の法律を堅持している気が知れません。

 日銀は最近、「非伝統的金融政策」なる、日銀の歴史としては異例な措置を採っています。これは、政治家や民間エコノミストもしくは財務省から日銀への、さらなる金融緩和策への要求を、あたかも交わしているような素振りにも見えます。日銀自らある種精一杯やっていると世間にアピールするパフォーマンスと言えましょう。

 ただ日銀にすれば最大限の、量的緩和に関する今の努力代(しろ)を、人々(例:インフレ・ターゲット論者ら)があまり執拗に批判しても、何も始らないでしょう。何度も繰り返しますが、デフレ下にあっては、金融政策(量的緩和策)よりも財政政策(①通常の赤字国債発行による方策、または②直接引受による資金手当て方策)の方が有効なのです。

 下述の記事では「政策金利よりも資産購入規模などが金融政策の尺度」など、首をかしげてしまうような、どうかと思うことが書かれていますが、今喫緊に求められていることは「財政政策」(上述①または②などの財政支出)なのです。政策金利の問題ではありません。経済成長すれば、自然に金利は上昇します。また、中央銀行(日銀)の資産購入(=日銀の直接引受)とは、金融政策というより、実質「財政支出」に当たるものと解すべきでしょう。

 なぜか、日本では、インフレターゲット論であるとか、非伝統的金融政策など、「金融政策」のことが強調されますが、デフレ下にあって最も有効な方策は、オーソドックスな教科書通りの「財政政策」なのです。

=====≪quote≫
米国債6000億ドル購入 FRBが追加緩和策 デフレ回避へ決断 規模拡大も示唆
(2010/11/4、日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/news/special/article/g=96958A969381959FE2E6E2E39D8DE2E6E3E3E0E2E3E29F9FE2E2E2E2;q=9694E0E5E2E6E0E2E3E2E2E6E7EB;p=9694E0E5E2E6E0E2E3E2E2E6E7E6;o=9694E0E5E2E6E0E2E3E2E2E6E7E1

【ワシントン=御調昌邦】 米連邦準備理事会(FRB)は3日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加金融緩和策を決定した。2011年6月末までに追加的に6000億ドル(約49兆円)の米長期国債を購入し、市場に資金を供給する。保有する住宅ローン担保証券(MBS)などの元本償還分で国債を購入する措置も継続する。景気回復とデフレ回避に向け、新たな量的緩和に踏み切るとともに、必要に応じてさらなる緩和措置も辞さない構えを示した。

 FRBは事実上のゼロ金利政策を導入済み。政策金利に下げ余地がないことから、追加の金融緩和策として長期国債の購入拡大という手段を用いた。国債購入額は5000億ドル規模と見ていた市場予測をやや上回った。

 08年秋の金融危機を受け、FRBはMBSや政府機関債などの購入を開始。住宅ローン金利引き下げなどのために購入を進めFRBの資産は2兆ドルを上回る規模に拡大した。09年秋以降は購入を順次終了させ、一時は異例な金融政策からの「出口戦略」を進めていた。

 米景気の先行き不透明感が強まった今年8月、FRBは一転して保有するMBSなどの元本償還金を米長期国債の購入に充てることを決めたが、この措置を継続する。追加的な長期国債購入のペースは月間750億ドル。実務を担うニューヨーク連銀によると、来年6月末までの長期国債購入額はMBSの元本償還分2500億~3000億ドルと合わせて8500億~9000億ドル規模になる見通し。償還までの期間が1年半~30年までの国債が対象となる。

 FRBは声明で、国債などの資産購入額について「雇用拡大と物価安定を促進するため、必要に応じて調整する」と明記。景気の二番底やデフレへの懸念が強まった際には、購入規模を増やすことを示唆した。

 最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は現行の年0~0.25%で据え置いた。声明では「今後も長期間、異例の低水準とすることが正当化される可能性が高い」との表現を維持した。今後は政策金利よりも資産購入規模などが金融政策の尺度となりそうだ。

 景気判断については「生産と雇用の回復ペースは引き続き遅い」と指摘。前回の表現をほぼ踏襲し、判断を据え置いた。物価動向については「過去数四半期、低下する傾向にある」と説明した。FRBは雇用最大化と物価安定を政策目標に掲げているが、実体経済の改善は「失望するほど遅い」として、現状を脱する必要性を強調した。

 政策決定の採決結果はバーナンキ議長を含む賛成10票に対し、反対は1票。反対票を投じたカンザスシティー連銀のホーニッグ総裁は「資産の追加購入で起こりうるリスクは効果よりも大きい」と判断した。市場の一部にも、国債購入など量的緩和政策の効果は限定的との見方がある。
=====≪unquote≫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年11月 5日 (金)

【日本経済】法人税減税でもなく国際競争力強化でもない

 経済界も官僚も、あるいは政治家も、日本経済を元気にするための政策を誤っているのではないでしょうか。

 法人税減税しても、例えば、「ナフサ免税」をした場合の懸念点を、経団連の渡辺捷昭副会長が的確に指摘しているように、経済へのプラス効果は全くないでしょう。
 そして、研究開発減税の縮小も感心しません。研究開発投資を軽視することは、中長期的には生産性低下の問題を引き起こすことになります。
 この当たりのことは、産業界として、自己防衛の観点からも、当然の意見表明ということでしょう。

 ただ問題は、単に表面税率のみならず、実効税率面での減税を求め、研究開発にいそしむにしても、国内に優良な投資案件がないことです。これがデフレ経済下の特徴です。

 そこで、特にこの2~3年、グローバルビジネス強化の大合唱となっています。内需喚起につながらない、輸出型企業の外需獲得の行動は、自ずと産業空洞化を招きます。実際、世界に冠たる日本の製造業は、殆どを中国などの低賃金労働力を使った工場設備に資本投下しています。結果、そこで製造することで、コスト削減をはかっています。その製品は日本にも輸入されています。
 こうして、いつのまにか産業空洞化を不可避の現象・宿命と考えられてきました。そして、それは内需(日本経済)がもう成長しないという諦めとのセットで語られています。

 しかし、内需喚起(経済成長)は十分可能だと思います。
 経済成長のために「減税」するよりも、デフレ経済下では「財政支出」の方が、理論的にも実際面でも、乗数効果は大きくなります。その際、「投資減税」とセットで行うことが、一層効果を発揮するでしょう。「増税で成長」などは論外です。

 また、「財政規律」を目標にした国々は、まず例外なく経済が不調となります。英国でも米国でも同様です。わが国の場合、1997年から98年にかけての橋本緊縮財政が典型です。このことは理論的にも説明ができます。

 つまり、「経済成長」の結果として、「財政規律」が実現されるのであって、その逆ではないということです。「財政規律」とは、その国の経済パフォーマンスの現象面に過ぎません。後者を目標とすると、特にデフレ下にあって総需要不足である状況を決して打開できません。
 しかし、現実は愚かなこと(真逆のこと)が喧伝され、産業界も官僚もこのことを信じて疑わないようです。オーソドックスな経済学のイロハを知り、理論のみに頼らず現実(過去と現在)を観察すれば、そのことは誰でも理解できるはずなのです。

 同じアナロジーとして、「産業空洞化」防止を目標とするのではありません。それは、内需喚起ができれば、自ずと防止できるはずです。国内経済の内需が今より増大すれば、問題は表面化しないでしょう。

 グローバルビジネスを大合唱する前に、足元の内需喚起の可能性をしっかりと点検することが、本当は求められていると思います。日本の内需の大きさは、今でも世界で2番目の大きさです。外需は、純輸出でみればGDP比の高々3%程度に過ぎません。また、輸出総額で見ても、高々15%程度です。内需は、GDP比で同97%もあります。

 輸出産業を軽視しているわけではありません。今の貿易構造が大きく変わらない限り、内需が成長すれば、その増加分の約15%分が輸出産業へ寄与することになるのです。優先順位を問題にしているだけです。それが理解できれば、減税のことや財政のことも、打つべき手は変わってくるはずです。

 貿易構造のことや、財政問題などは別に譲りましょう。眠くなって来ましたので、今日はこのくらいまでにしておきます。

=====≪quote≫
法人税率下げの財源、税調案に経済団体反発 ナフサ免税・研究開発減税縮小など
(2010/11/2、日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E2E0E2E1E58DE2E0E3E3E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2

 政府税制調査会は2日、2011年度税制改正を巡り、法人税率の引き下げなどについて日本経団連など主要経済団体から意見聴取した。法人税率下げに伴う税収減を補てんする代替財源として政府税調が検討しているナフサ免税の一部縮小案などに反発の声が続出。研究開発減税についても日本企業の競争力を高めるには、縮小ではなく、むしろ維持・拡大が必要だとの意見が相次いだ。

 同日の政府税調では、日本経団連、日本商工会議所、連合、日本税理士会連合会の4団体から来年度税制改正への要望などを聴取した。法人税率の引き下げを巡っては、経済産業省が来年度から5%の引き下げを要望中経団連も改めて「少なくとも5%の引き下げが必要だ」と求めた

 法人税率の5%引き下げに伴う税収減を補う財源案として、政府税調は石油化学製品の原料であるナフサ免税の一部縮小や、企業の欠損金の繰越制度の見直しなどを検討中。これに対し、経団連の渡辺捷昭副会長は「安易な課税ベースの拡大はかえって経済に悪影響を及ぼし、雇用の確保にもつながらない。厳に慎むべきだ」と批判した。

 とくに強く反発したのが、ナフサ免税と研究開発減税の縮小。ナフサ免税については「わずかでも課税すれば、日本で石油化学産業は立地を断念せざるを得ず、70万人の雇用が一気に失われることが必至だ」と強調。研究開発減税についても「各国は国の競争力の源泉としてむしろ拡大している」と縮小案の見直しを求めた

 日本商工会議所の大和田達郎税制副委員長も「法人税率下げのための財源として、経済成長を促進する租税特別措置(政策減税)の縮減は避けるべきだ」と主張。中小法人の法人税の軽減税率を11%以下に下げて恒久化することや法人実効税率の引き下げを求める一方で、研究開発促進税制の恒久化などを要望した。

(注)実効税率[ effective tax rate ]
 法人や個人に対して実際にかけられる税金の負担割合を示す。例えば法人に対する税金には法人税、法人事業税、法人住民税などがあるが、これらの税率を単純に加算したものは表面税率であり、実際の税負担を示すとはいえない。
 法人税法により事業税は損金に計上され、それだけ法人税の課税対象額は減る。したがって、一定の法人所得に対する税金は表面税率で計算した場合よりも低くなる。このように、一定の所得について国税、地方税を合わせていくらの税金がかかるかを計算するものが実効税率であり、税金の重さを国際的に比較する場合の指標ともなっている。

 もともとは法人税率の引き下げに反対だった連合も、今夏に引き下げ容認へ方針を転換。会合に出席した南雲弘行事務局長は「何のために下げるのか目的を明確にする必要がある」と強調。引き下げに際しては、税負担の軽減分を使って、日本の産業空洞化を防ぎ、雇用の維持・創出をはかるよう産業界に約束させる必要があるとの考えを示した。

 政府税調は団体の意見聴取などをもとに、今後経済産業省との間で、法人税率引き下げ論議を本格化させていく構え。成長力を高めるための税率下げと、財政規律の確保の両立をどうバランスさせるか難しいかじ取りが迫られる。
=====≪unquote≫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »