【グローバル経済】中国の出方と米国経済の行方
ある方とのeメールのやり取りの一部を抜粋(+伏字処理)します。いつ、どのようなことを考えたかの、単なる備忘録です。
=====≪quote≫
> ところで2010年初頭の経済予測、非常に興味を持って拝見させていただきました。
> 上海万博の終了と同時に、ほんとうに経済が変わっていくのでしょうか...?
⇒ 特に米国経済については、いろいろ憶測も飛んでいます。
「上海万博の終了」に関する件、少し(?)修正を加える必要があろうかと感じています。
当初、中国が持つ大量の米国債(TB)を、相対的に強まった経済力・政治軍事力を背景に、この時期から年末にかけ売却してしまうのではないかと考えていました。しかし、過度な売却は目下起こるかどうかは、余りなさそうですね。
ただ来年(2011年)から2012年にかけ、下述のような米国の実体経済がさらに悪化していくと、予断は許しません(現在もマスコミ報道以上に悪化しています)。
憶測として、例えば、米国政府は、今も続く経済の不調から近い将来にデノミを行うのではないか、といった類のものがあります。
現在の1米ドルを1/10程度の価値にしてしまうといったようなものです。この場合、米国民にとっては、価格が一律に1/10になりますので、特段の混乱はないはずなのですが、日本のような外国への、米国にとっての借金(負債)は大きく減ること(事実上の棒引き)になり、大混乱が発生することが予想されます。このようなことを諸外国が許さざるを得ない特別な状況が果たして起こるか、ということが大きな関心事となります。
デノミがもし実施するとすれば、米ドルが事実上、世界の実体経済の決済通貨(石油代金の支払い時など)でなくなりかける微妙なタイミングの時でしょう。ただその前に起こることは、ハイパーインフレまで行かないまでも年率で数十~数百%を超える過度なインフレです。これなしには、デノミは実行されないでしょう。意味がありませんので。
過度な悪性インフレは、米ドルの価値が落ちたときに発生します。米国の生産力が落ち、需要過多になった時であり、他方、過度な通過発行が続けられている状況の時です。
ただ今は、需要も減少しデフレ気味でさえあり、まだしぶとく(笑)、踏みとどまっています。それに米ドルを代替するような強力なハードカレンシーは存在しません。ユーロも人民元も、その資格はないでしょう。
しかしこのまま、米ドルを無闇に増やし続け、隠された国家の負債(ダラス連銀総裁が言う、99兆ドルもの政府負債などのこと。14兆ドルのGDP比で何と700%⇔世界最悪と言われる日本のそれは200%)が、為替・債権市場などに“正式に”明るみになった場合に起こると予想される、米ドルや米国債の保有者がそれらを手放したくなる時が、分かれ目でしょう。
その手前までは、基軸通貨としての米ドルをいくらでも“印刷”(文字通り刷ること+コンピューター帳簿上の数字を産み出すこと)できますので、表面上は何が起こっているのか、なかなか分からないものです。
巷の経済学者やエコノミストは、株価や為替などの金融機関が提供するデータや、官製情報(財務データ)の類のみを分析対象とすることが主のようですので、またマスコミはそれをそのまま伝えるだけに近いですので、ビジネスの実務家や投資家にとっては、殆ど何の役にも立たないのではないでしょうか。
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(注)ちなみに、日本の“財政破綻”は偽装されているのではないかと感じています。
政府(国家)の経済破綻は、例外なしに(タイ、韓国、ロシア、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンなど)、外貨建て通貨による外国への借金の利払いが滞る状況下で発生します。
日本は世界一の対外債権国(300兆円弱の黒字)であり、外国への借金はなく、外貨建て負債の利払い問題もありません。日本国債の95%は内国債(財政危機の起きたギリシャの場合、3/4が外国債)ですので、何の問題もありません。
それに政府の約1,000兆円の負債の大半は、同時に、資産を2,700兆円も持つ金融機関が貸手の優良資産(≒10年物国債の利回りが0.9%もない状況。つまり、借手が沢山いる状況)であるのです。政府のみのバランスシートで考えると誤解を生みます。
国家の経済主体には5種類(政府、家計、一般企業、金融機関、NGOなど)があり、その全体の5,500兆円超(金融資産のみ)のバランスシートの中で考えねば意味はありません。
そして、誰かの借金は誰かの資産であるのがバランスシートの原則。
このようなことを#####省もよく分かっているはず。それでも“財政危機”であることをマスコミに言わせているのは、消費税増税を推進したいからではないでしょうか。もしそうだとすれば、実に困ったものです。
消費税についても、政府収入分の税率4%(残り1%は地方分)が欧米諸国に比し、小さいというのは誤解。外国での付加価値税の対象は無税であったり、教育、医療、住宅取得とその関連の不動産・金融など様々な非課税対象項目があります。絶対額で見れば、日本の消費税額約10兆円は国税収入全体の約40兆円の25%も既にあり、これは英国並み(かつてのスウェーデン並み)であるのです。
米国の場合、外国に借金があっても(大概は米ドル建て)、政府の通貨発行特権(どの国にもあります)により、米ドルをいくらでも刷ることができますので、上述のような事態(米ドルの急激な信用毀損など)が発生しない限り、通常問題ありません。
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> #####では、2008年のリーマンショック時以来、2009年の冬まで不動産価格は上がり続けましたが、その後、2010年は少しマーケットが緩んでスローダウンしています。
> 今年は中国からの買い主によって、#####サイドや、#####の高級物件がよく売れたようです。
⇒ #####経済のことは、よく分かりませんが、上海や香港の投資家は、どの国にも(日本も例外ではありません)、現在、積極的な投資もしくは買いに走っています。
特に人民元は政治的にドルペッグされており、異様に安く抑えられています。現在の「1米ドル≒8人民元」は、実際は「1米ドル≒3~4人民元」程度であるべきでしょう。にもかかわらず、海外の物件を買い漁れるのは、人為的な操作による通貨安以上に、うまい儲け口に預かれる立場の、よほどのお金持ちなのでしょう。
その国の経済とは、それぞれ固有の事情がありますので、#####のマクロ経済(GDP成長率、財政状態、金利動静など)に加え、国際収支(貿易・サービスに関する経常収支+直接・証券などの投資に代表される資本収支)のことも考慮せねばなりません。
それに加え、周辺経済圏の経済情勢に、否が応でも影響を受けますので、このファクターを加えて眺める必要があろうかと思います。
(略)
=====≪unquote≫
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