« 【JRIマクロ勉強会】Q&A:BOPやグローバリゼーション推進の源泉+○○○燃料 | トップページ | 【マクロ経済】民主党政権下の財政出動に期待 »

2010年3月 9日 (火)

【新聞コメント】「クラウドが拓く、日の丸ITの岐路」の視点に欠けるもの

 少し前(2010年1月29日)、日経新聞社の○○記者(『日経産業新聞』担当)が、私のところを訪ね、主にクラウド・コンピューティングに関する取材に応じました。
 その内容が昨日(2010年3月8日)記事になっていました。

 それに伴う弊社広報部担当者へのeメール内容と、その記事についての補足を簡単に下に行っておきます。

=====≪quote≫
広報部 ○○さん
新保です。

 ご丁寧にご連絡有り難うございます。
 当件、随分と経過していましたので、もう忘れていました・・・。
 それに日経○○記者は、民主党で通信政策に詳しい人をどなたか私に紹介してくれませんか、と言うこと(のみ?)に随分とご関心を持っていたようでしたので。
(記事を今朝手にしてみると、結局、原口総務相の元に行かれたようですね。)

 そういえば、昨日、当社代表電話に山形県のある方(この日経産業の記事をご覧になった60歳代の男性)から、電話でのご質問・感想などの件で、私とやり取りがありました。
 クラウド・コンピューティングの今後について、ご興味を持っているようでした。今度当社まで、地産の枝豆を持ってお礼のご挨拶に来たいとおっしゃっていました。(^-^)

PS:
 クラウド・コンピューティングの本質とは、【A】IT革命を通じた時空間の開放により、世界最高の技術・生産力(欧米)と世界最低賃金(BRICsなど)とが結びついたことで実現した、また同時に進んだ金融革命とが後押しする(前者国が後者国へファイナンスする)ことで実現した、新たな世界パラダイム(世界帝国化の流れ)を支える一要素であろうかと思います。A国(警察庁の隠語)の明確な戦略をここに垣間見ることができます。

 その意味では、この流れを是認する際に、わが国は出遅れた感がありますが、必ずしも是認してよいことばかりではないと考えています。

 他方先般、【B】菅大臣が打ち出した継続的かつ積極的な財政出動により実現可能な、新たな“内需型社会資本大国”に向け、より具体的には地方をも元気にするために、様々な国内資源(人、地場企業、地場環境など)とクラウド・コンピューティング資源とを有機的に結びついた際、別の意義が見出せるコンセプトでもあろうかと思います。

 (略)後半の解釈については、恐らく日経○○記者の理解を超えているものかと思います。。。
=====≪unquote≫


 その記事について、主な内容を抜粋します。

=====≪quote≫
■クラウドが拓く、日の丸ITの岐路、霞が関システム統合迷走
(『日経産業新聞』、2010年3月8日)

≪抜粋≫

* クラウドは情報システムの統合とグローバル化を加速させ、既存のシステムを陳腐化させる力を秘めている。

* 国や自治体、情報関連産業はクラウドの大波に乗れるか

* 霞が関クラウドが最初に発表されたのは昨年(2009年)3月、当時の麻生政権が打ち上げた。構想には世界最高水準の電力利用効率を持つ次世代データセンタ-(DC)の構築などが含まれ、日本のIT競争力を高めるのが狙いだ

* そもそも“霞が関クラウド”は自民党時代に姿も形もなかった。構想も我々がゼロから作っているのが実情だ。不正利用の防止や国民のプライバシーなどに配慮しつつ、早急に構築する〔原口総務相〕

* 日本はグーグルなどの米国勢に先行されたが、政府の支援があれば追いつく可能性がある〔情報経済学が専門の須藤修東大教授〕

* だが構想は迷走。当初1,000億~2,000億円の国費を投じ、全国に次世代DC網を拘置する案もあったが、景気後退の影響で前政権が2009年度に盛り込んだのは、“電子政府クラウドの推進”など207億円だけ。民主党政権下では事業仕分けなどでさらに削られ、52億円まで圧縮

* 北海道(候補地:岩見沢市)で雪や地下水を使ってサーバーを冷却する最新型DCの実験の予算も消えた。他方、IIJ社(鈴木幸一社長)は、2010年2月上旬、静岡県のある工業団地で次世代DCの実証実験を開始。

* 米国や中国などは官民一体でITを向上させており、日本が取り残されている。例えば、米IBMは昨年(2009年)、米空軍向けのクラウド基盤に着手。グーグルも年内に、米政府にクラウド方式で表計算送付となどの提供を始める。今年はグーグルやアマゾン・ドットコムが、DC建設などで相次ぎ日本に進出してくるとみられている〔情報通信分野の経営戦略に詳しい日本総合研究所の新保豊主席研究員〕

* 自民党政権時代とは違う霞が関クラウド構想が登場し、日本のIT競争力を引き上げる起爆剤となるのか。海外の国や企業は待ってくれない
=====≪unquote≫
 

■補足

◆≪グローバル化を加速させ、既存のシステムを陳腐化させる力

 情報通信産業を含む実体経済(貿易財)の「グローバル化」を考慮する際、それが特に「金融グローバル化」と不可分一体で動いている様に注視する必要があります。

 「金融グローバル化」とは、水野和夫氏(三菱UFJ証券のチーフエコノミスト)の言葉を借りれば、ITで市場を一体化させ、実物経済を一体化させながら、金融の自由化と新自由主義の強いドル政策でマネーは全て米国に集める、すなわち「全てのお金はウォール街に通ずる」なるパラダイムを構築するための「米国金融帝国」もしくは「米国投資銀行株式会社」の明瞭な意図・戦略のことです。

 ちなみに、水野和夫氏の代表作である『100年デフレ』(2003年2月)、『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(2007年7月)、『金融大崩壊』(2008年12月)、その他論文などはおよそ読破しています。特に最初の著書は大作・力作だと感心しています。経済学の知識に加え、その他世界の財閥史・金融史や社会学などの基礎知識などが不十分な場合、この著書の大半の読者は、恐らく水野ワールドに引き込まれたままで帰って来れなくなることでしょう。(^-^)
 数百年の世界経済史の中で、現代の世界的なデフレ経済を分析した力量には目を見張るものがあり、大変勉強になります。

 ただ、経済を動かす人間(特に資本家)そのものやその行為(その心理面、思惑、さらには脳機能学からの側面)についての考察には、最近ようやく気付いてきたようですが、少なからず甘さがあるのではないかと感じます。同氏(および三菱UFJ証券)の豊富なデータを駆使した経済分析は日本ではトップクラスにあることに間違いありませんが、分析をする際の前提(あるいはその結果に対する解釈)には、私との価値観の違いもあるのでしょうが、明らかに誤っていると思える個所が幾つか(そう多くありませんが)散見されると思います。何れ近く、このブログでも触れてみたいと思います。

 加えて、マクロ経済学を正しく理解していれば、何も数百年前からのデフレから論じなくとも、現下のデフレ経済をきちんと分析できますし、そこから脱却するための抜本的な解決策もあります。さらにグローバルな、言い換えますと、一物一価の経済が支配する単一経済(単一通貨)を標榜する世界的な、経済パラダイムの是非を論じることができます。水野ワールド(水野氏流の考え方・アプローチ)などを持ち出す必要はありません。私には、同氏においても多分に恣意的かつ演繹的な方法論を感じてしまうのです。

 話を戻します。「クラウド・コンピューティング化」とは、IT革命の一部であり、「金融グローバル革命」と連動して動いている「世界帝国パラダイム」の完成のための1つの現象だということです。

 「既存のシステムを陳腐化」させる原動力の源泉は、前述の通り、世界界最高の技術・生産力(欧米)と世界最低賃金(BRICsなど)とが結びついたことで実現した、新たな世界パラダイム(世界帝国化の流れ)に沿ったものだからです。

◆≪国や自治体、情報関連産業はクラウドの大波に乗れるか

 わが国の行政府(中央+地方)や情報関連産業界は、「クラウドの大波」の本当の意味・背景が分かっているのか、やや不安になります。
 単なるICT上のことではないのです。

 このままのトレンドで物事が進展していくと(任せてしまうと)、「世界帝国パラダイム」に呑まれること必至でしょう。その尖兵が、GoogleやAmazon.comやsalesforce.comらなのです。

◆≪不正利用の防止や国民のプライバシーなどに配慮しつつ

 もし国が主導でデータセンタ-を構築しようとする場合、もしくは国家データセンタ-などを作るとなった場合の、「影」の部分のみ補足しておきます。

 ジョージ・オーウェル(George Orwell)の小説『1984年』の世界のことです。
 古今東西、政府というビッグブラザー(オセアニア国の指導者のことを指しますが、度重なる歴史改竄のため、来歴どころか本当に実在するのかさえ不明な、ある種の独裁権力)を、国は常に潜在的に宿していると考えた方がよいでしょう。

 従って、国民データを全て、そのビッグブラザーには渡してはならいのです。黒髭でもたくわえた温厚そうな人物として描かれているビッグブラザーのことを、もちろん原口大臣と言っているのでは毛頭ありません。権力の象徴を指し示しているだけです。

 杞憂と思われるかも知れませんが、わが国の国家基幹システム市場において、1996年~2001年にわが国で実施された“金融ビッグバン”以降、徐々に外資系IT事業者(もしくはIT系コンサルティング会社)により、そのシェアを奪われているのも実態のはずです。

 水野和夫氏が強調する「1995年」の直後、つまり米国のルービン財務長官の採った「強いドル政策」を通じた「米国金融帝国化」または「米国投資銀行株式会社化」という世界戦略なる分水嶺が形成される直後のことです。
 彼の国のビッグブラザーの力を背にしているとすれば、警戒せねばなりません。

 また、須藤氏(東大教授)が言う、「米国勢に先行されたが、政府の支援があれば追いつく可能性がある」というのは正しいと思います。しかしながら、事態を正確に把握すれば、政府支援の範囲は、クラウドやICTに限らないことなのです。グローバリズムを牽制しつつ(特に国際資本の完全自由化の見直しなど)、国内にあっては財政政策(や金融政策)という経済対策と連動することが不可欠なのです。

◆≪景気後退の影響で、(略)事業仕分けなどでさらに削られ、52億円まで圧縮≫、≪雪や地下水を使ってサーバーを冷却する最新型DCの実験

 匠の国の人々(日本人、中でもメーカーやIT事業者)は、とかく技術に走りがちだと思います。地場資源を活用して冷却する方式は、寒冷地のノルウェイなどでも話題となっており、グローバル・データセンタ-の誘致合戦が、様々な国々で行われつつあります。

 日産自動車の電気自動車(EV)事業と連動した戦略的な「グローバル・データセンタ-」のことが、極秘事項ゆえにほんの部分的な情報として新聞紙上に先日報じられました。先週、私も顧問を務める産官学のある勉強会で、日産自動車の主管の方(電気自動車担当)を講師にお呼びし、その件について少々詳し目のお話しを聞くことができました。

 当日はEVに関することがテーマだったのですが、私から2点コメントしました。
 ①現在大騒動となっている、トヨタ自動車の米国での急発進事故問題をどう読むか。米国でも違法なはずの“トラック野郎”の強力なCB(Citizen Band:市民バンド)無線による、トヨタ車とのすれ違いにより生ずる可能性のあるエンジン電子制御機能へのノイズの影響について。
 ②米国南部の広大な帯水層地域に進出し工場を建造・生産していることで、既に地下水が枯渇しつつある“ヴァーチャル・ウォーター”問題について。ライフサイクルで見た場合、自動車1台の生産に水が378トンも使用されるそうです〔出所:「グローバル・イノベーション・アウトルック・レポート2009」〕。
 ここではこの2つについての詳細は記しません。

 DCがどれほどの冷却水(地下水)を必要としているかのデータがありませんが、その使用量が膨大な場合には、内燃機関型自動車産業と同様に、潜在的なリスクがあるかも知れません。他産業で現実に起こっている、このヴァーチャル・ウォーター問題は、人為的なCO2排出問題の比にはならないほど、私たち人類の生活圏への影響の点で深刻なのです。

 さて、その勉強会でも抜け落ちていると思われる(あるいはもっと政府に働きかけて強調すべき)点こそが、この「景気後退の影響」、すなわち「景気回復の手立て」に関することだと思います。

 デフレ不況、つまり「総需要<総供給」の状態にあるのですから、まず政府が投資を行い、民間企業の投資需要を生みだすこと、ひいては消費者の所得・購買力を向上させることが不可欠です。

 日本の主要エコノミスト(主に新古典派、新自由主義者、あるいはグローバリスト)が何と言おうと、それ(ケインズ的な政策≒財政出動)が、デフレ不況下にある日本経済には必要なのです。言い換えれば、グローバルな舞台での資本家への利潤分配率(株式配当など)を引き上げることを目的としたグローバリズムに対して、周辺国における国民への利潤分配率(≒雇用者所得への配分率)を引き上げることの方策が、いま切実に求められているのです。私はもちろん社会主義者ではありません。そうしなければ国民(≒消費者)の購買力が増大しません。増大しなければ、企業の利潤も高まらないのですから。

 幸い先日(2010年3月4日)、菅直人財務相が「積極財政を数年継続=財政再建は“その後”に」と、そのケインズ的な政策実行の意思表明をしました。その財政出動の規模によっては、景気回復の契機になることでしょう。IMFや内閣府らが算出するGDPギャップ(需給ギャップ、今はデフレギャップのこと)の規模に相当する、年間最低30兆~40兆円が必要でしょう。本当はそれ以上必要なのですが・・・。私の試算では、デフレギャップはもっと遥かに大きいからです。

◆≪自民党政権時代とは違う霞が関クラウド構想が登場し、日本のIT競争力を引き上げる起爆剤となるのか。海外の国や企業は待ってくれない

 「霞が関クラウド」とは、上述の通り、単なる供給能力を増大させる(ICT基盤を整備する)だけのものでは効果がありません。
 総需要を刺激することが不可欠です。その順番として、まずは「新たな生産力を生まない投資」(=政府による社会資本整備のための投資)が必須。それには、継続的かつ大規模な財政出動を通じた、新たな「内需型社会資本大国」を目指した“国のかたち”を描くことが求められます。

 「クラウド」1つとってみても、総務省のみならず財務省やその他関係省庁(国交省、環境省、経産省、文科省・・・)らの横断的な取り組みが求められます。
 そのための抜本的なアクションには、公務員制度改革や道州制の導入が前提となることでしょう。話題が広がり過ぎますので、この件はまた別途としましょう。

 マスコミの論調で気に食わない点の1つは、例えば、「海外の国や企業は待ってくれない」といった件(くだり)です。
 これは、冒頭の「【A】IT革命を通じた時空間の開放により・・・」に関することを是認する言い方だからです。
 これを是認することの大きな流れは、もはや無視できないことを私も認めますが、他方「【B】菅大臣が打ち出した継続的かつ積極的な財政出動により実現可能な、新たな“内需型社会資本大国”に向け・・・」なる視点も(こそ)、今の日本経済には重要だということを強調しておきたいと思います。

 急がば回れで、【A】グローバリズムに合わせることの前に(あるいはそれと並行して)、【B】内需型社会資本大国を目指した新たな国づくり、別の表現としては、もはや満ち足りている“消費欲求”ではなく、“社会欲求”にこたえ、国民の生活の質(QoL)向上につながるようなサービスを開発(その需要を喚起)し、そのための情報通信基盤(通信ネットワークやデータセンタ-設備、そしてそこに備わるクラウド機能)の整備を官民挙げて進めることが大切だと思います。そして、それがひいては「日本のIT競争力を引き上げる起爆剤」になるものと考えます。


 以上、補足・追記していますが、日経の○○記者には、ざっとこのようなことの骨子をお話ししました。新聞記事になったりテレビで報道されたりするのは、コラムの紙面やテレビ画面・放映時間の制約(もしくは取材者の感度・好みなど)により、そのごく一部が切り取られて読者・視聴者にコンテンツが届けられる、と言うことです。(^-^)
 

|

« 【JRIマクロ勉強会】Q&A:BOPやグローバリゼーション推進の源泉+○○○燃料 | トップページ | 【マクロ経済】民主党政権下の財政出動に期待 »

3.情報通信・メディア・ハイテク産業」カテゴリの記事

4.企業経営(戦略、マネジメント手法など)」カテゴリの記事

1.マクロ経済(財政・金融)とグローバリズム」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【新聞コメント】「クラウドが拓く、日の丸ITの岐路」の視点に欠けるもの:

« 【JRIマクロ勉強会】Q&A:BOPやグローバリゼーション推進の源泉+○○○燃料 | トップページ | 【マクロ経済】民主党政権下の財政出動に期待 »