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2009年12月 2日 (水)

【講演】「NTT版クラウド」に求められること・想うこと

 日経BP社『日経コミュニケーション』誌の松本編集長からの、少し前のご依頼により、同誌が主催するセミナー(「NTT版クラウド」の実像)での終盤にあたる、パネル・ディスカッション「NTT版クラウド」への提言に関することで、私も登壇することになっています。

 そのご案内をここに貼っておきます。また、一番下に、私が想うことを記しておきます。

=====≪quote≫
■「NTT版クラウド」の実像
http://coin.nikkeibp.co.jp/coin/ncc/semi/0912/
(2009年12月10日、日経BP社『日経コミュニケーション』誌)

 2009年に業界を席捲した「クラウド・コンピューティング」に向けて,日本の通信事業最大手のNTTグループが本格的に動き出しました。米国のグーグルやアマゾン・ドットコム,マイクロソフトなどが提唱するクラウドとは異なり,NTTはグループ内で構築するNGN(次世代ネットワーク)やLTE(long term evolution)網の機能を生かし,その上位にあるクラウドで通信事業者ならではの信頼性と安全性を高めたサービスを展開しようとしています。

 本セミナーでは,NTTグループのクラウドを理解するため,その基幹技術である「CBoC」の開発を進めるNTT情報流通プラットフォーム研究所をはじめ,クラウドを使い企業向けサービスを展開するNTTコミュニケーションズとNTTデータ,クラウドを支える基盤網NGN(次世代ネットワーク)を運営するNTT東日本,無線ネットワークとクラウドとの連携で新しいサービス像を描くNTTドコモのキーパーソンが,それぞれの役割からクラウドの実像を詳しく解説します。

 さらに国内外の通信事業に詳しい日本総合研究所の新保主席研究員と海外のクラウド・コンピューティングへの造詣が深い早稲田大学の丸山客員教授が,ディスカッション形式でNTT版クラウドの課題整理とNTTグループへの提言を行います。加えて,NTT(持ち株会社)でグループ内のクラウド戦略を指揮する宇治副社長に,登壇をいただくことが決定いたしました。

 NTTグループはNGNの構築時点から業界の枠にとらわれないパートナシップを標榜し,様々な企業とネットワーク基盤を活用したサービスの開発を進めています。ただグループ内のNGNやLTE網などの基盤インフラに加えて,プラットフォームやアプリケーションの実効環境をどの機能をどの範囲までグループ外のパートナ企業に公開するかなどはまだ明確に見えていません。その一端がセミナーの講演の中に見えるかも知れません。

 本セミナーは,クラウドを利用したいユーザー企業様やパートナ企業様だけなく,NTT版クラウドの進展によるビジネスモデルの変化を読み取りたい通信業界の皆様に,有益な情報をお届けいたします。
 通信事業にかかわる皆様にとって,今後の戦略を考える好機となるでしょう。ご来場をお待ちしています。

開催概要
日時 :2009年12月10日(木)12時30分開場、13時00分~17時45分
会場 :青山ダイヤモンドホール 地下1階 サファイアルーム(東京・表参道)
主催 :日経コミュニケーション
(略)

プログラム

13:00~13:15
開催挨拶
 日経コミュニケーション編集長
* 松本 敏明

特別ゲスト
 NTT 代表取締役 副社長
* 宇治 則孝氏

13:15~14:00
技術解説 クラウド・コンピューティング技術CBoCの全容
 NTT情報流通プラットフォーム研究所 所長
* 後藤 厚宏 氏
 NTTグループは,これまで通信事業者として培ったノウハウをどうクラウド・コンピューティングに生かすのか。キャリア・クラスの信頼性をもたらす管理・制御技術である「CBoC」(Common IT Bases over Cloud Computing)のコンセプトを中心に,クラウドが目指すサービス像とそのために不可欠な技術を解説する。

14:00~15:00
ビジネスモデル BizCITYとSettenで広がる企業のクラウド環境
 NTTコミュニケーションズ
 ビジネスネットワークサービス事業部 部長
* 原 隆一 氏
 NTTコミュニケーションズでは,セキュアかつユビキタスなプライベート・クラウド環境を実現するICTサービスを“BizCITY”としてラインナップし,順次拡充を進めている。本セッションでは、“BizCITY”への取組みについて,通信事業者としてのクラウド・サービスへのアプローチとクラウド基盤技術“Setten”を活用したサービスの展開など,今後のビジネス展開を含め紹介する。

NTTデータのSaaS/PaaSプラットフォームが実現すること
 NTTデータ ビジネスソリューション事業本部
 サービス&プラットフォームビジネスユニット ビジネスユニット長
* 中井 章文 氏
 NTTデータは,プライベートクラウドの構築からパブリッククラウドのためのサービスプラットフォームまで,統合的にサービスを提供する。中でも,来春提供予定のアプリケーション&プラットフォームサービスのためのプラットフォームは,立ち上げまでのリードタイムや導入コストの削減を実現する基盤として,企業ニーズに柔軟に対応していく。今回はそのプラットフォームを中心に取り組みを紹介する。

15:00~15:15 休 憩(15分)

15:15~16:00
基盤技術1 クラウドを支えるNGNの最新技術
 NTT東日本 ネットワーク事業推進本部
 研究開発センタ
 ネットワークシステム開発担当 担当部長
* 相原 正夫 氏
 NTTグループが推進しているNGN(次世代ネットワーク)は,ユーザーがNTT版クラウドを利用するうえで鍵を握るインフラである。NGNが備える「帯域保証」や「回線認証」といった機能のほか,キャリアグレードの高信頼性を支える技術について分かりやすく解説する。

16:00~16:45
基盤技術2 LTEによる無線高速化と端末・ネットワーク連携でクラウドはこう変わる
 NTTドコモ 研究開発センター
 サービス&ソリューション開発部 部長
* 栄藤 稔 氏
 NTTドコモが2010年のサービス開始に向け構築を進めている「LTE」(long term evolution)網は,クラウド環境への高速無線アクセス・インフラとして期待される。この高速アクセス網によるモバイル端末とクラウドの連携が生み出す全く新しいサービスの姿を提案する。

16:45~17:00 休 憩(15分)

17:00~17:45
パネル・ディスカッション: 「NTT版クラウド」への提言

≪パネリスト≫
 日本総合研究所
 理事・主席研究員
* 新保 豊 氏

 早稲田大学大学院
 情報生産システム研究科 客員教授
* 丸山 不二夫 氏

≪モデレータ≫
 日経コミュニケーション 編集長
* 松本 敏明
=====≪unquote≫


 私の「クラウド・サービス」に関する問題意識のみ、ここに記しておきたいと思います。

◆海外(特に米系)企業の動きを見る視点:

* Google社やAmazon.com社あるいはSalesforce.com社においての共通点は、サービスに求められる品質が必ずしもキャリアクラスの保証(SLAにより99.99%)を伴うものではない点(99.9%でOK)が挙げられます。
 この差をどう見るかは、ユーザー企業によって、かなり異なるはずです。例えば、一刻を争う金融や軍関係、生命の安全を左右する医療分野などでは、意味合いが違うはずです

* ただ、それ以外の一般サービスにおいては、この差よりも、「価格」や「利便性」の方が、「機能」や「信頼性」よりも、ユーザーにとっての価値が高いのでしょう。従って、これら米系企業の躍進があり、同時に日本企業にとっては脅威になっているのです。
 ちなみに、マーケティング上の「購買階層モデル」(またはスライウォツキーのマイグレーションモデル)では、①機能→②信頼性→③利便性→④価格の順で、ユーザーにとっての価値分布がマイグレーションされていくとされます。


◆「クラウド」(≒XaaS)の持つグローバル・マクロ経済的な視点:

* まず、「XaaS」(SaaSやクラウドなど)という言葉について。一体誰が名付け親(仕掛け人)なのでしょうか。最近の金融や経済の分野では、「BRICs」や「NEXT11」にしろ、たいがいGS International(ゴールドマン・サックス・インターナショナル)社(@London)がネーミングし、グローバルな市場を“リード”しています。
 ICT分野においても、今のグローバル経済をにらんで、きっと仕掛け人がいるはずです。私はいつもそう睨んでいます。

* この言葉を分解してみましょう。
 最初の「X」とは、下層から上層に順に、「Infrastructure」、「Hard」、「Platform」、「Service」あるいは「Knowledge」の頭文字を意味します。「IaaS」、「HaaS」、「PaaS」、「SaaS」、そして「KaaS」のように。

 特に私は、日本経済が深刻なデフレ下にあって、「Infrastructure」が鍵を握っていると思います。ちなみに、日本経済のデフレについて、実際は1970年代から始まっており、遅くとも1993年頃から深刻な状況にあります。今年になって、政府や日銀がようやく公認したようですが、休眠状態から本当に覚めたことを願うばかりです。

* そして、「S」。これは様々なサービスやアプリケーション(APL)を意味するものです。「クラウド」(≒XaaS)全体が上位層サービスといった位置付け・理解となっているようで、これからは「サービス」だと期待が集まっています。
 悲しいかな、ここが情報通信産業全体が抱える盲点そのものなのです。

 デフレ不況下で、国民の所得(購買力)が減少しているなか、消費は上向きません。消費と言う被説明変数は、所得と言う説明変数との関係にあって、見事に因果関係(ほぼ比例のような関係にあることが実証されています)があるのですから。
 つまり、いくら「X」部分の供給側(ICT設備など)を拡充しても、効果はさほど得られないのです。デフレとは、「総供給>総需要」にある状態のことです。物価(消費者物価またはGDPデフレーター)の下落が連続で何ヶ月続くといった定義(政府・日銀やIMF)が、そもそも誤っているのです。その定義は、あくまで現象面を語っているに過ぎません。

* 問題は、所得の減少。では、いかにすれば増大できるか。
 資金(マネー)のICT産業への投入です。必ずしも最初は「民間投資」を意味してはいません。ICT企業は現下、投資したくとも有望案件がなく投資できないのですから。

 従って、解決策は国民(消費者)の貯蓄からのマネーの移動か、新たなマネーを創って市場に投入するか、消費者に手渡しすることが有効です。
 もちろん前者については、社会不安などが背景にあって、財布の紐はきつく締まったままですから、今は期待できません。

 残る選択肢は、政府が支出する(財政赤字を発生させる)しかないのです。このことは決して悪いことではなく、今の日本経済にとっての必然なのです。膨大なデフレギャップ(GDPギャップ)が存在しますので、新たなマネー(例えば、50兆円ほど)を経済に注入してもインフレになることは、まずありえません。仮にあったとしても、インフレを抑止するのは、そう難しいことではないのです。

* 長くなりますので簡単にしますが、上述の通り、だから「Infrastructure」に意味があるのです。政府の社会基盤投資(新たな公共投資)と連動させて行うことが有効です。
 この接点なくしては、単に日本経済下にあって、さらに総供給を増大させ、デフレギャップを大きくするだけとなってしまいます。ここにいかに知恵を結集できるかが、実は「クラウド・サービス」の明暗を分けることになるでしょう。 

* グローバル経済における「クラウド」(≒XaaS)とは、一体どのような意味を持つのか。
 BRICSやNEXT11において、まず、だぶつき(過剰流動性)気味のマネー(もしくはIMFなどが日本・他から引き出して手にしたマネー)を投入し、それら国々の購買力を高めます。所得向上のかたちで、高いGDP成長を促します。

 次に、様々な「X」なる供給側の基盤を安価に整備します。そうすれば、これらの国々では「S」が盛り上がります。グローバル・マクロ経済的にはこうなるのです。この新古典派経済学的なアプローチで、世界を経営(マネジメント)しているメカニズムが働いているのです。
(ちなみに、新古典派経済学的なアプローチとは、殆ど経済学とは言えない代物で、経営学と言った方が近いもの。だからMBA流経営学のみを身に付けた経営コンサルタントとも相性がよいのです。)

 いわば、米系企業など(あるいはMNEs=多国籍企業)が、世界の国々の複数市場をあたかも1つ市場として活躍(Conduct)できるよう、グローバルベースでの市場構造(Structure)を創るのです。そうなれば、そのグローバル市場で最も有利にその果実(Performance)を手にできると言うわけです。産業組織論における、シカゴ学派の「CSPパラダイム」の実現ですね。^^;

  

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