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2009年2月

2009年2月27日 (金)

【テレビ出演】ICT産業200兆円の怪(不思議)

20090226wbsict_2 昨日(2009年2月26日) 、総務省鳩山総務大臣に手渡された「緊急提言」で、現在約100兆円の市場規模を、10年以内で2倍の200兆円にする(したい)と報じられました。

 昨日は珍しく、テレビ収録の絵が日に2回(『NEWS FINE』と『WBS』)も出ました。私のコメントなど、例によって大したことはありません。しかし、手前味噌ながら“大したこと”を言っている部分もたまにはある(^-^)と思うですが、それは時間の関係もあって、大概カットの対象になります。これは普通のことです。

 昨晩の件、特に景気対策の効果として、かなりグレイな感じがしますので、このBlogで補足します。
 後述の通り、その景気対策によっては、これまでのやり方(単純な財政出動型)では全く不可能な実現目標であること、しかし、本気になれば(本当の金融政策を採れば)達成不可能でもないこと、という相反する見方を、簡単に記しておきましょう。これは極めて大事なことです。企業でも政府でも大概の皆さんは、このことをご理解していませんので。

=====≪quote≫
 総務省のICT=情報通信に関する懇談会は、景気対策の一環として、電波の有効利用による「ぶつからない車」などの開発や情報通信を重点的に教える教育特区の設置などを盛り込んだ提言をまとめました。

 鳩山総務大臣に手渡された緊急提言では、景気対策として現在、約100兆円規模の市場を10年以内に2倍にするとしています。そのなかでは、2011年7月にアナログテレビが終了することから、空いた電波帯域を利用してワイヤレスで電化製品が動く「コードのない家」や、対向車や通行人らを感知して衝突を避ける「ぶつからない車」の開発を提言しています。
 また、医療や教育の分野でICTの利用を促すため、予算を特別につける特区の設置などの計画が盛り込まれています。総務省は、今回の提言を受けて経済対策に反映させる方針です。
(出所)広島ホームテレビHP(2009年2月26日 政治ニュース)
=====≪unquote≫

■私の見方:
(ビジネスパーソンも知っておきたいマクロ経済学的な視点)


 ICT産業の定義にもよりますが、『情報通信白書』などによれば、2008年ベースで同産業の市場規模は60兆円程度だと思います。
 それを「100兆円」にすることもかなり難しいと思いますが、ましてやそれを「2倍」(200兆円?)」にすることは、次のような理由で、極めて非現実的でしょう。

 昨晩の報道では、確か「ICTニューディール」という表現が用いられていましたので、きっと米国オバマ政権の「グリーン・ニューディール」や昨年末の米TIME誌の表紙を飾った「The New New Deal」のことが意識されているのでしょう。やや安易かなと思いますが・・・^^;

 つまり日本でも、きっと「財政出動」型の景気対策が意識されているのではないでしょうか。それは、ICTインフラの整備(ホームネットワーク、ITS、WiMAXなど)を通じたものとして。
 言い換えますと、従来の公共事業的な意味合いを、これまで長く新古典派経済学的なアプローチ(市場原理主義的、グローバリズム流)を採ってきた、その本家であった米国がオバマ政権になって、新たなにケインジアン的なアプローチを採ろうとしていることに、重ねて見ているように思います。

 しかし、このケインジアン的「財政出動」型アプローチは、景気対策には中立的な(=実際は効かない)のです。

◆「財政出動」(政府支出)での、従来型の国債を発行し、資金を調達する方法の下述の過程に見る無意味さ:

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①投資家(金融機関、個人)は、国債を購入する前に、まず民間部門からマネーを引き上げます。国債を購入する資金とするためにです。

②そして、投資家による国債購入がなされます。 

③しかしこれは、既に存在する購買力の再配分に過ぎません(=新たな購買力を創造しません)。

 経済成長の基本構造である、後述のMV=PT≒名目GDPの左辺(新たな信用創造量)を増やさないからです。従って、右辺(新たな購買力=経済成長の量)を増やさないのです。

④すなわち、経済成長には中立的なのです(量的クラウディング・アウト=不胎化)。従って、この方法では景気回復はしません(経済成長はしません)。

*******************************

 これが現実的な経済メカニズムです。国の経済全体(GDP)についても、当該産業(例:ICT産業)でも同様です。
 実際、過去10年ほどで150兆円の財政出動がなされましたが、実質の経済成長(GDPの伸び率)がほぼゼロであったことが、上記の意味の証左です。

 ただ理論的には、次のような有効な方法があることも、お話ししました。

景気対策(経済成長)のための有効な方法

*******************************
〔1〕例えば、情報通信産業セクターという民間経済部門が、直接、金融機関(日銀ではなく市中銀行)から、マネーを融資してもらえばよいのです。

 資金(マネー)はほぼ、いつでもどこでも需要がある、当別なある種の財なのです。
 これで経済全体のマネーを増やします(=新たな購買力を創ります)ので、効果があります。

 つまり、モノ・サービスが売れて(=価格P×取引量T)、それが投資(対企業部門)や消費(対家計部門)を促進します。マネー(M)が回転(V:流通速度が増大)し出します。フィッシャーの交換方程式という、MV=PT≒名目GDPの例の式です。
 正確な順番としては、まずMVという金融政策がなされ、その後にPTなる実体経済に効果が及ぶことになります。
(リチャード・ヴェルナーら一部の“慧眼家”が私たちに教えていることは、依然正しいのです。)

 後述のとおり、膨大なデフレギャップ(約750兆円)がありますので、インフレにはなりません。ちなみにデフレギャップとは、総供給が総需要を上回った場合の差、つまり、不稼動状態にある設備(企業部門)や資産(家計部門含む)という総供給力が、本来稼動した際に生じる生産力(=総需要)との差のことです。

〔2〕日銀が、例えば、民間部門からの借用証書を担保(バランスシートの資産の部形成)とし、新たにマネーを創ればよいのです。


 新たな紙幣の印刷(実際には、コンピューター・マネーによる、会計帳簿上の書き込みのみ)がなされればOKです。ベン・バーナンキやポール・クルーグマンも言うところの「ヘリコプター・マネー」です。
 このBlogでは今回はこれ以上突っ込みませんが、この意味するところは、実は天地がひっくり返るほどの重大なことが含まれています。しかし、99.9999%の国民は、そのとこを知りません。かつて、メイナード・ケインズが指摘(知っていたのは当時の「百万人にひとり」のみ)としたとおり・・・^^;

〔3〕政府紙幣による方法でも有効です。

 この場合は、日銀への利払いが不要ですのでmuch betterです。ドイツ人のリチャード・ヴェルナー氏や我が国の丹羽春喜(にわはるき)氏(前大阪学院大学経済学部教授)の主張は、極めて有効なことだと思います。1960年代には米国でも、JFK時代に財務省紙幣として発行されていますし・・・
(ヴェルナーさんと丹羽さんにとっては、同じ土俵で位置づけられることを良しとしないかな、とも想像します。従って、いつかその若干の違いにも解説が必要かも知れませんね。)

 ただ、今話題の給付金「2兆円」程度の配布量では効果は出ません。デフレギャップの大きさから、原則、恐らく年間で数十兆円規模が必要です。デフレギャップは、少なくとも毎年約GDPの10%程度(約50兆円)でしょうから、それに“失われた15年間”を掛けて、約750兆円ほどにまで拡大しているはずです。世界の先進国にあって、日本はこれまで“負の遺産”国(=デフレ状態)であったのですが、一気にそれを“正の資産”(=膨大なデフレギャップの存在ゆえに講ずることのできるカードを持ち合わせていること)として、戦略的に活用できるはずなのです。

(注)「デフレギャップ」 :内閣府によると年20兆円ほどとされていますが、こんなに少ないはずはありません。政府の経済政策の失敗を国民に知らしめたくないための数字でしょう。丹羽春喜氏によれば、デフレギャップは年300兆円余であり、四半世紀で5,000兆円ほどの膨大な量となっているようだ。これが正しいとなると、正の資産”を原資にする「ケインズ的な財政・金融政策」(≒日銀ではなく政府主導による信用の創造と管理)による景気浮揚策は、極めて有効なものとなりましょう。

 江戸時代でも、かつての中国(例:南宋)でも、今から250年ほど前の、近代的な銀行(バンコ)の存在感がまったく無かった、もしくは脆弱だった地域では、この方法がむしろ普通だったのです。
 現在は「バーゼル・クラブ」(中央銀行の連携プレーの場)の力が絶大であるため、複雑で、しかも全く効かない「財政出動策」(ケインジアン的アプローチ)が、各国の財務部門とともに、なぜか久しく採られているのです。

 この方法が実は凄く有効なので、○銀総裁も、財○大臣も、「異説」として一蹴するのでしょう。^^; 想像できる理由は、ここでは記しません。
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 マクロ経済問題も財政(国の膨大な借金)問題も、実はごくシンプルな方法で多くのことが解決できるのですが・・・
  
20090226news_fineictnw_2    同様な取材は、当日13時過ぎに、テレビ東京『NEWS FINE』からもありました。録画を見ると、私のコメントは、こちらの方が前述の『WBS』よりも、やや長めに放映されていました。(^-^)

PS:
 『NEWS FINE』向けには、主に「ICT産業とホームネットワーク市場」の現状と課題、そして今後の市場規模についてのインタビューでしたので、その関連の資料を当日の午前中に用意し、お渡ししました。

(うちICT産業の市場規模については、弊社JRI日本総合研究所の浅川秀之主任研究員とともに、以前検討したものに加筆などしたものです。)

20090226news_fine  資料はこれです(クリックして拡大)。

  
 

 
 
 
 

 

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2009年2月24日 (火)

【一言】米国株の大幅続落は原理原則どおりで必至の様相

20090223sp12(読み直すと、文章がかなり分かりにくかったですので、特に最後の方を書き直しました。)

 米国のNY株式のことを書いていたら、もうその翌日にはさらに下落しました。ここのところその値動きから目が離せません。

 私は株式(も宝くじ)も何もやりませんので、個人投資家の立場で市場を見ません。ただただ、株式の大幅下落が与えるマクロ経済への影響が心配です。それはやがて実体経済に跳ね返りますので、全ての国民に関わることになります。

 米国の経済全体(マクロ経済)に関する不足分は、最近、米国議会で可決された総額7,870億ドル(約72兆円)の景気対策額では足りないでしょう。後述の通り、世界の損失額からすれば、1桁小さいものであり、720兆円の間違いではないでしょうか。

 とは言いつつ、当局は小出しにしか原則、公表しないのが恒です。従って、その公表情報をそのまま受入れては、日本企業も私たち生活者も、今般の深刻な事態からは真の防衛はできません。

 (写真は、2月23日、米国株式市場は大幅続落しダウとS&Pが12年ぶり安値。 写真はニューヨーク証券取引所(2009年 ロイター/Shannon Stapleton))

=====≪quote≫
■米国株が大幅続落、ダウとS&Pは12年ぶり安値
 2009年2月24日7時32分配信 ロイター
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090224-00000412-reu-bus_all

[ニューヨーク 23日 ロイター] 米国株式市場は大幅続落となり、ダウとS&Pは1997年春以来12年ぶりの安値を記録した。金融システムの安定化をめぐり米政府に対する信頼感が揺らいでいる。

 米政府が保有するシティグループ<C.N>優先株を普通株に転換する可能性があると報じられたが、市場では、大手金融機関の問題を解決するには不十分と受け止められた。
 CNBCがアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)<AIG.N>について、追加支援をめぐる政府との交渉が決裂すれば破たんに追い込まれる可能性がある、と報じたことも地合いを悪化させた。

 ダウ工業株30種は250.89ドル(3.41%)安の7,114.78ドル。
 ナスダック総合指数は53.51ポイント(3.71%)安の1,387.72。
 S&P総合500種は26.72ポイント(3.47%)安の743.33。

 企業や消費者によるIT(情報技術)関連支出の減少をめぐる懸念を背景にハイテク株の下げが目立ち、IBM<IBM.N>は5%安、ヒューレット・パッカード<HPQ.N>は6.3%安となった。
 モルガン・スタンレーが価格低下などを理由に2009、10年のパソコン(PC)売上高見通しを引き下げたことも嫌気された。
 アップル<AAPL.O>は5%近く下落。

 一部の米銀大手が国有化されるとの懸念が引き続き相場を圧迫。ただ、ホワイトハウスが、銀行システムは政府監督下での民営が依然として最良の方策、との認識をあらためて示したことを受け、株価は一時やや値を戻した。
 シティは9.7%高、バンク・オブ・アメリカ<BAC.N>は3.2%高。両銘柄とも前週末20日は35%超急落していた。
 ゼネラル・エレクトリック(GE)<GE.N>は5.7%安。ドイツ銀行は同社の目標株価を3分の1近く引き下げた。
=====≪unquote≫

■私の見方:
(ビジネスパーソンも知っておきたいマクロ経済学的な視点)

 なぜこれほどの株価下落になるかを考えてみましょう。それには、全体(世界)の損失額の程度を頭に入れておくことが大事です。私たちを取り巻く個々の経済事象は、より大きなマクロ的な経済と金融のメカニズムにより規定されているからです。

 昨年(2008年)10月末頃の米欧の合計の損は、株価で約1,500兆円ずつで計3,000兆円、不動産で約1,300兆円ずつで計2,600兆円で、両者合計5,600兆円ほどと推定されていました。恐らく現在は、米欧のGDP約3,000兆円の2年分を超える6,000兆円は下らない と思われます。
 ちなみに、EUの金融機関だけで2,120兆円(16.3兆ポンド)。これは、最近(2009年2月)のEU各国の財務大臣が確認したとされる、リスク資産に基づく損失額のようです。

 いずれにしろ、欧米市場では、バランスシートにおいて6,000兆円余の穴を空けてしまったのですから、それを埋め合わせるだけの時間がかかります。バブルは一瞬にしてはじけますが、その回復には従来のマクロ経済・金融政策では、早くて2~3年(恐らくは5年近くかそれ以上)は、国も金融機関も、そして企業も家計も、そのバランスシート(帳簿)が綺麗になることは難しいのではないでしょうか。

 1990年代初めの日本の土地・株式のバブル崩壊では、概数で株式の時価総額が600兆円から半分の300兆円にまで下げ、地価は同様に2,500兆円から1,000兆円下げ1,500兆円ほどになってしまいました。計1,300兆円です。つまり、当時の(そして、今もそう変わらない)日本のGDP約500兆円の2.6年分でした。

 両者(現下の欧米≒世界の資産損失額と、かつての日本の損失額)との間には、次のような大きな違いが認められます。

①日本という1国の問題に対し、今般の出来事はグローバリズムのもと世界に拡がっていること。

②デジタルマネー(コンピューター・マネー≒会計・帳簿上のマネー)の激増と金融工学の不適切な適用により、過度なデリバティブ金融(信用乗数を基にした融資または新たな信用創造)が、株式や土地に加え、原油・資源・穀物・CO2排出量取引などのコモディティ(証券化の対象)にまで、広範かつ膨大なバブルを形成してしまったこと。

③証券化の対象にCDS(Credit Default Swap:債務保証保険)という、いつ炸裂するかが読みにくい新型の時限爆弾を組み込んでしまったこと。

 日本の当時のバブルとは比較になりません。

 CDSのことを少し補足しましょう。
 残高で50兆~60兆ドル(約5,000兆~6,000兆円)あるとされますので、前述の「米欧の損失額6,000兆円」とは、このCDSを除く損失額です。CDSでは、保険を掛けている相手先金融機関が倒産した際に、例えば、救済のための政府資本が注入されると、その金融機関は清算し解約しなければならない条項がついているものです。 

 従って、金融機関の損失は、今も進行している状況にあり、予想しにくいものです。金融機関を取り巻く経済情勢次第で、言わばこのCDS爆弾が徐々に炸裂していくことが、向こう2~3年間続くだろうということに、極めて深刻な問題が潜んでいると言えましょう。

 今回のロイターの記事では、昨日書かれていた「ダウ6年半ぶり安値」が、本日は「1997年春以来12年ぶり」と報じられています。しかし、前述の②や③はまだ十分に織り込まれていないと思われます。すなわち、「これまでとは異質のバブル」単に100年に1度のバブルでは無いという意味)の要因がすっかり除かれるまで、原理原則からすれば、その要因が生じる前まで、ダウ株価も東証株価もまだ下がり続けるでしょう。

 「1997年春」の少し前の、恐らく1996年当時のダウ平均5,000ドル台に近いところまで下落してもおかしくありません。それが、金融バブル要因(上記②と③)を除した場合の、本来のダウ平均企業の実力とみなされるべきなのでしょう。

 これから、またこれまでの過去半年ほどもそうだったように、日に100~200ドルほどの乱高下を繰り返しながら、ダウ平均(ないし日経平均)は下げトレンドが暫く続くことでしょう。

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◆番外編:20090224_4
≪参考≫「鋸(のこぎり)相場」とは、このようなものです。拡大するには図表をクリック。
 この“乱高下”状況下、2008年8月の上海オリンピック前の上海総合株式市場のごとく、つまり、その動きが“鋸(のこぎり)相場”に近い状態にある場合、のこぎり歯の付け根タイミング(安値)で買われ、その歯の先端部(高値)タイミングで売られます。
 両者の差、すなわち鞘(さや)を抜いて儲けている一部の人々が必ずいるはずです。○国では、“見えざる神(≒○○党)の手”により、既に大半使ってしまった養老年金資金の補充を行ってきたとも言われているようですが・・・(プロや“神”の相場師には、一般人はとても適いませんので、この分野にはあまり熱心にならないことをお薦めします。)
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 話しを戻します。
 マネーのメカニズムの原則に従った、事態を収拾する秘策(政府紙幣など含む)は考えられますが、それは実施されない可能性が高そうです。いま話題の「政府紙幣」の有効性については、近く簡単に触れたいと思います。

 日本企業や私たち生活者は、この株式暴落事態がなぜ生じるかの、基本的なメカニズム・からくりを十分把握・理解しているとは言いがたいと感じます。在庫調整や設備投資の状態が規定する、従前型の周期性のある変化ではありません。

 まったく異質なのです。表層面だけのことでは駄目なのです。物事の背後に潜む遠因(まず全てのことに関わる、“人間”の心理・思惑・利害・行動など)まで理解することが重要でしょう。このBlogでは今後も、このような視点を重視したいと思います。

 最近注目される「行動経済学」などでも、“経済人”を前提とした経済学ではなく、実際の“人間”を前提とし、“人間”がどのように選択・行動し、その結果どうなるかを究明することを目的とした学問(理論体系案)です。
 “9+1(=10〔じゅう〕)”系米国人のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)が、2002年にノーベル経済学賞(=スウェーデン中央銀行賞≒最優秀煙幕演出賞)をとったことで有名になりました。

 ただ言い換えますと、“合理的経済人”(=ホモ・エコノミクス)であろうと、“生身の人間”であろうと、その対象はほぼ常に“消費者”や“国民”(=大衆、有権者、労働者、民草)が中心なのです。
 つまり、金融機関や企業(特に多国籍企業)の“大株主”や経営トップ・重役”、さらには“政府要人”や“高級官僚”の「行動」は、殆ど研究の対象にもなっていないのです。株価の値動き1つを読解するにも、ここがポイントです。この分野の学問的・実学的体系が構築されることが求められます。

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【一言】新自由主義の本家で銀行の国有化(株式移転のためのサークル内行事)

200902216(読み直すと、文章がかなり分かりにくかったですので、特に最後の方を書き直しました。)

 現在の未曾有のマクロ経済・金融の情勢からは、これまで屈指の収益力を誇った銀行も、もう持たないかも知れません


 当該銀行のバランスシートが大きく悪化している点(ミクロ経済面)、および国全体での負債が大き過ぎて、それを埋
め合わせるマネー不足が顕著である点(マクロ経済面)であるからです。

 今回は、「国有化」の別の側面、また「民営化」との関係を、少し古いかも知れませんが、「1987年10月19日のブラ
ックマンデー」および「1929年10月29日のブラックチューズデー」との比較も多少まじえながら、記しておきたいと思います。

(写真は、2月20日、ダウ6年半ぶり安値、国有化懸念でシティ2ドル割れ。写真は昨年2008年9月、ニューヨーク証券取引所(2009年ロイター/Jacob Silberberg))

=====≪quote≫
■ダウ6年半ぶり安値、国有化懸念でシティ2ドル割れ
2009年2月21日9時9分配信 ロイター
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090221-00000089-reu-bus_all

[ニューヨーク 20日 ロイター] 米国株式市場は続落し、ダウが6年半ぶり安値で引けた。米政府が一部大手銀行を国有化するとの懸念が広がった。S&P500も一時12年ぶり安値をつけた。

 ドッド米上院議員(民主党、コネチカット州)はブルームバーグとのインタービューで「少なくとも短期間は」一部銀行の国有化が必要な可能性があると述べた。
 その後、ホワイトハウスのギブス報道官が、銀行システムは民営が正しい方向だと確信しており、政府による十分な監督を徹底するとの意向を表明した。
 CNBCテレビが報じたところによると、財務省は来週、金融安定化策の一部詳細を公表する。この報道を受けて金融株は下げ幅を縮小した。
 国有化の対象とのうわさでシティグループ<C.N>とバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)<BAC.N>は一時35%超下落した。


 ギブス報道官の発言で一部値を戻したが、シティの終値は22.3%安の1.95ドルと、1991年1月以来初めて2ドルを割り込んだ。バンカメ<BAC.N>も3.6%安の3.79ドル

 ダウ工業株30種は100.28ドル(1.34%)安の7,365.67ドル
 ナスダック総合指数は1.59ポイント(0.11%)安の1,441.23。
 S&P総合500種は8.89ポイント(1.14%)安の770.05。

 週足ではダウが6.2%、S&P500が6.9%、ナスダックが6.1%それぞれ下落した。
 原油価格の下落に伴いエネルギー株も軟調だった。シェブロン<CVX.N>は2.4%安。
 ボーイングは<BA.N>3.4%値下がりした。

 ハイテク銘柄では、カナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)<RIM.TO>が7%安となり、ナスダックを押し下げた。アドビ・システムズ<ADBE.O>も7.7%下落。
 2月オプションが期限を迎えたことも相場が一段と振れる要因となった可能性がある。
=====≪unquote≫

■私の見方:
(ビジネスパーソンも知っておきたいマクロ経済学的な視点)

 米国の金融機関では、1株がほぼ15~20ドルを割ると、格付けがジャンク債並みとなり、社債が発行できなくなりますすると、翌月の決済資金がショートします。もちろん、銀行の融資業務にも支障が出てきますので、極めて由々しき状態と言えます。この状態が昨年(2008年)秋から続いています。この状況打開の先が今も見えません。

 米国政府は、懸命に「銀行国有化」の事態がないことを強調していますが、誰の目にも事態が深刻であることは明らかです。

 ここで「民営化」と「国有化」について、ごく簡単に解説しましょう。

 「民営化」とは、企業の所有者が私人になること。つまり、現代の企業ガバナンス(統治)理論ないし株主資本至上主義では、“企業は株主のもの”ですので、私人たる株主に所有される、ということです。そして、その株主には大株主(一部の財閥や富豪を含む)もいて、株式を通じた企業の統治(明らかな支配を含む)が行れるのです。マネーを支配する者は、企業をも支配できるのです。

 次の例は、「国営企業の民営化」の典型的なケースです。その際、株式の動きに注目したものです。

 元祖英国の「民営化」では、英国政府保有のBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)社の株式(全体の31.5%)が1987年10月30日に始まったことに端を発します。当時のサッチャー首相の民営化政策の最大の事案でした。しかし、この民営化では大変不可解なことが起こりました。BP株の放出の直前に、ブラックマンデー(1987年10月19日)が起きていたのです。通常であれば、英国政府は国民の財産である国有企業の株式を、暴落した直後の安値で放出することはしません。しかしなぜか、それが決行されました。

 何が起こったかどうかのみ、稀有な歴史考証人たる(本物の実業史観を私たちに教示下さっている)広瀬隆さんの『世界石油戦争』(NHK出版、2002年6月)を基に、まとめて簡潔に示しましょう。(ただし、同著書および『世界金融戦争』の「911」に関する記述については、最近の関係映像やインターネット情報を踏まえれば、広瀬隆さんの他著書との比較において例外的に、不正確な見立てになっていると思いますが・・・)

 同年11月18日に、実質英国の支配下にあった当時のクウェート政府の投資局(英国人がクウェートの資産を管理するための組織)が同株式を10%(その後、11.7%)取得しました。従って、実態は売手と買手は同じ英国人です。しかし、外国政府に英国有企業の株式が買われるのを嫌い、結果、クウェートの所有分を10%未満とし、民営化時に比べれば、43.6億ドルという高値(ブラックマンデーで株安状態)で買い戻されました。この際、その 資金調達は、英国の巨大鉱山会社(当時の独占的な市場支配者)であるリオ・チント・ジンク社から、その額を下回る43.2億ドルで、別の巨大鉱山会社(ケネコット社)を含む英国の鉱業部門を売却することでなされました。

 整理すると、結局、英国民の資産でもあるBP社の株式が、安値に下がったブラックマンデー後、その経過がいろいろありましたが、英国の鉱山部門が私企業であるリオ・チント・ジンク社へ安値で移転してしまったのです。この結果を、私たちは何と理解すればよいのでしょうか。

 1929年のウォール街大暴落の時も似たような、一部私企業(財閥・富豪)へ底値で、様々な企業の株式資産が移転したと同様のことが、1987年当時のブラックマンデー時にも生じた、ということです。

 1929年10月29日のブラックチューズデーから、大恐慌が底をつく1932年7月時点のダウ式平均株価は89%も下落しました。これほどの暴落は一瞬(数日や数ヶ月間)で起こるのではなく、このように約3年間かかりました。今回のダウ平均暴落(世界同時株暴落)が起きたのは昨年(2008年)10月でしたので、このアナロジーでいけば2011年頃まで下落し続けることになります。実に嫌な時期に私たちは遭遇してしまいました。

20090223_2 ≪参考≫「米国のダウ平均株価の長期トレンド」とは、このようなものです。拡大するには図表をクリック。


 ただ、1930年台当時の株式下落メカニズムと今般のものは、別(翌日分のこのBlog)に示す通り、質的に異なるため、もっと早い時期に、まだ大きな下落の可能性はあるでしょう。少なくともそう考えて行動しておくことが重要です。

 話を戻します。
 英BP社のケースは「国営企業の民営化」の1つの例に過ぎませんが、以上のような出来事があったのです。

 今回は「米金融機関(私企業)の国営化」が話題になっています。金融機関が「国有化」されるということは、国の監理下(国が株式を保有する状況)に置かれます。その期間が暫く続くでしょうが、業務オペレーションはこれまでのように実施されるはずです。

 その後、政府による同企業の株式の市場への放出・移転(民営化)を通じ、結果、前述の1987年の時のような、次の3つのことが起きる可能性があります。

国有化企業の株式放出(民営化)前に、株式市場が安値に振れる。株式市場の再暴落さえあり得るでしょう。
 国有化された企業のトップマネジメントと政府当局(財○省など)とは、ここ数十年、およそ“回転ドア”メカニズムを通じ、大変見事な連携がなされて来たからです。

どこかの別経済主体が安値で手に入れ、市場の寡占が進むことでしょう。

③そのまま寡占の旨み(うまみ)を享受し続ける場合もありましょうが、その経済主体が投資銀行や投資ファンドのようなところであれば、経営陣の放追を含むリストラを通じ、企業価値を高めることで、元手が少なくて済んでいるはずですので、年率で数百%もの投資収益率を実現するに至る転売、という選択肢が浮上することでしょう。
 これまでの狡猾なファンド会社のビジネスモデルが、また繰り返されない保証はありません。

 以上、1987年当時も、2009年の今も、株価とうまく連動したタイミングでなされる「国有化」や「民営化」により、株式移転というカタチで、一部の市場支配者の影響力を一層高めることにつながる可能性があります。この動きに注意する必要があるでしょう。

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