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2009年2月27日 (金)

【テレビ出演】ICT産業200兆円の怪(不思議)

20090226wbsict_2 昨日(2009年2月26日) 、総務省鳩山総務大臣に手渡された「緊急提言」で、現在約100兆円の市場規模を、10年以内で2倍の200兆円にする(したい)と報じられました。

 昨日は珍しく、テレビ収録の絵が日に2回(『NEWS FINE』と『WBS』)も出ました。私のコメントなど、例によって大したことはありません。しかし、手前味噌ながら“大したこと”を言っている部分もたまにはある(^-^)と思うですが、それは時間の関係もあって、大概カットの対象になります。これは普通のことです。

 昨晩の件、特に景気対策の効果として、かなりグレイな感じがしますので、このBlogで補足します。
 後述の通り、その景気対策によっては、これまでのやり方(単純な財政出動型)では全く不可能な実現目標であること、しかし、本気になれば(本当の金融政策を採れば)達成不可能でもないこと、という相反する見方を、簡単に記しておきましょう。これは極めて大事なことです。企業でも政府でも大概の皆さんは、このことをご理解していませんので。

=====≪quote≫
 総務省のICT=情報通信に関する懇談会は、景気対策の一環として、電波の有効利用による「ぶつからない車」などの開発や情報通信を重点的に教える教育特区の設置などを盛り込んだ提言をまとめました。

 鳩山総務大臣に手渡された緊急提言では、景気対策として現在、約100兆円規模の市場を10年以内に2倍にするとしています。そのなかでは、2011年7月にアナログテレビが終了することから、空いた電波帯域を利用してワイヤレスで電化製品が動く「コードのない家」や、対向車や通行人らを感知して衝突を避ける「ぶつからない車」の開発を提言しています。
 また、医療や教育の分野でICTの利用を促すため、予算を特別につける特区の設置などの計画が盛り込まれています。総務省は、今回の提言を受けて経済対策に反映させる方針です。
(出所)広島ホームテレビHP(2009年2月26日 政治ニュース)
=====≪unquote≫

■私の見方:
(ビジネスパーソンも知っておきたいマクロ経済学的な視点)


 ICT産業の定義にもよりますが、『情報通信白書』などによれば、2008年ベースで同産業の市場規模は60兆円程度だと思います。
 それを「100兆円」にすることもかなり難しいと思いますが、ましてやそれを「2倍」(200兆円?)」にすることは、次のような理由で、極めて非現実的でしょう。

 昨晩の報道では、確か「ICTニューディール」という表現が用いられていましたので、きっと米国オバマ政権の「グリーン・ニューディール」や昨年末の米TIME誌の表紙を飾った「The New New Deal」のことが意識されているのでしょう。やや安易かなと思いますが・・・^^;

 つまり日本でも、きっと「財政出動」型の景気対策が意識されているのではないでしょうか。それは、ICTインフラの整備(ホームネットワーク、ITS、WiMAXなど)を通じたものとして。
 言い換えますと、従来の公共事業的な意味合いを、これまで長く新古典派経済学的なアプローチ(市場原理主義的、グローバリズム流)を採ってきた、その本家であった米国がオバマ政権になって、新たなにケインジアン的なアプローチを採ろうとしていることに、重ねて見ているように思います。

 しかし、このケインジアン的「財政出動」型アプローチは、景気対策には中立的な(=実際は効かない)のです。

◆「財政出動」(政府支出)での、従来型の国債を発行し、資金を調達する方法の下述の過程に見る無意味さ:

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①投資家(金融機関、個人)は、国債を購入する前に、まず民間部門からマネーを引き上げます。国債を購入する資金とするためにです。

②そして、投資家による国債購入がなされます。 

③しかしこれは、既に存在する購買力の再配分に過ぎません(=新たな購買力を創造しません)。

 経済成長の基本構造である、後述のMV=PT≒名目GDPの左辺(新たな信用創造量)を増やさないからです。従って、右辺(新たな購買力=経済成長の量)を増やさないのです。

④すなわち、経済成長には中立的なのです(量的クラウディング・アウト=不胎化)。従って、この方法では景気回復はしません(経済成長はしません)。

*******************************

 これが現実的な経済メカニズムです。国の経済全体(GDP)についても、当該産業(例:ICT産業)でも同様です。
 実際、過去10年ほどで150兆円の財政出動がなされましたが、実質の経済成長(GDPの伸び率)がほぼゼロであったことが、上記の意味の証左です。

 ただ理論的には、次のような有効な方法があることも、お話ししました。

景気対策(経済成長)のための有効な方法

*******************************
〔1〕例えば、情報通信産業セクターという民間経済部門が、直接、金融機関(日銀ではなく市中銀行)から、マネーを融資してもらえばよいのです。

 資金(マネー)はほぼ、いつでもどこでも需要がある、当別なある種の財なのです。
 これで経済全体のマネーを増やします(=新たな購買力を創ります)ので、効果があります。

 つまり、モノ・サービスが売れて(=価格P×取引量T)、それが投資(対企業部門)や消費(対家計部門)を促進します。マネー(M)が回転(V:流通速度が増大)し出します。フィッシャーの交換方程式という、MV=PT≒名目GDPの例の式です。
 正確な順番としては、まずMVという金融政策がなされ、その後にPTなる実体経済に効果が及ぶことになります。
(リチャード・ヴェルナーら一部の“慧眼家”が私たちに教えていることは、依然正しいのです。)

 後述のとおり、膨大なデフレギャップ(約750兆円)がありますので、インフレにはなりません。ちなみにデフレギャップとは、総供給が総需要を上回った場合の差、つまり、不稼動状態にある設備(企業部門)や資産(家計部門含む)という総供給力が、本来稼動した際に生じる生産力(=総需要)との差のことです。

〔2〕日銀が、例えば、民間部門からの借用証書を担保(バランスシートの資産の部形成)とし、新たにマネーを創ればよいのです。


 新たな紙幣の印刷(実際には、コンピューター・マネーによる、会計帳簿上の書き込みのみ)がなされればOKです。ベン・バーナンキやポール・クルーグマンも言うところの「ヘリコプター・マネー」です。
 このBlogでは今回はこれ以上突っ込みませんが、この意味するところは、実は天地がひっくり返るほどの重大なことが含まれています。しかし、99.9999%の国民は、そのとこを知りません。かつて、メイナード・ケインズが指摘(知っていたのは当時の「百万人にひとり」のみ)としたとおり・・・^^;

〔3〕政府紙幣による方法でも有効です。

 この場合は、日銀への利払いが不要ですのでmuch betterです。ドイツ人のリチャード・ヴェルナー氏や我が国の丹羽春喜(にわはるき)氏(前大阪学院大学経済学部教授)の主張は、極めて有効なことだと思います。1960年代には米国でも、JFK時代に財務省紙幣として発行されていますし・・・
(ヴェルナーさんと丹羽さんにとっては、同じ土俵で位置づけられることを良しとしないかな、とも想像します。従って、いつかその若干の違いにも解説が必要かも知れませんね。)

 ただ、今話題の給付金「2兆円」程度の配布量では効果は出ません。デフレギャップの大きさから、原則、恐らく年間で数十兆円規模が必要です。デフレギャップは、少なくとも毎年約GDPの10%程度(約50兆円)でしょうから、それに“失われた15年間”を掛けて、約750兆円ほどにまで拡大しているはずです。世界の先進国にあって、日本はこれまで“負の遺産”国(=デフレ状態)であったのですが、一気にそれを“正の資産”(=膨大なデフレギャップの存在ゆえに講ずることのできるカードを持ち合わせていること)として、戦略的に活用できるはずなのです。

(注)「デフレギャップ」 :内閣府によると年20兆円ほどとされていますが、こんなに少ないはずはありません。政府の経済政策の失敗を国民に知らしめたくないための数字でしょう。丹羽春喜氏によれば、デフレギャップは年300兆円余であり、四半世紀で5,000兆円ほどの膨大な量となっているようだ。これが正しいとなると、正の資産”を原資にする「ケインズ的な財政・金融政策」(≒日銀ではなく政府主導による信用の創造と管理)による景気浮揚策は、極めて有効なものとなりましょう。

 江戸時代でも、かつての中国(例:南宋)でも、今から250年ほど前の、近代的な銀行(バンコ)の存在感がまったく無かった、もしくは脆弱だった地域では、この方法がむしろ普通だったのです。
 現在は「バーゼル・クラブ」(中央銀行の連携プレーの場)の力が絶大であるため、複雑で、しかも全く効かない「財政出動策」(ケインジアン的アプローチ)が、各国の財務部門とともに、なぜか久しく採られているのです。

 この方法が実は凄く有効なので、○銀総裁も、財○大臣も、「異説」として一蹴するのでしょう。^^; 想像できる理由は、ここでは記しません。
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 マクロ経済問題も財政(国の膨大な借金)問題も、実はごくシンプルな方法で多くのことが解決できるのですが・・・
  
20090226news_fineictnw_2    同様な取材は、当日13時過ぎに、テレビ東京『NEWS FINE』からもありました。録画を見ると、私のコメントは、こちらの方が前述の『WBS』よりも、やや長めに放映されていました。(^-^)

PS:
 『NEWS FINE』向けには、主に「ICT産業とホームネットワーク市場」の現状と課題、そして今後の市場規模についてのインタビューでしたので、その関連の資料を当日の午前中に用意し、お渡ししました。

(うちICT産業の市場規模については、弊社JRI日本総合研究所の浅川秀之主任研究員とともに、以前検討したものに加筆などしたものです。)

20090226news_fine  資料はこれです(クリックして拡大)。

  
 

 
 
 
 

 

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