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2008年10月10日 (金)

【一言】「ポスト金融危機のグローバル資本主義」の勝手な解説

20081008≪参考≫直近のBlogの更新:
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【取材対応】日本の総合商社の現状と今後
⇒ Q1以降の第5パラグラフのスイスに関する記述の追記。

【掲載】ワイヤレスブロードバンドの国際競争力強化(CIAJ月刊誌)
⇒ バックデートで、新規掲載。

【海外出張】中東・南アジアにて事業機会模索ミーティング
⇒ 
エジプト、UAE、インドでの、現地の素晴らしい女性たちとの会話についての追記。
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 サブプライムローン問題からもたらされた、今般の金融危機について、直近の『ニューズウィーク』に記事が出ていました。
 本家本元のお国での有名雑誌にして、過去正面切って、ここまで取り上げた(掘り下げた)トーンでの書きぶりは、かなり珍しいことと言えましょう。
 
 遅ればせながら当問題について、この記事を材料に若干の解説を試みましょう。
 他のアナリストが証券や銀行の立場を背負って、立場上なかなか触れられない(またはそれ以前に理解できていない)点に、少しだけ切り込んでみましょう。
 マスメディアに乗ったアナリストやエコノミストは、大概本質をはずしていますので。いつもながら偉そうですみません。^^;

 この記事は長文ですので、原文を黒字で示したまま、そのパラグラフ間に、黒とは別の色(青や赤)で私見を示します。


=====≪quoteと解説≫
ポスト金融危機のグローバル資本主義
(2008年10月8日、ニューズウィーク日本版)
-世界を支配してきたアングロサクソン型モデルは崩壊し、経済の新時代が始まる-

 文字どおりドラマのような1週間だった。米連邦議会は最大7,000億ドル規模の金融安定化法案を議論し、投票にかけ、修正し、最終的には10月3日に成立させた。

≪解説≫
 ようやく「
アングロサクソン型モデルが問題であることが、本家本元の国の経済誌から出てきました。このBlogでは以前から取り上げていたことです。
 
「7,000億ドル規模」(≒約70兆円)は、焼け石に水です。あくまで深刻な不信感を抱いてしまった自国の国民と外国(政府・中銀や金融機関など)に対し、一時的になだめる程度のメッセージに過ぎません。
 何せ問題を起こしている損失額は、桁で違うのです。2007年10月末時点の世界の名目GDP合計63兆ドルほどが、1年後の2008年8月末時点で50兆ドル(5,000兆円)になってしまいました。
その損失額は昨年の4割にも及ぶ20兆ドル(2,000兆円)です。このように最近、日経などで先日報道されたばかりです。そして、さらに42兆ドルほどへ縮小すると予想されています。
 米国内での安定化策の「7,000億ドル」は、この世界の損失額の20兆ドルの3.5%に過ぎません。米国内と世界との違いはありますが、今般のサブプライムローン問題は世界中に広がっているために、このように比較する意味があり、その桁の違いを認識すべきなのです。つまり、焼け石に水であることを。
 ポイントは、
差額の損失額分がどこに行ったのか。あるいは誰が手にしたのか、ということです。このような視点を普段持ちあわせていない読者は、ここをもっと注視しましょう。ここに真の経済メカニズムを読み解く鍵が潜んでいるのですから・・・

 法案を下院が一度否決した9月29日には、ダウ平均株価が過去20年で最大の下げ幅 を記録。その後、世界の株式市場はまるでジェットコースターのように乱高下を繰り返した。銀行間取引金利は過去最高になった。誰が危ない資産を保有しているのかわからず、金融機関は疑心暗鬼に陥ったからだ。

≪解説≫
 「
誰が危ない資産を保有しているのかわからず」とは、今はその通りです。しかし、当初はそうでもなかったはずなのです。つまり、サブプライムローン問題は、ちょっと前の勝ち組(最近、証券業から銀行業へと慌てて稼業を鞍替えしている金融プレイヤー)が中心になって仕掛け、他人の資産を収奪することで自分では大もうけをしてきたと推測できるからです。
 米国の主要金融機関は、「
疑心暗鬼」になっていますが、今の勝ち組も負け組も、サブプライムローン・ビジネスでは、過去大いに儲けてきたことを世界は忘れてはなりません。何せ直接には関係ないまともな産業や人々の生活まで、いまや脅かされてきたわけですから。

 個人投資家たちは強迫観念にとらわれている。ロンドンの高級ビル、サボイ・プレイスには、現金をゴールドに換えようとする人が殺到。1オンス当たり100ドルという割増料金を支払い、金貨や金塊を持ち帰っている。「少なくとも(金は)安全だから」とあるバイヤーは言う。「銀行は私たちのカネでいったい何をしているのか」

≪解説≫
 
インタンジブル資産である「ペーパーマネー」(不換紙幣)の価値はこれから大いに下がるでしょう。
 その時、相対的に価値を上げるのは、タンジブル資産(ゴールドや不動産など)と決まりです。「
個人投資家たちは」が、このゴールドに走るのは自然な成り行きです。
 専門家(より正確には“慧眼家”)によっては、1980年1月21に記録した、875ドル/オンス(約6,500円/g)まで上昇し、
1,000ドル~最大3,000ドルほどにまで上がることが予想されています。ちなみに、ここ最近の平均値はおよそ800ドル余/オンス(3,000円余/g)です。
 1971年のニクソンショック(紙幣とゴールドとの交換停止=ペーパーマネー化)以来、
現在の貨幣システム(米ドルの基軸通貨システム)は、もう40年近く経とうとしており、制度疲労が起こっているのです。

 誰もがそんな疑問を口にするようになった。銀行の支払い能力だけでなく、アングロサクソン型の資本主義制度全体に対する疑いが日々強まっている。

≪解説≫
 
アングロサクソン型の資本主義制度」への疑いとは、詰まるところ上記「ペーパーマネー制度」に対する疑いと同義と言えましょう。

 この30年間、「市場は万能」というのが経済の常識だった。だから、今回の銀行救済策に一般国民は怒り狂った。懸命に働いて支払った税金のうち1兆ドル近くを投入して救う相手は、真の価値を何も生み出していないようにみえるからだ。

≪解説≫
 「
市場は万能というのが経済の常識」とは、果たして誰の常識だったと言うのでしょうか。これを非常識と考えていた“慧眼家”も大勢いたはずです。『エコノミスト』やら『ニューズウィーク』などの有名経済誌が、そういい続けてきたのではないでしょうか。
 しかし、本誌『ニューズウィーク』はなかなか正直だと思います。何となれば、「
今回の銀行救済策」と表現しているからです。つまり、日本のマスコミのように、“公的資金”などとは書いていませんので。
 ところでこの表現は、敢えて書くのであれば“公金”(=税金=国民の血税)とすべきです。そして、出し手は国民であり、受け手が銀行にある、という書き方が重要です。
 「
真の価値を何も生み出していないようにみえる」こともその通り。これが銀行業の本質です。言い換えますと、信用創造のからくりです。
 ただ銀行業の名誉ために代弁をしておきますと、当面の今の経済・金融システムを前提とすれば、投機は駄目で、実体経済を支える信用創造(実取引へのマネーの供給・融資)はよし、と考えるべきでしょう。
 特に
詐欺的な信用創造(無から有を生み出し、しかも金利までとる)の仕組みと、そうして生み出されたマネーが投機的に大量に回転する実態が、現代の諸悪の根源になっているのです。
 ただ普通の人々は、このことが真の意味で分かっていないのです。あまりにも複雑であり、一方で驚くほどシンプルな原理に基づいていて、それがあまりにも大胆に実行されているため、きっとまさかと思うからなのでしょう。補足しますと、実は専門家(アナリストやエコノミストなど)の間でも、このことが分かっていない人が多いのです。


 こうした国民の怒りに政治家が屈服したことは、「ウォール街にとっていいことは一般市民にとってもいいこと」という考え方が通用しなくなったことを示している。

≪解説≫
 
ウォール街」とはどのようなところか、いったい誰なのか。これを知る人々は米国人の中でも意外と少ないのです。ここが『地球の落とし穴』(広瀬隆氏)につなっがていることすが・・・
 日本の読者におかれては、とりわけグローバル市場を相手にビジネスをする皆さんにおかれては、世界(特に欧米)の「実業史観」(例:マーチャントバンク、投資銀行、財閥、多国籍企業などのこと)について、真剣に勉強しておくことが賢明でしょう。
 このBlogではここまでにしておきましょう。


 ロナルド・レーガン元米大統領やマーガレット・サッチャー元英首相が推し進めた新自由主義の影響力が、今まさに消えつつある。私たちは自由な市場での容易な借り入れとリスクの高い取引、巨額の報酬に象徴される「黄金時代」に別れを告げ、融資の絞り込みや規制の強化、投機の縮小、政府の市場介入などが一般的になる新しい時 代に突入しているのだ。

≪解説≫
 「
新自由主義」についての批判がなされていますが、むしろ同主義への解釈・理解がやっと、このような雑誌で正面から取り上げられるようになったことは意味があります。
 私たち人類は、危険な火遊びをして焼けどをしないと、普段は
まがいものの理論や主義・思想に気付かないのです。そういう私も少し前まではその愚か者だったのですが。
 いずれにせよ、日本ではファンの多い
レーガンやサッチャーですが、ご両人の歴史的評価は早晩書き換えられることでしょう。私の中では、この自由主義の標榜者だけに留まらず、軍需産業の代理人の役割を果たしてきた点でも、大いなる問題人であったという位置づけです。
 「
融資の絞り込みや規制の強化、投機の縮小、政府の市場介入などが一般的になる」など、かなり昔から当たり前のことだったのです。世の中(世界経済)では不均衡の現象(例:インフレ、企業の倒産、失業など)が絶え間なく生じているのが常態です。少なくとも信用創造が経済の鍵を占めるようになった過去100年間ほどは・・・
 一方、「
新自由主義」(=グローバリズム)とは、新古典派経済学を理論的な主柱にしているものです。この理論は、常に経済において需要と供給が均衡していると“説く”ものであり、世の中はこうあるべきだとする演繹的な学説に過ぎません。
 事実は小説より奇なり、なのです。サブプライムローン問題による金融危機の方が、そのような学説よりもはるかに重要なのです。これまであたかもこの学説を唯一の真理だとばかりに唱えて来た学者・エコノミストは、今回をもって猛省すべきでしょう。そして、これからもそれを唱える学者がいるとすれば、そのお方はおお○○者に等しいのです。
 わが国がノーベル賞を物理と化学の分野で4人も受賞したことは快挙であったと素直に喜びたいと思います。そして、今年の“ノーベル経済学賞”(=スウェーデン銀行賞)を誰が取り、その学説が何であるかが興味深いものです。まさかこの世に及んで、
よもやシカゴ派(新自由主義の殿堂)ではないだろうな、とは想像していますが・・・

 世界中の政治家が、金融システムに対する新たな規制や「改革」を求めている。一 方で、中国のような統制的な資本主義国家や、ドイツやフランスのような社会民主主義国家では、アメリカ発の金融危機に対して安堵する気持ちと「だから言ったじゃな いか」という感情がない交ぜになっている。

≪解説≫
 
この文面はあまり正確ではありません。「中国のような統制的な資本主義国家」も実は、経済列強からの投資マネーを呼び込むことで経済成長をして来たからです。マクロ経済学の成長会計における、①資本と②労働力による古典的な経済成長を成し遂げてきた原動力であったのが、外国からのマネーの流入だったのです。2000年代の前半では確か、年率で9%程度のマネー流入が数年間続き、これが豊富な②労働力と結びつき、奇跡の経済成長をしてきたのです。つまり、自分たちもアングロサクソン型の金融メカニズム(投機性の高いもの)を利用してきたのですから。
 また独仏を「
社会民主主義国家」を形容するのもどうかと思います。現代は両国も、いくつもの多国籍企業を抱えています。言い換えますと、フランス(正確には両国)の金融資本家は、米国のウォール街と通じていますので、同国の経済の根幹もアングロサクソン型の経済・金融システムと形容しても大差はないはずです。むしろ、“ウォール街型経済・金融システム”とでも呼んだよがよいかも知れません。

 ドイツとフランスは、アングロサクソン型の金融システムに怯えていた。だがウォール街の崩壊は、彼らの経済モデルが生き残り、むしろ繁栄するかもしれないことを意味している。

≪解説≫
 前述の通り、
彼らの経済モデル」は、“ウォール街型経済・金融システム”と本質は異なりません。従って、米国経済モデルと独仏経済モデルを区別して、一方が他方と異なるのだと主張・喧伝することは、問題の本質を封印することになります。
 そのことで普通の人々を欺いていることになるのです。しかし、この当たりが『ニュズウィーク
』誌の限界なのかも知れません。

 フランスのニコラ・サルコジ大統領は「金融システムの運営に公的権力が介入することの正当性に、もはや疑問の余地はない」と宣言。「資本主義を再検討する」国際会議を計画中だ。

≪解説≫
 
ニコラ・サルコジ」とはいかなる人物でしょうか。前述の「実業史観」では、彼/彼女はいったい何者か、という視点を重視します。実はここに鍵が潜んでいるからです。日本の学校教育では、この点に殆ど踏み込みませんし、あるいは歴史のプレイヤーを日本人という枠の中で留めてしまいます幕末から明治時代での出来事をはじめ、外国人(宣教師、探検家、商人、バンカー、軍人特使ら)による影響をかなり軽視してきました。ここが大きな問題です。
 「
サルコジ」の、アングロサクソン経済モデルを地で行く現B大統領との親密ぶりは、これまでもそのマスコミが幾度となく報道してきていることです。そう安易には彼の言葉には乗れません。詳細は踏み込みませんが。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は先週、「グローバル化した世界では政府の力が弱くなる、そう語るのが数年前の流行だった。私はそんな見方をしたことはない」と 述べた。ペール・シュタインブリュック独財務相は、今回の危機は「アメリカが金融 超大国としての役割を終える」ことにつながるとさえ述べた。

≪解説≫
 「
アンゲラ・メルケル首相」や「独財務相」の人物像には触れませんが、これら発言の背景にあることを知りたいものです。つまり、基軸通貨の米ドルとユーロとの力関係がもたらす、将来の位置取りのことです。
 今のマネーシステムでは、
“基軸通貨”であることの競争優位は歴然としています。ノルマンディー上陸作戦が成功した、ナチスドイツ降伏寸前の1944年夏、IMFと世銀が創設されることになったブレトン・ウッズ会議(@米国NH州)がもたらしたことは、金本位の固定相場制のもとで米国などの国々は、史上類を見ない高度成長を実現しました。
 事実上の経済覇権を握った米国の基軸的なポジションを、
EUが再び取り返す思惑が見え隠れする言葉です。


■実体経済と乖離しすぎた

 こうした批判はロシアでは確実に歓迎されるだろう。ウラジーミル・プーチン首相は、自国の市場の問題を「アメリカの悪影響」のせいだと言い続けている。中南米で は、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領、ボリビアのエボ・モラレス大統領らの指導 者が、新自由主義の終わりを宣告。エクアドルのラファエル・コレア大統領は先週、 「アメリカの経済モデルは末期症状だ」と得意げに語った。

≪解説≫
 最近にわかに米国との距離をとり始めた
プーチンが、再び大国ロシア復活の戦略の一貫として、南米諸国に接近している様子がみてとれます。その相手であるチャベスやモラレスら指導者は、南米がIMFによる借金漬け・国家デフォルトの経験をする以前の、指導者とは明らかに異なります
 例えば、チャベスが提唱する、南の銀行〔Banco del Sur〕創設など、「
ピンク・タイド」(赤〔左翼〕ではないピンクの潮流)には大きな関心が向きます。1度国家破産を経験した南米の国々の中から自然と湧き起こってきたビッグトレンドと言えましょう。
 反米で利害が一致する、つまり敵の敵は味方というロジックにより、プーチンもチャベスも接近しているのだ考えられます。


 他人の不幸を喜ぶ雰囲気が蔓延しているのは明らかだが、金融機関はやりすぎたという声は、金融界の実力者たちからも上がっている。「グローバル化と規制緩和のモデルは破裂した。それが今回の危機を引き起こしたのだ」と言うのは投資家・慈善事業家のジョージ・ソロスだ。彼は早くから、住宅ローンやクレジットカードの支払いなどを複雑に証券化するのは危険だと、警鐘を鳴らしていた。 「これからは放任主義や投機性は薄れ、(過大な借入金で高リスクな投資を行う)レバレッジは減少し、信用市場は逼迫するだろう。私たちはレバレッジ解消の真っただ中にいる」とソロスは言う。

≪解説≫
 
ジョージ・ソロス」然り。ハンガリーから出てきたソロス氏がやってきたことの詳細は、他の媒体に譲りましょう。彼を研究している(取り上げている)著作は山ほどあります。その中に、ズバリ核心を捉えているものは少ないながら存在しています。
 彼の行動をよく観察していると、
いつも矛盾に満ちています。確かに上記の発言は一見まともです。「グローバル化と規制緩和」、「証券化」などが、これまでの世界経済では問題でしたし、ソロス氏に言われなくとも、一部の“慧眼家”が何度も指摘してきたことです。しかし、ソロス氏のこの指摘事項は、あくまで原因や背景に対する、結果や方法論に過ぎません。
 いつもマスコミで発言を大きく取り上げられる、彼のような有名人の行動の原因や背景を知ることが、アナリストやエコノミストに求められるところです。そして、日本の総合電機などの優良株がいつのまにか、このような御仁(ごじん)に買われてしまっている実態をもっと真剣に研究することが、企業の経営層には一層大切なことのはずなのですが・・・

 


 実際、この20年間の規制緩和と金融自由化を背景に、投資銀行のレバレッジ比率は大きく上昇。モルガン・スタンレーの場合は33倍、ゴールドマン・サックスやメリルリンチは28倍にも達した。これらの金融機関は、住宅ローンを組み入れたデリバティブ(金融派生商品)など複雑な証券を使って、記録的な利益を上げてきた。だが取引があまりに複雑で不透明になったため、担当者ですら保有資産にどれだけの価値があるのか知らないことが多かった。「この危機の教訓は、より賢明な資本管理、より透明性のある金融商品や金融機関が必要ということだ。実体経済のニーズや規模に見合った制度が必要になる」と、モルガン・スタンレー・アジアのスティーブン・ローチ会長は言う。「金融界は実体経済とあまりにかけ離れた場所に行ってしまった」

≪解説≫
 金融危機を呼び込んだ
当事者であるモルガン・スタンレーのような企業のトップが、このようなことを発言するとは・・・
 少なくともわが国では、
この種の発言を○知らずと言います。「罪の文化」と「恥の文化」が米国(西欧)と日本との違いであるとよく表現されますが、これまでの多くの当事者の態度において、○の意識もなかったことが、大いなる問題だったのです。
 また一歩譲って「
担当者ですら保有資産にどれだけの価値があるのか知らな」かったにせよ、少なくともどのような悪さをする商品であるかは熟知していたはず。このことを知らなかったとは言えないでしょう。曲りなりにもプロなのですから。
 他人のもの(資産)を盗むことが泥棒
があれば、金融の仕掛けによる“資産の移動”も立派な犯罪でしょう。「金融界は実体経済とあまりにかけ離れた場所に行ってしまった」などと、他人事を装っているとすれば、金融業界の信頼は決して回復できないでしょう。

 現在の状況が突然現れたわけではない。70年後半以降に起こった数多くの法的・技術的な変化が、金融機関の潜在的な成長力や収益力を飛躍的に高めた。

 年金基金は株に投資することが許され、証券会社は個人客に投資信託を売ることができるようになった。さまざまな種類の銀行が、合併によって新しい事業に参入することを許可された。ATM(現金自動預払機)やソフトウエアを活用して、24時間無休の電子金融ネットワークが構築された。

≪解説≫
 
IT革命などの「ITの発展」(技術的な変化)も、こうなると諸刃の剣であるわけです。どのような素性の者がどのように使うかで、その効用はまったく変わってきます。
 また、金融サービスの
「規制緩和」(法的な変化)がよいことばかりをもたらすと考えるのは錯覚です。わが国の競争政策では、規制緩和を錦の御旗とするような傾向があることは、この点でも懸念されることです。

 70年代と05年を比較すると、株式を所有するアメリカ人の割合は16%から50%強に増加。クリントン政権時代に労働長官を務めたロバート・ライシュは著書『暴走する資本主義』の中で、アメリカ人の経済的な心理に重大な変化が起こったと記している。「倹約家が投資家になり、投資家は以前より活発になった」

≪解説≫
 日米構造協議で散々わが国を追い詰めたクリントン政権下で、その労働長官
であったライシュ氏が言うまでもなく、「投資家」が投機的な領域まで入り込めば問題です。
 社会・経済や人々の生活の質の向上につながるものであれば、投資行為は、不可欠な牽引役とります。
本来の領域を逸脱した投資までもが、証券会社や投資銀行によりもてはやされ、倹約家もそれに安易に乗ってしまった(騙されてしまった)ことが悲劇を招いているのです。


■崩壊した「市場万能主義」

 その原動力になったのは投資銀行だ。80年代に当時のポール・ボルカーFRB(連邦準備理事会)議長がインフレを沈静化させた後、投資銀行は稼ぐための新たな方法を探していた。レーガンやサッチャーら「市場にやさしい」政治家のおかげで、革新的な金融商品が急増した。

 その間、市場ではバブルやバブル崩壊が起きたが、すぐに忘れられた。経済的な繁栄が続き、市場万能主義が支配的だったからだ。

≪解説≫
 些細なことですが、
この記事の訳者は日本語を知らないようです。「政治家のおかげで」は、このような時には「政治家のせいで」と書くべきです。ただ、そんなことはどうでもよいでしょう。
 米国経済のインフレ沈静化を行ったとして、よくはやし立てられる、元FRB議長のボルカー氏の発言を記者は引用していますが、
FRBという中央銀行の存在そのものがインフレを生みだす元凶であることを忘れてはいけません。
 つまり、インフレを起こしている(無闇にドル札を刷り続けてきた)元凶(怪物)であるFRBに対して、それが前任者の所作とはいえ、
その組織のトップがインフレという悪事を退治する、という役回りのナンセンスさをまず知らねばなりません。
 このことは『マネーを生みだす怪物
(The Creature from Jekyll Island: A Second Look at the Federal Reserve)の著者であるG. Edward Griffin(エドワード・グリフィン)氏が見事に指摘しています。
 こうした背景を知る記者であれば、安易に・無用に、当時のトップの名前など本来出せないはずなのです。


 90年代を通じて規制緩和は続いた。最も象徴的なのは、銀行業務と証券業務の分離を定めるグラス・スティーガル法の撤廃だろう。その結果、銀行は大規模合併に走っ たり、急増するIPO(新規株式公開)を引き受けたりした。
 グラス・スティーガル法の撤廃によって、シティグループのような商業銀行が信用 デリバティブ市場に参入することも可能になった。こうした市場では、住宅ローン担保証券やそれをさらに証券化した債務担保証券が売買されており、今回の金融危機の主因になった。

≪解説≫
 今更ながらの感は大
いにあるのですが、このパラグラフで注目すべきは、法律でさえも、その時代の都合(正確にはその時代の金融権力)により容易に変えられるということです。
 「グラス・スティーガル法」は、1929年の米国の株式市場暴落から始まった大恐慌の経験に基づき1933年に成立したもので、証券業と銀行業を分離したものです。一体化された両者の事業をもつ、当時の金融機関の影響力の大きさ(独占性)が市場を混乱に導いたという認識が背景にありました。
 しかし、66年後の1999年に金融近代化法(グラム・リーチ・ブライリー法)が制定されたことにより、
グラス・スティーガル法は事実上撤廃された訳です。確かヘーゲルだかが、「すべての世界史的事件や大人物は2度現れるものである」(歴史は繰り返す)と述べていました。そして、こう付け加えています「1度目は悲劇として、2度目は茶番として」。
 大哲学者の後に誠におこがましいのですが、私は「
偶発的な外部環境要因がそうさせるのだが、それはあくまでその環境を利用しようとし、かつ過分な利益を追求しようとする人為的な行為の所作として」と補完したいものです。

 自社株購入権も急増した。このため、投資銀行マンたちの富がさらに増える一方で 、資産を正確に把握することがむずかしくなった。この二つの流れが重なって危機を生んだと指摘する人は多い。「商業銀行をリスクの高い分野に参入させ、社員の報酬を自社株購入権で支払うことを促したことで、短期的な利益の追求が増えた」と、ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツは言う。「それが投機的な文化を形成したのだ」
 なるほど、21世紀に入るころには景気は後退局面に転じたが、相次ぐ利下げのおかげで資金調達には困らなかった(03年、FRBはアラン・グリーンスパン議長の下、金利を1%まで引き下げた)。低金利のなかで金融業界が収益アップを図ろうとしたため、今回の危機の元凶であるクレジットデリバティブの市場もふくれ上がった。

≪解説≫
 偉そう次いでに申し上げれば、このスティグリッツの、特にグローバリズムについての考察やその評価など、かなりの部分でまともです。しかしながら、
そのグローバリズムの問題の背景にある核心部分には、彼のどの著書も触れていないように思います(きっと触れられないのでしょう)。
 ボルカー氏の後任である、FRB議長グリーンスパン氏は、1990年代のアメリカに“インフレなき経済成長”という黄金時代をもたらしたとされる人物です。また同氏は、当時のITバブルを"irrational exuberance"(根拠なき熱狂)などと他人事のように表現しました。しかし、彼の治世に、実は住宅不動産の
サブプライムローン爆弾は巧妙に仕掛けられていた訳ですので、彼の評価も早晩書き換えられることになるでしょう。
 記者も同氏も、あるいは世の中のエコノミストも、
「金利」のことをさも最も重要な経済・景気対策の指標と見做しがちですが、もっと大きな影響を及ぼす因子は、これから投入(=融資・信用創造)される、あるいは既に投入されて世界の投機的な対象を常に追い求めている、マネーの量そのものです。この点を見落とすと、経済メカニズムの底流に横たわっている核心部分は一向に見えて来ないのです。

 クレジットデリバティブの代表格である「クレジット・デフォルト・スワップ (CDS)」の市場規模は、2000年の1,000億ドルからこの夏には62兆ドルに達した。CDSを「金融版の大量破壊兵器」と呼んだ投資家ウォーレン・バフェットやBIS(国際決 済銀行)の懸念をよそに、グリーンスパンらはリスクを分散するうえで重要な役割を果たしていると主張した。市場の拡大は、04年以後とくに進んだ。米証券取引委員会(SEC)はこの年、規制対象を投資銀行だけでなく、その持ち株会社まで広げる規制強化を行った。それと引き換えに、投資銀行のレバレッジの上限(従来は12対1だった)が撤廃された。
 その結果、SECは投資銀行の経営の健全性を資本という明確な基準で判断することができなくなった。代わりに、ひどく複雑な計算理論に基づいて健全性をはじき出さなければならなくなった。

≪解説≫
 「CDS」という
デリバティブ商品の保有割合がどれほど高いか、言い換えますと、市場への撹乱要因を与えるポテンシャルがどれほど大きいか、が鍵だったのです。そして、その鍵を握る経済主体が、今回の“救済”策の対象になったのです。
 固有名詞は伏せますが、投資銀行兼証券のL社と証券のM社は対象外となり、保険のA社がなぜその対象になったかの線引きは、ここにあったのだと推測されます

 ここでもバフェット氏を記者は登場させていますが、①今般の一連の金融危機の発生(仕掛け)と、②その処置および③その後の対応策(シナリオ)において、同氏はあくまで②以降の役回りを演じているとも読めます。そして、③に関する同氏の動静が注目されるところです。


 「そういう役目にはSECは向かなかった」と、コロンビア大学のジョン・コフィー教授(証券取引法)は言う。「複雑な金融商品の市場の急成長にSECはついていけなかった」(これからはむしろFRBに任せたほうがいいと、コフィーは考えている。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは、銀行持ち株会社への転換が決まったため、今後はFRBの規制対象になる)

≪解説≫
 
ジョン・コフィー教授の発言にはいささか異論があります。
 まず、①SECの歴史的な実績・所作の点で(たまに本当に正義を貫くことがありますが、少なからず当時の当該企業との“親密な”協調もあったのですから)。詳細は今回省きます。それに「
複雑な金融商品の市場の急成長」は確かにありましたが、「ついていけなかった」どうかは分かりません。
 また、②前述の通り、
問題の“当事者”でもあるFRBに、この問題を任せても抜本的な解決を彼らができるとは思えないからです

 住宅価格は01~05年に急上昇した後、急落し、信用基準のお粗末さが露呈した。バ ブルははじけ、ドミノは次々と倒れた。そして今、混乱の元凶となった欲望にほうびを与えるかのような大型救済策に、アメリカ国民はいらだっている。
 「この1週間、怒りの多くは、政府が巨額の救済策を打ち出したことにではなく、救済されるのが過去数年間に荒稼ぎしたウォール街の連中だということに向けられて いた」と、ライシュは言う。

≪解説≫
 
信用基準のお粗末さが露呈」のことを、米系の有名雑誌が記したことは特筆すべきことです。しかし、記者にはもう少し注文を付けたいところです。
 そうです。主要2社の
信用格付け会社についてです。両者はエンロン・ワールドコム事件(2001年)においても、今回と同様に投機熱を煽っていた元凶の一翼を担っていたのですから。
 投機熱を煽るには、
一連のプレーが見事な連携のもとで成されることがポイントです。
 
(a)投機マネーの元を作り出す(ドル札を刷る)役割、そして(b)その大量のマネーを動かす(投機商品を設計して売買する)役割、さらには(c)その商品を宣伝する証券アナリストやエコノミストあるいは著名な投資家を担ぐマスコミの存在、そして、(d)あたかも第三者のように“客観的”にその商品やその金融機関の信用格付けをする独占(寡占)事業主体の働き、のことです。
 投機によるバブルとその崩壊については、繰り返しますが、それは自然循環ではなく、このような見事な連携プレーたる
“人為的循環”であったことに、そろそろ私たちは気付かねばなりません。これまでも、私たちの財産を膨大に奪われてきたのですから・・・

 一方、平均的なアメリカ国民は不安に駆られ、多くの人にとってはマイホームの夢さえ遠ざかっているようだ。コフィーら専門家は、住宅ローン関連の金融市場の壊滅 により、米住宅ローン市場も現状の規模の10分の1に縮小するとみている。
 米政府の救済策によって、一般市民がどの程度の恩恵を受けられるかはまだわからない。それでも、過去20年間の極端に自由な資本主義が、まったく新しいイデオロギーにではないにしても、より節度あるものに変わりつつあるのは明らかだ。

≪解説≫
 
このパラグラフは素直によしとしましょう。
 記者が示すように「
より節度あるものに」という関係者の倫理が問われているのです。言い換えますと、経済やビジネスとは、それを担う人々の倫理・道徳感(ある種の価値観)により、大きく左右される、ということです。
 シカゴ学派の創設者であるナイト氏を形容した「ナイトの不確実性」は有名ですが、同氏も“企業家の倫理”のことを強調している通りです。そして、
この“不確実性”と“企業家の倫理”がともに共鳴しあうと、その向く先によっては、とんでもない危機をもたらすのです。少し難しいかも知れませんが、今回の金融危機は、この両者が結びついたところに問題の本質が潜んでいるのです。


■「終焉」を迎える投資銀行

 まず、従来型の投資銀行はもうおしまいだ。FRBの規制により、これまでのように レバレッジで高い収益をあげることはむずかしくなるだろう。 「基本に立ち返ることになるだろう」と、モルガン・スタンレー・アジアのローチは言う。「コンサルティング業務が増え、レバレッジの高い取引は減る。取引はクライアントの戦略的ニーズに沿って進められるようになり、取引そのものも金儲け一辺倒ではなく、より戦略的になるだろう」


≪解説≫
 
従来型の投資銀行はもうおしまいだ」ということをどう見るかは、彼ら投資銀行の“倫理”に任せていては、まったく期待できないでしょう。彼らに巣食う遺伝子が突然変異することは、英国から始まったマーチャントバンクからの歴史的経緯を見ても、ありえないからです。
 それよりも、
この「おしまい」の是非を決めるのは、現実的になりつつある米ドルの暴落の程度でしょう。言い換えますと、彼ら恐竜の食い物はマネーですから、そのマネー(より正確には負債・借金)ができないような状態に人々(または政府)が気付き、この状態のままでしばらく忍耐ができれば、恐竜はもはや生きていけません

 金融関係者の報酬にも上限が設けられる可能性がある。アメリカでは、ライシュをはじめ多くの人が、報酬を5年ごとの業績目標に連動させることを求めている。目先にとらわれて過度のリスクを犯すことを防止するためだ。
 それに、金融関係者の巨額の報酬のもととなった複雑なデリバティブ市場も縮小傾 向にある。アメリカでは取引の透明性の向上のために、デリバティブの取引機関の整 備を求める声がある。EU(欧州連合)はすでに、デリバティブ規制に動いている。欧州委員会は先週、債務担保証券を禁止もしくは制限する規制案のたたき台を作成した 。

≪解説≫
 
多国籍企業の多くが、ケイマン諸島やオランダ領アンティル、英領ヴァージン諸島、スイス、リヒテンシュタインなどのタックス・ヘイブンを“利用”していることは常識です。そして、この仕組みを創ったのも、多国籍企業(と利害が一致する一部の政府当局者)なのです
 再び政府側の要人であったライシュ氏が登場します。同氏はその存在やそこで何が行われいるかを当然知っていることでしょう。にもかかわらず、実に小手先に過ぎない「業績連動型の報酬制度」を提案している様など、誠意ある態度とは到底言えません。物事には程度というものがあるのです。


 ドイツのシュタインブリュック財務相は、金融市場の「教化」にも乗り出した。週刊誌の取材に対し、彼はこう述べた。「現在のような欲望むき出しで野放しの資本主義は、自らを食い尽くす運命にある」。シュタインブリュックは金融機関の自己資本比率を増やし、空売りを禁止し、金融関係者のボーナスに上限を設け、そして何より 、簿外取引をなくそうと必死だ。 「過度のリスクを負うか、他の市場参加者に意図的に損害を与えないかぎり、25%のリターンは達成できないことを、明確にすべきだ」と、シュタインブリュックは先週 、ドイツ連邦議会で語った。

≪解説≫
 
シュタインブリュック財務相の言う「欲望むき出しで野放しの資本主義」とは、前述で私が形容した(正確にはグリフィン氏が表現する)、本当はマネーを生みだす“怪物”のことなのです
 しかし、ライシュ氏同様に、同財務相も方法論だけを述べることに終始しているようです。どのような解決をしようとするのか、その
小手先度合いで、当人がどれほど核心に迫っているかどうか、その真剣さが伝わって来るものです。それでも、このような発言が出てきたことに、多くの市場関係者は耳を傾けるべきでしょう


■バブルはいつか復活する

 もっとも、最近とくに高いレバレッジをかけて取引をしたのは、ウォール街の大手金融機関ではなく、複数のドイツの銀行だった。政府の監視を強化するだけで万事う まくいくとはかぎらない。入念に練り上げられた規制をきちんと実行し、かつ、ある 程度柔軟でなければならない。

 たとえばジョージ・ソロスは、レバレッジ率に一定の基準を設けるのではなく、市場の状況に応じて基準を上下させる裁量をFRBに与えるべきだと主張している。
 もっとも、資本主義を縛ることは本当に可能なのか。それとも投機的な面はしばらく鳴りを潜めても、そのうち復活するのだろうか。

≪解説≫
 
ソロス氏のこの提案も、シュタインブリュック財務相のものと大差ありません。
 重要なことは、過分な「
資本主義を縛ること」なのです。そして、“縛る”よりももっと有効な方法は、前述の通り、“えさ”を与えない(=金融機関から過度な負債を負わない)ことなのです。

 最近の損失で痛手を受けたヘッジファンドは、クレジットデリバティブ市場から逃げ出そうとしているのかもしれない(この数週間でマネー・マーケット・ファンドに約1,000億ドルの資金を移している)。だが今のところ、ヘッジファンドに対する規制はとくに提案されていない。ヘッジファンドはいずれ舞い戻り、姿を消した投資銀行に代わって信用リスクを取引するだろう。


≪解説≫
 ヘッジファンドは「
クレジットデリバティブ市場」を“創作”したとほぼ同時期に、この危険なマネーゲームの延長として、最近では「排出量取引制度」が新たに“創作”されています。CO2温暖化ガスにまで、そのデリバティブ(証券化)の対象が移ってきました
 (参考)【一言】太陽光発電の普及策に垣間見える背景



 同様に、政府系ファンドや新興市場にはカネがあふれている。アジア各国の中央銀行だけで外貨準備高は4兆ドルを超える。今回の救済案で必要とされる7,000億ドルの何倍もの額だ。

 潤沢な資金がある以上、たとえ新たな規制が生まれても、人々はそれを回避しようと策をめぐらす。投資家(とその関係者)は規制をかいくぐるため、これまで以上に 独創的な方法を模索するはずだ。

≪解説≫
 ここでは
4兆ドル」と「7,000億ドル」が比較されています。この比率だけでも6倍弱ですが、前述の通り、過去約1年間で世界が失った時価総額は21兆ドルほどです。これとの比率は、実に30倍です。
 
これまでの損失の程度とこの桁違いの大きさが、今回の金融危機の深刻さを物語っています。軍事力もなく政治力もない普通の国々であれば、間違いなく国家破産でしょう。かの国の場合には、これ以上の奥の手があるのか分かりませんが、目下グローバルで急速に波及する金融危機が他の国々を直撃し、国家破産に導く可能性があります。

 こうした新たな資金のうち、かなりの部分がまちがいなく欧米市場に流れ込む。その結果、新興国の影響力が増し、世界の多極化が加速するのは確かだ。だが、だからといって自由市場体制が総崩れになるわけではない。
 中国はウォール街の危機に乗じて自国の権威主義的資本主義のメリットを吹聴している。だが今年、中国の株式相場は66%も下落し、一般市民は大損害をこうむった。 「中国モデル」が成功したとはとても言えない。
 ヨーロッパの資本主義も結局、アメリカ型の資本主義と大差ない。規制という足かせもあって、数年遅れでアメリカを追いかけているにすぎない。

≪解説≫
 記者のこのパラグラフは読者をミスリードさせます。一面その通りに読めますが、このシナリオは考えられる幾つかの1つに過ぎません。つまり、「
世界の多極化が加速するのは確かだ」とは言えません。
 「新興国」
がなぜ“新興”したかと言えば、ここでもやはりマネーの流入なのです。もちろん、その国の労働力(人材の多さ・能力の高さ、技術力)や多少のイノベーション要素(全要素生産性の類)もあろうかと思います。しかし、より大きな“新興”要因は、流入マネーの量(投資もしくは投機的なもの)のはずです。
 すなわち、欧米金融機関の豊富な投機的マネーが、その国の市場から引き上げてしまえば(実際、今急速に引き上げていますので)、これまでのような急ピッチでの経済発展は不可能なのです。従って、「
世界の多極化が加速」することは、マネーの出し手が総崩れになれば、そうもいかないはずです。
 もちろん、(欧米も新興国もみな低めのレベルで)相対的に存在感が分散化されることはあるかも知れません。しかしその場合でも、「
新興国の影響力が増す」というのは楽観的過ぎるでしょう。
 それには中国も例外ではありません。つまり、「
中国モデルが成功」したように見えたのは、前述の通り、鄧小平氏の解放経済以降、西側諸国からの豊富なマネーの流入が伴っていたからです。中国経済は、今般の金融危機で異変を呈し(これまでのバブリーな経済は一時的に急速に縮小し)、金融危機のほとぼりがさめた後で、新たな力強い発展をすることが期待されます。そしてその時には、通貨の元も米ドルに比し、強いものになっていることでしょう。

 とはいえ、新時代を迎えた世界経済はヨーロッパ型に近づきそうだ。「どうにか切り抜けるだろうが、不満は多いはずだ。大幅な成長はないが、大惨事にもならない」 と、ロンドンの投資顧問会社インディペンデント・ストラテジー社の主任エコノミス ト、ボブ・マッキーは言う。


≪解説≫
 
大惨事にもならない」かどうかを、投資顧問会社に尋ねることなど、相手を取り違えています。マスコミは、そろそろこの基本事項を知らねばなりなせん。
 読者を何も知らないお客様と見る態度が続くと、やがて有名雑誌であっても読者離れが加速することになるでしょう。


 投資よりも貯蓄をする人が再び増える。節約の美徳が再び語られるようになり、短期的には金融引き締めが続く。それでも、資金はいずれ再び動きだす。新たなバブルが生まれる。エネルギー、エコ技術、宇宙--どの分野かはまだわからない。

 いくら救済策を打ち出し、新たな法律を作っても、バブルは必ず繰り返される。次のバブルが来るときには、08年の世界的危機など誰も思い出しはしないだろう。

≪解説≫
 この雑誌記者は、最後まで本質には触れずに通り過しました。当たり障りのない終わり方です。記事を美しく終わろうとするのはいいですが、また、せいぜい金融関係者への深刻な影響を語ることも意味がないとは言いません。
 しかし、今般の前代未聞の金融危機が、これから本格的に襲おうとする一般の国民生活への影響が、どれほどのものかをもっと具体的に示すことが大事でしょう。そして、「
バブルは必ず繰り返される」などと他人事のような書き方はもう止めて、バブルを生みだす根本要因やその動機について語らねばなりません。しかし、それができない限り、この種の記事は「必ず繰り返される」に違いありません。

(C) 2008 Newsweek, Inc. 2008 Hankyu Communications Co., Ltd.
=====≪unquoteで解説終わり≫

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コメント

 こんにちは。当面の信用不安を克服するため、各国が資本注入することは避けられないことだと思います。しかし、その後どうするかで、実体経済の回復が決まってきます。
 私は、現在多くの人々の頭の中は「経済」というキーワードでいっぱいになっていると思います。そうして、八方塞になっていると思います。私たちは、ここで「社会」に着目する必要があると思います。今後健全な社会を形成しなければ、実体経済も良くはなりません。
 といようより、現在全く異質な社会に入りつつある先進国においては、「次の社会」に備える国だけが、来るべき将来において、健全な社会と経済を手にするということです。
 逆に、「次の社会」に備えない国とっては、不健全な社会と経済で没落していきます。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2008年10月11日 (土) 10時53分

 コメントを有り難うございます。
 以前にもコメントを下さったように記憶しています。HPを拝見致しました。いいですね。
 「次の社会」に関する件、重要なことだと思います。

投稿: yshimbo | 2008年10月15日 (水) 17時53分

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