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2008年7月25日 (金)

【掲載】iPhone 3Gに関するコメントの補足

20080725iphone3g_3 少し前に(2008年7月11日)、日本に上陸した「iPhone 3G」についての私のコメントが、『日経コミュニケーション』誌に掲載されていました。それを下に、このBlogにそのまま転載します。

(画像は、「iPhone 3G」発売イベントに登場した上戸彩(右)とソトバンク代表取締役社長の孫正義氏。太字下線は、私が付しました。)

 次の事項のみ、ごくポイントのみ補足しておきます:

携帯電話の高機能化の波は近隣の韓国、中国の沿海地区などに広がっている。こういう地域には、日本よりリッチな人がいる」のは確かだ。

 「高機能化」は時間の経過とともに、「購買階層モデル」(米ウィンダミア・アソシェーツ社)に従い、 「(a)機能⇒(b)信頼性⇒(c)利便性⇒(d)価格」の順にコモディティ化する。つまり、消費者の価値基準のマイグレーションが起こります〔米コンサルタントのスライウォツキー〕。

 言い換えますと、「“高機能”は売れない。まさに、クレイトン・クリステンセンが言うように、イノベーションのジレンマとしての、慣性過剰(オーバーシューティング)の典型的な現象なのだ」などと、いつまでも固執していると、新たに需要のうねりを見落としかねなません。新規需要は「待つ」と同時に、「創るもの、触発するもの」(=ある種の仕掛け)なのでしょう。

 そして、この仕掛けについては、米Apple社よりも(あるいはソフトバンクよりも)、NTTドコモのような企業が、東南アジアや中東などの海外エリアにおいては先行しているのではないでしょうか。当該エリアでのドミナント企業との提携を通じ、端末機器からアプリケーションまでの垂直統合的なパッケージを供給できる可能性もあるでしょう。ここではまだ“点”の段階です。

 次はそこでの成功余力を“面”で展開する。1人あたりGDP(=当地での消費者購買力)が次第に高まるにつれ、やがて普及し出すでしょう。国内市場のみのパイの収奪合戦に留まる限り、パイは増えず、配分が変わるだけ(市場シェアの変動があるのみ)となってしまいます。海外事業に活路を見出したい、端末メーカーやアプリケーション事業者らの「意欲と能力」をうまく戦略的に活用できるかが、通信事業者の今後の岐路が分かれる点なのではないかと考えています。

=====≪quote≫

■【iPhone,私はこう見る】日本市場への浸透が新興国進出への布石に

日本総合研究所 新保 豊 理事・主席研究員

 日本総合研究所の新保氏は,米アップルの日本市場への進出は,アジアなどの新興国への布石だと分析する。ハイエンド市場での存在感を高めると同時に,「おサイフケータイ」の取り込みなど,世界のトップランナーを目指す可能性も指摘する。

(聞き手は松元 英樹=日経コミュニケーション)

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◆iPhoneの国内価格は市場にどう受け止められるか。

 価格面での失望感は,ほとんどないだろう。初代iPhoneの“約半額”で199ドルという線は崩れていない。現在,国内の携帯電話の価格は5万~6万円が多い。その中で,新規契約で実質2万3,040円という価格は値ごろ感がある。割賦払いによる初期費用の低さも,利用者には魅力だろう。

 携帯電話にiPod機能,8Gバイトのフラッシュメモリーを加えたと考えると,コスト・パフォーマンスは高い。デザイン性,操作性,ブランド力も無視し得ない要素だ。これらの要素を含めると,価格訴求力がある。

◆発売のタイミングは7月11日と,大方の予想よりも早かった。

 数年前から孫社長とジョブズCEOが会ってiPhoneについて協議しているという話はあった。個人的な感覚では,もうちょっと先かなと思っていた。

 このタイミングを,アップルがみた日本の市場の重要性という視点で考えてみたい。世界における携帯電話の出荷台数である11.3億台と比べると,日本での出荷台数は5,000万台で4.7%に過ぎない。でも金額で見ると16.5%くらいある。この数は,世界のGDP(国内総生産)に対する日本のGDP比率9.3%と比べてかなり大きい。つまり,日本にハイエンド機の市場が集中しているということだ。携帯電話の高機能化の波は近隣の韓国,中国の沿海地区などに広がっている。こういう地域には,日本よりリッチな人がいる。ジョブズCEOもこの市場を狙っており,日本市場の攻略はそうした地域への進出の布石と考えているはずだ。

 iPhoneのさらなる高機能化という点でも日本市場は無視できない。SuicaのようなNFC(近接無線通信)やその上位の「おサイフケータイ」機能も世界的に注目を浴びている。いずれiPhoneがおサイフケータイ機能を乗せるかもしれない。バルセロナで開催された展示会「Mobile World Congress 2008」では,NFC機能が銀行や金融機関に注目を浴びていた。都市部はともかくATM(現金自動受払い機)が置けない地方では,携帯電話のインフラでお金の送受信できる機能が重要だからだ。

◆iPhoneは1年間かけて世界で600万台くらい売れた。思ったほど台数が出ていないようにも思う。

 2004年に出たiPodは,最初の1年に800万台売れた。メモリーの容量が1Gバイトのモデルで,日本の値段で2005年1月では1万6,980円だった。初代機が高かったことを考えると600万台は妥当な数ではないか。今回のiPhoneが8Gバイト搭載機で200ドルを切るというのは,初代iPodと同程度かちょっと安いくらい。199ドル(8Gバイト搭載),299ドル(16Gバイト搭載)というのは,かなり割安感がある。価格はものすごく大きい。

◆アップルは,世界70カ国でiPhoneを売る。iPhoneの市場を広げ,上のレイヤーのサービスからの収入を狙っているのではないか。

 様々なコンテンツの入り口となる端末や世界をジョブズCEOは見ているのではないか。孫社長もコンテンツが重要と従来から言っている。そういう世界に近づいてきた。コンテンツ中心の生活に根ざした,コンテンツの窓口になる端末がたくさん出てくるだろう。iPhoneがその先駆けになるだろう。

◆日本でiPhoneはヒットするか。

 日本のユーザーは,テンキーを使うことに慣れている。使いやすいユーザー・インタフェースは,シャープや松下,NECといった端末メーカーも研究しているので,日本人がiPhoneを見たときの驚きと,外国人が見たときの驚きは全然違う。私の知人にも「iPhoneは皆が騒ぐほどすごいのか」という人がいる。

 簡単に販売台数を想像すると,ソフトバンクモバイルのユーザーが1,900万人で,平均2年(余:新保が加筆)で端末のライフサイクルが来ると考えると1年間の販売台数は850万台。このうち10%がiPhoneを購入すると考えると85万台が売れる。100万台を達成するには,全体の12%が購入する計算になる。これはそんなに難しくない。

◆ソフトバンクモバイルにとって,純増効果が大きいのではないか。

 そうだろう。いまのホワイトプランの戦略がそうであるように,純増数をとにかく増やすのがソフトバンクモバイルの基本戦略だ。孫社長はよく言っているが,お客さんをいったん獲得すれば,そこからいろいろな収益が得られる。

◆NTTドコモからiPhoneが出る可能性をどうみるか。

 ジョブズCEOは相手が誰だろうが強気だ。排他的な契約を結ぶことはなく,利益を最大化することだけを考えている。だから日本ではNTTドコモと組んでくる可能性はまだある。アップルが利益を最大化するには,バーゲニングパワー(交渉力)を出す必要がある。その点,ソフトバンクとNTTドコモの2社と契約したほうが有利になる。

◆iPhoneのビジネス向け機能に可能性はあるか。

 カナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)の「BlackBerry」のような,堅いニーズがあるのだろう。簡易パソコン的な通信機能やちょっとしたメモ機能を狙っている。iPhoneはコンシューマ向けの華のある機器だが,ビジネス・パーソンも使える。ビジネス市場も大きい。アプリケーションについては,米グーグルの「Android」のようなプラットフォーム環境をどこまで用意しているのか,ということになる。プラットフォームが充実すればビジネス・アプリも増えてくる。 [2008/07/11]
=====≪unquote≫

≪参考≫【雑誌掲載】新型iPhoneの販売台数予測(2008年7月 1日)
http://shimbo-yutaka.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/iphone_4035.html

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