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2008年6月17日 (火)

【アドバイザー】京都大学 経営管理大学院プログラム

20080613  先週の 金曜日(2008年6月13日)、京都大学「サービスイノベーション人材育成推進プログラム」のアドバイザーとして、京都まで行って来ました。

 同アドバイザリー・ボードのディレクターは、成生達彦氏(京都大学 経営管理大学院 院長)がおつとめになります。

 同プログラムの紹介文を、下に記しておきます。

(注)「私の見方・感想」において、ケインズが指摘した「百万人にひとりもそれと診断できないような方法で」について、一部訂正・加筆しました。

=====≪quote≫
アドバイザリー・ボード

20080613_4 本プログラムは、高度サービス・マネジメントやイノベーションを担う「サービス・クリエイティブクラス(創造的知識労働者)」の人材育成を目指しています。

 具体的には、人や社会を深く理解する方法を身につけ、文理融合の知識を活用してサービスの経済・社会的価値を引き出し、人や社会に還元できる人材育成を行う教育活動です。このようなイノベーションを引き起こす人材育成の教育プログラム開発に際しては、大学に蓄積されてきた理論や知識を習得するだけでは不十分で、サービスに関連する種々の領域において、高い見識をもって第一線でご活躍の方々からのフィードバックが不可欠です。

 今般、本プログラムの方向性や実施状況に対するご意見をいただくため、産官学連携という観点から、「アドバイザリー・ボード」を設置する運びとなりました。長年にわたりサービス領域でご活躍され、この分野についての造詣の深い下記6名の方々にご快諾いただき、アドバイザリー・ボードメンバーとして、ご支援をいただくことになりました。応用サービス領域として、高度専門サービス、情報・ITサービス、流通・交通インフラサービス、公共サービスなど、バランスよく網羅された構成となっております。

アドバイザリー・ボードメンバー(6名、五十音順)

■碓井誠氏 フューチャーアーキテクト 取締役副社長
■新保豊氏 日本総合研究所 理事・主席研究員
■角和夫氏 阪急阪神ホールディングス 代表取締役社長
■竹内直文氏 国土交通省大臣官房技術審議官
■村上憲郎氏 Google Japan 代表取締役社長
■横山健一郎氏 ハイアット リージェンシー 京都 総支配人

 サービス・イノベーションに対する産業・企業における真の課題は何か、我々のアプローチがこのような課題解決に対して有意義な手段であるのか、本教育プログラム履修後のキャリアとしてどのような人材育成を目指していくのか、今後の本教育プログラムの発展はどのようにあるべきか等々のコメントを賜りたいと思います。また、本教育プログラムの透明性を高め、説明責任を明確化するためにも、アドバイザリー・ボードを有効に活用していきたいと考えています。

京都大学 サービスイノベーション人材育成推進プログラム
アドバイザリー・ボード ディレクター
京都大学 経営管理大学院 院長
成生 達彦

=====≪unquote≫


■私の見方・感想:
(ビジネスパーソンも知っておきたいマクロ経済学的な視点)

 当日は、同大学院の担当教授陣らの各研究テーマについてのプレゼンテーションを拝聴しつつ、様々な意見を交わしました。

 このプログラムの内容につきましては、当面クローズのままお進めになるという方針のようでしたので、ここではそのプレゼンテーションについての具体的な内容に立ち入ることは控えます。

 私は主に、次のような観点・視点で取り組むことが重要ではないかと申し上げました。殆ど一般論です・・・(^-^)


◆経営学(MBAを含む)については、本来「哲学・ビジョン」にまで遡り、再構築することが重要ではないでしょうか。

 経営学のみを見ていても、社会・経済全体の大きな潮流や本質部分をとかく見失いがちだと、日頃感じています。
 欧米流のMBAという“学問”は、「株主価値=企業価値」というフレームワークを前提とした上で、株価を主とする財務的な価値指標(例:ROEなど)が誰(株主、経営者、アナリストら)にとっても、簡素で分かりやすいものなるよう研究する“学問”、と言えましょう。


◆経営学は、ミクロ経済学はもちろんのこと、マクロ経済学にかなりの部分規定(制約)されるものであり、両者は不可分一体的なもの。その視点を盛り込むことも肝要ではないでしょうか。

 特に、バーナンキFRB議長が言うところの「犬の尻尾」たる金融経済が、本来その「頭」たる実物経済を振り回している様子(全貿易取引額の80倍余ほどもある状況)は異常。
 「金融サービス」への過分な思い入れは、均衡を崩してしまった現下の経済体系を助長するものになるのではないでしょうか。


◆「サービスイノベーション」における「サービス」とは何か、その価値の源泉はどこにあるのか、といった基本的な問いを発し、それに答えるところからスタートを切るべきではないでしょうか。

 「サービス」とは、イノベーションやTFP(全要素生産性)のドライバーにはなりえるものの、コア技術(どちらかというとハード的な要素)こそが、シュンペーターの「新結合」をもたらすことになるのではないでしょうか。

 日本の産業史を見れば、繊維→鉄鋼→自動車の変遷の中にあって、各産業のコア技術が市場や社会に浸透(スピルオーバー)する過程にあって、まずハードが起点になり、その後サービス(例:自動車であれば、ドライブイン飲食サービス、旅行サービス、レンタル・金融サービスなど)が次々に生まれます。これは、原丈治(はら・じょーじ:DEFTA PARTNERSグループ会長)さんが指摘していることでもあります。

 つまり、「サービス」が隆盛である時期とは、当該産業の成熟期である、と言うことです。電話機やテレビ受像機がまず社会に浸透し、その次に様々なサービス(通信サービス、コンテンツサービス、放送サービス、広告サービスなど)が生じる様子もそのことを物語っていると言えましょう。
 従って、「サービスイノベーション」単独では効果は必ずしも期待できませんので、ハードやプラットフォームとのセットで考えることが重要になるでしょう。


◆同様に、「イノベーション」または「成長」とは、何かを問うことが重要でしょう。多くの日本人は、シュンペーターの「イノベーション」の理論は知っていても、ある肝心なことを見逃しているのです。

 「サービス」とは、イノベーションやTFP(全要素生産性)の要素にはなりえるものの、コア技術(どちらかというとハード的な要素)が、シュンペーターの「新結合」をもたらすのではないでしょうか。
 具体的には、コア技術がイノベーションの5つの類型(①新しい財貨の生産、②新しい生産方法の導入、③新しい販売先の開拓、④新しい仕入先の獲得、⑤新しい組織の実現)をもたらすと言えましょう。

 そして、特筆すべき経営学者であったシュンペーターは、また稀有な経済学者でもあったことを、多くの日本人研究者は見落としているのではないでしょうか、と。
 特に、同類型のうち、「①新しい財貨の生産」が何を意味しているのかを知らない実態が多い。シュンペーターは、銀行家の存在とその融資(信用創造)機能を極めて重要な要素と見なしているのです。
 言い換えますと、「イノベーション」を起こすにも、この「銀行家の存在と信用創造機能」が不可欠である、と言えるのです・・・

 「成長」のうち、特に「経済成長」とは、その銀行家に負債を返すことがその核心です。このことを知らずに、「成長、成長」と言っている様子は、シュンペーターからみれば、さぞかし滑稽に違いありません。ケインズもこのことに気付いており、このからくりを知る者は極めて少ない(10万人に1人?100万人に1人に訂正)、と言ったようなことをどこかで言及していたように思います。ここでは、これ以上は止めておきましょう。

(注)「ジョン・メイナード・ケインズも1919年にこう記している。『レーニンは実に正しかった。通貨の価値を下落させることほど、微妙でしかも確実に社会の基盤を覆す方法はない。この過程では、経済の法則の隠れた力がすべて経済を破壊する動きに動員される。しかも、百万人にひとりもそれと診断できないような方法で』。
(出所)アラン・グリーンスパン『波乱の時代―わが半生とFRB』(2007年11月)



◆「サービス」というその性格から、「経済的な効率性や合理性」を過度に重視過ぎると、本来の「サービス」の価値(供給側のもてなしの心、需要側の参画意識、経験、共感など)を毀損してしまいかねないことがあるのではないでしょうか。

 ローランド・ホール氏のマーケティング理論では、古典的な「AIDMA」(アイドマ:Attention →Interest → Memory →Action)が示されました。
 さらには電通さんは、示したインターネット上の消費者の購買行動である「AISAS」(アイサス:Attention →Interest →Search →Action →Share)を示しました。

 私は、「インターネット2.0」時代、あるいは「メディア2.0時代」では、生産消費者(プロシューマー)の購買または非購買(非金銭的活動)は、 「AIPES」(アイペス:Attention →Interest →ParticipationExperienceSympathy/Share)プロセスに従う、と考えています。

◆「グローバリゼーション」は諸刃の剣です。「サービスイノベーション」を考える際、この世界の潮流を良くも悪くも考察した上で、冒頭で示した日本の新たな「哲学・ビジョン」を前提に、様々な考察を加えていくことが重要ではないでしょうか。

 グローバリズムとは、アングロサクソン流の世界戦略です。その戦略を牽制・超えるには、同じ土俵に居ては戦っても勝算はない、ということです。

 また、「サービスイノベーション」には、各国あるいは国内での経済的主体による切磋琢磨という意味での「競争」的要素があるでしょう。しかしながら一方で、「共創・連携」的な要素の方がさらに重要だと考えています。特に、日本国に留まらない、新アジア広域圏(中国・韓国・東南アジア・インド・ロシア・トルコなどを含む)での取り組みが求められます。そのような視野を広げた考察が、今後必要なのではないでしょうか。

 と当日、勝手気ままなことを申し上げました。^^;

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