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2008年1月30日 (水)

【一言】ダボス会議での“協調的イノベーション”

20080125business_week  先日のダボス会議について、少し触れておきたいと思います。

20080125 『BujinessWeek』誌編集局次長のBruce Nussbaum氏(写真)のレポート記事を紹介しましょう。なかなか鋭い突っ込みを部分的にしていると思います。

 ダボス会議に関するマスコミ報道は一面的です。この会議は、今後の世界のパワーポリティクスや経済の趨勢を決める、極めて重要なイベントなのです。単なるお祭りでは決してありません。

 日本のエコノミストやアナリストも大概、Nussbaum氏ほどの指摘もできないのが現状と言えましょう。

=====≪quote≫
怒りと不安が渦巻くダボス会議 
“協調的イノベーション”は世界経済を救うか?
(2008年1月25日、BusinessWeek)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080124/145303/

 原題は、「What's Really on the Davos Agenda」(January 18, 2008) であり、Bruce Nussbaum氏 (BusinessWeek誌編集局次長、デザイン/イノベーション担当。2008年世界経済フォーラムで変革関連ワークショップの司会を務める)による記事です。

 
 ダボスはスイスの小さなスキーリゾートだ。積もった雪が通りからすっかり消えることはない。毎年この時期の1週間、「世界経済フォーラム(WEF)年次総会」(ダボス会議)が開かれ、世界各国から要人が集まる。

 秘密会談から公開討論、偶然の出会い、その時々の主要な経済や政治問題に関する一般展示まで、様々なセッションに村は大賑わいとなる。ワークショップ、パネル討論会、分科会、全体会議は、大会議場のほか、村にある数十のホテルに分かれて行われる。

 食事を取りながらの会議は、朝、昼、晩、その後のカクテルパーティまで続く。米女優アンジェリーナ・ジョリーがアフリカ難民について語り、米グーグル(GOOG)の2人の創業者が世界最高のワインを供する大パーティを催し、英国の前首相トニー・ブレア氏がアイルランドの人気バンド「U2」のボーカル、ボノと一緒に歌って、「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金」のための資金集めをしたのもこうした場だ。招待客限定、参加するには数万ドルの大金がかかる。
(略)

◆焦点は「イノベーション」と「リセッション」

 今年は1月23~27日に開催されるダボス会議の主な議題は、“イノベーション(革新)”と“リセッション(景気後退)”の2つである。

 公式テーマは「The Power of Collaborative Innovation(協調的イノベーションの力)」だ。このテーマに沿って、数々のパネル討論、ワークショップ、スピーチが行われる。具体的には、ブログやSNSなどに代表される“ソーシャルメディア”の急成長と、それを企業活動、教育、医療、政治システムなどにどのようにして生かしていくかが焦点となる。

 非公式には、世界経済への懸念を高めている米経済成長の急激な減速が中心議題となるだろう。欧州、アジア、米国の中央銀行トップは1人残らずダボスに集まり、景気後退を阻止するための協調利下げを画策するに違いない。中央銀行版“協調的イノベーション”である。

 欧州からは怒りと非難の声が上がるだろう。

 昨年は、髪を撫でつけた米国のプライベートエクイティ投資会社やヘッジファンドが大挙してやって来た。懐疑的だった欧州に、米国の市場資本主義がいかに賢く、有益かを見せつけるためだ。SIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)、債務担保証券(CDO)などの複雑怪奇な金融商品の規制強化を求める声には、市場メカニズムに任せておけば大丈夫だと言って取り合わなかった。プライベートエクイティ投資会社やヘッジファンドの暗躍が経済成長を歪めていると非難されると、欧州は金融改革の新たな実態を理解していないと反論した。
(略)

=====≪unquote≫

■私の見方:
(ビジネスパーソンも知っておきたいマクロ経済学的な視点)

 「世界経済フォーラム(WEF)年次総会」の別名、ダボス会議では、「主要な経済や政治問題」について、事実上、“世界経営”をしている要人が参集します。グローバリズムの潮流の中で、今や「世界はフラット」になりつつあるのです。EUの動き然り、北米同盟の動き然りです。

 地球上の主要地域である、特に欧州と北米の政治・経済を経営(マネジメント)している“経営者”が、現状を相互認識し、今後の“経営”の仕方を確認・決定するわけです。各種お祭りごとは、単なる余興・前座に過ぎません。核心的な討議・意見交換は、「秘密会談」の場で行われていると、Nussbaum氏は指摘しているようです。

◆ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金

 ITや情報通信に関心を持つ読者でしたら、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏の今後の身の振り方に興味があるでしょう。ゲイツ氏は今後、ご夫人メリンダ氏の名前も冠した、「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金」の経営をすることを表明しています。慈善団体です。

 この「ゲイツ基金」は、他の慈善団体と同様、米国政府に税金を払わないで済むものです。ただ、慈善団体であることを存続させるには、若干の条件が必要です。それは、「年間15億ドルを使わなければならない」という決まりです。

 ビル・トッテン氏(アシスト社社長)によると、その使途のうち、最も興味深いのとして、「Doomsday Arctic Seed Vault Designed to Withstand All Perils」といったものがあります。「あらゆる危険に耐えうるよう設計された世の終わりの日の北極種子金庫」です。核戦争や地球温暖化などで種子が絶滅しても、再生できるように保存するというのが目的だそうです。

 つまり、“世界経営者”として、「Doomsday」(地球最後の審判の日)に向けた取り組みに着手したということです。そして、英国の前首相トニー・ブレア氏が資金集めを盛り立てていました。ITから次はバイオ事業? ゲイツ氏やブレア氏らは、一体何を思い描いているのでしょう?

◆“世界経営者”の世界観

 「最後の審判」などと言った、何やらキリスト教的なものが入り込むと、私たち日本人には、それは自分たちにとって別世界のものだ、と自動的に思考が停止してしまいがちです。しかし、グローバリズムの世界を知るには、この彼らの感覚や表現を理解することが重要です。良くも悪くも、欧米を相手にしたビジネスで、遠因的ではありますが、日本企業の多くが座礁してしまう、ビジネス・パートナーシップを最も左右する要因は、実はここにあるのです。

 すなわち、彼らの世界観を理解できるか、です。ただもちろん、それを理解することと、さらに一歩進んでその世界観に組する(迎合)することは区別されるべきでしょう。にもかかわらず、ダボス会議に集う、日本の政治家や経済人が、会議の雰囲気に影響され、“世界経営者”との連携を毎年強めることになります。ダボス会議後のこれら日本の要人の発言に注目すると、その連携ぶりが確認されるはずです。

 前回までのダボス会議では、「米国のプライベートエクイティ投資会社やヘッジファンド」が、「米国の市場資本主義がいかに賢く、有益かを見せつける」ものであり、その独壇場のような空気があったのでしょう。しかし、その○けの皮は、「複雑怪奇な金融商品」が生み出したサブプライムローン問題で、剥げ落ちてしまった感は否めません。もはや「市場メカニズムに任せておけば大丈夫だ」と信じる人々は激減しているのではないでしょうか。「欧州は金融改革の新たな実態を理解していない」といった圧力は通用しにくくなってきているのでしょう。

◆ダボス会議で最も重要な意義

 さて、今回のダボス会議では、「イノベーション(革新)”と“リセッション(景気後退)」が主題でした。

 この3年間ほど、どこに行っても「イノベーション」流行(ばやり)です。日本政府も安倍政権期に、このイノベーションを通じた「生産性」の向上を謳い、現福田政権に引き継がれています。しかし、イノベーションというのは、マクロ経済学の「成長会計」における“ソロー残差”(=TFP成長率)に過ぎません。「労働の貢献分+資本の貢献分」では説明できない、別の成長要因です。しかし、あくまで経済成長の鍵を握るのは、中央銀行が独立的に仕切っているマネー(特にフロー面)に関する金融政策にあると言えましょう。

 「米経済成長の急激な減速」は、簡単に示せば、米国の経済力を支える米ドルの信用力の低下、そして、それを加速させた不動産バブルにあった、と言えましょう。特に、最近のサブプライムローン問題では、欧州もアラブ諸国も、そしてわが国も、随分とそのトバッチリを受けています。基軸通貨国のわがままを、見かけ上“甘受”しているのが現状でしょう。

 さて、ダボス会議における最も重大な意義は何でしょうか。
 それは見事な「中央銀行版“協調的イノベーション”」にあります。主要国の首相や財務大臣および中央銀行総裁らが集まる、G8首脳会議(サミット)よりも、ある意味影響力がある言えます。なぜなら、ダボス会議では、これら主要国の正式な要人に加え、国際金融資本のトップ、各種業界のビジネスリーダー、さらには知識人、ジャーナリストも集まるからです。世界の政治経済への影響度合いは極めて大きいのです。
 その会議を、Nussbaum氏はこの(=中央銀行版協調的イノベーション)ように指摘しました。その表現は鋭く(ある意味で婉曲的ですが)、洗練されたもので、とても感心しました。

 ダボス会議では、上述の通り、「中央銀行の強調的イノベーション(=連携)」の確認こそが、最も意味ある事項であり、同会議の場は、各行総裁を頂点とし、他の“世界経営者”がその方針を受け、以降“マネジメント”することになっているものと推察されます。そして、来年(まだ「Doomsday」前)も、この“マネジメント成果”が、この会議でまた確認されるのでしょう。

 私は日頃、仕事がら「経営戦略」についても、研鑽を深めているつもりなのですが、その究極の姿は、パワーポリティクスやマクロ経済を超えたところに位置する、“世界経営”にあると言えましょう。Nussbaum氏や一部の慧眼をもった研究者らの指摘から、このようなことを感じました。

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コメント

 G8のような会議より、中央銀行版協調的イノベーション(秘密会議/非公式会議)のが、個別意見交換が出来てダボス会議の中でも活発な議論がされているような感じがします。しかし、それぞれの背景が異なる中で、カリスマ的存在のある人が居なければ、腹の探り合いで終わってしまうのでは?という危惧もあります。

 政治・経済に宗教観を入れてはならない。と言いますが、アラブ諸国はもろいれますし、欧米でも何らかの形で入っています。無視は出来ないが、民=各国民衆の為にの考えが、TOP陣にどれだけ反映されているのか?本当はここが大事だと思います。
現在、荒稼ぎしている資源国は、先進国の繁栄を水没する事さえ願っているような感じがして成りません。(恨み節なのか?ストレス発散なのか?)

 ただ言える事は、各国の主要人が遠慮なく発言や意見交換する事は、憶測から現実なるディスカッションで得られる感覚はとても有意義だと思います。意見・背景に異なる中での世界観が良い方向へと動き始める事を願うばかりです。
まだ、実感がありませんが。

 結果、末端な人々にまで影響がでる事がグローバル化になればなるほど影響します。
 福田首相も参加しただけでは意味が無く「世界経済を自分のごとく感じ、今、日本が世界に向けて自国のことばかりではなく、出来る事柄はアイデアをだし、即時に対応し実行する」とでも発言したら、きっと違うでしょうね。現実は無理ですが。(人も政権もそのような性格ではない)

 個人的感覚ですが、世界的正統派大儀を持って、自ら身を削ぎ皆を自発的行動や協調をさせる誘導力のある人が、不在している感じがします。ダボス会議は良い事だが、現在ではそこから生まれてくる事柄は、けして各国に取って有意義な事とは限らないと思っています。

投稿: modena | 2008年1月30日 (水) 13時33分

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