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2007年9月18日 (火)

外資系投資銀行の戦略スタッフへレクチャー

 9/18(火)午前中、大手総合メディア企業の今後の「クロスメディア戦略」について、金融機関の担当者(部長)から相談を受けました。後述のとおり、ここでも「メディア2.0」や「AIPES」(アイペス)といったコンセプトがキーワードになるのではないかと思いました。

 夕刻、請われて、外資系投資銀行のみなさんと情報通信分野の最近のある話題について、簡単なレクチャーと質疑応答の場をもちました。
 マネージング・ディレクターら10名ほどが同席。とてもご熱心でした。

 私のレクチャーのポイントは、ある新技術を基にした新市場の行方を推定する際の留意点について。次のようなものです。

その技術が当面国内市場中心に適用されるものであれば、まず、わが国の総需要を見ましょう

 何となれば、1993年から始まる(1997年から深刻化した)デフレ経済は、もう15年近く続いています。総需要(=総所得)は概ね下がり続けています。蛇足ながら、このような先進工業国は地球上には存在しません。
(日本の国民の平均として、もう7年間近くずっと給料が減り続けています。外資系投資銀行の皆さんにおかれては、どこ吹く風というところでしょうか。。。)

 デフレ経済下にあるということは、GDP最大部門(6割弱)の消費・家計部門の“財布の中身”(貯蓄)は変わらないか増えていても、“財布の紐”(支出額)が緩まない(増えない)ため、情報通信サービス市場の売上高も頭打ちになります。
 しかも固定電話に加え、最近では普及が進んだ携帯電話サービス市場も頭打ち感が強まっています。

 こうした市場状況(Structure)下で、企業がとれる行動(Conduct)は値下げ競争。その結果としての企業収益(Performance)は、今後大きく増えることはあまり期待できません。

 市場全体が伸び悩んでいますので、市場全体のパイ(量)をいかに公正・適正に配分するかの議論に終始してしまいます。国の競争政策も概ね、こうした市場状況下を最近では前提としていると思われます。
 いま真に求められていることは、“配分”問題の解決(競争というミクロ経済学の世界)ではなく、“量”の拡大とその均衡・持続的成長に関する問題の解決(財政と金融のマクロ経済の世界)なのです。これらのことを産業界がよく学び・見極め、適切な行動をとることで、為政者や政策担当者の行動を変えることは可能なはずです。諸外国では当たり前のことなのですから。

 市場のプレイヤーである個々の企業も、抜本的な手を打つことができません。少なくとも、そうできないように見えます。しかし実際は、財務省の財政政策と日銀の金融政策(主に信用創造量のコントロール)の両面で、景気の舵取りを誤ってきたために、深刻なデフレが続いていると思われます。つまり、世に言われる景気循環などではなく、かなり人為的なところに起因していると言えましょう。これ以上の突っ込みは、ここでは控えます。

マクロ経済状況を前提とした打ち手として、消費者の新たな行動を考察することである程度は打開できるでしょう

 現状を打開するためには、プロシューマー、非金銭的経済(Non-mometary economy)〔Alvin Toffler〕、メディア2.0、AIPES〔JRIの造語〕などの新たな時代のキーワードと、自社のマーケティング戦略・方針が符合していることが求められます。

◆「非金銭的経済」とは、通貨の基本的な機能である、a)物々交換的な初源的な役割、およびb)資本としての役割のうち、主に前者の機能の重要性が今後高まることで実現される経済のこと。
 非金銭的経済におけるプラットフォームとは、さしずめ“メディア2.0”とのかかわりが強まるものと予想されます。

◆「メディア2.0」とは、非金銭的活動(金銭的行動を含む)を媒介する情報通信プラットフォームのメディア化を意味します。
 この新たなメディア(=プラットフォーム)は、資本としてのマネーのほか、非金銭的価値(情報交換、知識のスピルオーバー、知識の社会化・共有化など)が行き来する場となるものです。

◆生産消費者(プロシューマー)の購買または非購買(非金銭的活動)は、AIPES(Attention →Interest →Participation →Experience →Sympathy/Share)プロセスに従います。
­  「AIPES」とは、ローランド・ホール氏が示した古典的なマーケティング理論における「AIDMA」(Attention →Interest →Memory →Action)、さらには電通が示したインターネット上の消費者の購買行動である「AISAS」(Attention →Interest →Search →Action →Share)の次代のコンセプトを示すものと言えましょう。

 以上のキーワードを自社の行動に組み込むことで、新たな需要を喚起することができるでしょう。

 もちろん、総需要が増えない状況下では、他の産業セクターから収益の原資がシフトするだけに過ぎませんが。。。
 それでも、経営戦略の要諦である「自社の周りに独占状況を創る」という本義に戻れば、こうした行動にどこまで踏み込めるかが、競争戦略としては極めて重要な時代となってきました。

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