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2006年12月14日 (木)

【一言】専門家アンケート:2007年を見通す(2006/12/14)

(注)NIKKEI NETの『IT PLUS』アンケートに答えたものです。

■Q1)個人の視点で選ぶ「今年のIT10大ニュース」を以下からお選びください。

①通信・放送の融合議論高まる・「竹中懇談会」が報告書
②ソフトバンク、ボーダフォン日本法人買収・新ブランドで携帯参入
③ライブドアショック――時代の寵児・堀江社長を逮捕

④「グーグル脅威論」高まる・国産検索エンジンプロジェクト始動
⑤グーグルがユーチューブ買収・動画投稿サイトがブレーク
⑥コニカミノルタ、カメラ事業から撤退・ソニーに売却
⑦家庭向けビスタ発売を07年1月に延期
⑧ワンセグ放送開始・携帯やパソコンなど対応機器が登場
⑨通信各社「NGN」に本腰・フィールドトライヤルがスタート
⑩番号ポータビリティー制度開始・ソフトバンク「\0」問題で混乱

●1-3位を選んだ理由:

①⇒   「通信と放送の融合問題」は、わが国の情報通信産業の屋台骨に関するもの。竹中懇での議論内容は道半ばであったが、2010年に再検討することで将来の道を残した。同内容には稚拙なところがあるが、問題を正面から捉えた意義は大きかった。

②⇒  ソフトバンクのボーダフォン買収は、寡占市場に風穴を空けることとなった。発想や適用手法などの点で、旧来2社(ドコモ、KDDI)とは大きく異なる参入者には毀誉褒貶が激しい。しかし、成熟期を迎えた携帯電話市場に待望されることは変化・変革だ。これには期待できそうだ。加えて、買収金額は過去最大、かつLBO(Leveraged Buy-out)や証券化という手法は、今後の大型買収の手本となるもの。この買収を契機にM&A市場が活性化するだろう。

③⇒  堀江氏の無邪気さに問題が無いとは言えないものの、他の経済的・社会的事件に比し、経済的な被害額、問題の本質面における軽微さを考えると、「ライブドアショック」は検察と東証によるマクロ経済を無視した暴挙ともいえる事件であった。わが国経済史において将来に禍根を残すと同時に、わが国の資本市場を巡る問題の未熟さを海外に知らしめるようなお粗末な処理の仕方となった。

■Q2)2007年に注目するサービス・人物・会社は何ですか?1つだけお書きください。

●注目するサービス・人物・会社:
   ソフトバンクの孫正義社長

●選んだ理由: 

 前述のとおり、毀誉褒貶が激しい人物。しかしながら、現下の日本に求められるのは、従来とは異なる着想による変化・変革・破壊である。ブロードバンド、ワイヤレス、ユビキタスが2007年のキーワードになることを思慮すると、どれにも最も革新的な視点やアプローチを期待できそうだ。しかしながら、個々の技術やビジネスノウハウ間に相互依存性が高い時代・状況下では、それらを縦横無尽に駆使できる、旧来事業者の統合型マネジメントが競争優位となるため予断は許さない。

 加えて、ソフトバンクが「大人」になることは、持ち前の「意欲」と、最大の持ち味である革新性や野心的な思考様式(mind set)という「能力」を殺ぐことにもなる。時代を切り開くには、この意欲と能力の両面が求められる。大人へ脱皮することと、大人になる前の状態に備わっていた持ち味の二律背反(ジレンマ)に対し、どう立ち向かっていけるかがポイントとなろう。

 反面教師の意味でもよい。安部政権(特に菅大臣)における情報通信政策においても、このグループ会社の動きを注視すべきだ。やや持ち上げ過ぎかも知れないが、このタイプの企業をわが国に次々と生み出すことが、ひいては国際競争力強化にもつながることになるだろう。時代を切り開くのは決してレガシー企業ではない。

■Q3)年末年始にお勧めの本を1つだけお書きください。

●お勧めの本:
  トム・ケリー著『発想する会社!(The Art of Innovation)』、出版社(早川書房)

●理由:

 今の日本や情報通信産業に求められていることは、Web技術やグーグルによる広告関連技術などの個々の技術問題ではない。個々の技術を統合して繰り出すビジネス、およびそのマネジメント手法である。そしてイノベーションがポイントだ。ただし、今後のイノベーションはハイエンド市場のみならず、まだ消費を経験していない「非消費」市場でのイノベーションの動きも考慮すべきだ。

 副題が「世界最高のデザイン・ファームに学ぶイノベーションの技法」となっているこの著書には、米IDEO社が実戦で試み成果を出してきた、そのイノベーションのエッセンスが示されている。著者の兄はIDEO社の創始者であり、創業チームはほぼ全員、米スタンフォード大学の出身者。活気あるチーム(Hot team)のつくり方、顧客の目を通して学ぶこと、ブレインストーミングかた迅速なプロトタイプ製作までを示している。私の仕事(経営コンサルティング)の現場でも大いに参考になる良著である。

 こうした現場(ミクロ)でのイノベーションが着実に進むことで、安倍政権が標榜する経済成長水準(名目GDP成長率4%)の実現も視野に入ることだろう。

■Q4)今年はまったモノ・サービス・サイトを1つだけ教えてください。

●今年はまったもの:

 ポルトガルのファド(伝統音楽)要素を取り入れた音楽グループの、MADREDEUSのサイト

●理由:

 YouTubeやMy Space、ヤフー動画(チャングム)での動画の中には、確かにはまったものも多い。例えば、TV地上波の再送信をしないため、見逃した過去の映像コンテンツをこの新たな媒体で見ることもしばしば。著作権問題が横たわっているものの、確実に需要がある。迫力のある、またはリアルな映像はキラーコンテンツとなった。著作権者も、このこと(大きなビジネスの潜在性)にもはや気づいている。マイクロペイメントの仕組みが整備されると、著作隣接権者(TV局など)の中抜きが進むだろう。

 しかし私にとって、この種のコンテンツはスポットで観るものだ。1日の大半を机に向かう仕事人間としては、最も有用なものは映像そのものではなく「音楽」だ。MADREDEUSの奏でる音楽は、仕事中のよき伴侶のようなものだ。哀愁たっぷりの大人の雰囲気。映像(絵)とともに伝わる、今の日本では殆ど感じられない、かつての栄光も影を潜めたヨーロッパ辺境国から発せられる鄙びた情感。ユーザーのブロードバンド通信環境を前提にした、Web画面づくりはセンス抜群。

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