カテゴリー「3.情報通信・メディア・ハイテク産業」の投稿

2009年12月 2日 (水)

【講演】「NTT版クラウド」に求められること・想うこと

 日経BP社『日経コミュニケーション』誌の松本編集長からの、少し前のご依頼により、同誌が主催するセミナー(「NTT版クラウド」の実像)での終盤にあたる、パネル・ディスカッション「NTT版クラウド」への提言に関することで、私も登壇することになっています。

 そのご案内をここに貼っておきます。また、一番下に、私が想うことを記しておきます。

=====≪quote≫
■「NTT版クラウド」の実像
http://coin.nikkeibp.co.jp/coin/ncc/semi/0912/
(2009年12月10日、日経BP社『日経コミュニケーション』誌)

 2009年に業界を席捲した「クラウド・コンピューティング」に向けて,日本の通信事業最大手のNTTグループが本格的に動き出しました。米国のグーグルやアマゾン・ドットコム,マイクロソフトなどが提唱するクラウドとは異なり,NTTはグループ内で構築するNGN(次世代ネットワーク)やLTE(long term evolution)網の機能を生かし,その上位にあるクラウドで通信事業者ならではの信頼性と安全性を高めたサービスを展開しようとしています。

 本セミナーでは,NTTグループのクラウドを理解するため,その基幹技術である「CBoC」の開発を進めるNTT情報流通プラットフォーム研究所をはじめ,クラウドを使い企業向けサービスを展開するNTTコミュニケーションズとNTTデータ,クラウドを支える基盤網NGN(次世代ネットワーク)を運営するNTT東日本,無線ネットワークとクラウドとの連携で新しいサービス像を描くNTTドコモのキーパーソンが,それぞれの役割からクラウドの実像を詳しく解説します。

 さらに国内外の通信事業に詳しい日本総合研究所の新保主席研究員と海外のクラウド・コンピューティングへの造詣が深い早稲田大学の丸山客員教授が,ディスカッション形式でNTT版クラウドの課題整理とNTTグループへの提言を行います。加えて,NTT(持ち株会社)でグループ内のクラウド戦略を指揮する宇治副社長に,登壇をいただくことが決定いたしました。

 NTTグループはNGNの構築時点から業界の枠にとらわれないパートナシップを標榜し,様々な企業とネットワーク基盤を活用したサービスの開発を進めています。ただグループ内のNGNやLTE網などの基盤インフラに加えて,プラットフォームやアプリケーションの実効環境をどの機能をどの範囲までグループ外のパートナ企業に公開するかなどはまだ明確に見えていません。その一端がセミナーの講演の中に見えるかも知れません。

 本セミナーは,クラウドを利用したいユーザー企業様やパートナ企業様だけなく,NTT版クラウドの進展によるビジネスモデルの変化を読み取りたい通信業界の皆様に,有益な情報をお届けいたします。
 通信事業にかかわる皆様にとって,今後の戦略を考える好機となるでしょう。ご来場をお待ちしています。

開催概要
日時 :2009年12月10日(木)12時30分開場、13時00分~17時45分
会場 :青山ダイヤモンドホール 地下1階 サファイアルーム(東京・表参道)
主催 :日経コミュニケーション
(略)

プログラム

13:00~13:15
開催挨拶
 日経コミュニケーション編集長
* 松本 敏明

特別ゲスト
 NTT 代表取締役 副社長
* 宇治 則孝氏

13:15~14:00
技術解説 クラウド・コンピューティング技術CBoCの全容
 NTT情報流通プラットフォーム研究所 所長
* 後藤 厚宏 氏
 NTTグループは,これまで通信事業者として培ったノウハウをどうクラウド・コンピューティングに生かすのか。キャリア・クラスの信頼性をもたらす管理・制御技術である「CBoC」(Common IT Bases over Cloud Computing)のコンセプトを中心に,クラウドが目指すサービス像とそのために不可欠な技術を解説する。

14:00~15:00
ビジネスモデル BizCITYとSettenで広がる企業のクラウド環境
 NTTコミュニケーションズ
 ビジネスネットワークサービス事業部 部長
* 原 隆一 氏
 NTTコミュニケーションズでは,セキュアかつユビキタスなプライベート・クラウド環境を実現するICTサービスを“BizCITY”としてラインナップし,順次拡充を進めている。本セッションでは、“BizCITY”への取組みについて,通信事業者としてのクラウド・サービスへのアプローチとクラウド基盤技術“Setten”を活用したサービスの展開など,今後のビジネス展開を含め紹介する。

NTTデータのSaaS/PaaSプラットフォームが実現すること
 NTTデータ ビジネスソリューション事業本部
 サービス&プラットフォームビジネスユニット ビジネスユニット長
* 中井 章文 氏
 NTTデータは,プライベートクラウドの構築からパブリッククラウドのためのサービスプラットフォームまで,統合的にサービスを提供する。中でも,来春提供予定のアプリケーション&プラットフォームサービスのためのプラットフォームは,立ち上げまでのリードタイムや導入コストの削減を実現する基盤として,企業ニーズに柔軟に対応していく。今回はそのプラットフォームを中心に取り組みを紹介する。

15:00~15:15 休 憩(15分)

15:15~16:00
基盤技術1 クラウドを支えるNGNの最新技術
 NTT東日本 ネットワーク事業推進本部
 研究開発センタ
 ネットワークシステム開発担当 担当部長
* 相原 正夫 氏
 NTTグループが推進しているNGN(次世代ネットワーク)は,ユーザーがNTT版クラウドを利用するうえで鍵を握るインフラである。NGNが備える「帯域保証」や「回線認証」といった機能のほか,キャリアグレードの高信頼性を支える技術について分かりやすく解説する。

16:00~16:45
基盤技術2 LTEによる無線高速化と端末・ネットワーク連携でクラウドはこう変わる
 NTTドコモ 研究開発センター
 サービス&ソリューション開発部 部長
* 栄藤 稔 氏
 NTTドコモが2010年のサービス開始に向け構築を進めている「LTE」(long term evolution)網は,クラウド環境への高速無線アクセス・インフラとして期待される。この高速アクセス網によるモバイル端末とクラウドの連携が生み出す全く新しいサービスの姿を提案する。

16:45~17:00 休 憩(15分)

17:00~17:45
パネル・ディスカッション: 「NTT版クラウド」への提言

≪パネリスト≫
 日本総合研究所
 理事・主席研究員
* 新保 豊 氏

 早稲田大学大学院
 情報生産システム研究科 客員教授
* 丸山 不二夫 氏

≪モデレータ≫
 日経コミュニケーション 編集長
* 松本 敏明
=====≪unquote≫


 私の「クラウド・サービス」に関する問題意識のみ、ここに記しておきたいと思います。

◆海外(特に米系)企業の動きを見る視点:

* Google社やAmazon.com社あるいはSalesforce.com社においての共通点は、サービスに求められる品質が必ずしもキャリアクラスの保証(SLAにより99.99%)を伴うものではない点(99.9%でOK)が挙げられます。
 この差をどう見るかは、ユーザー企業によって、かなり異なるはずです。例えば、一刻を争う金融や軍関係、生命の安全を左右する医療分野などでは、意味合いが違うはずです

* ただ、それ以外の一般サービスにおいては、この差よりも、「価格」や「利便性」の方が、「機能」や「信頼性」よりも、ユーザーにとっての価値が高いのでしょう。従って、これら米系企業の躍進があり、同時に日本企業にとっては脅威になっているのです。
 ちなみに、マーケティング上の「購買階層モデル」(またはスライウォツキーのマイグレーションモデル)では、①機能→②信頼性→③利便性→④価格の順で、ユーザーにとっての価値分布がマイグレーションされていくとされます。


◆「クラウド」(≒XaaS)の持つグローバル・マクロ経済的な視点:

* まず、「XaaS」(SaaSやクラウドなど)という言葉について。一体誰が名付け親(仕掛け人)なのでしょうか。最近の金融や経済の分野では、「BRICs」や「NEXT11」にしろ、たいがいGS International(ゴールドマン・サックス・インターナショナル)社(@London)がネーミングし、グローバルな市場を“リード”しています。
 ICT分野においても、今のグローバル経済をにらんで、きっと仕掛け人がいるはずです。私はいつもそう睨んでいます。

* この言葉を分解してみましょう。
 最初の「X」とは、下層から上層に順に、「Infrastructure」、「Hard」、「Platform」、「Service」あるいは「Knowledge」の頭文字を意味します。「IaaS」、「HaaS」、「PaaS」、「SaaS」、そして「KaaS」のように。

 特に私は、日本経済が深刻なデフレ下にあって、「Infrastructure」が鍵を握っていると思います。ちなみに、日本経済のデフレについて、実際は1970年代から始まっており、遅くとも1993年頃から深刻な状況にあります。今年になって、政府や日銀がようやく公認したようですが、休眠状態から本当に覚めたことを願うばかりです。

* そして、「S」。これは様々なサービスやアプリケーション(APL)を意味するものです。「クラウド」(≒XaaS)全体が上位層サービスといった位置付け・理解となっているようで、これからは「サービス」だと期待が集まっています。
 悲しいかな、ここが情報通信産業全体が抱える盲点そのものなのです。

 デフレ不況下で、国民の所得(購買力)が減少しているなか、消費は上向きません。消費と言う被説明変数は、所得と言う説明変数との関係にあって、見事に因果関係(ほぼ比例のような関係にあることが実証されています)があるのですから。
 つまり、いくら「X」部分の供給側(ICT設備など)を拡充しても、効果はさほど得られないのです。デフレとは、「総供給>総需要」にある状態のことです。物価(消費者物価またはGDPデフレーター)の下落が連続で何ヶ月続くといった定義(政府・日銀やIMF)が、そもそも誤っているのです。その定義は、あくまで現象面を語っているに過ぎません。

* 問題は、所得の減少。では、いかにすれば増大できるか。
 資金(マネー)のICT産業への投入です。必ずしも最初は「民間投資」を意味してはいません。ICT企業は現下、投資したくとも有望案件がなく投資できないのですから。

 従って、解決策は国民(消費者)の貯蓄からのマネーの移動か、新たなマネーを創って市場に投入するか、消費者に手渡しすることが有効です。
 もちろん前者については、社会不安などが背景にあって、財布の紐はきつく締まったままですから、今は期待できません。

 残る選択肢は、政府が支出する(財政赤字を発生させる)しかないのです。このことは決して悪いことではなく、今の日本経済にとっての必然なのです。膨大なデフレギャップ(GDPギャップ)が存在しますので、新たなマネー(例えば、50兆円ほど)を経済に注入してもインフレになることは、まずありえません。仮にあったとしても、インフレを抑止するのは、そう難しいことではないのです。

* 長くなりますので簡単にしますが、上述の通り、だから「Infrastructure」に意味があるのです。政府の社会基盤投資(新たな公共投資)と連動させて行うことが有効です。
 この接点なくしては、単に日本経済下にあって、さらに総供給を増大させ、デフレギャップを大きくするだけとなってしまいます。ここにいかに知恵を結集できるかが、実は「クラウド・サービス」の明暗を分けることになるでしょう。 

* グローバル経済における「クラウド」(≒XaaS)とは、一体どのような意味を持つのか。
 BRICSやNEXT11において、まず、だぶつき(過剰流動性)気味のマネー(もしくはIMFなどが日本・他から引き出して手にしたマネー)を投入し、それら国々の購買力を高めます。所得向上のかたちで、高いGDP成長を促します。

 次に、様々な「X」なる供給側の基盤を安価に整備します。そうすれば、これらの国々では「S」が盛り上がります。グローバル・マクロ経済的にはこうなるのです。この新古典派経済学的なアプローチで、世界を経営(マネジメント)しているメカニズムが働いているのです。
(ちなみに、新古典派経済学的なアプローチとは、殆ど経済学とは言えない代物で、経営学と言った方が近いもの。だからMBA流経営学のみを身に付けた経営コンサルタントとも相性がよいのです。)

 いわば、米系企業など(あるいはMNEs=多国籍企業)が、世界の国々の複数市場をあたかも1つ市場として活躍(Conduct)できるよう、グローバルベースでの市場構造(Structure)を創るのです。そうなれば、そのグローバル市場で最も有利にその果実(Performance)を手にできると言うわけです。産業組織論における、シカゴ学派の「CSPパラダイム」の実現ですね。^^;

  

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2009年11月26日 (木)

【マスコミ記者勉強会】政権交代に伴う世論の変化やオルタナティブメディア台頭に伴うマスメディアの行方(補足)

 昨日予定通り、マスコミ記者勉強会が弊社(千代田区一番町)オフィスで行われました。
 私が名刺交換をした皆さんは、読売、朝日、日経、時事通信、日刊工業、東洋経済、ブルームバーグ、モーニングスター、そして下述のJ-castニュースから来られた記者でした。

 早速、当日の夜半には、次のような記事がネットにアップされました。

=====≪quote≫
■「マスメディアからネットメディアへ」 ジャーナリスト大移動は起こるか?
http://www.j-cast.com/2009/11/25054712.html

(2009/11/25 20:15、J-CASTニュース )

   地盤沈下する「マスメディア」からネットを基盤に台頭する「オルタナティブメディア」へ、ジャーナリストのマイグレーション(移動)が起きようとしている――日本総合研究所の理事・主席研究員で、通信メディア・ハイテク分野の経営戦略を専門とする新保豊氏は記者向けの勉強会で、メディア業界の未来図をこう予想した。新保氏はアメリカで起きている事例を紹介しながら、「メディアビッグバンがいよいよ生きた言葉となってきている」と語った。

   勉強会は2009年11月25日、東京都千代田区の日本総研で開かれ、新聞社や通信社などに勤務する記者たちが聴き入った。新保氏は、アメリカの新聞事情を中心にマスメディアが置かれた状況を概観。ほとんどの新聞の発行部数や広告収入が落ち込む一方で、インターネットメディアが着実に伸びている様子を説明し、「景気が回復してもマスメディアの地盤沈下は続く」と厳しい見通しを示した。
(略)
=====≪unquote≫

 私のレクチャーの後半部分のポイントをうまくまとめて下さっています。
 ネット上の書き込みをみると、マスコミに対する厳しい見方が多いようです。その当たりのトーンについては、私もほの同感です。読者離れ(コンテンツへの飽き)が急速に進んでいるものと感じます。

 当日の資料では、冒頭で次のようなことをお話ししました。

▼新聞の発行部数の推移
* GDPは名目で見ても微増かゼロ成長にあって、新聞発行部数は減少
* 「1世帯あたりの部数」は▲1.7%
  ⇒新聞離れの背景には何が起こっているのか?

▼新聞の総売上高の推移
* GDPは名目で見ても微増かゼロ成長にあって、新聞の総売上高は減少
* 「広告収入」▲4.1%に加え、「販売収入」▲0.5%
  ⇒新聞離れの背景 : 
  ①購買力低下(デフレ不況下の所得減ゆえ)
+②コンテンツへの飽き(国民の価値観の変化ゆえ)?

 私が重視したのは、上記②に関することです。このことをマスコミの皆さんに知って欲しかったのです。

 そこで、下述のような資料の構成としたのです。
 私が強調したかったことは、「【2】日本のマスメディアの最近の論調(マクロ経済・財政、構造改革、CO2地球温暖化など)」に関し、≪参考≫として示した「様々な俗説・常識」に対するものです。
 ことここ日本では、「俗説・常識」になっていたとしても、世界の「非常識」もしくは日本(国民)には本当のことを知らせておかないことが、結構あるのです。

 まさにノーム・チョムスキーが、「MANUFACTURING CONSENT: NOAM CHOMSKY AND THE MEDIA」(1992年)で言っていることです。

マスメディアは・・・
①なぐさみと娯楽と恐怖を与える (働くだけに隷属させる)
②ニュースを選別する (国民は教化の対象)  
③反対意見を小さく見せる  (世論の誘導)
④本当に重要な問題を語らない (現体制の保持)
⑤ただ過大な利潤を求める (広告主のみを見ている)
⑥人びとを孤立させる (考えさせない、気付かせない)

(注)上記①~⑥のカッコ内の記述は、私が補足。


=====≪quote≫
「政権交代に伴う世論の変化やオルタナティブメディア台頭に伴うマスメディアの行方」

2009年11月25日(水)14:00~15:30

新保 豊
JRI 日本総合研究所 理事・主席研究員
(通信メディア・ハイテク戦略クラスター長兼務)

【1】マスメディアの最近の傾向(現状認識:新聞・テレビの存在感の低下)

■広告費に見るインターネットとマスメディアの明暗
▼米国と日本における新聞発行部数の比較・ランキング
▼新聞の発行部数の推移
▼新聞の総売上高の推移
≪参考≫新聞の広告量推移

【2】日本のマスメディアの最近の論調(マクロ経済・財政、構造改革、CO2地球温暖化など)

■「経済成長(景気)や経済予測」に関する最近の論調
≪参考≫主要国GDP比較に見る日本の経済成長の低迷さは異様
≪参考≫金融ビッグバン(国際会計基準など)と資金流出
≪参考≫膨大な外為資金運用による外需下支え(内需に資金が回っていない)
≪参考≫信用創造量と名目GDP伸び率の関係
≪参考≫日米の金融政策比較
≪参考≫部門別の資金過不足推移と日本経済の低迷と水準維持のメカニズム
≪参考≫日本経済に「デフレギャップ」は殆ど存在しない!?
≪参考≫GNPギャップ(デフレギャップ)の定義
≪参考≫日経新聞における潜在成長率の定義
≪参考≫内閣府モデルによるデフレーター予測値と実際値との乖離
≪参考≫ケインズの乗数効果を考える
≪参考≫内閣府の乗数値を使った実質GDPの押し上げ効果試算
≪参考≫GDP=「乗数効果」×「有効需要支出」
≪参考≫世界のGDPに占める日本の存在感と財政出動
≪参考≫非現実的な経済財政モデル(内閣府モデル)

■「財政」に関する最近の論調
≪参考≫債務残高の対GDP比による国際比較の誤解
≪参考≫日本の新規財源債発行額(年間)とその残高および長期金利の推移
≪参考≫真のデフレギャップの規模
≪参考≫名目GDPの成長率と税収の伸び率および税収のGDPにおける弾性値
≪参考≫デフレギャップ(真の財源)利用した経済対策と劇的な効果

■「構造改革」に関する最近の論調
≪参考≫「CHANGE」?されたオバマ政権の主要閣僚・顧問らの顔ぶれ
≪参考≫オバマ政権への期待、その幻想と真意を知る
≪参考≫『年次改革要望書』に見るオバマ政権の意志

■「地球温暖化の原因?CO2削減」に関する最近の論調
≪参考≫ CO2濃度変化(原因)と気温変化(結果)の因果関係は逆
≪参考≫温暖化へのCO2影響度は僅か(むしろ雲=水蒸気が主因)
≪参考≫気温は過去100年間以上(CO2増加の前から)上昇基調にある
≪参考≫国連組織IPCCのこれまでの動き
≪参考≫原発と原潜からの廃温水で海温は上昇

■「原発・原子力」に関する最近の論調
≪参考≫低く喧伝されている原発コストと非効率なエネルギー利用効率
≪参考≫専門家のアバウトな想定式を判断基準に置いている危うさ
≪参考≫PWR(加圧水)型燃料集合体の構造と汚染冷却水の海中への還流
≪参考≫核燃料サイクル施設と活断層地形
≪参考≫再処理工場や英セラフィールドからの広範囲の放射能汚染
≪参考≫最近の米国と過去の日本での水/CO2と地震の関係

【3】メディアの変遷と将来シナリオ(マスメディアからオルタナティブメディアへ)

■メディアの分化(メディア2.0の出現)
≪参考≫メディア2.0市場の位置づけ
▼マスメディアとメディア2.0の社会的影響力
≪参考≫メディア内の主体構造の変化

■オルタナティブメディアへの変遷
≪参考≫米国The HuffingtonPost(創業4年のオンライン新聞)の躍進
≪参考≫News Corporationグループに見るグローバル市場での独占・寡占化

■シナリオ別のマスメディアのゆくえ
▼トレンド・シナリオA
* マスコミの地盤沈下続く
* インターネットの存在感増大
▼激震シナリオB
* マスコミのビジネスモデル瓦解
* オルタナティブメディアとの主役交替(シナリオB1)
* インターネットの終焉(シナリオB2)

■最後に
=====≪unquote≫


 長くなりますので、上記内容については、今回は触れません。

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2009年11月20日 (金)

【マスコミ記者勉強会】政権交代に伴う世論の変化やオルタナティブメディア台頭に伴うマスメディアの行方

 今朝(2009年11月20日〔金〕)、私の所属する会社の広報部から、来週私が担当することになっている「マスコミ記者勉強会」向けのアナウンスがありました。
 当件は、金融記者クラブ、経済研究会、財政研究会、経済産業記者会、金融庁記者クラブ、霞クラブにて登録しているようです。

 当ブログには、マスコミの皆さんも多少はアクセスがあるようですので、少し補足しておきます。

 恐らくアナウンスされた文面は、次のものになると思います。
 若干、オリジナルの文章が、マスコミさんを意識 してか、欠落していますので、それをここで補っておきます。このことは、本当はとても大事なことなのです。


■公開版

=====≪quote≫
 今般、下記内容にて勉強会を開催する運びとなりました。
 お忙しい中とは存じますが多数のご参加を賜りますようお願い申し上げます。

                            記

1.日 時 :
 2009年11月25日(水)14:00~15:30
    
2.場 所:
 日本総合研究所 東京本社
 東京都千代田区一番町16番
 <地図>→ http://www.jri.co.jp
 電話:(03)3288-4606(広報部)

3.テーマ:
≪次世代の国づくり」記者勉強会≫
『政権交代に伴う世論の変化やオルタナティブメディア台頭に伴うマスメディアの行方』

 新政権へ移行後、国民にとっての価値観の変化、所得減少に伴う購買力の低下など、マスメディアを取り巻く環境も大きく変化しようとしています。

 今回は、マスメディアの影響力の減退や、勢いを増すインターネットメディア(=オルタナティブメディア)の台頭など、メディア界を取り巻く現状を確認した後、メディアのビジネスモデルや関連制度が持つ課題や、現在、日本のマスメディアが陥っている矛盾などに触れ、マスメディアやオルタナティブメディアの将来シナリオについて、理事の新保豊が解説を試みます。

※今回はご参加の皆様と活発な意見を交わしながらの勉強会にしたいと思いますのでディスカッションスタイルの会場を用意しております。

4.出席者:
 理事  新保 豊

*ご参加にあたっての事前予約等は不要です。当日直接会場にお越し下さい。

以上
=====≪unquote≫


 世の中に事なかれ主義が蔓延しているのか、あるいはどの会社の広報部にとっても、マスコミさんは、彼らにとっての“お客様”となっているため、あまりストレートに表現できない事情・立場があります。きっとそう言うことでしょう。^^;

 シンクタンク・コンサルティング業界の者(特に研究員、エコノミスト、コンサルタント)が、マスコミにおもねるようになれば、お終いです。どちらが上だという話しではなく、お互いよき牽制作用が機能する関係を構築しておくこと、それを維持できること、これらのことが尊いのです。

 オリジナルの文章(テーマの概要)では、下述のように、青字下線部のものがありました。

■オリジナル版

=====≪quote≫
(略)

3.テーマ:
≪次世代の国づくり」記者勉強会≫
『政権交代に伴う世論の変化やオルタナティブメディア台頭に伴うマスメディアの行方』

 新政権へ移行後、国民にとっての価値観の変化(正しいものに対する目覚めの兆し)、所得減少に伴う購買力の低下など、マスコミを取り巻く環境(コンテンツの質要素、財務要素)も大きく変化しようとしています。

 今回は、マスコミの影響力の減退や、勢いを増すインターネットメディア(≒オルタナティブメディア)の台頭などマスコミを取り巻く現状(カニバリズムの拡大)を確認した後、マスコミのビジネスモデルや関連制度(寡占・独占状態を許容してきたもの)が持つ課題や、現在、日本のマスコミが陥っている矛盾・間違い(世界の経済・金融、マクロ経済・財政、環境・エネルギー問題についての日本の非常識)などに触れつつ、マスメディアやオルタナティブメディアにとっての将来シナリオ(トレンド型、激震型)について、弊社理事の新保豊が解説を試みます。

(略)
=====≪unquote≫

 臭いものに蓋をしたままでは、本当の知識と実態をつかむことはできません。

 当日、私が説明できる時間は1時間ほどでしょうから、あまり広く・深く、それぞれの内容面(日本の非常識:マクロ経済、金融、財政、環境エネルギー問題など)を掘り下げることはできないでしょう。

 また、日本のマスメディアは、その発行部数や広告・販売収入の減少(新聞)や視聴率低迷(テレビ)など、このままではジリ貧必至です。

 その背景には、 ①購買力低下(デフレ不況下の所得減ゆえ)②コンテンツへの飽き(国民の価値観の変化ゆえ)といった大きな要因が横たわっているのです。

 私は日本のマスコミの場合、同①以上に同②に関する要因が深刻だと考えています。そして、その舵取りを見誤ると、「激震型シナリオ」を踏むことになるのではないかと・・・

 米国では、特に同②に対する動きとして、例えば、『HuffingtonPost』などの無料・広告ビジネスモデルを主とするオンライン新聞がブレイクしています。今や900万ほどの購買者数を獲得し、WashingtonPost(オンライン版)を抜き去る勢いがあります。

 『Democracy Now!』では、寄付(donation)モデルを主とする運営が行われているようです。マスメディアに替わる、「オルタナティブメディア」の先駆けのような存在です。ここが取り上げるコンテンツ(映像作品など)は、私も社会人MBAの授業で取り上げています。とても勉強になるものばかりです。日本のマスコミが、報道しないため、一部国民(覚醒した市民)にとって、この種のコンテンツでなければ、もはや満足していないのだと思います。

 その他、有料購買モデルとして、元ジャーナリストなどによる大変充実したスタッフを抱える『politico.com』(米国Washington D.C.)などがあります。ここは年200ドルの購読料をとりながらも躍進し、米国のメディア業界にあって異彩を放っています。

(注)読者からのコメントを下に記し(再掲)、訂正・補完しておきたいと思います(2009年12月5日)。
=====≪quote≫
 上記記事で、Politico.comへの言及があり、年200ドルなのに躍進している云々とありますが、誤解を招きかねない表現でしたので一言。
 200ドルというのは、議会会期中は連日発行される紙の新聞を配達(おそらく全て郵送)してもらう場合の料金です。国内は一律で、海外は600ドルです。
 ワシントンDC内外では無料配布です。もちろん、サイト閲覧はすべて無料です。
=====≪unquote≫
  このBlogでは示していませんが、私が説明に使った「2×2」マトリクス、つまり、横軸の左側に「マスメディア(オールドメディア)、同右側に「インターネットメディア(オルタナティブメディア)、また縦軸上側に「無料(広告)モデル」、同下側に「有料購読モデル」において、『Politico.com』は右下部分と同時に左上部分でもある、ということになります。



 日本では、『田中宇プラス』(半年で3,000円)などもあります。私も愛読者の一人です。田中宇(たなか・さかい)さんによれば、30万人ほどの読者がいるようです。こうなると、確か30万台の英『GUARDIAN』や仏『Le Monde』に迫る勢いです。素晴らしい。

 このような元ジャーナリストによる高質記事のコンテンツへの魅力度が高まるにつれ、既に米国などでは胎動しつつある、「ジャーナリストのマイグレーション」、つまり、メインストリートに現在所属しているジャーナリストの、マスメディア業界からオルタナティブメディア業界への移動(ジャーナリスト自身の覚醒)が、早晩日本でも起こることが考えられるのです。そうなって欲しいと考えています。(^-^)

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2009年11月 5日 (木)

【講演】より進化するオンラインビジネスにおける企業戦略

 少し前に講演の依頼がありまして、明日金曜(2009年11月5日)、椿山荘まで行ってきます。主催者によりますと、2週間ほど前(10月16日時点)で300人を超えそうだ、と言うことで、主催者さんには何よりですね。(^-^)

=====≪quote≫
http://www.softbanktech.jp/seminar/sbtforum2009.html

開催概要
イベント    :SoftBank Technology Forum 2009
会期      :2009年11月6日(金) 受付開始12時45分
セミナーの部 :13時15分~17時15分
懇親会     :17時30分~19時30分
会場      :椿山荘 
定員      :基調講演  150名
         :各セッション 70名
         :懇親会    150名
主催      :ソフトバンク・テクノロジー株式会社

社長挨拶
及び
基調講演    :(株)日本総合研究所 理事 新保 豊氏

「より進化するオンラインビジネスにおける企業戦略」
~グローバルかつマクロ経済環境を踏まえたデフレ不況脱却後の将来への備え~


(申込定員を超えました。多数のお申込ありがとうございました。)

 デフレ不況下にあっても拡大し続けるオンラインビジネスは、従来の小売を置き換え、通販の流れを加速しています。その一方で、消費者の所得(市場購買力)が低下するという岐路に直面しているのも事実です。
 金融危機後の2番底も予想されるなか、購買力旺盛な中国市場の攻略はいかなるものか。また従来の消費ニーズ(買物、娯楽など)に加え、社会ニーズ(健康・農・医療、教育、住宅・環境など)に訴求するフロンティア領域とはどのようなものか・・・。

 講師に日本総合研究所理事 新保 豊氏を迎え、現在そして将来的に、企業のオンラインビジネスを活性化させるヒントを一緒に模索・説明していただきます。是非、ご聴講ください。
=====≪unquote≫

 ここに、当日の概要(説明内容の見出しのみ)を、次の通り、記しておきます。

≪説明内容の構成≫

【1】中国オンライン市場の攻略アプローチ

■これまでの“政治覇権国・金融帝国”化とグローバル構造下における投資と消費のメカニズム
■今後はなぜ、やはり「中国」なのか?
■中国:インターネット関連サービスのユーザー数推移は急増
■中国:インターネット関連やオンライン広告は急増
≪参考≫中国:「オンラインゲーム産業」が急成長
■日中貿易額は毎年増大傾向にあり米国よりも存在感大
▼中国の輸出競争力の背景には「人民元安」があったが早晩切り上がる
■【ユニクロ】中国での快調な現ビジネスの攻略に「通販」も
≪参考≫【セシール】「ネット通販」を中国全土に拡大
■中国:地方の消費者購買力も7,000ドル(per capita GDP)近くまで高まる
▼「化粧品」「衣服類」などの日本商品の競争力は依然高い
▼中国:“中流”コア購買層は6億人を超える(リッチ層も5,500万人)
▼中国:「富裕層」が持つ“7つの消費傾向”と“欲求分布”の研究を
▼中国:商品によっては「高所得者層」相手でも日本企業も勝てる
■日本に居ながらにして「海外ネット通販」顧客を獲得する方法
≪参考≫【WebArk社(日)】中国の富裕層向けECモール「JPTao.com」

【2】“ミクロはマクロに抗し難い”(正しいマクロ経済の理解から見えてくるもの)

■主要国GDP比較に見る日本の経済成長の低迷さは異様(15年続くデフレ不況の出口が見えない)
■通信サービスの契約者数推移も飽和感が出てきた
■最終消費支出額や小売市場および広告市場は頭打ちから減少へ
≪参考≫「インターネット」広告費のみが増加
▼「通販」など一部の市場を除き「小売全般」で減少が続く
■なぜ日本経済は低迷し続けているのか?⇒資金の量と流れが問題
▼世界経済における「二番底」の予兆
■「真のデフレギャップ」の規模が分かれば“打ち手”も分かる
▼GDP=「乗数効果」×「有効需要支出」ゆえデフレ下では「社会インフラ投資」が有効
≪参考≫過小評価の内閣府モデルであっても「公共投資」でGDPを押し上げ
▼では、「社会インフラ投資」の財源は? ⇒なぜかこの方法を無視する!
≪参考≫債務残高の対GDP比による国際比較の誤解
≪参考≫「税収の対GDP弾性値」は大きいため借金返済ペースの方が速い
▼デフレギャップ(真の財源)利用した経済対策と劇的な効果

【3】残されたフロンティアの探索とその攻略法

■デフレ不況を脱しても、欲しいモノはみな揃っている
■今後の需要喚起が期待されるのは「社会ニーズ」を満たす分野
≪参考≫大深度地下利用による「社会インフラ資本」形成(生産力を生まない投資)
≪参考≫社会インフラ整備を通じた関連サービスが今後のフロンティア
■購買力増大シナリオのもと社会ニーズ訴求でさらに伸びる「オンラインビジネス」
▼ユーザー行動プロセスとMedia 2.0上のコンテンツ/サービス
≪参考≫ユビキタス的通信環境下の利用シーン例⇒AIPESの「E」と「S」
■オンラインビジネスに向けた企業戦略(マクロ潮流の理解+新たなフロンティアの探索)
=====≪unquote≫


 たまに、この種のセミナーやシンポジウムなどもお引受しています。
 明日の結果で、何かこれはと感じるようなことがありましたら、別途備忘録を兼ね記しておきたいと思います。

 今月下旬(2009年11月25日水曜)には、弊社JRIの広報部・ブランド広報室が主催するマスコミ記者勉強会に、調査部長と私とで、簡単なレクチャーを行うことになっています。
 私への要望は、「政権交代および世界の覇権シフトとともに変容していく今後のマスメディア」と言ったテーマです。
 そう言うことですので、例えば、景気浮揚策(ムダ排除、埋蔵金などからの財源捻出・・・)、財政問題(日本は財政危機にある・・・)、環境・エネルギー問題(CO2削減問題、電気自動車・・・)、グローバル環境下における米ドル・米債券・株価などの今後の見通しなど、に関する誤った報道の仕方・見方について取り上げたいと考えています。

 また、来月前半(2009年12月10日金曜)には、日経BP社さん主催の「NTTクラウドの実像と題して、早稲田大学のある先生(客員教授)と、パネル形式での対談をやることになっています。

 来年1月中旬過ぎ(2010年1月18日月曜)には、JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)さん主催による勉強会で、レクチャーを差し上げることになっています。「日本のエレクトロニクス産業の今後の展望(グローバリズムとマクロ経済・金融環境を俯瞰した上で採るべき打ち手)」と言ったものになるでしょう。

 これらも追って、備忘録しておきたいと思います。

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2009年10月 8日 (木)

【レクチャー】北欧からのお客様とのミーティング

  一昨日(2009年10月6日〔火〕)午前、北欧のある国からの政府訪問団(同国のS機関+T庁)が弊社を訪ねました。
 同様の訪問は、これで3回目になろうかと思います。

 今回、同訪問団は中国と韓国から、日本入りしました。京都方面での会議後、1日だけ東京に滞在する予定となっており、午前に弊社JRI、午後に霞が関界隈、と承っています。

≪同国からの訪問団のメンバー6名≫
◆M・K氏, Ph.D(Econ) :S機関のPresident、前Nokia副社長
◆A・K氏, MSc. and MBA :the Executive Director of the Municipal Programme
◆J・K氏, Ph.D(Administrative Sciences) :the Executive Director of the Public Administration Management Development Programme
◆J・P氏, MSocSc :S機関のVice President, Strategic Renewal
◆T・T氏, M.Sc. :元Executive Adviser for the CEO from Elisa Corporation
◆J・V氏, Ph.D :同国T庁のCouncil

≪訪問の趣旨などに関するレターからの抜粋≫
=====≪quote≫
(略)
 We are very interested in to hear how Japanese government has meet with underlying the present economic and financial crisis as a growing mismatch between the demands of the new technological and economic environment and the organizational and institutional structures of the post-industrial society.

 新技術志向の経済環境というデマンドと脱工業化社会という組織的制度的構造の間に横たわる不整合が拡大する中で、私共は、日本政府が、現在の経済金融危機の本質をどのように見ているか、ということに非常に興味を持っています。
(略)
=====≪unquote≫

 このようなご希望に対して、「Drastic Measures to Boost Japanese Economy and ICT Industry」と題する簡単なレクチャーを私から差し上げました。
 2時間ほどのミーティングの結果、お蔭様で、活発な意見交換および両国の友好をはかることができたのではないかと思います。(^-^)

 なお、用いた資料(副題:現下の金融危機問題を解きながら)は、今年6月や9月中旬にも「part 2」として行った、霞が関官僚や企業幹部・他(大学関係)の皆さん向けの資料をベースにしたものです。

 レクチャーの狙いは、次のようなことです。

●日本経済に正しい経済対策を用いれば、GDPで年率5%以上の成長を十分に、かつ早期に実現可能であり(10%成長も決して非現実的ではなく、また財政問題も迅速に解決でき)、その実現に伴い、ICT分野などの基幹産業も、今以上の競争力を回復する。
(正確には、競争力が落ちたのは必ずしも個々の企業のマネジメント問題というよりも、大きくは総需要不足を補えない・効果のない景気浮揚策や過度な為替介入ゆえのこと。)

 ざっと以上のようなことを、種々の客観的なデータを用いてお伝えしました。

 幸いにして、訪問団リーダー格のM・K氏(同国S機関所長、前Nokia副社長)は経済学博士もお持ちであり、他の(高学歴な)皆さんも内容の理解は速く、その狙いはかなり伝わったのではないかと思います。

 特に最近の日本経済の深刻な不況および各産業の国際競争力の低迷状態にあって、今般の政権交代に伴い、日本は一体これからどのようになっていくのかなど、多大なご関心をお持ちであり、Q&Aを通じ、結果それなりにご満足頂けた場となったのではないかと・・・・・

 ちなみに、世界の景気低迷が2番底に向かっていることは、「Baltic Dry Index(バルチック海運指数)」(下述の説明資料の構成の1項目)を見れば一目瞭然です。

 また、米国の決算期である9月末後の「10月危機説」の有力なものとして、中国大手企業の米国デリバティブ商品への米国主要銀行への支払い拒否(今年の8月末の事実上のデフォルト通告)などもあって、破綻状態のFRBによる再三の銀行救済が既に不能であること、またIMFのSDR(特別引出権≒米ドルに代わる準備通貨の候補)へのシフトという世界の流れに従い、その気もない(最近のゼーリック世銀総裁やバーナンキFRB議長の発言)からだ、などの見方もあるようです。
(私見ですが、「10月危機」など幾つかの主要“イベント”を経ながら、向こう数年間かけ徐々に新たな世界体制に移行していくものと読めます。引き続き、要ウォッチです。)

 日本のマスコミは一切報じていない(英米メディアは報じている)、この当たりのことも、同訪問団のご関心事であったように感じました。

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■ Drastic Measures to Boost Japanese Economy and ICT Industry
Tuesday, 6 October 2009 9:10 – 10:30
Yutaka SHIMBO
The Japan Research Institute

◆ Summary 1
◆ Summary 2

============================================
[1] Macroeconomic Environment for Japanese ICT Industry

■ Japan's Stagnated Economic Growth Seen from GDP Growth Trend of Key Countries
≪Ref≫ Loss of business profits in electronics sector
≪Ref≫ Deflationary gap widens due to restructuring programs by electronics companies after financial crisis

■ Final demand goods and producer goods, different global competitiveness
≪Ref≫ Chinese yuan and Korean won exchange rates

============================================
[2] Factors and Problems of Economic Depression and the Lost International Competitiveness

■ Investment & consumption mechanism of "political hegemony and financial imperialism" under globalization

■ Outline of "Annual Reform Recommendations"
▼ "Financial Big Bang" (adopting international standards, etc.) and capital drain
▼ "Private equity is on the prowl"
▼ Prop Up Foreign Demand By Huge Exchange Intervention(Money Is Not Supplied To Boost Domestic Demand)

============================================
[3] Reacknowledging the Problems for Drastic Measures

■ Relationship Between Credit Creation and Nominal GDP
▼ Japan and US financial policies

■ Long term upward trend of the Dow, but how far will stock prices go down?
≪Ref≫ Trend of global trade, foreign exchange and derivatives markets

■ Trend of global hegemony (financial economy) seen from the list of world's top banks ranked by total assets
▼ On the verge of state bankruptcy: the rate of FRB assets to US GDP sharply increases
≪Ref≫ "Ghost fleets" in the sea around Singapore
≪Ref≫ Warning on "the second bottom" seen from Baltic Dry Index

============================================
[4] Drastic Measures to Boost Japanese Economy and ICT Industry

■ Misconception about international benchmark on Government Debt-to-GDP ratio
▼ New financial resource bonds issuance & outstanding, trend of government bond yield
▼ Concerns over Japan's financial assets that might be flown out abroad
▼ Japan's stagnated economic growth seen from GDP growth trend of key countries
≪Ref≫ Deflator forecast by Cabinet Office model and its gap with the actual results

■【 1st Way:Issuance of national bonds】 Japan's global presence and fiscal stimulus
▼ GDP="multiplier effect"× “total spending on effective demand"
≪Ref≫ Cabinet Office model estimation of GDP contributions
▼ Japan's shift from "savings" to consumption and investment = need public spending and investment
▼ Huge amount of money of sold lands in the time of real estate bubble has been frozen
≪Ref≫ Relation of disposable income and consumption
▼ Elasticity of tax revenue to GDP
▼ We have no “Deflation Gap" in the Japanese economy !?
≪Ref≫ Definition of GDP Gap (Deflation Gap)
▼ Size of the true Deflation Gap
▼ Economic measures using Deflation Gap and its dramatic impacts

■【2nd Way: Direct Underwriting of Government Bonds by BOJ】 Funding by Issuance of Noninterest Bonds through BOJ's Payment to National Treasury
▼ Teaching of Korekiyo Takahashi: "Exit" Strategy for Fiscal Crisis

■【3rd Way: Issuance of Government Notes_"Seignorage"】 Immediate Stimulus to Economy and 10% annual growth
▼ Proposal to Print Money by Stieglitz
≪Ref≫ Successful Issuance of Government Notes in early Meiji Era

■ Outline of Digital Japan Creation Project (ICT Hatoyama Plan) by MIC
▼ Japan has no “Macroeconomic" visions and sticks only to “Microeconomic" measures
▼ ICT industry-led growth scenario and the coming "10 year of progress"
▼ Investment on Network and Platform Layers for Generating Future Basic Industries
≪Ref≫ Development of social infrastructure at deep underground (investment without creating productivity)
▼ Do we really need a "global top one"?

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PS:
 当日、実質一人で対応することになってしまった私の下手な英語では、とてもこの種の(日本語で語るのさえ結構難しい)内容に関するミーティングは耐えられず、研究アシスタントのKさんのお蔭で、何とか切り抜けることができたかなぁ、という感じでした・・・・(^-^)

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2009年7月22日 (水)

【経済教室への感想】情報化投資の成否が中期的な経済成長を決めるのか?

■タイトル :中期的な日本の経済成長(情報化投資の成否が左右)
■媒体と掲載日 :日本経済新聞『経済教室』2009年7月20日
■論考の書き手 :国立大学経済学部のS教授(日本○○○○センター主任研究員)
 (備考 :情報経済学を専門とする経済学博士)
■「ポイント」 :
 * 中期的な経済成長、悲観・楽観とも禁物
 * 2010年代に新たな情報化の投資機会多く
 * あらゆる分野でのIT利活用へ環境整備
=====================
■「ポイント」の有効性 :【×~△】(私の感想)


 この論考の特徴は、典型的なサプライサイド派の主張となっていることでしょう。

 サプライサイド派とは、広く古典派・新古典派(ニュークラシカル派)に属する、現実の経済や社会の問題解決と言うには、かなり浮いた、最初から決まっているような、観念的なあるべき姿が陽に陰に見え隠れしている経済学の考え方と言うべきものでしょう。

 S教授とは、国のある研究会などで、よくご一緒しますし、そのお人柄など存じ上げていますので、個人的な攻撃をしようとは、全く考えていません。
 むしろ、私もかつて同様な発想を持っていましたので、そのささやかな気づきを感想として示しておきたと思うだけです。

 この種の発想・考え方が、どうやら実は経済成長には、殆どつながらないだろう、ということが自分なりに段々分かって来たからです。

◆クライン(Lawrence Klein)博士の主張を巡る誤解

 霞が関の官庁エコノミストは、特に安倍政権以降、“上げ潮”派という呼び名の人々は、生産性向上を通じ、GDPを増やすこと(経済成長)を重視します。

 当時のY財務大臣らの主張する増税派(消費税値上げ派)とは、一線を画したアプローチを強調します。ただ経済成長という効果面では、同じ穴のムジナなのかな、と感じていますが・・・

 ちなみに、“上げ潮”派とは、Lawrence Klein博士(ペンシルベニア大学教授)を中心に多数の経済学者で著した著書"The Rising Tide"に起因したネーミングだろうと言われています。
 同著書は、1990年代初頭の低迷する、特段深刻なデフレ下にあった訳ではない、米国経済を活性化させるための方策をまとめた論文集のようです。

 このKlein博士は、新古典派総合(ネオクラシカル)派に属すると言われますが、この派は、紛らわしいのですが、新古典派(ニュークラシカル)とは全く異なるグループであり、博士はケインジアンと言ってよいでしょう。つまり、デフレ下においては、生産性の向上などよりも、財政出動による有効需要の効果を重視します。

 実際2004年10月、あるシンポジウムが東京都の九段で行われ、そこに招かれた教授は≪1~2%の低い成長を目指すのならそれでも良いが、4~5%といった比較的高い経済成長率の達成には、日本は財政出動(教育関連支出含む)を考えるべき≫と語ったそうです。

 一方、自民党上げ潮派(当時のN幹事長ら)やこのS教授、あるいはKlein博士の元で勉強した、また日本経団連の21世紀政策研究所のプロジェクトの確か実質リーダーであったK氏(ペンシルベニア大博士。専門は計量経済学)らが、同教授にアドバイスを受けつつ、あるレポートをまとめました。

 そのレポートの概要は、K氏は2008年12月5日付の『経済教室』の「ニューエコノミー下の実体経済 3~4%の成長を目指せ」と題する論考で、示されました。
 ここで、Klein博士は≪日本の潜在成長率を1.5%程度と見込むのは低すぎ、ICT(情報通信技術)の積極活用を図れば3~4%の成長が可能≫とアドバイスしたようです。

 Klein博士は恐らく、財政出動を進める中で、ICTの積極的活用をご提言されたのではないかと感じます。
 同博士の主張は矛盾していません。財政出動(マネーの新規投入)で総所得(購買力)を増やせば、総需要が喚起されますので、企業の収益が増大します。そうなれば、ICT企業も設備投資余力が出てくるため、ICTの積極的活用を促すことの意味が出てきます。

 どうもICT産業やICT行政に従事する皆さんは、ICTに関連する部分のみに着目して物事を捉えようとする(我田引水の)傾向がありますので、そのメッセージの受け手では、メッセージの内容を都度整理しておくことが求められます。つまり、主従関係や優先度の類です。この場合には、あくまでICTは「従」である、ということなのです。ミクロはマクロに抗し難い・・・

◆IT導入による生産性向上はそれほど効果があるのか?

 当論考では、その生産性について、「製造業の設備過剰が問題となる一方、医療サービス業の一部は供給不足が深刻で、IT導入による生産性向上が求められている≫と示されています。

 生産性向上は、現下のデフレ経済では、それを強調するのは考えものです。確かに、特に地方の医療現場などでは、十分な医療機器が導入されておらず、また医師の不足などもあり、供給不足の状態にあると言えましょう。しかしながら、本文にも製造業では設備過剰とあるとおり、経済全体(マクロ経済)を見ることが重要です。

 経済全体では、デフレ状態にあるということは、総需要が総供給を下回っていることを意味します。つまり、労働と資本設備の両投入量が非稼動な状態にあるのです。しかも、その非稼動なボリュームは膨大です。どこかで記したいと思いますが、資産すると実際のGDPの30%近いギャップ(=GDPギャップまたはデフレギャップ)が存在すると思われます。政府内閣府がこれまで公表してきた「±4%前後」とは大きく異なります。最近でも、8~10%といわれるデフレギャップですが、それよりもはるか上に潜在GDPの天井があると考えられます。

◆イノベーションとしての新技術が登場しても却ってデフレが固定化することも・・・

 当論考では、≪今回の不況で旧来型の輸出主導による成長の限界が露呈したが、企業投資、特にイノベーションの中核にある新技術への投資が低調では構造変化が進むはずもない。≫と続きます。

 前半部分は正しいと思いますが、後半の分析はかなり違うかなと思います。

 前半部分の解説をすると長くなりますので、別の機会に譲りポイントのみ示します。
 日本経済の膨大な貯蓄が国内経済で使われずに、海外にその投資先を求めるかたちでマネーが流出(正確には、米国等の金融資産をドルで購入してそれを所有)して来ましたので、ドル高・円安が生じ、輸出企業には追い風となりました。
 つまり、輸出主導による経済成長モデルなどは、そもそも貿易黒字大国で、一方の赤字国に雇用面などでネガティブな影響をも及ぼしているわが国にとっては、デフレ現下の、そして今後のあるべき(To-Be)モデルとは言えません。内需主導が求められます。

 後半の「企業投資」や「イノベーションと新技術」に関するものも、発想がサプライサイドなのです。繰り返しですが、今の日本経済は総需要が不足しているのですから、これ以上の総供給を増大させる方策は、その新技術により低価格化が進むほど、一層デフレ経済を固定化させ、ますますデフレ脱却から遠のいてしまうのです。

 論考では、≪2010年代には次世代携帯電話事業、地上デジタル放送への完全移行、空帯域を利用した携帯電話端末向けマルチメディア放送など新たな投資機会が数多く待ち受けている≫とあります。

 これも説明が必要でしょう。これら「新技術」や新サービスは、確かに「イノベーション」プロセスを通じ生み出されて来るなど、日本が世界に誇れる素晴らしいものばかりと言えましょう。

 しかし、これら新技術・新サービスが登場しても、思ったほどの収益機会とはならないでしょう。
 2010年代となっても、このままデフレが続くことが濃厚でしょうから、そうなれば依然、総需要ないし購買力が乏しい状況下、消費者はサービスを購入しようにも購入できないことが容易に推察されます。

 抜本的な解決方法としては、新たなマネー投入(通貨増発)による総需要の喚起しかないでしょう。
 そのことで現下、不稼動・非稼動の状態にある資本設備や労働力が甦ります。こうなって初めて、これら新技術・新サービスは日の目を見ることになるのです。

 もちろん、新サービスによる市場はそれなりの大きさに拡大することは考えられます。ただ、GDP(経済全体のパイ)が増大していなければ、他の産業セクターから購買力が移動(マイグレーション)するだけとなりますので、やがて関係企業の売上高は減って行くか、頭打ちになること必至です。このことを15年も、日本経済は続けているのです。

 S教授と国のある政策系研究所のI部長との共同で、≪不況克服の過程で経済構造の転換につながる企業投資が活発になった場合、中期の経済成長率がどの程度加速しうるかを・・・から成るマクロ計量モデルを用いて試算≫した内容が、この論考に示されています。

 例えば、≪企業投資全体に占める情報化投資の比率が2%ポイント上昇するなどの要因が加われば、第一に、基本予測では1%台半ばとなる成長率は、全要素生産性の向上などで2%台半ばに高まる。≫とあります。

 「マクロ計量モデル」の内情を知る身としましては、どれほどの精緻さと仮定・仮設が置かれているか、結果そのものへの解釈への恣意性が入っている余地はどれほどかなど、この計量モデルの限界について、本音が聞きたいとことです。(^-^)

 それはさておき、ソロー(ノーベル経済学賞受賞者)が“残差”として表現している、「全要素生産性」の測定は難しいものです。
 つまり、全要素生産性の経済成長への寄与率がどれほど正確に特定できるか難しい訳ですので、その全要素生産性の向上をもって、経済成長がどれほど増大するかと言う、よくありがちな見方については、あまり意味がないのではないでしょうか。

◆実質債務への言及には同感ですが・・・

 同論考には、さらに≪第二に・・・失業率は0.2%ポイント低下、第三に生産性の向上を通じ賃金上昇率は0.8%ポイント高まる、・・・第四に雇用情勢の改善で消費も刺激されるため、内需拡大効果で輸出依存度が低下、第五に財政赤字のGDP比は基本予測に比べ2.4%ポイント抑制される。≫とあります。

 このうち「失業率」や「賃金上昇率」なる数量的な改善度合いについて、同「マクロ計量モデル」の信憑性もさることながら、もしかすると「企業投資」による効果としては、そんなものかも知れません。
 ただ核心は、「中期の経済成長」には、「企業投資」のみではさほど大きな効果はなく、前述の通り、むしろデフレを固定化させる要因となることで、逆効果となってしまうことすらある可能性があります。

 また「内需拡大効果で輸出依存度が低下」について、この論考では、総需要増大策が何も見当たりませんので、現実性は乏しいのではないでしょうか。

 ただ「財政赤字のGDP比」を取り上げていること、そしてその重要性が示されていることには同感です。財政赤字そのものの大きさ(=名目債務)は、さほど意味がない一方、財政赤字のGDP比(=実質債務)は重要なことです。

 つまり、国の債務が現在800兆円ほどあって、それが膨大で国家破綻だと言うエコノミストが多いのですが、本当にわが国が破綻状態にある国であれば、国債の金利はとうの昔に上昇しているはずです。
 にもかかわらず、いまだ世界一というほど低金利で推移している現状からは、政府と日銀の国債の保有率が他の主要国に比べ高いとは言え、極めて日本国債は市場から信用されているという状況下にあることを物語っているのです。

 一方、本来の景気対策、つまり、総需要を喚起するための新たなマネー投入(通貨増発)を講じることになれば、第一~第五に示されたような数量的な改善度合いなど比ではないでしょう。もちろん、実質債務をもっと大幅に軽減できます。従って、増税派の財政均衡(2011年のプライマリー・バランスの実現)などは、主客転倒のアプローチです。デフレ下では財政出動による通貨増発は、世界の常識です。デフレ下で財政均衡をはかろうとすると、却って実質債務を悪化します。失われた15年間、実際そのようになっています。

 エコノミクスの基本に立ち返れば、言い換えると新技術やら企業投資などのサプライサイド要因のみに、その打ち手をフォーカスせず、(また増税派のような財政均衡実現至上主義に走らず)、本来の対策を実施できれば、劇的な改善がはかれるはずなのです。

◆企業投資が強調されても中期経済成長率は期待できない

 結論的なメッセージとしてこの論考では、次のことが示されています。

 ≪企業投資に主導された成長加速の時期が訪れないと、情報化の波に乗った構造変化が進まず、1%台半ばの中期成長率達成さえ難しい。(略)企業の投資行動は、期待成長率と表裏一体でないと、一時的に盛り上がったとしても短期で終息してしまう。≫

 このような見方は、世界の経済対策などと比較すれば、周回遅れ、もしくは大きくポイントをはずしているのではないかと考えています。

 欧米や中国では、いま財政出動型の景気対策ないし経済浮揚策が採られています。このメッセージのようなサプライサイド派(ある種の新古典派、構造改革派)ではなく、ケインジアンそのものの政策です。

 米国も中国も、プラグマティズムの国ですので、一見美しく見える新古典派経済学の市場原理主義や構造改革などは二の次なのでしょう。
 米国は日本へは、構造改革を毎年要望しますが、自国では殆どやりません。2001年にWTOに加盟した中国も通貨(人民元)を不当に低いままに放置したまま、その構造を抜本的に変えようなどの改革には着手しません。これが世界の現実です。

 こうしたメッセージは、例えば米国の1990年代中頃からのインターネットが普及し出した当時の、そして「インフレ無き成長」とグリーンスパンらに形容された、シリコンバレー型産業が牽引した経済モデルであれば、あるいはKlein博士らが"The Rising Tide"と形容した経済パターンであれば、それもある程度理解できます。

 しかし、日本経済は深刻な総需要不足(≒通貨が回っておらず購買力が乏しい状況)なのですから、上記メッセージは的外れになっている感が否めません。企業投資が強調されても、そうできない次のような2つの事情があります。

① :一部の大企業や輸出型企業を除き、1990年代の土地・株式の資産バブルの崩壊度合いが余りにも大きく(GDPの2.7年分)、それゆえ長い後遺症(失われた15年)が続いていた関係で、毀損したバランスシート改善のために、手持ち資金は借金返済に回らざるを得ず、新たな設備投資ができないでいるのです。
 野村総研のリチャード・クー主席研究員も指摘していることです。

② :今の日本の実態として、期待収益率が見込めない投資案件ばかりの状況にあります。
 言い換えると、総需要がない(買手である消費者や購入企業の購買力がない)ため、新技術を用いて高機能・高品質かつ適当な価格帯の商品・サービスであっても、それを購入する余力(可処分所得)がないのです。

 マクロ経済とは、その国の経済が置かれた状況(インフレ気味かデフレかなど)や、あるいはいつの時代に主流として採られた方策なのかの選択性(とその能力)などを、総動員して取り組まれるべき対象だと考えます。

 今回は触れませんが、別の要因、例えば、一国の経済やグローバルな経済の動静を決定している、経済主体(消費者などではなく、多国籍企業の経営者や国際金融家ら)の思惑・利害までも勘案して初めて理解できる、総合的な研究対象または生活ための対象(≠単なる学問対象)が、マクロ経済なのだと考えています。

 以上、当論考につきましては、殆ど文章も推敲せず、またこのコラムの構造やストーリーなどにもおかまいなしで、思いつくままに書き記しました。辛抱強いお付き合い、有り難うございました。(^-^)

PS:
 よほど仕事が多忙を極めない限り、以降、当コラムは1週間に1度程度のアップを目標としたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。

 

 
 

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2009年5月 7日 (木)

【取材】産経新聞:地デジ移行の経済効果

20090507  弊社広報部経由で、産経新聞からの電話取材が先日(2009年5月7日)にありましたので、電話を受け簡単に説明しました。

 その取材後の掲載記事と私のコメントを記しておきたいと思います。短い記事ですので、私のコメントは僅か1行です。(^-^)
 記事にもよりますが、普通この種の取材では、せいぜい数行程度です。

 しかし、この1行のコメントには、それなりの(?)ロジックとデータに裏付けられた内容があるものなのです。そこでバックデートで、そのこと(広報部への連絡・報告内容)を記事の下に記録しておきたと思います。

=====≪quote≫
「経済効果2.5兆円」 地デジ購入促進策 高速ネット網普及 
産経新聞(2009年5月8日)

 総務省は7日、追加経済対策に盛り込まれた地上デジタル放送(地デジ)対応テレビの購入促進など総事業費で4,240億円のIT関連施策による経済波及効果が、2兆5,000億円規模に上るとの試算を明らかにした。

 地デジテレビ促進策は、省エネ家電の購入者に還元する「エコポイント」に5%分を上乗せするもので、平成21年度補正予算要求に750億円が盛り込まれた。同省では、これにより、平成21年度の販売台数が約450万台増えると予測し、平均価格10万円として約4,500億円の効果があると試算。関連サービスなどを含め1兆1,250億円が見込めるとしている。

 このほか、地方の高速インターネット回線の普及や携帯電話の通話エリア拡大支援など他の対策も合わせると、2兆5,000億円に達するとはじき出している。

 ただ、「現在の経済環境で450万台の販売増は難しい」(日本総研・新保豊理事)との指摘もあり、同省では制度をPRし、利用を後押ししたいとしている。
=====≪unquote≫


■コメントに当たってのロジックと簡単なデータ精査:

広報部担当者殿:

 私からの取材時の主なコメント内容ですが、自身の備忘録も兼ね、次の通り記しておきたいと思います。

政府補正予算15.4兆円のうち、総務省分(ICT産業など)の、特に地上波ディジタル化移行に伴い経済効果への見方について、“エコノミスト”からのコメントを得たかったとのこと。

②補正予算の目玉である「エコポイント」(地デジなど向け特定用途商品についての5%助成分の750億円)効果を通じ、次の2段階を経て、政府発表の経済効果としての1.125兆円については、前段の仮定が妥当であれば(ここがポイント)、後段は妥当であろう、と。

前段の仮定 :今年1,500万契約(全世帯の未移行世帯約4割)の地デジ化を想定。1台10万円相当の地デジ関連商品として1.5兆円。
 その5%の助成で、1,500万契約のうち、当初期待層以外の残りの層450万契約(⇒1契約10万円として4,500億円の投入量)が促進されと想定。しかし、この想定ごとには無理あり、と。

 何となれば、僅か5%の助成金で全世帯の普及における、当初期待層以外の残りの層(=後期多数採用者および採用遅滞者)450万世帯を移行させるのは楽観的過ぎます

 デフレが続く、つまり総需要(=総所得)が伸びない、むしろ減少している家計において、最後の保守的な層では、消費を手控えている(消費したくともできない、そのような余裕はまったくない)状況にあるからです。

後段の仮定 :投入量が4,500億円であれば、ケインズの乗数効果(日本の場合、約2.5=名目GDP約500兆円÷企業・政府投資分の約200兆円))からしても、妥当(⇒4,500億円×2.5=1.125兆円)である、と。

 やや意外だったのが、政府系エコノミスト(+経済効果算出の委託先?のどこかのシンクタンクのエコノミスト)の大半は、新古典派・構造改革派(ケインズ否定論者)ですので、この乗数効果は今や殆どない、としているにもかかわらず、このような時には、ちゃっかりと(?)使っていることです。(^-^)

 以上、コメントの核心部分は、上記③の見方となります。


 これについては、私の最近の、『エコノミスト』誌の拙稿でのように、ICT産業だけでも数十兆円相当の投資である“ヘリコプターマネー”(現行法で実施可能)を投下するような大規模な財政出動が必要であること、そうしても膨大なデフレギャップ(私どもの試算では数百兆円規模)から、決してインフレにもならないこと、つまり、5%程度の助成では殆ど効果はないだろう、といったことを申し添えておきました。

 今般の発表を通じた、地デジ誘導策への熱心で積極的な政府筋の想いは理解できますが、果たしてその思惑は・・・・^^;

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2009年5月 6日 (水)

【一言】『エコノミスト』論考へのコメント

20090508  先日の『エコノミスト』(2009年5月5日・12日合併号)の、私の拙稿に関するコメントを、ここに簡単に残しておきたいと思います。

=====≪quote≫

○○様
 今回は、私の拙稿へのコメントを有り難うございます。

(前略)

 豚インフルエンザとタミフルなどの薬との間に、供給と需要の関係が(不謹慎ながら)確実にあるのが経済法則というものです。
 需要が増大すれば、それを満たすための製品を持つ製薬企業の株価も上がります。製薬業界というのも、こう考えてみると因果な商売(rotten business)ですね。

 クライスラーをはじめ多くの米国企業が破綻状態にありながら、また同様に日本でも膨大な赤字決算(証券・保険、半導体、自動車などなど)が続く、実体経済の絶不調下にあって、なぜか株価は8,500ドル台(ダウ)や9,000円ほど(東証)を、まるで維持するかのように振舞っています。

 もはや、これは実体経済が株価には反映されておらず、市場原理主義者の“神の見えざる手”が日本の場合、郵貯資金に加え、年金資金まで使ってPKO(Price Keeping・・・) をやっているとしか読めません。きっと選挙前だからでしょう・・・
 どうみても無理があります。従って、現在の株価維持の協調ぶりは、そのうち破綻することでしょう。そこからが、さらなる覚悟の時期を迎えることになりそうです。^^;

【補足】 ≪以前の当Blogで、「恐らく日経平均は、ダウ平均につられ、今週中には7,000円を切ることでしょう。」と書きました。その予想は幸いにも(?)はずれました。
 エコノミクスの原則から、ずっとおかしいと思っていました。その理由は、PKOだったのです。また、米国でも「利益確定売り」行為により、依然株式市場は極めて不安定です。

 日経平均では、政府が一定レベル(恐らく9,000円程度)まで買い支えると以前表明してしまったために、上昇局面では都度ハゲタカに利益を持って行かれていることでしょう。そこで政府が再度買い支える(多分次の選挙までは)、そしてハゲタカの餌食になる、このことが繰り返されているのだと思います。

 米国のダウでも同様です。大手金融機関(銀行、証券)の現下の自己資本不足ゆえの、利益確定を通じた資金調達がなされていると読めます。株式市場では必ず胴元が勝つことになっています。情報の非対称性がありますので、素人(個人も組織も)は勝てません。^^; ≫


> 最新号のエコノミストの論稿を拝読いたしました。(略)
> 原因と結果、競争政策と産業政策、国際競争力など、
> 説得力のある議論を展開されておられ、現下の風潮に
> 警鐘を鳴らすものと思います。(略)

【補足】 ≪読者からのお便りの一部です。この程度の内容でしたら、ご本人の所属組織を含め、一切個人情報を含まないものですので、抜粋をご容赦下さい。(^-^) ≫

 前置きが長くなりましたが、先日の『エコノミスト』の拙稿の件、コメント(ご連絡)有り難うございます。嬉しく思います。

 私の論稿は、的外れなエコノミストが余りに多いため、その反論・反証のつもりで書きました。紙面制約があるため、あの程度ですが、『エコノミスト』がこの論調のものを掲載したことには勇気があると思いました。

(脱稿直後の4月中旬の、CIAJのある勉強会では、2時間かけてその核心部分とその背景にあることをレクチャーする機会がありました。)

 特に『週刊東洋経済』(2009/02/14)の、(略:幾つかの記事)には呆れました。それも意識して書きました。
 このようなエコノミスト・学者らが、日本経済のことを語り、また情報通信産業のことまで口を出すので、いつまで経っても日本経済も情報通信産業も浮かばれないのかも知れません・・・

 恐らく日本の多数のエコノミスト(殆どが新古典派、シカゴ派、構造改革派)は私の論稿をまったく理解しないでしょうが、米国では私が書いているような政策(不胎化を伴わない財政出動策、バーナンキの“ヘリコプターマネー”策)が採られているのです。

 米国は、金融危機を振りまいておいて、酷いことを結果的に世界にもたらしたのですが、その対策は極めて早く、しかも実にプラグマティズム流のやり方です。良くも悪くも、人材のレベルが高く豊富なのです。

 長くなりました。あまりに情けない、昨今のマスコミ論調であるため、つい力が入ってしまいました。(^-^)
(略)

=====≪unquote≫

【補足】 「実にプラグマティズム流のやり方」:

 当の米国を少々持ち上げてしまいました。実際は、もう後がないほどの危機的状況下での、①金融政策と、グローバル資本主義を標榜してきた新古典派本山の米国でのほぼ70年ぶりの②財政政策がなされている、いわば危うい「ポリシー・ミックス」が同時並行で進められている状況にあります。これを、上では「プラグマティズム流」と表現しているだけです。

金融政策 :流動性がない(=市場が機能していない、債券・証券などの買手がいない)という危機的状態ゆえ、FRBが前代未聞の
「CP(コマーシャル・ペーパー)の購入」制度を設置し、殆ど価値のない約束手形を無担保で融資する(資金を手当てする)ことが行われています。

 加えて、
FRB(=中央銀行)による、市中銀行を通さない国債の直接買いつけ、言い換えれば、米財務省が発行した国債をFRBとの相対で直接売り買い(財務省が国債を売り、FRBが買い上げることでマネーを渡すこと)がなされているのです。

 従って、FRBの総資産は「リーマン・ショック」(2008年9月15日)より少し前(ベア・スターンズ社破綻後の2008年4月頃)から、3倍弱にも膨れ上がり、破綻(債務超過)になる可能性が高くなってきました。

財政政策 :日本経済と決定的に異なる点として、過去10年以上、米国経済では(欧州も)、高い経済成長ゆえにインフレ気味で経済は推移して来ました。つまり、財政出動のための財源(原資)となりうるデフレギャップは殆どない状況にあるはずです。ただ、「リーマン・ショック」以降、急速に米国も(欧州も)デフレに突入しています。

 本来の財源とは、国の信用力(経済力+軍事力など)にあるはず。米国の場合、前者の経済力が赤信号状況にあること、そして後者の、年53兆円(日本の10倍、世界シェアの1/4)ほども支出している軍事力についても、経済力が落ちれば結局低下します。それゆえ実際は「財源」と呼べるものがありません。

 インフレギャップこそあれ、殆どデフレギャップがない状況にあります。言い換えますと、資本設備や労働力要素が十分稼動して来ており、潜在GDPレベルからの乖離が殆どない状況です。
(日本経済では、幸い?にも膨大なデフレギャップが存在するため、つまり真の財源が存在するため、米国よりも“新たなマネー”創出による財政出動が効果をもたらすのです。日銀による、市中を通じた従来の国債買い入れ方式では、既存のマネーが移動するだけの不胎化を起しますので効きません。中立的なだけです。この点を多くの皆さんが間違えます。)


 米国の場合、それゆえに、
新たなマネーの投入のための、つまり、FRBによる信用創造=CPや国債の直接買い上げによる融資=財政出動のための、財源が殆どない状態ですので、一時的な(向こう1年程度の)有効需要刺激、すなわち景気回復があってもそう続かないでしょう。

 
従って、同①(無謀な金融政策)による、前代未聞のツケ・しっぺ返しが、向こう2年程度以内に、必ず表面化して来ることでしょう。

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2009年5月 5日 (火)

【寄稿】『エコノミスト』:日本経済(+ICT産業)発展の方策

2009042720095512  弊社の広報部経由で、毎日新聞『エコノミスト』誌から、「世界不況が迫る経済の構造転換_産業大革命」なる特集に関する寄稿依頼がありました。

 先日(2009年4月19日)脱稿したものが、同誌に掲載されました。(^-^)
 私の原稿(ほぼ最終稿)を、ここにバックデートでアップしておきたいと思います。

=====≪quote≫

■「ICT鳩山プラン_ICT産業と適切なマクロ政策で日本経済は発展できる」
 
 ICT(情報通信技術)関連産業の市場規模を15~20年時点で200兆円に倍増させることを目指す「ICT鳩山プラン」。実現させるためには何が必要か。

 新保豊(日本総合研究所理事・主席研究員)

 総務省は2009年3月17日、鳩山邦夫総務相の私的懇談会による「ICT(情報通信技術)ニューディール」の提言を踏まえ、当面3年間の重点施策として「デジタル日本創生プロジェクト」(ICT鳩山プラン)を取りまとめた。このプランは、現在100兆円弱のICT関連市場規模を2015~2020年時点で200兆円とすることを狙ったものだ。ブロードバンド基盤の整備や電子政府の促進など打ち出した米オバマ政権の戦略の「物真似風」である一方、その実現方法は、経済の原理原則を無視しており、とても無理な話だ。

 プランはICT産業のみに目を奪われていて、経済全体の量に関する視点が欠如している。日本は先進国のなかで唯一デフレが経済を長期間下押ししているなかで、今般の金融危機が実体経済への縮小に追い討ちをかけている。この観点からは、実はICT産業の成長にも、経済全体の浮揚が第1の鍵となる。

 ICT産業は最近の実質国内総生産(GDP)成長率への寄与の4割を占めるとされ、産業界からも大きな期待が集まる。しかし、本格的なデフレに突入する前年の1997年から2007年までの実質GDPの年平均の成長率はたかだか1.2%に過ぎない

 主流エコノミストは、日本経済は、資本設備と労働力が余剰にある飽和状態にあると捉え、成長の第三の要素として生産性を持ち出す。特に労働生産性(=付加価値÷労働投入量)の低さが成長を阻んでいるとする。これは間違いだ。デフレ(総需要不足)状況では売上高が減少するが、グローバルな株主資本主義のもとでは、高水準の株主配当を維持するには人件費を下げざるを得ない。生産性が低いのは、GDP=付加価値(≒営業利益+人件費+減価償却費)が伸び悩んでいるからだ

 政府のデータから計算すると、労働生産性の年平均伸び率は、基本的にデフレ状況にあった2000~2007年は1.84%であり、バブル経済期を含む1980~2000年の2.43%より低い。一方、生産性のGDPへの寄与率(生産性上昇率÷GDP成長率)では、2000~2007年が1.18と1980~2000年の0.88より高いが、これは、分母のとなるGDP成長率が小さかったからに過ぎない。経済低迷の真の原因はデフレだから、生産性向上を目指した構造改革を継続しても、これ以上効果はない。原因と結果が逆なのだ。

◆経済全体の浮揚が必要

 まず経済全体の浮揚が先決だ。2007年の実質GDPが561兆円に対し、「失われた10年」がなければ潜在実質GDPは、ドイツやフランス並みの成長を続けることで817兆円にも達していたとみられ、その場合のGDPギャップ(=デフレギャップ)は255兆円(ギャップ率マイナス31%)にも開いている可能性が高い。

 土地バブルやIT(情報技術)バブル前後に株式市場は高値をつけたが、国内で低金利政策を続けた結果、高利回りの外国証券購入取引が増え、株式市場からを含め数百兆円もの膨大なマネーが海外へ流出したのだから経済が成長するはずもない。

 「鳩山プラン」を従前のような方策(多少の設備投資)で進めても効果はない。問題は資本設備や労働力の不稼動状態、すなわち総需要不足にある。構造改革は総需要をしぼませデフレを固定化させた。

 他方、国債発行の日銀引き受けなど、政府債務を増大させるマネー投入は結局、国債購入によって民間部門からマネーが引き上げられるだけなので、現存する購買力の再配分に過ぎない。新たな購買力を生まないために経済成長には中立的だ。

 解決の方策はそこにはない。今着手すべきなのは、日銀に負債を持つ必要のない「新たなマネー」である、現行法で可能な政府貨幣を発行することだ。大きなデフレギャップがあるためインフレの心配はない。決して奇策などではなく、丹羽春喜氏(大阪学院大名誉教授)も以前から指摘している。

 具体的には、経済全体で毎年250兆円(=国民1人に月20万円の臨時ボーナス)なる新たなマネーを効果が出るまで(最長3年程度で最大750兆円ほど)投入し、消費者物価上昇率が2.0~2.5%程度のインフレになれば停止する。この規模が大胆過ぎて不安であれば初年度は半分(100兆円規模)でもよい。

 ICT産業には、このうち年50兆円の新たなマネーを3年間、累計150兆円ほど投入もできる。投入方法は、用途限定・期限付きの「ICT消費券」等の配布などが有効だろう。3年間の消費者の旺盛な購買力(総需要)増大が企業の投資原資となり、これでICT産業は一気に浮揚する。3年間で平均10%成長が達成でき、それ以降も続けば2017年には「鳩山プラン」の目指す市場規模200兆円突破も夢ではない。

◆未来のICT産業

 このようにICT産業が浮揚すれば、消費者・生活者は、真に豊かで愉快な生活実現に一歩近づく。内需分野での健康・医療(有害物質対応)、住環境・交通・防災(大気汚染、地震・原発災害対策)、燃料電池・太陽光によるエネルギー分散化、教育・学習、食・農業(無農薬化、非競争的な消費者支援化)分野で、ICTとの接点を見つけ創意工夫することなどは日本企業の得意領域であろう。

 ICT企業は、光ファイバーやモバイルなどの次世代通信網や各種ICTプラットフォームの整備、さらにはICT関連機器や各種サービス・コンテンツ開発につなげることで国際競争力も向上しよう。政府は、これまで、デフレ下なのに競争政策を継続して結果、産業界を疲弊させてきたが、国民経済の視点に立脚し、まずは産業規模拡大など国内の重点産業の強化をはかり、その上で競争促進策を講ずれば健全な市場形成がなされる。

 日本のICT企業は、グローバル市場の時流に乗って、商品が良ければ売れると安易に考え海外進出を試みたが、競争相手に比し規模と範囲の経済性を十分発揮できず、また現地の商慣行や実業史に関する研究不足や、業界だけではどうになならない為替変動に翻弄され、現在まで海外市場で勝てなかった(擬似的グローバル展開に留まった)。

 いわば「1カンパニー&1擬似グローバルシステム」であったICT企業は、今後マクロ経済面で有効需要が喚起され、本来の経済成長が達成できる必要条件が整えば、再編統合を行わず、企業数はそのままで業界新生も十分可能だ。日本には1国経済に不安定さを与えかねないノキアやサムスン型の巨大な「グローバル・トップワン」企業は不要だ。

 適切なマクロ経済対策と、内需の成長分野への取り組みがなされれば、企業は、日本の市場に適した技術・経営システムを確立し、そこで稼ぎ出した利益で培った体力と経験を通じて真のグローバル展開を図るという「1カンパニー&2システムズ」を達成できる。そうすれば、日本のICT産業は「飛躍の10年」の未来を謳歌でき、また世界の経済社会の発展にも貢献できよう。

【図表】 ICT産業が目指すべき未来の発展パターンと「飛躍の10年」
20090505 (注)「BOP」:Bottom Of Pyramidの略で未開拓の40億人市場。
(出所)新保豊(日本総合研究所)が作成

*************
◆デジタル日本創生プロジェクト(ICT鳩山プラン)とは
 総務相のICT(情報通信技術)分野の懇談会「ICTビジョン懇談会」(座長、岡素之・住友商事会長)の緊急提言「ICTニューディール」を受けて、総務省が3月にまとめたプロジェクト。
 ICT関連の設備投資を促進することで、今後3年間で数兆円規模の市場と30~40万人の雇用を創出し、中期的には、現在100兆円弱の市場規模を2015~20年時点で倍増させることを狙う。
 具体的には、▽電波の有効活用によるデジタル新産業の創出▽「クラウドコンピューティング」などの新技術を活用した革新的電子政府の構築▽デジタル・ディバイド(情報格差)の解消された先進的デジタルネットワークの構築──などの目標が盛り込まれている。
*************

=====≪unquote≫


 なお、同誌特集の目次は、次の通りです。
 私の原稿は、下の方に「エコノミスト・リポート」として掲載されています。例によって、私の見方は、新古典派・構造改革派とは異なりますので、他氏と比べかなりの異説内容になっていようかと思います。

 ただ、上記原稿本文でも示しましたように、この見方は、丹羽春喜氏(元大阪学院大学教授)らがずっと以前から主張されたいたものです。私がICT産業発展・復興のために、若干のアレンジをして記述した程度のものです。

 そしてこの方法は、金融危機から実体経済の恐慌状況を呈しつつある米国において、バーナンキ(FRB議長)らが“ヘリコプターマネー”として、やはりかなり前から言及してきたことなのです。深刻なデフレ状況にあり、なおかつ金融危機最中の異常事態では、絶大な効果があるものであり、デフレギャップの膨大な日本経済ではさしたる弊害も出ないでしょう。

 にもかかわらず、わが国のエコノミスト諸氏は、頭が固い。物事の大局と本質を知っている欧米・中国・ロシア・インドなどのエコノミストや政策担当者は、とっくの昔に舵取りの方向を変えていると言うのに・・・^^;

=====≪quote≫
『エコノミスト』(特集:世界不況が迫る経済の構造転換_産業大革命)2009年5月5・12日合併号

Part 1 転換期に直面する日本の産業

・潮流は「ハード」から「ソフト」 技術立国日本がやるべきこと_木村英紀(理化学研究所/東京大学名誉教授)
・自動車:電子化技術で先端を行く日本 自動車が「電気製品」と呼ばれる日_河村靖史(ジャーナリスト)
・電機:新成長市場は環境、健康など 海外生産で新ビジネスモデル構築_長田貴仁(経済学者)
・化学:石化コンビナートは国家戦略的な再編が不可避_黒澤真(CLSA・カリヨン証券シニアアナリスト)
・鉄鋼:需要急減で再編は必至 高炉5社体制は崩壊へ_真田明(ジャーナリスト)
・小売り:コンビニが「日本のインフラ」へ進化 イノベーションでコスト構造改革_清水倫典(キャピタル・パートナーズ証券調査部長)
・不動産:地価、オフィスビル、マンション すべて変化の節目を迎えている_石澤卓志(みずほ証券チーフ不動産アナリスト)
・問われる状況把握力:日本経済の転換期を生き抜くための4つの視点_小峰隆夫(法政大学大学院政策創造研究科教授)
・過去の危機克服:長期的視点と競争力強化への投資で困難を乗り越えてきた日本企業_橘川武郎(一橋大学大学院商学研究科教授)

Part 2 日本の未来を切り開く工夫

・2次電池:太陽光発電、電気自動車-次世代エネルギーインフラに不可欠_井元康一郎(ジャーナリスト)
・農業:自由競争で成長できる日本の農業 輸出に大きな可能性_昆吉則(『農業経営者』編集長)
・医療:「マーケット・イン」の視点で医療をサービス産業として育てよ_真野俊樹(多摩大学統合リスクマネジメント研究所教授)
・インタビュー:佐伯啓思(京都大学大学院教授)「日本を真に豊かにするために『脱成長社会』の道を探れ」

◇史上最大 15.4兆円 追加経済対策効果の測定

・効果がある政策、ない政策を理論的に見極める_熊野英生(第一生命経済研究所主席エコノミスト)
・「賢明な支出」より「大規模」を優先_尾村洋介(『週刊エコノミスト』編集部)
・国債増発懸念で長期金利上昇_島本幸治(BNPパリバ証券チーフストラテジスト)
・国債大増発だけでは解決しない 現役世代の1人当たり所得を増やす政策こそ必要だ_藻谷浩介(日本政策投資銀行国際部所属参事役)

◇読書の達人5人が選んだ20冊 ゴールデンウイークに読むべき本

・伊東光晴/松本健一/池内了/久田恵/成毛眞

◇エコノミスト・リポート

・中国:アジアを中心に世界は深刻な水不足時代に入った_柴田明夫(丸紅経済研究所所長)
・成長力:ICT産業と適切なマクロ政策で日本経済は発展できる_新保豊(日本総合研究所理事・主席研究員)
・経済政策:不安を克服すれば日本経済の日の出も遠くない_浜田宏一(エール大学経済学部教授)
・貧困:「貧困大国・日本」の現実を直視せよ_宇都宮健児(弁護士・反貧困ネットワーク代表)
=====≪unquote≫

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2009年4月17日 (金)

【社外レクチャー】CIAJの皆さんとマクロ経済と金融問題の勉強

20080610ciaj  CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)の皆さんからのご依頼により、CAIJ本部(東京都港区浜松町)にて、「情報通信業界を取り巻く現状・課題および将来展望」と題するレクチャーを、2時間弱、差し上げて来ました。

 CIAJの皆さん、当日はお招き有り難うございました。

 当日の資料のうち、各ページのタイトルのみ、ここにバックデートで抜粋しておきます。
 レクチャーのタイトルでは「情報通信業界の・・・」とありますが、この産業を題材として、実質は世界(グローバル)と日本のマクロ経済と金融問題を扱いました。

 この内容を2時間程度できちんと理解することは、基本的な知識や関連の素養がなければ、かなり難しいと推察致しましたが、どうにかポイントだけでもお伝えできたのではないかと思います。(^-^)


=====≪quote≫

■「情報通信業界を取り巻く現状・課題および将来展望」~金融不況にどう対処すべきか
 2009年4月17日 新保豊(JRI 日本総合研究所 理事・主席研究員)

≪講演内容の構成≫

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【1】情報通信業界を取り巻くマクロ経済環境の現状
########################################

◆グローバル化を通じた“勝ち組・負け組”も金融危機後は総崩れ
◆金融危機後の主要電機メーカーの円高の影響が利益を吹き飛ばす
◆ITバブル後と金融危機後における電機業界の営業利益の激減
◆金融危機後の主要電機各社リストラ計画により日本経済のデフレギャップがさらに増大
◆日中貿易額は毎年増大傾向にあり米国よりも存在感大
◆日本における対中輸出・輸入品目の推移に見られる産業空洞化
≪参考≫貿易と比較優位〔不均等のメカニズム〕
◆変動相場制下の適正為替レートが比較優位=国際分業を機能させる
≪参考≫為替レートのあるべき調整と現状
◆“政治覇権国・金融帝国”化とグローバル構造下における投資と消費のメカニズム
≪参考≫グローバル経済圏企業とドメスティック経済圏企業の1人当たり実質GDP(付加価値)

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【2】経済も浮揚もせず国際競争力も落ちる要因・課題
########################################

◆「ICT国際競争力会議」での“最終的なゴール”についてあらためて考える
◆最終的なゴール
◆経済成長(景気回復)のメカニズム
◆「CHANGE]されるオバマ政権の主要閣僚・顧問らの顔ぶれ
◆「年次改革要望書」とは何か?
◆オバマ政権への期待、その幻想と真意を知る
◆『年次改革要望書』に見るオバマ政権の意志
◆内外主要ファンドの一覧
◆「ファンドの貪欲」
◆国際会計基準と資金流出
◆GDPの成長が必要な理由

########################################
【3】抜本的な解決策としての現状再認識
########################################

◆信用創造量と名目GDP伸び率の関係
≪参考≫マネーの流通速度
≪参考≫日米の金融政策比較
≪参考≫民間需要(C+I+NX)と公的需要(政府支出G)
≪参考≫日銀窓口指導とカルテルの効果
◆財政刺激策の2パターン(国債発行型、銀行借入型)
◆景気回復(経済成長)のためのもっとシンプルな方法
◆米ダウ平均株価の長期上昇トレンドのなか最近の株価下落はどこまで進むのか?
◆外国人投資家の売買行為により日経平均株価は十分影響を受ける
◆クレジットデリバティブ(CDSの例)のメカニズムとはどのようなものか?
◆巨大複合金融機関LCFIとのその役割とスキーム(Ponzi scheme)
◆世界の銀行の総資産の大きさに見る世界覇権(金融経済)の動き
◆驚くべき最近の米国連邦準備銀行(FRB)の資産推移!
≪参考≫米国連邦準備銀行(FRB)のバランスシートは大丈夫か?
≪参考≫国家破産の方法(John Maynard Keynes)

########################################
【4】経済と情報通信産業を簡単に浮揚させるための方策(奥の手)
########################################

◆個人金融資産1,500兆円は有名無実化!
◆政府による通貨発行権(政府紙幣)への提案または実績
◆日本経済に「デフレギャップ」は殆ど存在しない!?
≪参考≫日本経済は極めて優秀(生産性寄与と在庫変動額比率)
◆真の「デフレギャップ」の算定ステップとのその結果
◆政府貨幣による即効性のある景気対策と年率10%の経済成長
≪参考≫明治初期の太政官札(政府紙幣)の発行でもインフレにならなかった
≪参考≫中国の地方政府で相次ぐ「消費券」の発行
◆有効デフレギャップの概算
◆主要国GDP比較に見る日本の経済成長の低迷さは異様
◆有効蓄積デフレギャップ(真の財源)利用した経済対策と劇的な効果
≪参考≫総務省「デジタル日本創生プロジェクト(ICT鳩山プラン)」骨子
≪参考≫「グローバル・トップワン」が本当に必要か?
◆ICT産業が採るべき未来の発展パターンと「飛躍の10年」

########################################
≪参考≫激変する情報通信産業を理解するための予備(核心的な)知識やその学習について
≪参考書籍・映像≫「経営や経済・金融に潜む重要なこと」を知るための推薦書籍
########################################

=====≪unquote≫

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